【内閣委員会】障害者差別解消のための国の積極的な支援を

 障害者差別解消法改正案が全会一致で可決。障害者差別解消における国の責任をただしました。

 法案は、全ての事業者に対し、障害者への「合理的配慮」を義務付けるものです。

 私は、兵庫県明石市などが事業者に筆談ボードや簡易スロープの購入費などを助成し、取り組みを広げるために商店街に一括申請をしてもらうなど、独自の努力を行っていると紹介。国として自治体の取組を応援する助成制度が必要だと求めました。

 坂本哲志担当大臣は、「助成措置は考えておりません」と述べつつも、内閣府は自治体の積極的な取組を周知するなど、国と自治体の連携協力を強化していくと述べました。

 現行法は、差別の相談や紛争の解決などを行う体制整備や、地域のネットワークである地域協議会の設置を規定しています。

 私の質問に対し三上明輝政策統括官は、地域協議会未設置自治体が4割、設置協議会の3割で障害当事者が参加していないと明らかにしました。また、国として差別の解決数を把握していないと答え、「取組が十分ではなかった」と認め、関係者の意見を聞きながら基本方針の見直しの検討を進めると述べました。

 私は、国や自治体による重層的な相談や紛争解決の仕組みが重要であり、行政に相談すれば差別が解決できるという信頼を生み出すことが差別解消を前進させると強調。地域の体制整備を国が支援をする同時に、障害者権利条約に基づく独立した人権救済機関が必要だと求めました。


衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」

<第204通常国会 2021年4月16日 内閣委員会 19号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 障害者差別解消法について質問をいたします。
 最初に、差別の定義の問題について坂本大臣にお尋ねをいたします。
 障害者差別解消法に差別の定義を明記してほしいというのは障害者団体からも強く要望されてきたところであります。
 不当な差別的取扱いと合理的配慮の不提供を差別として禁じておりますが、直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の不提供を差別と定義をし、その内容を明らかにする、こういうことこそ求められているのではないか。この点について大臣の御答弁をお願いします。
○坂本国務大臣 これまで事例の収集にいろいろと努めてまいりましたけれども、いわゆる間接差別等につきましては、いまだ具体的にどのような事例が該当するのか明確ではありません。こうした状況の下では、法律上、間接差別等の定義規定を設けることは困難であるというふうに考えております。
 このため、内閣府の障害者政策委員会の意見書で言及されましたように、基本方針等におきまして、例えば、形式的には障害を理由とする差別的取扱いには該当しないものであっても、実質的に不当な差別的な取扱いをすることも差別となる旨を明確化すること等を今後検討してまいりたいと考えております。
○塩川委員 障害者権利条約の第二条では、障害に基づく差別を定義をし、直接差別のみならず、合理的配慮の否定を含む、あらゆる差別を禁止することを締約国に求めております。そういう点で、差別の定義の明記に至らなかったということは極めて残念であります。
 事例収集に努めてきたという話もありますけれども、やはり、具体の取組を踏まえた上で、障害者団体からもこの明記を求めているということをしっかり受け止めるべきであります。
 その点で、次の改正に向けて是非とも議論を進めていくことが必要で、例えば障害者政策委員会で期限を決めて議論を進めていく検討規定を盛り込む、こういったことも必要ではないでしょうか。
○三上政府参考人 お答えに入ります前に、先ほど私、江田委員への答弁中、総務省の古川政務官のことを誤ってフジワラ政務官と申し上げたかと思いますけれども、申し訳ございません。おわびいたします。(塩川委員「おかしいよ、私の質問に関係ないじゃないか」と呼ぶ)はい、申し訳ございません。
 現行の附則におきまして、事業者による合理的配慮の義務づけが将来的な検討課題として想定されていたということもございましたのでこれは施行三年経過後の検討規定が設けられたと考えておりますけれども、本法案において、現時点でそういったような具体的かつ将来的な検討課題まで想定されていないことから、そうした検討規定は設けることとしてございません。
 障害者政策委員会は障害者基本計画の実施状況を監視するという役割を担っておりまして、検討規定の有無にかかわらず、同計画に盛り込まれている差別の解消等の取組として、様々な御議論を行っていただくことができますので、内閣府としては、引き続き、この政策委員会での御議論、あるいは国、地方公共団体における実施状況の調査、事例の収集等による運用状況の把握等を通じて、適宜、制度あるいは施策の在り方を点検、検討してまいりたい、このように考えております。
○塩川委員 改めて、差別の定義の明記を求めたいと思います。
 それで、差別の定義を明確にする上でも、事例収集の話がありました。こういった事例収集について、国としてはどういう取組をやってきたのかについて教えてもらえますか。
○三上政府参考人 事例の収集につきましては、内閣府から、関係の省庁、それから地方公共団体、さらに、障害者政策委員会に構成員として加わっていただいている障害者団体の方々などに照会をかけまして、どういった事例があったかということを毎年度調べているところでございます。
○塩川委員 障害者差別解消法には、障害を理由とする差別を解消するための支援措置として、国、自治体による相談及び紛争の防止等のための体制の整備が規定されております。
 今、内閣府から、省庁や自治体、障害者団体に対しての事例の収集の話がありましたけれども、実際、相談の実績、また、その中での差別が解決をした実績、こういう数字というのは明らかでしょうか。
○三上政府参考人 事例について、どういった事例があるかといったことを調べていますけれども、計数として、幾つが例えば解決に至ったというような数は把握してございません。
○塩川委員 把握していないということであります。
 令和二年三月の内閣府障害者施策担当がまとめた自治体への調査結果などを見ても、相談件数をカウントしている自治体が、そもそも千七百八十八自治体のうち九百五十三ということです。これを見ても、差別解決の実績の資料というのはないということであります。
 五割近い自治体が相談件数についてカウントをしていないというのがこの調査結果ですけれども、差別解決実績についての実績資料もない、余りにも不十分であります。国は何をやってきたのか、お尋ねします。
○三上政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、そういった数がきちんとカウントされていないというところにつきまして、私どもとしては、そういった全体像を明らかにしながら取組を進めていくということは重要だと考えておりまして、都道府県あるいは政令市といったところに対してそういった取組などを促していく、こういったことを今後強めていきたいと考えております。
○塩川委員 事例収集していると言うけれども、こういう状況になっているということについて、国の責任が問われるんじゃないですか。
○三上政府参考人 障害者差別解消法が制定されて施行後五年といった期間を経過してきたわけですけれども、そういった取組が必ずしも十分に行われて全貌が明らかになるという形になっていないことについて、私どもとして、今後更に取組を強めていく、過去十分でなかったというところはあるんだろうと考えております。
○塩川委員 十分でなかったということであります。
 そういった反省も踏まえての今後の取組という点で、障害者差別解消の取組で明石市の事例などがよく全国の自治体の取組としても参照されているということをお聞きしています。
 明石市におきましては、二〇一九年度の相談が十八件、調整をしたという実績が六件、あるいは、二〇二〇年度の相談は六件で、調整の実績は二件という話をお聞きしました。
 例えば、具体の事例でいえば、聴覚障害者の方が資格取得の講座を受講希望したところ、事業者の方からは、現場研修が危険だから駄目だと言われた、こういうことで市に相談があったそうであります。市の方が間に入って手話通訳の公的派遣制度を紹介をし、事業者側も納得をし、受講できるようになったということであります。
 こういった取組にしっかり学んでいく必要があると思っております。多数の相談に取り組むことで事例を蓄積をし、一層、差別解消の取組が前進をする。国、自治体に相談すれば差別が解決できるという信頼を生み出すことになります。
 こういった相談や紛争解決の体制整備に国としてはどのように取り組んでいくんでしょうか。
○坂本国務大臣 明石市の例を今取り上げて、お聞きいたしました。
 御質問の趣旨は、それに対しての様々な国の支援措置が必要であるということでございますか。(塩川委員「そういう相談活動そのものが事例収集にもつながり」と呼ぶ)分かりました。済みません。
 相談、紛争解決の体制整備につきましては、法制定時より、行政の肥大化の防止等の観点から、既存の機関等の活用、充実を図ることを基本としているところでございます。
 さらに、地方公共団体の中には、独自に条例で、関係機関に紛争解決のための権限を付与しているところもあります。障害者差別解消法に基づきまして、地方公共団体の長が事業者に対する指導、勧告等の権限を行使できる場合もあるため、紛争解決機関につきましては、地域の実情に応じて検討されることも重要であるというふうに考えております。
 このため、国及び地方公共団体それぞれにおける既存の機関の活用も含めた相談、紛争解決体制の充実強化に向けて、関係者の御意見を伺いながら、基本方針の見直し等の検討を進めてまいりたいと思っております。
 明石市につきましては、この障害者関連の課題につきまして、あるいは少子化等も非常に熱心に取り組んでいらっしゃるということは重々承知しているところでございます。
○塩川委員 体制整備のところで、行政の肥大化にならないように既存の機関の充実で対応するという話がありましたけれども、一方で、デジタル庁とかこども庁とかいう話を出しておいて、それは行政の肥大化と言わずに、こういった障害者の差別解消の取組については、既存の枠内でとにかくやれることだけやるというような言い方では、これは納得が得られないということを言わざるを得ません。
 そういう点で、例えば、東京都、大きい自治体ですけれども、相談体制については、広域支援相談員を配置をしているそうであります。社会福祉士の方が四人従事をしておられて、障害者本人や関係者の方や、また事業者からの相談も幅広く受け付けているということで、二〇一九年度の相談件数が三百六十三ケースあったという点では、そういった積み重ねというのが非常に重要だと思います。
 東京都は、こういった障害者差別に係る相談体制について、重層的に相談を受け付けることが望ましいとしています。つまり、障害当事者、相談する方は、区市町村の方にも行ってもいいし、東京都の方に来てもらっても構いませんと。重層的に対応するということが大事だということを強調しておられておりますけれども、是非、役割分担ということに限らず、重層的な体制もしっかり追求する必要があるんじゃないのか。
 こういうことについて、国としてどう対応するか。
○三上政府参考人 お答えいたします。
 まさに、相談がいろいろなところで重層的に受け付けられるという観点は大変重要なものだと思っておりまして、また、国だけではなくて地方公共団体とも連携をしていく、地方公共団体で受け付けたものが必要に応じて国の機関に受け渡されるというようなことも適当な場合が当然あるわけでございますので、この法案でも国と地方公共団体との連携協力の責務を定めることとしております。
 こういった新しい規定が追加されるということになりますれば、これを受けて、さらに、そこに魂を入れるべく、どういった相談体制が必要であるか、国、地方公共団体の役割分担はどうあるべきかといったことなどについて、障害者政策委員会からの御提言の中でもいただいておりますので、それを踏まえて具体的に検討を進めて、体制の整備に取り組んでまいりたい、このように考えております。
○塩川委員 自治体の規模に応じて対応が異なるようなことにならないようにするということも大事だと思っています。そういう点でも、自治体の相談窓口に法律の専門家の方ですとか障害当事者の方が充てられるような、国によるこういう財政措置、背中を押すような、そういうことを是非考えてほしいんですが、その点、どうでしょうか。
○坂本国務大臣 合理的配慮、個別の事案ごとに、費用負担の程度、さらには事業規模等を踏まえまして、過重な負担の範囲内であるかどうかを判断して、そして、代替措置の選択も含め、必要かつ合理的な内容のものとして実施されるものが合理的配慮でございます。
 このように、合理的配慮は、個別の事案において、あくまでも過重な負担のない範囲といった要件の下で行われるものであるために、費用面の支援が必要となるような対応について、その促進を図るための助成措置を講ずることまでは考えておりません。
 ただ、自治体によりましては、コミュニケーションツールあるいは備品等、こういったものの用意はあるようであります。
 ただ、他方、本法案におきまして、相談体制の充実や事業者等が参考にできる事例の収集、提供の確保など、障害者差別解消のための支援措置の強化のための規定を盛り込むこととしております。
 政府としては、こうした取組や制度の趣旨等の周知啓発を通じまして、事業者への支援に努めていきたいというふうに考えております。
○塩川委員 今のお答えは、事業者による合理的配慮の提供の実効性を担保するため、国として事業者に対する助成制度を設けるべきではないのかということへのお答えということでよろしいですか。
○坂本国務大臣 済みませんでした。
 今後、具体的な相談体制の在り方等も含めて検討してまいりたいと思いますし、様々な課題の中で、これからの体制というものをしっかり確立するための話合いというものをやってまいりたいというふうに思っております。
○塩川委員 是非、法律の専門家や障害当事者が充てられるような、国による財政措置を具体化をしていただきたい。
 それと、障害を理由とする差別を解消するための支援措置として、障害者差別解消支援地域協議会の設置を位置づけております。地域協議会によって、事案解決のための取組や類似事案の発生防止などを行うネットワークが構築をされ、障害者や事業者からの相談等に対し、地域協議会の構成機関が連携して効果的な対応、紛争解決の後押しを行うことが可能となるとしております。
 そこで、質問ですが、この地域協議会の設置状況はどうなっているのか、未設置の自治体についてはどうするのか、この点について御説明ください。
○三上政府参考人 地域協議会の設置状況でございますけれども、平成三十一年四月一日現在で、全ての都道府県、政令市において設置済みでございます。他方、町村におきましては四五%にとどまっておりまして、中核市、一般市まで含めた全地方公共団体における設置率は五六%となっているものでございます。
 国としては、障害者に係る案件が、いわゆる制度の谷間に落ち込んだりですとか、相談がたらい回しにされたりしないためにも、地域協議会を設置していただくことが望ましいと考えておりまして、未設置の地方公共団体に対しては、これまでも都道府県等を通じて設置を働きかけているところですけれども、今後も、都道府県や近隣の市町村と連携いただくことも含めまして、設置を積極的に呼びかけてまいりたいと考えております。
○塩川委員 設置が五六%ということで、未設置が四割というのも少なくない数であります。
 その設置を促していくということと同時に、その地域協議会の構成メンバーに障害当事者が加わっていない事例があるということであります。この障害当事者がメンバーに入っていない事例がどのぐらいあるのか、こういった地域協議会のメンバーに障害者が入っていない事例について、加わっていただく、こういう必要があるのではないか、その点について御説明ください。
○三上政府参考人 内閣府が行った調査によりますと、平成三十一年四月一日時点で、全国の地域協議会のうち障害当事者が構成員になっていないものは約三割ということでございます。
 地域協議会が地域における障害者差別に関する相談や紛争の防止、解決を推進するためのネットワークを構築する役割を果たしている、こういうことを踏まえますと、障害当事者の方に構成員として加わっていただくことで、より充実した議論ができるものと考えております。
 内閣府としては、地方公共団体に対して地域協議会の設置促進、運営の活性化を働きかける中で、地域協議会がより充実した役割を果たせるよう呼びかけてまいりたい、このように考えております。
○塩川委員 こういった地域協議会のネットワークをしっかりと生かしていく、そういう取組に障害当事者の方も加わって、相談、紛争解決の体制を拡充していくという取組を是非促してもらいたいと思います。
 その上で、紛争解決に係る体制整備として、政府から独立した紛争解決機関を設置することが求められております。障害者権利条約でも、保護、救済、監視の枠組みの設置を求めております。国内人権機関の地位に関する原則が求める、政府からの独立性が担保された救済機関が必要だということは申し上げておくものであります。
 そこで、合理的配慮の提供の点ですけれども、今回の法改正で、努力義務とされていた事業者の合理的配慮の提供が義務となりました。これまで、障害者が事業者に対してサービスを受ける際の配慮を求めても話合いにも応じない事例もありました。今回、合理的配慮の提供を義務化することで、提供拒否はできなくなります。障害者差別の解消にとって前進となります。
 この事業者による合理的配慮の提供の実効性を担保するために、事業者に対する助成制度を制定した自治体があります。合理的配慮の促進に向けた独自事業を行っている自治体は幾つあるのか、明石市を始め、先進自治体ではどのような取組を行っているのかについて紹介してください。
○三上政府参考人 お答えいたします。
 平成三十年度障害を理由とする差別の解消の推進に関する国外及び国内地域における取組状況の実態調査によりますと、事業者による合理的配慮の提供等の促進に向けた独自事業を実施していることが把握できた地方公共団体は十六となってございます。このうち、御指摘のありました明石市におきましては、合理的配慮を提供しやすくするための環境整備に係るコミュニケーションツールの作成費、物品の購入費、工事の施工費に対する助成を行っております。
 以上でございます。
○塩川委員 明石市は、二〇一六年度に助成制度を創設をしました。累計五百一件の助成実績があるそうであります。二〇二〇年度は六十四件で、予算が四百万円ですけれども、そのうち二百二十九万円を執行したということです。単に助成制度のチラシを配布するということじゃないと。つまり、市の方が事業者団体に足を運んで一括申請をしてもらう、また、商店街に足を運んで申請書を出してもらうなど、市として独自の努力を行っているということであります。
 こういう取組は極めて重要であります。つくば市、日光市、所沢市なども、明石市の取組に学んでこういった助成制度をつくる、こういう自治体も増えているところですが、やはり大臣、この事業者による合理的配慮の提供の実効性を担保するため、こういう自治体の取組の背中を押していく、国として事業者に対する助成制度を設けるべきではないのか。この点について、是非お答えください。
○三上政府参考人 合理的配慮につきましては、元々、費用負担の程度、事業規模等を踏まえて、過重な負担の範囲内であるかどうか、そこで行われるというものでございますので、この法律が、あらゆる事業者を対象にしている、営利、非営利を問わないといったようなこともございますので、国としてということではございませんが、明石市のような積極的なお取り組みをいただいているところについて、そういった情報をほかの自治体にもお知らせをする、そして参考にしていただくといったようなことは国としてもできるのではないか、このように考えております。
○塩川委員 是非、そういった際に、人的な支援と同時に予算でも取組が進むような、こういう差別解消の取組の前進につながっていく国の対応を強く求めて、質問を終わります。