【内閣委員会】保育士の給与上げて/子育て支援めぐり参考人

 子ども・子育て支援法と児童手当法の改定案についての参考人質疑が行われました。

 鹿児島大学の伊藤周平教授は、子ども・子育て支援法自体が消費税10%への増税を前提としたもので、待機児童対策の財源として児童手当から一定所得以上の人を外す本案も、消費税増税か社会保障費削減かの2択を迫る流れのものだと指摘。「消費税と保育の財源をリンクさせるのはやめるべきだ」と強調し、必要な予算は大企業や富裕層への優遇税制を改めて確保すべきだと主張しました。

 私は、常勤保育士の確保について質問。

 子どもの貧困問題が専門の阿部彩東京都立大学教授は「保育の質が子どもの貧困にとっても大事だ。待遇改善が一番だ」と答え、伊藤氏は「国が公定価格に算定している保育士の給与水準が低すぎる。国が財源を投入して公定価格を引き上げるしかない。また、(保育士の)配置基準を変え、人を増やさないといけない」と答えました。

 また、私が、自治体が関与しない企業主導型保育事業について聞いたのに対し、伊藤氏は、保育の実施について自治体が責任を負う公的保育制度を守ることが重要だとして「企業主導型保育事業は廃止すべきだ」と述べました。


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「議事録」

<第204通常国会 2021年4月8日 内閣委員会 16号>

○塩川委員 日本共産党の塩川です。
 今日は、四人の参考人の皆様に貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。
 最初に、四人の皆様に同じ質問をさせていただきます。
 新子育て安心プランの中で、短時間勤務の保育士の活躍促進ということが書かれております。保育士の確保の問題のところですけれども、待機児童が存在する市町村において各クラスで常勤保育士一名必須との規制をなくし、それに代えて二名の短時間保育士で可とするというものです。
 厚生労働省も、常勤保育士の確保が原則だということをはっきりと述べているわけですが、こうなると、やはり保育の質の低下が懸念をされます。背景にあるのが、常勤保育士の確保が困難となっていることであります。この常勤保育士の確保が困難となっている要因は何なのかについて、皆様からお考えをお聞かせください。
○秋田参考人 御質問ありがとうございます。
 常勤保育士が困難な理由のまず一つは、離職率が高いということにあります。つまり、保育士になっても定着しないということです。
 それはなぜかということを考えますと、一つは、処遇が一般の通常の年齢層よりも数万低いというような、今かなりキャリアアップ等で改善が図られていてもまだ低いことや、社会的な評価というものが、先ほど学校の先生の話がありましたけれども、そういう専門家であるにもかかわらず社会的な評価がまだまだ低く、託児的な発想に、社会の方たちがそういう仕事として見ているというようなことによって離職率が高い。
 それから、一旦辞めたとしても、戻ってくるかといえば、非常に厳しい労働環境であったために、もう一度、一回離職した人が再就職をするというような割合も低い。つまり、M字カーブで、自分の子供の子育ての間、一旦例えば退職したとしても、その後また復帰するというようなことが、支援はされていますけれども、現実には上がってこない。それはやはり、労働環境が悪いという、その悪循環が生じている。結局、離職すれば人手が足りなくなるので、誰かがそれをカバーするというような形が喫緊で起こります。それが厳しい職場というものをつくってきているというようなところが大きな要因ではないかと思います。
 今、キャリアアップを始めていますけれども、やはり保育士の資格というものが、続けていくとそれによって、展望というんでしょうか、専門家として成長していく、そういうキャリアラダーという階梯が十二分にまだ保障されていないというようなところも大きな要因ではないかというふうに思います。キャリアアップはその一歩ではありますけれども、まだまだやはり、ほかの看護婦、看護師とか、そういう人たちの職に比べて、そうしたキャリアラダーも見えにくい。
 そして、やりがいというよりも、常に命と向き合ってやっている職業でありますので、その辺りの仕事の大変さとの関係があるのではないかというふうに思っております。
 以上です。
○阿部参考人 私は保育の専門家ではないので、ここはあくまでも一般論かというふうに思いますけれども、保育の質が貧困の子供に対して非常に重要だというのは、ほかの参考人と全く同感です。ですけれども、やはり保育の質というのは人が大事。そのときに、実は、アメリカの子供の貧困対策の中で一番費用対効果が高かったものの一つが、教員の給与の賃上げでした。
 ですので、やはり、先ほどの秋田先生もおっしゃったように、待遇を改善するということがまず一番大事なのではないかなというふうに思います。
○吉田参考人 実は、昨年、私、厚労省の、保育の現場・職業の魅力向上検討会の副座長をしてございまして、今お尋ねをいただいた件のど真ん中に関わる検討をしてございました。
 今、秋田先生からもおっしゃったように、人材確保は大変困難である、これは事実でございますが、一つは、やはり処遇が必ずしもよくなかった、あるいは職場環境、労働環境が厳しかった、あるいは職場の人間関係等、いろいろ問題があったというふうに言われてございますが、では、どうすればいいのかということで、私自身は二つの視点があると思っていまして、一つは離職率を下げる、もう一つは定着率を上げる、これは似て非なるものだと思っています。
 離職率、離職するというのは、もうこんな大変な仕事で安い給料でやっていられるかという話ですから、離職率を下げるためにはマイナス面を減らす、つまり、今まで十分でなかった処遇を上げる、あるいは残業をさせない、持ち帰りの仕事はさせない、福利厚生を充実させる等々で、今までのマイナスをなくしていくことによって離職率を下げることは可能だろう。
 しかし、では、それで定着するかというと、そうではなくて、よりいい仕事を長くやり続けるためには、仕事を通して、この保育の世界で私はいろいろな研修の機会に恵まれて専門家として成長できたという、成長できる職場であること、あるいは、その職場の先輩、後輩を含めて、お互いに専門家同士で支え合って学び合っていけるんだという職場であること、そしてもう一つは、そういうふうに学び、成長したことが子供の育ちに非常に役に立って、私は貢献できているんだと実感できる職場であること、そして最後に、そういったことが職場の同僚や園長や保護者や、もっと言えば地域社会の方から認められ、評価されるという職場になれば、当然これは辞めない、定着をすると思っていますので、離職を食い止めるということと定着を促すという両面で、私は、職員の質、量の確保を図るべきだと思っております。
 ちなみに、常勤保育士に対して短時間勤務保育士の問題がございましたが、これもいろいろな多様な側面がございますので、私が現場で聞いている中では、非常にいい職場で職員が辞めない、そうすると、かなり高齢化をしていく、高齢化をして体力的に自信はないけれども、保育の仕事は好きだし続けたい、給料も、私はもう年も取って息子も成長したから高い給料は要らない、では、むしろ私は短時間勤務にしてください、朝から一日中働き続けてシフトに入ることは大変ですという方が少なからずいらっしゃることも事実ですので、その短時間保育についても、いろいろな側面があるということも御理解いただけると、プラスの面もあるんだというふうに考えております。
 以上です。
○伊藤参考人 御質問の、パート化につながる規制緩和は絶対私は反対です、今回のやつも。短時間保育士を入れればいいという問題ではないです。ちゃんと常勤保育士で専門性を持って対処すべきだと思います。
 なぜ保育士の処遇が改善できないかというのは、私の資料の七ページのところにも書いてありますが、一言で言えば、国が公定価格に算定している保育士の給与基準額が低過ぎるからです。だから、そこを増やすしかないと思います。
 そして、八時間労働なんですけれども、保育所の開設時間は、十一時間というような長いところもありますし、八時間労働でやると、もうほとんど子供にかかりっ切りで、記録とか計画の策定とかはできません。つまり、国のそういう算定基準が、だから、あと、記録とか保育計画の作成というのはサービス残業になっちゃいますね。労働基準法上もこれは違法じゃないかと私は思うんですが。だから、国の基準が低過ぎる、国がちゃんと財源を投入して公定価格を引き上げるしかないんじゃないかなと思っています。
 だけれども、先ほど言いましたように、それをやるためには消費税を上げなきゃいけないとか、別の社会保障給付を削るとか、そういうことをやっているから上がらないので、まず基準、それとあと配置基準ですね。人をやはり増やさないと駄目だと思うんです。
 御承知かもしれませんが、そこに書いてありますが、四歳児、五歳児の国の配置基準は三十対一です。三十人の四歳児を一人で見るんですか、保育士。めちゃくちゃですよね。これもちゃんと改善して、だから、ほとんど自治体は、これではとてもできないというので、七ページのそこにも書いてありますが、全国の平均では国基準の一・九倍の保育士を配置しています。そうしないとできない。
 だから、まず基準を上げること、そして保育士の給与基準の公定価格を引き上げること、これがまず最大の解決の道だと思います。
 以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて伊藤参考人にお尋ねいたします。
 伊藤参考人は、公的保育の大切さ、自治体の保育実施義務の重要性を指摘をされました。
 今、企業主導型保育事業が広がり、いろいろな課題も出されているところであります。自治体の保育実施義務のいわば外にあるこの企業主導型保育事業について、どのように評価をされておられますか、お聞かせください。
○伊藤参考人 企業主導型については、非常に、市町村の責任というか、市町村から離れたところであって、不正受給も多いし、なかなか、開設しても、開設できないとかいうことも多いので、私は廃止すべきだと思っています。
 本来は、やはりこういった小規模、まあ、小規模保育事業自体は、今、認定こども園も含めて、そういったもの自体は市町村に実施責任がないので、それも含めて、企業主導型をまず廃止した上で、認定こども園や小規模保育、更に保育所、そこに市町村が保育実施責任を持つ形にして、児童福祉法の二十四条二項ですが、そこを改正した上で市町村の実施責任というのを明記した上で、こういった規制緩和はやるべきじゃないです、やはりこれは子供の命が懸かっていますから。
 今回の無償化でも認可外保育施設なんかが対象になりましたけれども、やはり認可外保育施設だとどうしても、保育士の資格がなくてもいいわけですから、別にあってもということだけれども、やはり、子供の体の状態とか発達を知らない人が保育していく中で、事故が多発しています。
 企業主導型もそうなんですけれども、一部、できないことはないんです。私の大学の組合でつくっていた認可外保育施設が企業主導型になったんですけれども、そういう使い道はないことはないんだけれども、やはり保育については自治体が保育実施責任を持つような形にして、どんな施設であれ、それがやはりベストだろうというふうに考えております。
 以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて伊藤参考人にお尋ねいたします。
 今回の児童手当法改正で、特例給付の対象から一定の所得以上の者を外すとしております。日本の家族関係予算は主要国の対GDP比の家族関係支出と比較をしても少ない下で、児童手当の削減は行うべきではない、子育て世帯間のやりくりでこういう対象というのはおかしいと思っております。
 そこで、こういった子育て関連の予算の財源をどのように確保すべきなのか、この点についてのお考えをお聞かせください。
○伊藤参考人 ありがとうございます。
 財源の確保については、私の最後の方で述べていますが、基本的に、逆進性が強い消費税はやるべきではないと思います。
 つまり、消費税でやると、先ほども言いましたように、保育士の待遇を改善するためには消費税を上げなきゃいけない、消費税が上がるのは嫌だから保育士の待遇改善はなされないという悪循環に陥ってしまうので、やはり所得税や法人税の累進性を強化して、消費税も、現段階では、私はもう消費税を廃止すべきだと思っているんですけれども、五%に下げるなりした上で、やはり所得税や法人税の累進性を強化すればいいんだろうと思います。
 特に、先ほどもお話がありましたが、高額所得者については金融所得が非常に多くて、その部分は分離課税で非常に安い税率なんですね。それを総合課税にするとか、あるいは法人税の租税特別措置とかを順次廃止していくとか、そういう形でちゃんと、お金がある人やもうかっているところ、そこから取れば、先ほど言いましたように、社会手当は、手当という給付は平等に、お金がある人からはそういった税金や保険料をたくさん取るという、それを財源を確保していくことで私は十分できると思うんですね。それがやはり所得再分配に当たると思うんです。消費税でやれば所得再分配じゃないです、それは。逆分配ですから。
 社会保障の本来の制度の在り方は所得再分配なので、やはりこれは、法人税や所得税の累進性を強化していく、あるいはそういった優遇措置を廃止していくことで私は十分確保できると思いますし、不公平税制を考える会なんかですと、四十何兆円ぐらい、そういう不公平税制をなくすことで、累進性を強化することで新たな財源が確保できるということなので、それを子育て支援に回していくということは十分可能ではないかなと思います。
 以上です。
○塩川委員 時間が参りました。
 ありがとうございました。