【倫理選挙特別委員会】学生ら投票権保障を/事態の解消を求める

 住民票を異動せずに1人暮らしをしている大学生らが投票できない問題について取り上げました。

 総務省が2016年に行った調査で、約6割の大学生らが住民票を「移していない」と回答していると指摘、住民票を異動せずに遠方に進学した学生の人数を質問。総務省は全国の市区町村を対象に初めて調査を行い、17年の総選挙で3462人だったと明らかにしました。

 私は、18歳以上の日本国民は選挙権を有している。住民票を異動しないことで選挙権が奪われることがあってはならない――と指摘し、対策についてただしました。

 石田真敏総務相は、選挙管理委員会と住民基本台帳担当部局との連携が図られるよう「18年に通知を出している」と述べ、「投票機会が得られるよう、通知の趣旨を周知したい」と表明しました。

 住民票の異動の周知徹底は当然だ。国政選挙で選挙権を有していても、住民票を異動していないことで権利行使できない事態を解消する必要がある。

 また、自由な立候補を制約している国際的にも高額の供託金について、石田氏は「立候補しやすくすることは重要な観点」「改めて議論するのは意味がある」と答弁しました。

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「議事録」

<第198通常国会 2018年04月02日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 2号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、選挙制度について大臣にお尋ねをいたします。
 最初に、住民票を異動していない、ひとり暮らしの学生等の選挙権の問題についてです。
 二〇一六年に選挙権年齢が十八歳に下がってからことしは三回目の国政選挙、参議院選挙が行われます。十八歳選挙権が施行されることで、選挙人名簿に記載されない事態を排除するため、旧住所で投票できるよう、法律が制定をされました。一方、住民票を異動せずひとり暮らしをしている学生などが選挙権を行使できないことが当初から問題となっていたわけであります。
 十八歳選挙権施行当時の明るい選挙推進協会、明推協の調査ですが、高校卒業後、親元を離れて進学した短大生や大学生、大学院生等で住民票を移していないと答えたのは施行前の一五年六月は六三・三%、参議院選挙の直前の一六年六月でも六二・四%でした。総務省が一六年十月に行った十八歳選挙権に関する意識調査でも五六・四%が移していないという結果でした。徐々に減っているとはいえ、過半数のひとり暮らし学生が住民票を異動しておりません。
 明るい選挙推進協会の一七年総選挙時の調査によれば、引っ越しをしたら住民票を異動させなければならないことを全体では九五・二%の人が知っていましたが、十八歳から十九歳の場合は六七・六%と、他の年代に比べて低い結果となっています。また、住民票を移してから三カ月以上住んでいなければ現在住んでいる市区町村で投票できないことを知っているかどうかという問いに対して、全体では五三・五%の人が知っていたと回答していますが、十八歳から十九歳は二〇・六%、二十歳代は二九・二%と、若年層の認知率が低いということでした。
 大臣にお尋ねをいたします。
 この春、大学などへの進学でひとり暮らしを始める学生もいます。もう高校を卒業した方たちも多いわけで、ひとり暮らしの学生などの住民票の異動をどのように促しておられるのか、お尋ねします。
    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

○石田国務大臣 住所は各人の生活の本拠をいうものであり、引っ越しをした場合には当該生活の本拠のある市町村に住民票を移していただくことが必要となるものであります。
 また、このような場合については、住民基本台帳法の規定によりまして、引っ越し前の市町村において転出届の提出を行い、引っ越し後、引っ越し先の市町村へ転入届を行うこととされております。
 進学等で市町村の区域外へ住所を移すこととなる高校生等に対しまして住民票の適切な異動について周知を行うことは重要と考えておりまして、このため、総務省といたしましては、周知用リーフレットを作成をし、選挙管理委員会を通じて高校や大学に配布するとともに、文部科学省に対して、高校における卒業時や大学等における入学時のオリエンテーション等の機会を通じ、住民票の適切な異動について周知を依頼をしているところであります。
 また、文部科学省と連携をし、作成、配布している政治や選挙等に関する高校生向けの副教材におきまして住民票の適切な異動について制度解説やQアンドAで記載し、教育現場で活用いただいているところでございます。
 引き続き、各選挙管理委員会や文部科学省等とも連携をして、住民票の適切な異動について周知に努めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 必要なリーフレットの作成ですとか、大学におきましても文科省と連携もしながらオリエンテーションの機会で周知をすると。これは、我が党の穀田議員が一六年の三月の当委員会で、大学側が新入生に新住所に住民票を異動したかどうかを確認する方策を考えてはどうかということを提案をしたという点でも、入学式やオリエンテーションの機会に周知を図っていくという点での取組を更に進めていただきたいと思います。
 それでは、住民票を異動していないひとり暮らしの学生らの投票権はどうなっているのかということで、各選管において、住民票を異動させずに遠方に進学した学生の投票を認めないケースがあります。
 総務省が全市区町村を対象に、選挙人がその市町村の住民であるかどうかを確認する居住実態調査に係る状況把握の調査を初めて行ったと聞いております。
 総務省にお尋ねしますが、二〇一七年の総選挙において居住実態調査を行った市区町村選挙管理委員会はどれだけで、うち選挙人名簿から抹消した選管はどれだけか、選挙人名簿に登録されなかった、又は抹消された者の人数はどれだけか、お答えください。

○大泉政府参考人 お答え申し上げます。
 市町村によって、居住実態調査の実施の有無あるいはその結果の取扱いが異なるとの指摘等がありましたので、平成二十九年の衆議院議員総選挙に際しまして、市町村の選挙管理委員会における居住実態調査の実施の有無、あるいは住民基本台帳部局との連携などにつきまして、対応状況を平成二十九年十二月に調査をいたしました。
 その調査の回答でございますが、その年の衆議院議員総選挙に関しまして、全国で四十団体が居住実態調査を実施しておりまして、そのうち、選挙人名簿に登録しなかった又は選挙人名簿から抹消した者は、三十団体で三千四百六十二人ありました。
    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 二〇一七年の総選挙において、住民票を異動していないという理由で登録しなかった、抹消した、そういう人が三千四百六十二人、選挙権を行使できないということになったわけであります。
 北海道の旭川市選管が、少なくとも一九九三年以降、実家から離れて市外で暮らす学生らに不在者投票はできないと誤った説明を行っていたことに対して、北海道選管が不適切だと是正を指導した件もあります。
 大臣にお尋ねしますが、国政選挙において、選挙権を有しているにもかかわらず、選挙権を行使できるかどうかが各選管の対応によってばらばらであるというのが実態です。同一の選挙でありながら、これでいいのかということも問われます。今回の参議院選挙で、このようなひとり暮らしの学生の選挙権行使を保障するため、どのような対策を講じるのか、このことについてお答えください。

○石田国務大臣 市町村によって居住実態調査の有無や結果の取扱いが異なるとの指摘がございまして、総務省において実態調査を行った点については、今選挙部長から答弁させていただいたとおりであります。
 居住実態調査を行った団体の中には、選挙管理委員会と住民基本台帳担当部局との間で十分な連携が図られておらず、その結果、住民票が残ったままいずれの団体の選挙人名簿にも登録をされずに投票の機会が得られなかった事例があったことが課題として明らかになったところであります。
 最高裁判決におきましても、選挙に関して住所は一人一カ所に限定される旨述べられていることを踏まえ、選挙管理委員会が居住実態について調査を行う場合には、同一自治体の住民基本台帳担当部局との十分な連携、調整を行うよう、平成三十年三月に通知したところでございます。
 総務省としては、この夏の参議院選挙に向けても、選挙人がいずれかの団体で投票の機会が得られるよう、平成三十年通知の趣旨を周知してまいりたいと考えております。

○塩川委員 通知の話がありましたが、登録されなかった又は抹消された者が三千四百六十二人いたことに触れて、「このことは、選挙人がいずれの選挙人名簿にも登録されなくなるおそれにつながりますが、選挙権は国民の基本的な権利であり、投票の機会が得られるようにしていくことに留意することが必要」だと指摘をしています。
 住民票異動の周知徹底は当然として、国政選挙は、一定の年齢を超えた日本国民が選挙権を有しているのであって、住民票がある市町村に長期不在であっても投票権が奪われるようなことがあってはならないわけです。
 実際、この間の法改正によって、在外投票制度や洋上投票制度など、当該市町村内に住民票があれば選挙人名簿に登録され、長期間不在であっても投票機会を保障する制度が創設をされてきたわけです。
 選挙権を保障する立場から、選挙権を有しているにもかかわらず、住民票を異動していないからといって選挙権行使が認められない事態を解消する必要がある、この点では大臣も同じ考えだと思うんですが、いかがでしょうか。

○石田国務大臣 先ほどの調査によっても、やはり、選挙管理委員会と住民基本台帳担当部局との間の十分な連携が図られていないということが大きな原因の一つだろうと考えておりますので、しっかりこの辺の解消、周知徹底を図ってまいりたいと思っております。

○塩川委員 選挙権がしっかり行使できる、そういう方向での対応ということで強く求めておきたいと思います。
 次に、供託金についてお尋ねします。
 今、統一地方選挙の前半戦が行われている最中ですが、日本国憲法は、国民主権、議会制民主主義の基本理念のもと、主権者たる国民が政治に参加する手段として選挙制度を位置づけております。また、地方自治は、選挙によって住民の意思が示されることで、住民の意思に基づき、自治体みずからの意思と責任を持って役割を果たしていくことを明記しております。憲法上の権利行使にとっても、住民の意思を議会、首長に反映した地方自治を行うためにも、選挙が重要であることは言うまでもありません。
 総務省にお尋ねしますが、二〇一七年七月に公表された総務省の地方議会・議員に関する研究会報告書では、意欲ある人間の立候補を促進する環境整備として、供託金について何と書かれているでしょうか。

○北崎政府参考人 お答えいたします。
 地方議会・議員に関する研究会は、地方議会議員をめぐる選挙のあり方について、各方面での幅広い検討に資するため、十名の有識者の方々に純粋に学術的な見地から御議論いただいたものでございます。
 この研究会の報告書では、地方議会議員としての立候補を促進する環境整備に関する議論の中で、供託金について、その制度趣旨については、悪質な立候補を抑止し、立候補について慎重な決断を促すこと、候補者の乱立を防止することとされ、合理性、必要性がある制度として運用されている。また、地方議会議員の選挙については、そうした懸念が少ないことから設けられていない。一方で、地方議会議員の選挙の現状等を見ると、市議選、県議選を通じて、供託金没収率はかなり低いことから、具体的な選挙の乱用懸念がある場合には、個々の状況に応じて適切な対策を講じるべきであり、現在の地方議会選挙の状況に照らせば、一律に供託金を課す必要性は低下しているとの指摘があった。また、注記といたしまして、供託金にかわる制度として、外国では立候補に当たり一定数の選挙人の署名を必要とする制度があるが、我が国では、少なくとも現行制度では個人立候補主義としていることや、署名数と防止効果や事務負担等の関係等を考慮して検討する必要があるとの指摘もあったと記載されているところでございます。
 有識者の方々から、それぞれの問題意識に基づき御提言をいただきましたが、地方議会の選挙制度は、地方自治制度のみならず、民主主義の根幹にかかわる問題であることから、各方面での検討に際し、参考になればと考えているところでございます。

○塩川委員 答弁で、地方議員の選挙で供託金が設けられていないとあったんですけれども、町村議会議員の選挙ということですよね。

○北崎政府参考人 お答えいたします。
 はい、町村議会議員の選挙でございます。

○塩川委員 今紹介してもらいましたように、この研究会報告では、一律に供託金を課す必要性は低下をしているという指摘がされています。
 重ねてお聞きしますけれども、一連の選挙で供託金がどうなっているのか、衆議院、参議院、知事、都道府県議、政令指定都市の市長、市議、一般市長、市議、町村長の一九五〇年公選法制定時と現在の供託金額を説明してください。

○大泉政府参考人 お答え申し上げます。
 各選挙における供託金につきまして、昭和二十五年の公職選挙法制定当時と現在とでは、制度や物価水準などに相違があるために、一概に比較はできないと思いますけれども、機械的に金額を申し上げますと、衆議院議員選挙につきましては、昭和二十五年当時、三万円でございましたが、現在は、小選挙区選挙三百万円、比例代表選挙が六百万円となっております。
 参議院議員選挙につきましては、昭和二十五年当時、やはり三万円でございましたが、現在は、選挙区選挙が三百万円、比例代表選挙が六百万円となっております。
 都道府県知事選挙につきましては、二十五年当時、これもやはり三万円でございましたが、現在は、三百万円となっております。
 都道府県議会議員選挙につきましては、昭和二十五年当時、一万円でございましたが、現在は、六十万円となっております。
 市長選挙につきましては、昭和二十五年当時、一万五千円でございましたが、現在は、指定都市の市長選挙が二百四十万、一般市の市長選挙が百万となっております。
 市議会議員選挙につきましては、昭和二十五年当時、五千円でございましたが、現在は、政令市の議会議員選挙が五十万円、一般市の議会議員選挙が三十万円となっております。
 町村長の選挙につきましては、昭和二十五年当時、供託金はございませんでしたが、現在は、五十万円。
 町村議会議員につきましては、いずれも供託金はございません。

○塩川委員 物価の違いとかの話がありましたが、物価は三百倍には別になっておりませんので、どんどんどんどん上がる一方というのが供託金でした。
 衆議院の小選挙区、参議院の選挙区、知事では三百万円、衆議院の比例、参議院の比例は名簿登載者一人当たり六百万円ということで、国際的に見て、こんなに高い供託金を取っている国はありません。OECD加盟国で見ると、供託金制度そのものがない国の方が多いわけで、主要国でいうと、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアは供託金がありません。イギリスの下院は供託金がありますが数万円で、カナダでは、二〇一七年に違憲判決があり、既に供託金を廃止をしております。
 石田大臣、世界の状況を見ても、日本の供託金は余りにも高過ぎると思うんですが、お考えはいかがでしょうか。

○石田国務大臣 金額の多寡については、これは今までずっと積み重ねてきて改正を重ねられてきたものだと思っておりますけれども、今、一方の御趣旨で、やはり、なり手不足の問題とかいろいろな議論をされている中では、改めて議論をするということも意味のあることではないかなというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、しかし、これも非常に選挙制度の根幹にかかわりますので、やはり基本的には各党各会派でしっかり御議論いただく問題だと考えております。

○塩川委員 我が国の供託金制度は、選挙公営による候補者に対する公費投入がある以上、単なる売名目的の候補者の乱立を防ぐためとして制度が継続されてきました。国際的に見て極めて高い供託金制度が事実上自由な立候補を制約する極めて非民主的なもので問題であると、我が党は抜本的見直しを一貫して求めてきたわけです。
 今回の都道府県議選、市議選から選挙運動用のビラ頒布が解禁となりましたが、町村議選のビラ頒布は禁止のままで、その理由が、供託金制度とリンクさせ、公費負担がないということでした。乱立防止のためと巨額な供託金を課し、供託金を払っていないからと候補者の選挙運動に制限を加えるというのは、これは間違っているんじゃないでしょうか。
 二〇〇八年には、自民党提出の供託金引下げ法案というのが衆議院を通過をしております。金を持っている人でなければ選挙に出られない、供託金が立候補阻害要因となっているということも見直していかなければいけないと思うんですが、大臣、改めていかがですか。

○石田国務大臣 先ほど御紹介いただいた供託金の引下げの議論については、私もたしか参加させていただいた記憶がございますけれども、いずれにいたしましても、いろいろと議論がされている中で、やはり、どなたでも立候補しやすい形にしていくというのは非常に重要な観点ではないかなと思っております。
 ただ、先ほども申し上げましたけれども、これは根幹にかかわる問題でございますので、やはり各党各会派で御議論いただくべきものと考えております。

○塩川委員 今話もありましたように、選挙制度が議会制民主主義の土台であって、国民、有権者の参政権にかかわる問題であるという点でも、全党全会派参加のもとで議論をすべき課題であり、ぜひ協議を呼びかけたいと思います。
 以上で終わります。