【内閣委員会】デジタル関連法案/自治体独自の施策を抑制/地方自治侵害の危険

 デジタル関連5法案が実質審議入り。法案が住民自治を侵害する危険性をただしました。

 基本法案では、国と自治体の「情報システムの共同化・集約の推進」を掲げ、国が整備する全国規模のクラウドシステム(インターネットを利用して情報やサービスを共有する仕組み)を自治体に使わせようとしています。

 私は、平井卓也デジタル改革担当相が同日の答弁で、法案では自治体に対し情報システムの共同化・集約を義務づけているとの考えを示したことについて追及。

 平井氏は「システムは(自治体の)政策判断を制約するものではない」などと述べました。

 私は、システムの制度設計も不明確なのに自治体には義務だけがかかり、自治体独自の事業に差しさわりが起こりうる規定だと指摘。地方自治の侵害になると批判。

 クラウド等のシステムでは国保料の減免や子ども医療費の無料化など自治体独自の施策が実施できるのかとただしました。

 対応が可能かのように述べる平井氏に対し、現に複数の自治体が共同で使っているクラウドの利用によって、行政の仕事内容をシステムに合わせている事例(富山県上市町)や、カスタマイズ(仕様変更)するより簡素化で業務を減らすことが大事と答えた市長の例(滋賀県湖南市)をあげ、当局が個別の住民要求に応えた施策のカスタマイズを受け入れない事例が全国各地にあると強調しました。

 私は、政府が「カスタマイズを無くすことが重要」とした方針を閣議決定し、カスタマイズを抑えた自治体に助成金を出す仕組みまでつくっていることをあげ、国が住民要求に応えたカスタマイズを抑制する旗を振っていることが問題だと批判しました。


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「議事録」

<第204通常国会 2021年3月12日 内閣委員会 8号>

○塩川委員 それでは、法案の内容でお聞きします。
 一月の施政方針演説で、菅総理は、今後五年間で自治体のシステムも統一、標準化を進めると述べておりました。ここで言う標準化というのは何なのかについて説明をしてもらえますか。
○時澤政府参考人 お答えいたします。
 標準化につきまして、これは、地方公共団体が各団体で共通した事務を行っている場合に、機能等について統一的な基準に適合した地方公共団体情報システムを利用することなどを指すものということでございます。
 現在、国会に提出させていただいております地方公共団体情報システムの標準化に関する法律におきましても、地方公共団体情報システムの標準化とは、「地方公共団体情報システムに必要とされる機能等についての統一的な基準に適合した地方公共団体情報システムを地方公共団体が利用すること」と規定をしているところでございます。
○塩川委員 標準化法で規定をしているということですが、統一というのは何でしょうか。
○時澤政府参考人 統一とは、地方公共団体の情報システムに必要とされる機能等のうち共通的に利用できるものを地方公共団体が利用することを指すものでございます。
 例えば、地方公共団体がシステムを共通のクラウド基盤に構築することによりまして共通のハードウェアやOS等を利用することなどを指して統一としているところでございます。
○塩川委員 この統一という文言は基本法案にはないんですけれども、なぜ法文で規定していないんでしょうか。
○時澤政府参考人 標準化につきましては、先ほど申し上げましたように、総務省が提出している法律で規定をしています。
 統一というのは法律上使っている言葉ではありませんで、私どもが標準化に合わせてクラウド基盤にシステムを載せまして、それを使っていただくということを指して統一、標準化というふうに使っているものでございます。
○塩川委員 基本法にある情報システムの共同化、集約との違い、異同があれば教えてほしいんですが。
○時澤政府参考人 「共同化又は集約」というのは使っております。これは、標準化とは違いまして、一部に異なる事務を行っております府省間、あるいは府省と地方公共団体間、都道府県と市町村間において同一のシステムを利用することを意味するものというふうに考えております。
 例えば、府省間で政府共通プラットフォームを利用すること、都道府県と市町村間で自治体情報セキュリティクラウドを構築するなどを指しまして「共同化又は集約」というふうに使っているところでございます。(塩川委員「統一との違い。統一という意味との違い。統一という言葉と……」と呼ぶ)
○木原委員長 塩川委員、もう一度御質問いただいてからお願いいたします。
○塩川委員 統一という用語と、共同化、集約との違い。
○時澤政府参考人 先ほど言いましたように、統一、標準化というのは、今回の我々の施策としてやろうとしております、標準化したシステムをクラウド上に載せまして使っていただくという意味で、統一、標準化というふうに使っております。
 今回のデジタル社会形成基本法で使っております「共同化又は集約」というのは、先ほど申し上げましたように、標準化、統一化とは違いまして、基本的には、異なる事務を行うものの間での利用というのを想定をしまして「共同化又は集約」というふうに申しておりますが、ただ、市町村間という同一のものも含まれるという概念として御理解いただければと思います。
○塩川委員 国、各府省、それぞれ同じことをしているわけではありませんので、そういった事務の違いを前提に行う、都道府県と市町村もそういう関係もある、しかし、市町村間、都道府県間というのも含むという意味ということですから、そうした意味では、非常に広い範囲での使い方になっております。
 この基本法案の第二十九条では、「国及び地方公共団体の情報システムの共同化又は集約の推進」とありますが、これは、国と地方のシステムを一体化をする、一つのものにしていくという意味があるということでしょうか。
○時澤政府参考人 これは、まずは国の同士でというふうな使い方もございますし、地方同士という使い方も想定がされますし、国と地方が共同でということも想定をされます。様々なことを想定されるという内容となっております。
○塩川委員 そこで、先ほど後藤さんも指摘をしておりましたけれども、この「国及び地方公共団体の情報システムの共同化又は集約の推進」というのが、自治体にとって共同化、集約は義務だという大臣の答弁がありましたが、それはそういうことなんですか。
○平井国務大臣 全体としてメリットのある方向は地方自治体も理解していただけるというふうに思うし、最終的に、今、国も地方のシステムも全部そうなんですけれども、維持管理コスト、そして法律を変えたりしたときの改修コスト、実はそこが非常に大きいと考えています。
 その意味で、クラウドというのは一定のコストダウンということは間違いなくできるし、私は、かえって、そういう意味で地方自治体の皆さんにとって喜ばれる考え方ではないか、そのように思っています。
○塩川委員 いや、でも、上乗せ、横出しをどうするのかという問題があるわけですよ。そういうことについて共同化、集約というのが、上乗せ、横出しの問題について基本法案を見てもその点ははっきりしないわけですから、そうなると、これは自治体にとっては地方自治の侵害になりはしませんか。
○平井国務大臣 法令によって委任された地方自治が条例で定めることとされているサービスを提供する場合には、標準準拠の情報システムにおいて該当するサービスの設定を変更できる、いわゆるパラメーター処理といいますか、標準仕様にする考えです。
 法令により委任されているわけではないが地方自治体が独自に提供するサービスについては、標準準拠システムとは別に構築、いわゆるアドオンして、必要に応じて標準準拠システムと情報連携が可能となる標準仕様とするという考え方でありまして、そのような工夫をしてもなお地方自治体の独自のサービスを提供できない場合には、標準準拠システムについて必要最小限度のカスタマイズはやむを得ないとは考えますが、なるべくそのようなカスタマイズをしなくても地方自治体の独自のサービスを提供できるような対応をしてまいりたいというふうに考えています。
 いずれにしても、標準仕様を策定する各制度所管府省に対して、地方自治体の意見をしっかり聞くように各制度所管府省に求めているところでありまして、内閣官房としても、独自サービスを提供する場合のシステムの在り方について技術的な観点から各制度所管府省を支援していきたいと考えています。
○塩川委員 必要最小限と言うけれども、それは義務がかかっている下で国がそれを小さくしていく、自治体の行うべき自治事務の範囲に口を挟んでいくということにもなりかねない、そういうことにつながりませんか。
○平井国務大臣 我々は、基本的にシステムの最適化を目指しているものであって、自治体がその自治体で決める政策の選択肢を狭めるということではないと考えています。ですから、システムはそういう政策判断を制約するものではない、そのように思います。
○塩川委員 そのシステムというのはこういうものだということは示せる段階なんですか。
○平井国務大臣 これも今、共創プラットフォームとか、いろいろな形で議論をしているところなんですが、自治体といっても本当にそれぞれ、大都市、政令指定都市、そして小さな自治体、全部違うんですね。ですから、ガバメントクラウドというのは一つではないんです。幾つかの複数のクラウドをそれぞれ使いやすい自治体のために一緒に構築をしていくという考え方ですので、そういう意味で、これは今まさにコミュニケーションが物すごい勢いでスタートしていますので、徹底的に自治体の皆さんの意見を聞いていこうと、今、共創プラットフォームの中でも相当な議論が進んでいると聞いております。
○塩川委員 レイヤーの区分によって、幾つかの、複数のシステムの話とかクラウドの話が出てきておりますけれども、しかし、制度設計そのものもよく見えないような段階で、義務だけかかるとなった場合に、自治体の独自の事業について差し障りが出るようなことが起こり得るといった点でも、こういう規定の在り方というのは極めて重大だと言わざるを得ません。
 それとの関係で、自治体の独自の施策の関連をお尋ねいたします。
 平井大臣にお聞きしますが、国保ですとか介護保険料、市町村民税減免ですとか、子供医療費の無料化など、自治体独自の施策について、このような共同化、集約された情報システムではきちっと実施できるのかどうか、この点について教えていただけますか。
○平井国務大臣 先ほども一部お話しさせていただきましたが、御指摘の、国保、介護保険料、市町村住民税のように、法令によって委任されている地方自治体が条例等で定めることとされているサービスを提供する場合には、標準準拠の情報システムにおいて該当するサービスの設定を変更できる、いわゆるパラメーター処理、標準仕様にする考えであります。
 また、御指摘の、子供の医療費の助成のように、法令により委任されているわけではないが地方自治体が独自に提供するサービスについては、標準準拠システムとは別に、いわゆるアドオンし、必要に応じて標準準拠システムとこれは情報連携が可能になるような仕様とする考えであります。
 これも先ほどお話ししましたが、そのような工夫をしても独自のサービスを提供できないという場合は、標準準拠システムについて必要最小限のカスタマイズはやむを得ないと考えていますが、システム全体としては、できるだけそのようなカスタマイズをしなくても自治体の独自のサービスが提供できるような対応をしていきたいというふうに考えています。
 いずれにしても、地方自治体の意見をしっかり聞きながら、各制度所管府省と相談しながら進めていきたいと考えています。
○塩川委員 実際には、そのガバメントクラウドの制度設計はどうなるのか、あるいは仕様書をどうするのかということ自身で大きく左右される問題ですから、その点が実際どうなるのかというのは非常に不透明であります。
 その点で、自治体クラウドの実績がどうなのかという問題があると思います。一昨年のデジタル手続法、そのときも平井大臣とやり取りしましたけれども、富山県の上市町の事例を紹介をしました。
 我が党の町議が、三人目の子供の国保税の均等割の免除、また六十五歳以上の重度障害者の医療費窓口負担の償還払いを現物給付に、こういう具体的な提案を議会で行ったところ、町長からは、自治体クラウドを採用しており町独自のシステムのカスタマイズはできないということで、できませんという答弁を受けたということであります。自治体クラウドで、既にこのような事態が生じております。
 ガバメントクラウドによって行政の仕事内容をシステムに合わせることとなり、自治体独自の行政サービスの提供が阻害される事態が生じるのではないのか。この点ではどうでしょうか。
○平井国務大臣 地方自治体のシステムの統一、標準化の対象としている住民記録、地方税、介護、福祉といった、地方自治体のまずは十七業務について、令和七年度末までに、ガバメントクラウド上で提供される標準準拠システムへ移行することを目指しているということでございまして、令和三年度及び令和四年度において、ガバメントクラウドを活用した基幹業務システムの先行事業というものを行うということにしています。
 この事業を通じて、ガバメントクラウドの活用の安全性そして効率性等を実証し、地方自治体が安全かつ安心して業務が行えるような取組を進めることにしていきたいというふうに考えておりまして、いずれにいたしましても、地方自治体の御意見を丁寧に伺いながら、総務省と協力して、地方自治体と一緒に進めていくというスタンスでございます。
○塩川委員 富山県について、自治体クラウドのJ―LISの資料なども見ますと、富山県情報システム共同利用推進協議会では、カスタマイズ抑制のために四つの方策を実施した、これにより結果的にカスタマイズを大幅に抑制できることができた、こういう総括をする文書なども作っているわけです。
 この間、総務省は、カスタマイズ抑制に関する基本方針を示して、ノンカスタマイズが原則だとしております。つまり、国がカスタマイズさせない仕組みをつくっているから、こういう上市町の事態のようなことも起こってくるんじゃないでしょうか。いかがですか。
○阿部政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の、富山県の上市町における議会でのやり取りということでございます。
 今おっしゃっていただきました基本方針でございますけれども、パッケージソフトに対するカスタマイズは行わないことを原則とすべきという記述があるということでございます。同方針におきましては、同時に、住民サービスの維持向上等の観点からパッケージ機能による対応では不十分である場合であって、カスタマイズ以外の代替措置で対応することが困難であるなどの事由がある場合にはカスタマイズを行うこともやむを得ないとの考えを併せてお示しをしているところでございます。
 それぞれの団体での状況については、個別にコメントは差し控えたいと思っておりますけれども、同方針が様々な団体の政策決定の支障になるものではないというふうに考えております。
○塩川委員 現場ではいろいろなカスタマイズを抑制する話ばかり出ているんですよ。例えば、滋賀県湖南市の事例などでは、自治体クラウドはノンカスタマイズが主流であり、湖南市の独自性が損なわれるんじゃないかという市会議員の質問に、市長は、事務については無理にカスタマイズするよりは簡素化を図って業務を減らしていくことも大事だ、こういう答弁をしているとか、滋賀県甲賀市の例では、自治体クラウドの標準パッケージに合わせて、国保税の年間の納期、十二回に分けて行うのを十回にするという改正の提案があったときに、一回当たりの加入者の負担感は大きくなる、カスタマイズの検討はしなかったのかという市議の質問に対して、市当局は、大きなコストが発生すると受け入れなかった。
 このように、クラウドの標準パッケージに合わせて、個別の住民要求に応えた施策のカスタマイズを受け入れない事例というのは全国各地にあります。住民要求に応える新たな制度導入が、システムとコストを口実に制限されるような事態、実際そうなっているんじゃないですか。
○阿部政府参考人 お答えいたします。
 御指摘るるいただきましたけれども、自治体クラウド、複数の市町村が共同で情報システムを利用するということでございまして、団体にとりましても様々な、例えば費用の削減でありますとか、効果を上げてきているというふうに認識しております。
 クラウドの取組を進める上で、システムの差異、今ほどもそのお話がございましたけれども、情報システムに差異がありまして、そこの調整がなかなか負担になりまして、クラウド化が進まないというような面もあるというふうに認識しております。
 この辺りにつきまして、この度標準仕様の話もしておりますし、自治体クラウドのことも、今までも進めてきてございますけれども、こういう形で、幾分かの、それぞれの自治体間の機能面の調整というものはいただく必要があると思っております。
 この辺りをしていただきながら、全国的なクラウド展開ということにしていきたいと思っております。
○塩川委員 最後に大臣に伺います。
 こういうノンカスタマイズなどに取り組む自治体には、J―LISが助成金を出す仕組みもつくっている。こんなように、総務省がカスタマイズ抑制方針を出して、住民要求に応えたカスタマイズを抑制する旗を振っているというところが問題で、そういう意味で、昨年七月閣議決定の成長戦略フォローアップでは、自治体のデジタル化の推進について、自治体の情報システムをより広域的なクラウドに移行するためには、各自治体が行っている情報システムのカスタマイズをなくすことが重要だとしております。このような国が推進するガバメントクラウドは、住民自治、地方自治を侵害するものになりはしませんか。
○木原委員長 平井大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
○平井国務大臣 いずれにいたしましても、システムの統一、標準化の取組というのは、地方自治体の意見を丁寧に伺いながら、総務省と密に協力をさせていただいて、これは国だけでできるものではありませんので、自治体の皆さんと一緒に進めていきたいと考えております。
○塩川委員 終わります。