【「しんぶん赤旗」掲載】行政のデジタル化は何をもたらすか/塩川鉄也衆院議員に聞く(5)

「しんぶん赤旗」12月12日付・6面より

特定企業の利益重視

 ▶デジタル庁は強力な権限をもつことが想定されていますが、何が問題になるでしょうか。

 デジタル庁の創設によって、官邸直結の司令塔機能を設置し、さらに財界・特定企業の利益重視へ向かうことが、問題です。

 この間、安倍政権では、個人情報の利活用を進め、個人情報をもうけの種にした「ビッグデータ利活用」を成長戦略に掲げ、行政手続きや業務は「紙からデータへと転換」しオンライン利用の原則化、国や自治体保有の個人情報を民間企業が活用できるようにしました。

 経団連に求められるまま作り上げた官民データ活用推進基本法と相まって、行政サービスを簡素化させて、行政が保有する情報をデジタル化し、ビッグデータを活用できる大企業をもうけさせようとするものです。菅首相がいう「改革」とは、この間、官邸機能強化を最大限に活用した財界・特定企業の要求に応えた「改革」です。

権限・業務…徐々に明らか

デジクル庁の業務
▽国の情報システムを整備・管理し、関係予算は一括計上。システムの統合や一体化を行う
▽地方自治体の行政システムを統一し、全国規模でクラウトに移行
▽マイナンバー制度、カード普及の企画・立案を移管し、カードの発行や管理システム運営をしている地方公共団体情報システム機檎(J-LIS)への関与を強化
▽民間などのデジクル化を支援
▽デーク利活用を推進
▽サイバーセキュリティーの専門チームを設置し内閣サイバーセキュリティーセンクー(NISC)と連携
▽民間企業と行政機関を人材が行き来する体制を構築

 検討中のデジタル庁の権限・業務について、政府はなかなか公表しませんが、報道で徐々に明らかになってきています(表)。デジタル庁は、「強力な司令塔機能を有し、官民を問わず能力の高い人材が集まり、社会全体のデジタル化をリードする強力な組織とする」としています。平井卓也デジタル改革担当相は、デジタル庁の「民間人材の登用」を声高に述べており、デジタル庁設置の作業をしている準備室にも民間から12人採用しています。デジタル庁の体制は、500人のうち100~150人を民間から登用、事務次官級の「デジタル監」も民間から起用する方針も報道されています。

癒着排除必要 政治の転換を

 デジタル庁による国の情報システム統合によって、2025年度までに運用経費などを3割削減すると言っています。しかし、ICT(情報通信技術)化する業務が増えれば、関連予算が増加することは当然のことです。この5年間、情報システム関係予算は増加しています。各省庁のIT・情報システム予算は、今年度から順次内閣官房のIT総合戦略室(IT室)が予算査定から執行段階まで一元的に管理することになっていて、デジタル庁発足前から、すでにIT室が予算配分・執行に直接口出しできるようになっています。

デジタル庁創設に向けたデジタル改革関連法案準備室の職員に訓示を行う菅義偉首相=9月30日(首相官邸ホームページから)

 官民癒着の観点から見ると、現在IT室は、約半数の76人が民間企業の出身の非常勤職員です。政府は私の追及に対し、これらの職員が、出身企業に籍をおいたまま出向し、出身企業から給与補てんされていることについて、否定していません。このような民間企業の社員が、非常勤の国家公務員として、直接、政府のデジタル政策策定に関与し、しかも、予算配分にまで関わるようになっているのです。一部の大企業は「IT特需」にわき、国民には負担がのしかかり続けるということです。

 強力な権限と予算をもつデジタル庁になれば、さらに、官民癒着がいっそう問われることになります。官民癒着を排除し、このような政治を転換する必要があります。(おわり)