【内閣委員会】罰則導入の特措法改正案/国民への責任転嫁、正当な補償こそ

「しんぶん赤旗」2月2日付・3面より

 新型コロナウイルス対応の特別措置法、感染症法等改定案の審議が1日、衆院の内閣委員会、同委と厚生労働委員会との連合審査で行われ、日本共産党の塩川鉄也議員が罰則導入に反対し、「正当な補償」を行うよう求めました。

塩川議員 国民に責任転嫁 正当な補償を

 「新型コロナの感染防止に必要なのは、罰則ではなく正当な補償だ」。塩川氏は、コロナの特措法への罰則の導入は、不利益を被る国民の側を「犯罪者」扱いするもので、結局、国民に責任を転嫁し、国が行うべき補償を免れようとするものだと厳しく批判。西村康稔経済再生担当相が現行特措法で営業の自粛等に対する補償がない理由について、昨年4月、罰則を伴う強制力がないこととのバランスだと答弁していたことを指摘。「公的補償を規定しない根拠は崩れている」として国の姿勢をただしました。

 塩川 罰則を導入したのに補償措置は行わなかった。答弁と齟齬(そご)があるのではないか。

 担当相 公共の福祉のためにする一般的な制限であれば受忍すべきであり、損失補償を要件としないと整理されている。

 塩川氏は、罰則導入ではなく、事業規模に応じた補償等「正当な補償」を明記する法改定をしてこそ、感染症対策への協力は進むと主張。2012年の特措法審議の際、参院付帯決議に「権利利益の救済に関する制度」の検討条項があったと指摘し、「救済制度の検討もせず、罰則だけを押し付けるのは認められない」と強調しました。

 さらに塩川氏は、宣言前の「まん延防止等重点措置」でも私権制限や罰則があるにもかかわらず、国会報告の義務すらない問題を追及しました。

 担当相 私権制約の程度が小さいこと、機動的に行うことから、国会報告は必要ないとした。

 塩川 重点措置の前段階である(新型コロナの)政府対策本部の設置は国会報告を義務づけているのに、罰則を定める重点措置は権利制限が小さいから必要ないという理屈は成り立たない。

 塩川氏は、重点措置は都道府県知事が定める事業者への要請事項も、対象業態も政令で定めるなど「非常にあいまいだ」として、「国会の関与を認めず、国民に罰則を押し付ける恣意(しい)的な運用が懸念される」と批判しました。


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「議事録」

<第204通常国会 2021年2月1日 内閣委員会 2号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 午後、連合審査もあります。私の方は、新型インフル特措法を中心に質問をいたします。
 最初に、補償の問題について西村大臣にお尋ねをいたします。
 昨年四月の決算分科会で、私が、感染症対策の実効性を上げるために、自粛を求める事業者に対し補償を行うことが有効ではないかと質問した際に、西村大臣は、特措法は、要請と指示、公表までで、罰則を伴う強制力はない、その全体のバランスの中で補償措置も書かれていないと述べました。
 今回の法改正で、罰則を導入したのに補償措置を行わなかった。このときの答弁とそごがあるのではありませんか。
○西村国務大臣 その後、私ども、実効性を上げていくために、今回の蔓延防止等重点措置などを含めて、命令、罰則という規定を書き込んで提出をさせていただいたところであります。
 その上で、この補償の事柄についても、憲法との関係、法制局での審査なども議論を重ねまして、その上で、今回、新たに過料の適用があることとなっても、基本的に憲法二十九条三項の損失補償の対象とはならないという整理をさせていただいております。基本的には、この法律制定時の考え方が基本的に当てはまるというふうに整理をさせていただいているところでございます。
○塩川委員 特措法の逐条解説に、第四十五条第二項に基づく施設の使用制限等による施設管理者等に対する公的な補償は規定されていないと。その説明書きの中に、その期間は一時的なものであること、学校、興行場等の使用制限の指示を受けた者は法的義務を負うが、罰則による担保等によって強制的に使用を中止させるものではないこととあります。
 期間の一時的というのは、あの当時の議論は二週間程度という想定でしたけれども、現実には一か月、二か月という状況に今なっております。これらを見ても、公的な補償を規定しない根拠が崩れているにもかかわらず補償を規定しないという点が厳しく問われるわけであります。
 特措法における罰則の導入というのは、感染症対策によって営業が困難になる、仕事を失う、収入が落ち込むなど、不利益を被る国民の側を犯罪者扱いするものではないのか。結局これは、国民に責任を転嫁をし、国が行うべき補償を免れようとする、そういうものになるのではありませんか。
○西村国務大臣 法制定時の議論、それから憲法二十九条、判例もございますので、そういったものも整理した上で、今回の改正法においても補償という考え方は取らないこととしております。
 そこの整理は、通常、特別の犠牲として損失を補償しなければならない場合として、特定の個人に対する財産権の侵害であって、社会的制約として受忍すべき限度を超えていると考えられることがその損失補償をしなければならない場合ということであります。
 そして、判例上も、この種の制限、これは河川法の、河川付近地制限令事件というものであります、昭和四十三年の事例でありますけれども、この種の制限は、公共の福祉のためにする一般的な制限であり、何人もこれを受忍すべきものである、特別に財産上の犠牲を強いるものとは言えないから、損失補償を要件とするものではなくとされていまして、公共の福祉のためにする一般的な制限であれば受忍すべきものであり、損失補償を要件としないというふうに整理をされております。そして、御指摘のように、法制定時の議論も含めまして、今回、その対象とはしないということで整理をさせていただいております。
 そうした中で、国民の皆様、事業者の皆様にも御協力をいただいて感染を抑えていく、まさに国民の命を守るために、公共の福祉のためにそれをお願いをしているわけでございます。是非御理解をいただいて、対応していただければと思いますし、他方、今回、この影響を受けた事業者を支援するための必要な措置を講ずる義務を明記をさせていただいておりますので、そうした事業者への影響を緩和していくためにもしっかりと支援を行っていきたいというふうに考えております。
○塩川委員 二〇一二年の新型インフル特措法の審議における参議院の附帯決議では、新型インフルエンザ等対策に係る不服申立て又は訴訟その他国民の権利利益の救済に関する制度に関する検討条項が規定されていました。昨年三月、私の質問の際に西村大臣は、行政不服審査法で対応するとなったと答弁されましたが、今回の新型感染症の終息後には、改めてその課題についても検討を行いたいとも述べておりました。それなのに、権利利益の救済に関する制度の検討もないまま、罰則だけを押しつけるような法改正は認められません。コロナの感染防止に必要なのは罰則の導入ではない、正当な補償を明記する法改正だと述べておきます。
 その上で、時短などの営業規制に応じてもらうためにも、事業規模に応じた補償を規定することで、関連業者、労働者、国民の暮らしと営業を守るべきではないかと考えますが、この点についてお答えください。
○西村国務大臣 まさに、事業者の皆さんに御理解をいただいて、要請に応じていただけるよう、その影響の度合いなども勘案しながら支援策を行っていきたいと考えておりますが、今回、協力金も月額換算最大百八十万円まで、そしてこれも、大企業であっても店舗ごとに出しますので、ある意味、規模に応じた支援となっておりますし、それから、雇用調整助成金につきましても、パート、アルバイトの方も含めて一人月額最大三十三万円まで、大企業も含めて一〇〇%国が支援をするということにもしておりますので、そういったことを考えれば、従業員の方が多い企業はこれでかなりの部分をカバーできるということであります。
 こうした支援策をしっかり講じることによって、御理解をいただいて、要請に応じていただければ、それによって感染拡大を抑えていく、こういった取組ができればというふうに考えているところでございます。
○塩川委員 家賃などは固定費が非常に大きいという事業者の方もいるわけですから、こういった事業規模に応じた補償をしっかりと行うということで、感染症対策に協力をしっかりと求められる、その環境を整えるために政治が力を発揮をするということを申し上げておきます。
 次に、蔓延防止等重点措置に関してですけれども、最初に国会の関与の問題についてです。
 この特措法上、政府対策本部の設置及び緊急事態宣言の発出に当たっては、いずれも国会への報告が義務づけられております。
 私権制限や罰則を伴う措置を可能とする蔓延防止等重点措置において国会報告を義務づけないというのはなぜなんでしょうか。
○西村国務大臣 蔓延防止等重点措置は、緊急事態宣言とは違いまして、緊急事態宣言の場合は、全国の市町村に対策本部を立ち上げ、全国の多くの皆さんに、それぞれの地域の状況に応じた感染対策、そして幅広くいろいろな自粛なども行っていただくことになりますので、私権制約の程度は極めて大きいということでございます。
 他方、この蔓延防止等重点措置においては、地域を限定をし、また業種も絞り行っていく、その範囲で感染拡大を抑えていく、いわば機動的に対応することによってその効果を上げていくというふうに考えております。
 私権制約の程度が小さいこと、そして機動的に行うこと、こういったことから国会報告は必要ないとしたところでありますが、しかし、この実施に当たっては専門家の意見を聞いて、対応する期間、区域の指定変更に当たっては専門家の意見を聞くこととしておりますし、また、実際に命令を行ったりすること、これは都道府県知事の権限ですけれども、その判断に当たっては学識経験者の意見を聞かなきゃならないということで、恣意的な運用はされない仕組みとしておりますが、与野党で様々な議論も行われておりますので、それに従いまして、公示をしたときには速やかに国会に報告をするという対応をしていきたいというふうに考えているところでございます。
○塩川委員 第二十四条第九項に基づく要請よりも強い権利制限、そして罰則を新たに科すのが蔓延防止等重点措置であります。
 この第二十四条第九項に基づく要請というのは、政府対策本部の設置で都道府県対策本部ができて、都道府県知事がその要請を行うというわけなんですよ。そのスタートとなる政府対策本部の設置には国会への報告を義務づけているんです。
 緊急事態措置の関係ではなくて政府対策本部の設置のときに国会報告を義務づけているのに、いや、権利制限が小さいからという理屈は成り立たないんですけれども、どういうことなんですか。
○西村国務大臣 繰り返しになりますけれども、権利制限をかなり限定的に行う、これは具体的な措置も、営業時間の短縮よりも程度が小さいものを考えておりますし、また、繰り返しになりますが、機動的に対応することによってその地域において感染を抑え込むという観点から、このような対応を取らせていただこうと考えているところでございます。
○塩川委員 いや、答えていないですけれども、蔓延防止等重点措置における権利制限、罰則の前、それよりも弱い段階の第二十四条第九項の要請ができる、そのスタートとなる政府対策本部の設置のときに国会への報告を義務づけているのに、何で重点措置のときにはやらないんですか。
○奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
 現行でございますけれども、政府行動計画を作るときに国会に対する御報告ということで書いてございます。
 この趣旨でございますけれども、政府行動計画というのは、内閣が処理する国の行政全体に……(塩川委員「行動計画じゃなくて、政府対策本部の設置」と呼ぶ)はい。
 趣旨といたしまして、新型インフルエンザ等が発生した場合に、立法府を含めて国全体で対策を講じる必要があるということから、この段階から国会に報告するというふうに理解してございます。
○塩川委員 大臣、答えてください。
○西村国務大臣 十五条の第二項で、政府対策本部を置いたときは、その名称、設置の場所及び期間を国会に報告するということになっております。
 これは、政府対策本部の設置がまさに新型インフルエンザ対策の重要事項であるということで、十四条一項、これはコロナの場合、読み替えておりますけれども、こういった事態が発生したと認めることを公表し、本部が開かれることになっておりますので、まさに、この設置によって国民全体にこうした状況にあることを知っていただくことも含めて、国会に報告するとされているところであります。
 ただ、御指摘のように、これによって何か権利制限を求めるものではありませんから、国会承認の対象とはしていないということでございます。
○塩川委員 権利制限を伴うような、罰則を新たに導入するようなスキームのときに、国会の関与もここに書き込まない、法定をしないと。そういう点での、恣意的な運用との懸念の問題というのは拭えないということを申し上げておきます。
 次に、基本的対処方針のことなんですが、政府対策本部が設置をされると、政府対策本部は政府行動計画に基づき基本的対処方針を定めることになっております。コロナ対策実施の準拠となるべき統一的指針が基本的対処方針であり、自治体も基本的対処方針に基づき対策を実施をします。
 新たに創設される蔓延防止等重点措置の実施の際に、基本的対処方針の改定を、法定をしないんですか。
○西村国務大臣 今回、審議を経て法改正がなされた場合には、新たに蔓延防止等重点措置が入りますので、当然、基本的対処方針の中にその運用などについてしっかりと明示をしたいというふうに考えております。
○塩川委員 政府対策本部を設置をする際には、政府対策本部は基本的対処方針を定めるというのが法定されています。ですから、法定しないのかということなんですが。
○西村国務大臣 法律の三十一の四の第五項におきましても、この公示をしたときには基本的対処方針を変更するということを明記をいたしておりますので、当然、そもそも運用のことも法律が制定されたときにしっかりと書きたいと思いますし、さらに、具体的に公示をしたときには基本的対処方針を変更するということになります。
○塩川委員 もう一回、三十一条の四。
○木原委員長 正確に御答弁お願いします。
○奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
 この改正法案の三十一条の四の第五項におきまして、政府対策本部長は、蔓延防止等重点措置の公示をしたとき、これについては基本的対処方針を変更しなきゃならないというふうに規定されてございます。
○塩川委員 基本的対処方針というのは、まさに政府全体の統一的な指針となります。それが去年、四月、五月の緊急事態宣言が解除されて以降、七か月以上も放置をされていたという点でも、この基本的対処方針をしっかりと受け止める、こういった対応というのが求められているということを申し上げなければなりません。そういう点でも国や自治体による恣意的な運用の懸念が拭えないということを申し上げておきます。
 それと、蔓延防止等重点措置の区域に係る都道府県知事は、感染の状況等を考慮して都道府県知事が定める期間及び区域について、感染の状況について政令で定める事項を勘案して措置を講ずる必要があると認める業態に属する事業を行う者に対し、営業時間の変更等の措置を要請することができるとありますが、この蔓延防止等重点措置実施に当たって、都道府県知事が定めるという期間、区域、業態はどのように定めるんでしょうか。
○奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
 例えば業態につきましては、政令で、今後どういう、業態を定めるに当たって考慮すべき事項かというのを検討することになってございます。
 都道府県知事につきましては、区域それから期間、こういうものにつきまして、感染の状況それから医療提供体制等を踏まえまして、具体的には、これは恐らく基本的対処方針に今後考え方を書き込んでいくものと思いますけれども、その辺りを分かりやすく周知してまいりたいと思っています。
○塩川委員 業態を政令で書くということですけれども、どんな書きぶりになるんでしょうか。
○奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
 政令の内容は現在検討中でございますけれども、当該業態における感染の発生の状況、例えばクラスター発生の状況等を中心に規定する予定でございます。
○塩川委員 これは、現行の緊急事態措置の、政令の第十一条に使用の制限等の要請の対象となる施設というのがあるわけですけれども、これに準じるような、そういう業種、業態ごとを書き出していく、そういう形になるんですか。
○奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
 現行の施行令十一条、緊急事態措置の発動要件でございますけれども、この政令とはまた別でございますので、具体的な業態というのは、これは業種より少し狭い概念を想定してございますけれども、その業態でどの程度の発生があったかとかクラスターがあったのかということで考えてございます。
○塩川委員 事業者への要請事項も政令であり、さらに、今言った業態も政令ということで、そういう点では非常に曖昧なままであります。
 国会の関与を認めずに国民に罰則を押しつける、こういった恣意的な運用が懸念をされる。こういったやり方は認められないということを申し上げて、質問を終わります。