安倍首相の施政方針演説を聞いて

 今国会、一番の焦点となる統計不正問題については、真の反省なし。公的統計とは「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報」(統計法第1条)であり、「証拠に基づく政策立案を支える基礎であり、行政における政策評価、学術研究及び産業創造に積極的な貢献を果たす」(第3期基本計画)という重要な役割を持っている。

 この公的統計を損ねることは、政府が自らの政策の正当性を立証できないということであり、何よりも国民が政府の政策の妥当性を評価する情報を持ちえないということだ。

 もともと統計法には「統計の真実性を確保」とあった(1月27日付「毎日」参照)。それは、統計を国家機密として秘匿し、無謀な戦争で多大な惨禍を国民に強いたことへの反省があったからではないか。統計不正とは、国政の根幹に関わる大問題であるにもかかわらず、その認識を安倍首相が持っていないことが最も深刻だと言わざるを得ない。

 この間、安倍政権は「統計改革」を進めてきた。そこでは、「経済統計の改善」や「統計の利活用促進」「報告者負担の軽減」「統計行政の業務効率化」などを掲げ、官民の統計コストを3年間で2割削減することなどを求めている。

 アベノミクスをよく見せるために統計偽装を行っていたのではないか、企業側の要請を受けて全数調査を抽出調査に変えたのではないか、統計職員のリストラ(この10年間で半減)が統計不正の背景にあるのではないかなど、検証すべき点が多々出てくる。

 徹底解明が必要だ。基礎資料の提出と予算委員会の集中審議など、真相解明のために政府与党は誠意ある対応をとることを強く求めたい。

 安倍首相は、消費税について「十二分な増税対策を講じる」という。しかしキャッシュレスのポイント還元は、富裕層に有利であり、さらに企業間取引も対象になる。補助金の上限もない。結局、庶民から消費税を取り立てて、その金を青天井で富裕層と企業に還元するのが「増税対策」ということになる。富裕層と大企業にこそ応分の税の負担を求める時だ。

 国家権力から国民を守る立場で、権力を制限するのが憲法。「憲法は国の理想を語るもの」という自分の考えを国民に押し付けようとしていることが大問題。でも自民党の2019年運動方針案では「(改憲の)国民世論を呼び覚ます」と言っている。こんな安倍首相の改憲論を国民は望んでいないということを自民党自身も認めざるを得ない。

 「20年以上に及ぶ沖縄県や市町村との対話の積み重ねの上に、辺野古移設をすすめる」など、とんでもない! 沖縄の民意にいっさい耳を傾けない安倍政権には退場してもらうしかない。

 いままで成長戦略として原発輸出を大宣伝していたのに、全く跡形もない。都合の悪いことには頬かむり。省エネ・再エネこそ、一番の成長戦略だ。