【内閣委員会】コロナ急拡大/医療者/賃下げに直面/国は減収補てんを

 新型コロナウイルス感染急拡大のもとで、医療従事者のボーナス引き下げを放置する政府の姿勢を批判し、「国の責任で医療機関の減収補てんを」と求めました。

 医療機関や高齢者福祉施設でのクラスター増加(資料参照)に伴い、医療機関・医療従事者の負担も増大しています。私は、政府の認識を問いました。

 西村康稔担当大臣は「重症化する患者が増えており、医療機関の負荷が重くなっている」と答えました。

 私は、日本医労連の調査で、医療従事者の冬のボーナスは約43%の組合でマイナスとなっており、下げ幅が最も大きい東京都内の施設では、約35万円減となっている実態を示し「コロナ対応に全力を尽くしている医療従事者の待遇悪化はあってはならないことだ」と追及。

 西村大臣が「医療機関には約3兆円の緊急包括支援交付金を計上している」と答えたのに対し、私は、実際にボーナスカットは行われている。今のやり方では対応できないということだと強調しました。

 問題の根底は病院がぎりぎりの経営を強いられていることだと指摘。3病院団体が行っている病院経営定期調査では、経常利益率が2017年度0.0%、2018年度は0.1%であり、他の産業(製造業は18年度で6.6%、非製造業で5.0%「法人企業統計調査」)と比較しても利益率が低い。医療機関の経営危機は、国が診療報酬で医療機関にぎりぎりの経営を強いてきたためだ、と強調。

 医療従事者の過酷な労働実態と賃下げ等の待遇悪化が離職の契機になり、コロナ対策そのものを後退させることになると指摘し、国民の命と健康がかかった深刻な事態だからこそ、国が責任をもって減収補てんを行えと主張しました。

 西村大臣は「緊急包括支援交付金等を計上している」との答弁を繰り返しました。

 私は、最後に、医療体制が深刻な危機にある今こそGoToトラベルを即時中止し、観光・飲食業への直接支援策を行うよう求めました。

全国のクラスター発生の件数(クリックで拡大)
医療機関と高齢者福祉施設におけるクラスター発生の累計件数(クリックで拡大)

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「議事録」

<第203臨時国会 2020年12月16日 内閣委員会 7号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、コロナ対策、特に医療機関への財政支援、そして、GoToトラベル事業について質問をいたします。
 十二月十日の厚労省のアドバイザリーボードにおきましては、新規感染者数は、過去最多の水準が続いており、引き続き最大限の警戒が必要な状況。今般の感染拡大では、新規感染者の規模が大きく、高齢者の絶対数も多くなっている。これに伴い、入院者数、重症者数の増加が続いており、医療提供体制及び公衆衛生体制の負荷が増大をしているということであります。
 そういう中で、医療機関や高齢者福祉施設におけるクラスターが増加をしている、こういう状況にあるのではないかと思いますが、この点について厚生労働省に確認をいたします。
○佐原政府参考人 お答えいたします。
 厚生労働省では、自治体のプレスリリースなどをもとに、同一の場で二名以上の感染者が出たと報道されている事案の件数を集計しております。昨日火曜日時点の累計の件数三千四十四件となっております。このうち、医療機関は四百九十三件、高齢者福祉施設は四百二十六件というふうになっております。
 以上でございます。
○塩川委員 資料をお配りさせていただきました。
 二枚ありますけれども、一枚目が、全国のクラスター発生の件数を月別に取り上げているものであります。第一波の四月の時点で二百二十件、これが、第二波の八月を取り出しますと五百二十三件、そこから余り落ちずに、十一月をとりましても七百六十七件という形で、大きくクラスターが増加をしております。
 二枚目が、高齢者福祉施設そして医療機関におけるクラスター発生の累計の件数ですけれども、こういうふうに区分分けをしてデータをとり始めているのが九月以降ということですので、九月以降の数字になっていますけれども、ごらんいただいてわかりますように、大きく増加をし、さらに今、その頻度が増しているということが、こういうところにも見てもらえると思います。こういう現場の状況がある。
 埼玉医大でコロナ対策を担当しておられる岡秀昭教授は、第三波では家庭内や福祉施設の感染が広まり、重症の高齢者がふえている、そこが第一波、第二波と違うと述べておられます。
 高齢者、基礎疾患のある患者は、軽症で入院しても、中等症、重症へと悪化することがあります。介護施設から入院した患者の場合には、介護職員の行っていた仕事を看護師が行うようになります。一般のコロナ患者に比べて三倍の負荷がかかると言われております。
 高齢者、基礎疾患のある患者がふえる中で、患者の重症化が進み、医療機関、医療従事者の負担が増しているという状況にあると思いますが、西村大臣、このような医療機関、医療従事者の負担が増しているという実態についてどのように受けとめておられますか。
○西村国務大臣 御指摘のように、感染者の数が、新規陽性者の数が非常に高い水準で続いてきております。当然、入院される方、そして重症化される方もおくれて増加されてきますので、そうした中で、今、医療提供体制、医療現場への負荷が、負担が大変重いものになってきているという認識を持っております。幾つかの地域では病床も逼迫をしてきているわけでありまして、医療現場の支援、医療提供体制への支援に全力を挙げているところであります。
 まさに、専門家の皆さんと、そして都道府県知事と、こうした強い危機感を共有しながら対応してきているところであります。
 現場で医療に当たっている医療従事者の皆さん方に、改めて感謝申し上げたいと思います。
 その上で、こうしたことに応えていくために、これまでも、診療報酬の大幅な増額であるとか、あるいは空床確保への単価の引上げであるとか、また、清掃などの業務を民間事業者に委託する、これは看護師さんたちの皆さんの負担を軽減することにつながるわけですけれども、こういったことを補助するなど、医療従事者の負担軽減を行っているところでありますけれども、さらに、厚労省から医師や保健師の派遣、あるいは都道府県から看護師さんの派遣、自衛隊から医療チームの派遣など、医療現場の支援に全力を挙げているところでございます。
○塩川委員 医療現場の負荷が重くなっているというお話であります。
 コロナ対応のフル装備を現場でしますと、長時間作業は耐えがたいものになる。ある病院では、そういったフル装備での作業そのものは十五分以内にとどめたいということでの努力をしているんだけれども、実際には、午前中に入ったらお昼まではそういう作業が続かざるを得なくなるような、そういう大きな負担がある中での仕事に従事しておられるということで、訓練されていない方も、現場、最前線の仕事に従事せざるを得なくなっている、リハビリのスタッフの方にも感染の懸念も広がっている。こういう大きな負担感のある中での仕事をしておられるのが、医療機関の現場の実態だと思います。
 こういった仕事に従事しておられる医療従事者に対して、ボーナスが引き下げられているという問題が出ております。
 ことしの夏のボーナスについても、三病院団体の調査で、四分の一を超える病院が減額支給せざるを得なくなったということでした。
 冬のボーナスに関する日本医労連の調査では、加盟労働組合のうち、昨年実績と比較可能な三百九十六組合のうち、約四三%に当たる百七十組合でマイナスだったということであります。中でも、そのうちの三十三組合は組合員平均で十万円を超える大幅減額を提示されて、下げ幅が最も大きい東京都内の施設では約三十五万円の減となったということです。
 大臣、お尋ねしますけれども、コロナ対応で本当に全力で頑張っておられる医療従事者のボーナスが下がるようなことなど、あってはならないことだと思いますが、大臣はどのように受けとめておられますか。
○西村国務大臣 改めて、医療現場の皆様が本当に感染リスクを抱えながら最前線で対応していただいていること、敬意を表したいというふうに思います。そうした献身的な活動にしっかりと報いていかなければならないというふうに考えております。
 御指摘のように、四病院団体の協議会の調査では、この冬季の賞与について、減額支給を予定している病院が約二三%程度あるという結果が出ているものと承知をしております。
 政府としては、これまで包括支援交付金など約三兆円を医療機関への措置としてきたところでありますけれども、残念ながら、実際に届いているのはまだ〇・八兆円程度というふうに聞いております。都道府県においても、それぞれの議会の手続は終わっていると承知しておりますが、さらに、この執行事務を行う都道府県に対して厚労省から、この迅速化について、早期執行について要請をしているものというふうに聞いております。
 まずは、こういった支援が医療現場の皆様方にしっかりと届くことが大事でありますので、引き続き、私の立場からもお願いをしていきたいというふうに思います。
 また、独立行政法人の福祉医療機構、いわゆるWAMでありますけれども、無利子無担保などの融資の枠を拡充してきております。こうしたものも活用いただければというふうに思いますし、医療機関の皆様にはどういった支援策があるのかというコールセンターを十二月四日から、総合的な相談を受け付けるということで設置をしております。そうした相談を今受け付けているところであります。
 あわせて、今般の総合経済対策におきまして、緊急包括支援交付金の増額を約一・二兆円、三次補正において積み増しをすることとしておりますし、また、医師や看護師などを重点医療機関に派遣する場合の支援額を倍増するという措置も講ずることとしたところであります。
 いずれにしましても、私の立場からも、厚労省そして都道府県と緊密に連携をして、一刻も早く医療機関に支援が届けられるよう支援をしてまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 いろいろな支援を行っている、これからも三次補正などで対応するということなんですけれども、現にこの十二月のボーナスがカットされているんですよ。これに対して、今からでも、穴埋めをする、それができるんだ、そういう支援になっているということですか。
○西村国務大臣 本当に残念、まだ届いていないということで残念なことではあるんですけれども、約三兆円の手当てを、医療機関への措置を計上してきているところでありますので、これが実際に届いているのがまだ〇・八兆円ということでありますから、これをまず届けることが何より大事だというふうに考えております。
 厚労省、都道府県と連携をして、迅速に届けられるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 いや、ですから、今のボーナスカットの問題をどうするんですか。現場で働いている皆さんは、何よりももう精神的につらい、加えて、肉体的、身体的にもつらい。その上に、そういう環境の中で奮闘しておりながら、こういった、待遇が悪化をするということはどういうことなんだと。献身的に頑張っておられる医療従事者のそういう思いに逆らうようなことが現場で起こっていることに対して、少なくともボーナスカット分については穴埋めをします、政府の今のこの支援策でできますとはっきり言ってもらえませんか。
○西村国務大臣 繰り返しになりますけれども、医療機関への支援、約三兆円を計上してきております。これを一刻も早く届けることが大事だというふうに考えておりますし、その間の資金繰りについては、先ほど申し上げた無利子無担保の融資の仕組みもあります。そして、相談窓口もつくっておりますので、医療機関からの相談も受けながら、また、厚労省、都道府県と緊密に連携をとりながら、まずは資金を届けて、そして、それぞれの皆さんの処遇の改善につながるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 医師、看護師派遣についての支援額を倍増するというのは入れた、これはこれで必要な手だてかもしれません。しかし、そういう形で個別に対策もとるのであれば、ボーナスカット分について穴埋めをします、この例えば包括支援交付金などを使ってそれができますということを現場に伝えるということが何でできないんですか。そういう措置を行う必要があるんじゃないですか。
○西村国務大臣 繰り返しになりますけれども、こうした資金を活用して医療機関への支援を行っていく、そうした中で、当然、現場で本当に献身的に働いておられる皆さん方の処遇改善にもつなげてまいりたいというふうに考えているところであります。
○塩川委員 それではやはり現場のボーナスカットの問題に対応できない。
 北海道の医労連の緊急アンケートでも、こういう精神的な負担を感じるという回答が七三・四%あったということです。冬のボーナスも三十五施設中十六施設で減額で、昨年比では四万六千円下がった。看護師の使命感だけに頼るというのはもう限界だ、医療現場には赤信号がともっていると訴えておられます。
 このように、医療従事者の過酷な労働実態と賃下げなどの待遇悪化というのは、労働意欲を減退をさせ、離職の契機にもなり得る、コロナ対策そのものを後退させることになる。今からでも、こういうボーナスカット分を穴埋めするような支援策を行うべきだ。同時に、なぜ医療機関がこういう、ボーナスカットなどを行うというところは、病院、医療機関経営全体の減収が大変大きいという問題があるわけです。
 二千五百の病院が加盟する国内最大の病院団体である日本病院会の相澤孝夫会長は、コロナ禍以降、全国の状況はボクシングでいえばノックアウト寸前の状態が続いています、コロナ禍以前から病院の経営は極めて厳しかった、一八年度、一九年度、二期連続で赤字となった病院は四分の一を占める、医療機関の倒産はここ十年で最多となった、追い打ちをかけるようにコロナというパンチが飛んできたんですと。
 このように、医療機関の減収補填をしっかり行う、このことこそ必要じゃないですか。大臣、いかがですか。
○西村国務大臣 これまでも御説明申し上げてきていますけれども、約三兆円を包括支援交付金などにおきまして措置をしてきております。そのほかに、診療報酬の特例的な措置ということで、集中治療室におけるその評価、それから、中等症以上の患者における評価五倍などしてきているところであります。
 さらに、先般、三次補正におきまして、小児科等への支援、それから、新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援に係る診療報酬上の特例的な対応、こうしたものも含めて、緊急支援交付金を約一兆二千億円の積み増し、これを図ることとしております、閣議決定したところであります。こうしたものも活用していただきながら、厳しい状況にある医療機関の経営をしっかりと支援をしてまいりたい。私の立場からも、厚労省、都道府県と連携して対応してまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 コロナ対応のいろいろな細目についての積み上げ的な費用、これはこれで必要なところはあるでしょう。しかし、今の受診抑制などを含めて医療機関全体が大幅な減収となっているということが、地域医療を支えるそういう医療機関の経営を困難にしていく、医療従事者の皆さんのこういった労働条件を悪化させることになる、これを改めるとしたら、減収そのものにしっかりと補填するということが必要だ。
 そもそも、産業別に見ましても、製造業での経常利益率は大体六・六%、非製造業は五・〇%です。しかし、医療機関の経営というのは、病院経営の定期調査を見ると、三病院団体の調査では、経常利益率、二〇一七年度は〇・〇%、二〇一八年は〇・一%なんですよ。ここに国の制度として診療報酬のように公定価格が定められていて、ぎりぎりの経営が強いられている状況があります。慢性的な経営危機にあるというのが医療機関であって、非営利なので大もうけをすることはないけれども、赤字には少なくともしないという仕組みであるはずだったのではないのか。
 そういったときに、コロナの異常事態ですから、こういう異例の事態に備えて、国が責任を持った財政措置こそ必要であって、減収補填をしっかり行うことが日本の医療体制を支える、コロナ体制に万全を期す、その上で必要なことではありませんか。
○西村国務大臣 繰り返しになりますけれども、これまでも約三兆円の医療機関への支援を措置してきたところであります。
 その上で、診療報酬などでも特例的な対応で、集中治療室については三倍増であるとか、中等症以上の患者さんについて五倍増であるとか、そしてまた、影響を受けている科目として小児科等への支援、さらには転院支援に係るまた特例、こういったものも含めて、今回、約一兆二千億の交付金の積み増しを行うこととしているところであります。
 コロナの影響によって診療体制を弱体化させることなく地域の医療機関が診療を継続していくため、これが重要であります、御指摘のとおりであります。まさに、医療提供体制の確保に万全を期すという観点から、こうした支援をしっかりと実行していきたいというふうに考えております。
○塩川委員 答えておりません。医療従事者をしっかり支える上でも、医療機関は絶対に潰さない、こういうことをしっかりと伝えられるような支援策を行う、そういう減収補填こそ行えということを強く求めておきます。
 こんなときにGoToトラベルをまだ続けるのかという問題であります。
 二十八日から一月十一日まで全国一斉に一時停止ということですけれども、危機的事態の今こそ、今から全国一斉停止すべきではありませんか。
○西村国務大臣 分科会からの提言をいただいております。これは、ステージ3相当の対策が必要となる地域について一時停止を行うということ、あわせて、年末年始、静かな年末年始を過ごすようにというこうした提言をいただいております。
 まず、最初の方の提言を受けて、私ども、大阪市、札幌市、そして今回、名古屋市、東京都について一時停止などの措置を対応したところであります。感染が拡大している地域との行き来を奨励することはないようにということで一時停止しているわけであります。
 その上で、静かな年末年始を過ごすべき、こういう御提言を踏まえて、年末年始の時期はお店も企業も休みになるところが多いですから、接触機会を削減する、これは有効なタイミングであるということで、年末年始について、GoToトラベルについては全国一斉に停止をするという、いわば予防的なことも含めてそうした対応を決めさせていただいたところであります。
○塩川委員 菅総理は、年末年始にかけてこれ以上の感染拡大を食いとめる、医療機関などの負担を軽減するため、最大限の対策を講じるというふうに、医療機関の負担軽減と言っているのであれば、まさに年末年始に深刻な逼迫状況を生み出さないように、今からGoToトラベルを一時停止するというのが行うべき仕事なんじゃないでしょうか。改めて。
○西村国務大臣 医療が逼迫している状況も含めて、この四つの地域について、かなり厳しい状況になっているということでありますので、この四つの地域について、GoToトラベルについては一時停止などの措置を講じているところであります。そしてあわせて、いわゆる時間短縮の要請も、それぞれの地域で、かなり長い期間にわたって、これは本当に飲食店の皆さんには大変厳しい状況になると思いますけれども、そうした皆さんにも支援をしっかりと行いながら、これにぜひ応えていただいて、何とか、もう既にそうした対応はとられていますので、年末に向けて感染拡大を抑制していけるように、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。
○塩川委員 GoToトラベルは直ちに停止をする、観光業、飲食業への直接の支援策をしっかりと行え、このことを求めて、質問を終わります。