【予算委員会】統計調査方式の変更/“官邸の意向”を追及

 毎月勤労統計の調査対象事業所の入れ替え方式などをめぐり、2015年の厚生労働省の有識者検討会の取りまとめ内容が百八十度変更していた件で、官邸がかかわっているのではないか、とただしました。

 同年9月3日に安倍晋三首相の国会答弁準備の勉強会が開かれ、統計の調査方式が説明されていた。この勉強会をはさんで、統計の調査方式を「総入れ替え方式で行うことが適当」(8月7日)としていた検討会の結論が「引き続き検討」とする「中間的整理」(9月16日)に変わっています。

 私は、厚労省の担当者が検討会座長の阿部正浩・中央大学教授に送ったメールの内容を紹介。
(1)9月4日は「官邸関係者に説明をしている段階」
(2)8日は「部分入れ替え方式で行えばよいのではないかと言われる可能性がある」
(3)14日は「委員以外の関係者」との記述があることをあげ、それぞれ誰を指すのかただしました。

 厚労省の藤沢勝博政策統括官は
(1)「官邸関係者」は「厚労省出身の官邸参事官」
(2)誰から「言われる可能性」があったかについては「確認できない」
(3)「委員以外の関係者」は「統計情報部長と部長が接触していた総理秘書官、他の有識者を想定していた」と答えました。

 結局、メールに出てくる『関係者』は勉強会に出席している面々だ。官邸関係者の意向に大きく左右されていることがうかがえる。

 安倍首相は「(勉強会では)特段深く勉強したわけではない」などと答弁。

 私は、統計は国民のものであり、政府からの独立性・中立性が問われている、真相解明のためメールに書かれている関係者の国会招致を求めました。

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「議事録」

<第198通常国会 2019年02月25日 予算委員会 13号>

○塩川委員 毎勤統計の問題について質問をいたします。
 毎勤統計について、パネルを見ていただきたいんですが、この毎月勤労統計の調査方式変更の経緯についてお尋ねをいたします。
 毎月勤労統計の検討会担当の厚労省の課長補佐から、毎月勤労統計の改善に関する検討会の阿部座長へのメールのやりとりが左側に記されております。
 このメールでは、九月四日付のメールにおいて、現在、検討会での検討結果等については官邸関係者に説明をしている段階ですと述べております。
 厚労省にお尋ねをいたします。この官邸関係者とはどなたでしょうか。

○藤澤政府参考人 お尋ねの、厚生労働省が情報提供を行います官邸関係者とは、官邸の参事官、それから官房長官秘書官、また副長官補室の担当参事官のことを指すものでございます。私どもで関係職員にヒアリングをいたしましたところ、毎月勤労統計につきましては、速報値、確報値など、毎月事務的に情報提供を行っているということでございます。
 なお、当時の官邸参事官に確認をいたしましたところ、九月の四日の前後に厚生労働省から検討会の動向について報告を受けたかもしれないが、内容がテクニカルと思われたので、総理秘書官には報告していないのではないかと思うとのことでございました。

○塩川委員 厚労省からの報告を受けた官邸関係者の官邸参事官というのは、厚労省出身の内閣参事官ということでよろしいですか。

○藤澤政府参考人 厚生労働省から官邸に行っております参事官でございます。

○塩川委員 次に、九月八日付のメールですけれども、ここには、部内で検討した結果、第二種事業所では、部分入れかえ方式、ローテーション方式を採用しているので、第一種事業所についても部分入れかえ方式で行えばよいのではないかと言われる可能性があるため、あえて記述しないという整理にしたいと考えています、姉崎部長の意向もありますというんですが、ここで、パネルでも赤い字で記しているところなんですが、こういう部分入れかえ方式で行えばよいのではないかと言われる可能性、この手計課長補佐は、誰から言われる可能性があると想定していたものですか。

○野田委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕

○野田委員長 速記を起こしてください。
 厚生労働省藤澤政策統括官。

○藤澤政府参考人 御指摘の、姉崎部長の意向もありますのところでございますけれども、当時の担当補佐に確認をいたしましたところ、部長は、都道府県の事務負担、コストを考えれば、部分入れかえ方式の導入は難しいとする考えだと思っていたと。このため、第二種事業所の部分入れかえ方式の記述をすれば、第二種事業所について記載すると部分入れかえ方式を重視していると誤解されることから、あえて記述しない方がよいと考え、部長の意向と記述したと記憶しているということでございます。

○塩川委員 いや、誰に言われる可能性があるという話なんですよ。
 姉崎部長のそんたくの話じゃなくて、誰に言われる可能性があるのか、それは誰なんですか。

○野田委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕

○野田委員長 速記を起こしてください。
 厚生労働省藤澤政策統括官。

○藤澤政府参考人 第一種事業所についても部分入れかえ方式で行えばよいのではないかと言われる可能性があるのところでございますけれども、誰からということについては確認できておりません。

○塩川委員 これはしっかり確認をしていただきたい。委員長、よろしくお願いします。

○野田委員長 理事会で呼ぶという、そういう意味ですね。(塩川委員「はい」と呼ぶ)
 では、後刻、理事会にて協議いたします。

○塩川委員 次に、九月十四日付のメールでは、委員以外の関係者と調整をしている中でサンプル入れかえ方法について、部分入れかえ方式で行うべきとの意見が出てきました。御存じのとおり、報告書案では、総入れかえ方式が適当との記載を予定していました、と。
 ここに出てくる委員以外の関係者とは誰かについて、確認をいたします。

○藤澤政府参考人 これまでお答えを申し上げておりましたのは、いずれも、先生から事前の通告をいただいておりませんでしたので、お答えできる範囲内でお答え申し上げておりますが、今の御指摘の点の、委員以外の関係者とは誰かでございますけれども、お尋ねの、当時の担当補佐に確認をいたしましたところ、委員からの修文意見には部長が指示をした修文内容が含まれていなかったこと、座長との関係でどのように説明するかを考えた際に、今さら検討会の主催者である統計情報部長の意見とも言いにくかったため、含みのある表現である委員以外の関係者という表現を用いたように思う。具体的には、メール送付時には、統計情報部長と、統計情報部長が接触していた総理秘書官や他の有識者を、自分としては、これは担当補佐としてはということでございますけれども、自分としては想定していたとのことでございます。

○塩川委員 委員以外の関係者で、姉崎部長の話が出るのもおかしなことですけれども、この部長が接触していた秘書官というのは、これは、中江秘書官ということでよろしいのか。ほかの有識者というのはどなたなのか、わかりますか。

○藤澤政府参考人 当時の統計情報部長が接触をしていた総理秘書官につきましては、当時の統計情報部長が接触をしていた総理秘書官でございます。
 それから、他の有識者でございますが、統計情報部長が、これもおつき合いをされておられた他の有識者のことだというふうに承知をしております。

○塩川委員 ちょっと、姉崎さんにその点をお答えいただけますか。

○姉崎参考人 お答えをいたします。
 この委員以外の関係者のことにつきましては、二月十九日の夜に厚生労働省の方から私に確認がございまして、その時点ではメールについて承知をしていなかったんですけれども、もし、委員以外の関係者という記載が事実であるとすれば、要は、私の修正の指示が九月十一日か十四日ということで検討会の直前だったために、阿部座長に対して私からの修文案だというふうに言い出しにくくて、ちょうど九月十四日の午後に私が総理秘書官のところに説明に行っていたので、そのことを念頭に置いて、委員以外の関係者という言葉を使ってしまったのではないかというふうに考え、もしそうであるとすれば、これは、中江総理秘書官のことではないかというふうに思ったので、そのように確認に答えた、こういうことでございます。(塩川委員「ほかの有識者は」と呼ぶ)
 ほかの有識者というのは、統計情報部におきましては、この毎勤の研究会以外にも、統計整備の研究会等さまざまな研究会があって、私が常日ごろから学者の皆さんと接しておりますので、そうした中でお話を多分したというふうに補佐が思ったのではないかというふうに思います。

○塩川委員 いやいや、そんなことを言っても納得できるものではありませんよ。これはやはり、手計さんにしっかり来てもらって、説明してもらうことが必要だ。この点については改めて求めていきたいと思っております。
 要するに、このやりとりの中でも、官邸の関係者というのが繰り返し出てくるわけであります。この表にもあるように、九月の十四日、姉崎部長らが、中江秘書官に検討会について説明した。中江秘書官が、部分入れかえということもあるのではないか、これは、姉崎さんの言葉ですけれども、そういうふうに述べたということであります。
 この一連の経過を見るときに、このメールのやりとりの直前にあったのが、九月三日の安倍総理の国会答弁の準備勉強会であります。
 参議院の厚労委員会における我が党の小池晃議員の質問に対して、安倍総理は、調査対象事業所の入れかえの影響によって六月の賃金がマイナスになったことについて言及をしておられます。
 中江参考人にお尋ねします。
 この勉強会のときの出席者は、中江総理秘書官、厚労省出身の内閣参事官、その他総理秘書官ということでよろしいですか。

○中江参考人 お答え申し上げます。
 この九月三日の国会答弁の総理への御説明、参議院の厚労委員会で厚生省の法案の審議でしたので、私がほとんどの問いについて多分説明したと思います。それで、そのときに都合がついていた総理秘書官がいたと思います。
 それから、厚労省出身の参事官も、普通であれば、特段何かの用事がなければ出ていたと思いますが、済みません、そこは、誰がいたかというのは、ちょっともう四年近く前ですので、はっきりしません。

○塩川委員 中江総理秘書官、また厚労省出身の内閣参事官の名前が出たところです。要するに、メールのやりとりでも取り沙汰されている、そういう官邸の関係者がこの総理の勉強会に出ていた。
 安倍総理にお尋ねをいたします。
 この八月七日、第五回の毎月勤労統計の改善に関する検討会で、阿部座長は、総入れかえ方式で行うことが適当だと。それが、次の九月十六の第六回の検討会では、中間整理案として、サンプルの入れかえ方法については引き続き検討、姉崎部長は、総入れかえ方式ではなく部分入れかえ方式を検討したい、こういう発言を行っていた。その間にあったのが、この安倍総理の国会答弁の準備の勉強会だったわけです。
 メールに出てくる関係者には、九月三日の総理勉強会に出席していた総理秘書官と厚労省出身の内閣参事官の名前が取り沙汰をされております。
 官邸関係者の意向に大きく左右されていることがうかがえるという点で、毎月勤労統計の調査方式の変更について、総入れかえ方式を部分入れかえ方式に変更したことについて、官邸が深くかかわっているのではないのか、この点が厳しく問われているわけですが、総理の答弁を求めます。

○安倍内閣総理大臣 これは、九月の三日には、御党の小池議員の質問に対しての答弁でございまして、答弁検討会において、たくさんの質問に対してのこれは勉強会であったわけでございますが、ここで御指摘のような答弁をしたということは承知をしておりますが、特段これについて深くそこで勉強したわけではなくて、ただ、これはそのまま発言すればいいな、こう思っただけでございます。

○塩川委員 この勤労統計問題というのが、実質賃金の伸びの議論にかかわるものであり、また、二〇一八年一月以降のベンチマークの補正にも係る、こういった疑念とも地続きの問題であります。
 この統計法というのは、そもそも基本理念に中立性、信頼性の確保が重要だとうたわれているように、統計は国民のものであります。政府からの独立性や中立性が問われる。政府による手続の不透明さをただすというのは、国会の当然の仕事だ。
 委員長に求めます。真相究明のため、厚労省出身の元内閣参事官手計課長補佐の参考人招致を求めます。

○野田委員長 後刻、理事会にて協議いたします。