【内閣委員会】ストーカー規制法案/ストーカー被害/実態把握徹底せよ

 承諾なくGPS機器を用いて位置情報を取得したり、拒まれても連続して文書を送付する行為などを規制対象に追加するストーカー規制法改正案の採決を行い、全会一致で可決しました。

 私は、国や自治体に寄せられたストーカー被害相談件数を把握しているか質問。

 内閣府伊藤信大臣官房審議官が「把握していない」と答えたのに対し、私員は実態を把握せよと追及。

 伊藤氏は「検討課題としたい」と答えました。

 私は、ストーカー問題に取り組むNPO団体は、警察による介入だけでなく、カウンセラーなどが加害者と面談することが問題解決に重要だと強調していると指摘し、政府の対応を質しました。

 小此木八郎国家公安委員会委員長は「地域の精神科医等と連携を図りつつ、再犯防止に効果的な施策を検討する」と答えました。

 私は、ストーカー対策関係省庁による定期的な会議が開かれていない実態を指摘し、現場をよく知る関係者も交えて、ストーカー規制法の運用状況を把握する定期的な会議を開くべきだと強調。

 小此木委員長は「検討するよう指示する」と述べました。


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「議事録」

<第204通常国会 2021年5月12日 内閣委員会 第23号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 ストーカー規制法改正案について質問いたします。
 小此木国家公安委員長にお尋ねいたします。
 今回の法改正では、禁止命令等を書類を送達して行うこととすると明記をし、さらに、住所や居場所が明らかでない場合は公示送達を可能とするとしております。送達や公示送達の規定を設けることにより、禁止命令等の交付ができない事態を回避することができます。
 このことについて、一点確認したいんですが、ストーカー規制法は、つきまとい等行為に対し、警告、禁止命令の行政措置、禁止命令違反に対しての罰則、つきまとい等を反復して行うストーカー行為に刑事的な処罰が下される仕組みとなっています。このような段階的な対応を講じることによって、行為者の自覚を促し、問題の解決を図ろうというものであります。
 送達、公示送達の規定を設けても、直接手渡しするという原則は変わらないと承知をしていますが、この点についてお答えください。
○小此木国務大臣 現在、禁止命令等は、国家公安委員会規制において定めるところにより、禁止命令等の対象者に対する処分の感銘力、抑止効果を踏まえ、禁止等命令書を交付して行っていると承知しています。
 今回の改正は、禁止命令を書類を送達して行う旨を明文で規定するとともに、禁止命令等の対象者の住所及び居所が明らかでない場合には公示送達を可能とするものであるところ、禁止命令等の対象者に対する感銘力や抑止効果を踏まえ、引き続き原則として当該命令書を交付して行うよう、警察を指導してまいります。
○塩川委員 直接手渡しが原則だということでは変わりがないという話であります。
 その点で、過去の調査を見ても、例えば、二〇一三年に警察庁が行いました、警察による口頭での指導警告後に八割から九割のストーカー行為が止まったという実績を見ても、抑止効果があると思われます。
 こういった二〇一三年の調査など、実績に関する直近の資料というのはあるんでしょうか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
 警察庁におきましては、委員御指摘のとおり、平成二十五年に、ストーカー事案で、口頭警告を実施したもの、ストーカー規制法による警告を実施したもの、また禁止命令等を行ったものに対して調査を実施しているところでございますが、その後は同種の調査は実施していないところでございます。
 なお、警察庁におきましては、ストーカー事案に係る実態をより的確に把握するため、本年以降におきまして、ストーカー事案において検挙された者のうち、以前にストーカー事案により検挙された者の人数を把握していく方向で検討しているところでございます。
○塩川委員 そういう意味でも、しっかりとした今後の対応について、検挙事案の話が今答弁でありましたけれども、小此木国家公安委員長として、過去のこういった実績なども念頭に、この間の取組の状況についてが分かる実態の調査、実態把握、是非やっていただきたいと思いますが、その点。
○小此木国務大臣 実態把握等につきましては、先ほどからも答弁しておりますけれども、しっかりと把握することが重要であるという考えの下、そういうふうに前に進めてまいりたいと存じます。
○塩川委員 次に、ストーカー総合対策についてお尋ねをいたします。
 二〇一七年の四月に決定をしましたストーカー総合対策においては、被害者等からの相談対応の充実についてというのがあります。内閣府、警察庁にお尋ねしますが、「幅広い窓口において被害者等からの相談を受理し、また、そのニーズに応じ、切れ目なく適切な支援を行うことができるよう、被害者等からの相談窓口を充実させる」とありますが、この間の相談窓口設置の実績またその点での課題についてそれぞれお答えください。
○伊藤政府参考人 まず内閣府からお答え申し上げます。
 ストーカーに関する相談窓口としまして内閣府で把握しておりますのは、配偶者暴力相談支援センター及び性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターでございます。
 これらの設置状況といたしましては、配偶者暴力相談支援センターが令和三年二月時点で全国に二百九十六か所、そのうち市町村設置主体のものが百二十三か所でございます。性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつきましては、令和三年四月時点で全国に四十七か所、各都道府県に一か所設置をされているところでございます。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
 警察庁におきましては、平成二十七年三月にストーカー総合対策関係省庁会議におきまして策定されたストーカー総合対策におきまして、被害者等からの相談対応の充実等が挙げられていることを踏まえまして、平成三十一年に多機関連携によるストーカー対策のための取組に関する調査研究を行ったところでございます。
 本調査研究におきましては、未然防止、被害者対策等の各段階における関係機関の支援内容を調査したところ、例えばある都道府県警察におきましては、県内の大学と連携してネットワークを設立し、県内の大学では女性被害者相談窓口を設置してストーカー被害に関しても相談を受け、警察への相談についても学生にアドバイスしている事例や、ストーカー被害の相談を受けた警察におきまして、相談者に対して併せて保護対策について自治体の担当課に連絡することを勧めて、警察と自治体が連携して相談者のシェルターへの入所支援を行った事例などが見られるところでございます。
 このような取組が全国的に推進されるよう、把握した好事例を各都道府県警察に紹介すること等を通じまして、引き続き、被害者等からの相談窓口の充実のための取組を推進してまいりたいと考えております。
○塩川委員 窓口設置のお話がありましたけれども、実際の相談実績がどうなっているのか、その相談の実績の状況についての把握というのはそれぞれどうですか。
○伊藤政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども所管しております二つのセンターでございますけれども、事案ごとの把握、細かい事案ごとの把握はしてございませんけれども、まず配偶者暴力相談支援センター、それから昨年四月に内閣府が開設した新たなDVに関する相談窓口、DV相談プラスに寄せられた相談件数、これを合わせますと、令和二年四月から本年二月までで約十七・六万件、ワンストップ支援センター、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつきましては、令和二年度全体の数字で約五・一万件の相談ということになってございます。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
 警察におきましては、令和二年中、ストーカー事案の相談等の件数につきましては、二万百八十九件、こういった相談を受理してございまして、こういった相談の内容に対しまして、措置といたしましては、例えばストーカー規制法に基づく行政措置として警告を二千百四十六件、また禁止命令等を千五百四十三件発出しているところでございます。このほか、検挙につきましても実施しているほか、それ以外にも、例えば被害防止の措置の教示でありますとか、被害防止に必要な例えば用品の貸出しでありますとかいったような対策を講じているところでございます。
○塩川委員 内閣府の場合は事案ごとの相談件数は把握していないということであります。ストーカー総合対策に基づいて相談窓口の設置ということを決めているわけですから、実際の相談件数がどうなっているかをしっかり把握する必要があると思うんですが、少し分けてそういう数を把握するということは是非やってもらいたいと思うんですが、その点、どうですか。
○伊藤政府参考人 御案内のとおり、それぞれ、DVですとかあるいは性犯罪、性暴力に関する相談というふうなことをするためのセンターでございます。その中でストーカー事案と重なる部分があるというふうなことでございます。どう区分するかというふうなことについてはちょっと検討課題とさせていただきたいと思います。
○塩川委員 是非、実情をつかむという点での対応をお願いしたいと思います。
 それから、ストーカー総合対策には自治体との関係の取組も書かれております。「地方公共団体における被害者支援の充実を図るため、内閣府作成「ストーカー被害者支援マニュアル」を活用するなど、地方公共団体における被害者等に対する相談対応・カウンセリング等を推進する。」とあります。
 内閣府にお尋ねしますが、このマニュアルの活用状況、自治体の相談窓口の設置状況、相談実績はどうなっていますか。
○伊藤政府参考人 お答えいたします。
 このマニュアルにつきましては、平成二十九年度に作成しましたが、この年に、各都道府県・政令指定都市の男女共同参画の主管課、あるいは都道府県、市町村の配暴センターの取りまとめ部局、男女共同参画センター、教育委員会等々に配付をいたしまして、活用いただいているところでございます。
 それぞれにおきます相談窓口の実際の設置件数とか相談件数については把握をしてございません。
○塩川委員 マニュアルを活用してもらうということで説明会などをやったということですが、実際に自治体の相談窓口の状況はどうなっているのか、いや、自治体の規模もあります、対応の状況もいろいろだと思いますけれども、そういう実情がどうかということはしっかりと把握することは必要なんじゃないですか。その把握の必要性についてはどうですか。
○伊藤政府参考人 この件につきましても持ち帰らせていただきたいと思います。
○塩川委員 小此木国家公安委員長にお尋ねしますけれども、今答えてもらいましたように、国の関係する機関、そういう支援センターなどでの相談件数についても、ストーカー被害について何件か、そういう形で実態をリアルにつかむ必要があるんじゃないのか。また、自治体の取組状況がどうなっているのか、相談窓口や相談の実績がどうか、こういうことについてしっかり把握をする必要があると思うんですが、その点で、国家公安委員長としても是非、取組方、応援してほしいと思うんですが、いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 被害者を生まないということ、犯罪の防止の観点から、そういった把握について努めるよう指導してまいります。
○塩川委員 ストーカー総合対策においては、加害者対策の推進も盛り込まれております。警察官が地域精神科医等に加害者への対応方法や治療、カウンセリングの必要性について助言を受け、加害者に受診を勧めるなど、地域精神科医との連携を推進するとあります。
 警察庁として、このような取組についてどのように把握をしておりますか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
 ストーカー加害者への対策につきましては、ストーカー事案の加害者の多くが注意や警告等の措置で行為をやめる一方、被害者への強い執着心等から、検挙や警告をされた後もつきまといを続ける者が存在することから、ストーカー対策に当たって、こうした加害者の特性を踏まえた対応が必要であると考えております。
 警察におきましては、平成二十八年度から、警察がストーカー事案の加害者への対応方法やカウンセリング、治療の必要性について地域の精神科医等の助言を受けまして、加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医療機関等との連携を推進しているところでございます。
 また、警察庁におきましては、平成二十八年度より、警察庁、都道府県警察、医療機関等関係者による連絡会議を開催いたしまして、ストーカー加害者に対するより効果的な精神医学的、心理学的アプローチについて情報共有等を行っているところでございます。
 今後とも、ストーカー加害者に対して受診の働きかけを行うなど、地域の精神科医療機関等との連携を図りつつ、そのカウンセリングや治療の効果について把握し、加害者のストーカー行為の再発防止のために効果的な方策について情報収集、検討を行ってまいりたいと考えております。
○塩川委員 この法改正に当たって、ストーカー行為等の規制等の在り方に関する検討会が開かれてまいりました。そのメンバーでもあります小早川明子さん、NPOヒューマニティ理事長、先ほどの質疑の中でも挙げられた方ですけれども、加害者の方の話も含めて、本当に被害をなくすという立場での取組をずっとされてきた方ですけれども、そういった都道府県警の取組などについても、ストーカーが望めば精神保健福祉士が警察署で面談をするという取組をやっている福岡県の例ですとか、ストーカーの治療費に補助を出すような京都府の事例なども紹介しているところであります。
 そこで、小此木国家公安委員長にお尋ねします。
 この小早川さんは、規制法の下で警察が警告を出すのはもちろんありがたいです、ただ、警察の介入が逆効果になる場合もあり得る、だから、警告するときは精神保健福祉士などの医療関係者やカウンセラーなどが加害者と会うようにする連携が必要だと思っています、あなたは警告を受けたけれども、苦しんでいるのではないですかとケアする人が必要です、本当は警察を出す前にカウンセラーなどが加害者と面談するのが理想的です、被害者が警察に相談する前に、ストーカー心理に詳しいカウンセラーと出会えれば一番いいのですがと述べておられます。
 こういった指摘についてどう受け止めておられるか、どのように取り組んでいくのかをお聞きします。
○小此木国務大臣 委員長、済みません、答弁の前に、先ほど、最初の質問のときに、公示送達の質問を受けたときに、国家公安委員会の規則と申し上げるところを規制と間違えました。改めて訂正させていただければと思います。
 お答えですが、警察においてストーカー加害者への警告等の対応を行う際には、加害者への接触の時期や方法について、警察の介入が逆効果とならないよう、加害者の性格、加害者と被害者等とのこれまでのやり取り等を踏まえ、加害者が警察の関与に対し反発するおそれを十分に考慮した上で決定することとし、警告等を行った後は、加害者の報復のおそれの有無等を考慮し、被害者等の所要の保護対策を講ずることとしておると承知しています。
 一方、ストーカー加害者の中には、被害者に対する執着心や支配意識から、検挙されてもストーカー行為を繰り返す者がいるところ、警察においては平成二十八年度から、ストーカー事案の加害者への対応方法やカウンセリング、治療の必要性について地域の精神科医等の助言を受け、加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医療機関等との連携を推進しております。
 今後とも、ストーカー加害者に対する精神医学的、心理学的アプローチについて、地域の精神科医療機関等との連携を図りつつ、そのカウンセリング、治療の効果について把握し、加害者のストーカー行為の再犯防止のために効果的な方策について情報収集、検討を行うよう警察を指導してまいりたいと存じます。
○塩川委員 このような被害者の相談体制の充実、また加害者の対策等々、ストーカー総合対策を踏まえての取組、十分、不十分ありますけれども、改善もしてもらいたいと思いますが、ただ、このストーカー総合対策そのものが二〇一七年の四月ということで、もう四年前なんですよ。この間、法改正も施行されたりもありますし、今回行われるわけです。
 是非とも、このストーカー総合対策そのものを、今の知見も踏まえて改定する必要があると思うんですが、是非やっていただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 ストーカー総合対策について、平成二十六年にすべての女性が輝く社会づくり本部が決定したすべての女性が輝く政策パッケージを受けて平成二十七年に策定され、その後、平成二十八年にストーカー規制法が改正されたこと等を受けて平成二十九年四月に改定されたものと承知しております。
 今回のストーカー規制法の改正や最近のストーカー事案の実情等を踏まえて、ストーカー総合対策の改定の必要性について、内閣府等関係省庁と検討するよう警察を指導してまいりたいと思います。
○塩川委員 是非、今の状況を踏まえたものとして改定を進めていただきたい。
 その点で、内閣府と警察庁の連携の話がありましたが、このストーカー総合対策を作成したストーカー総合対策関係省庁会議の事務局は内閣府と警察庁でありますが、定期的な会議などは行われていないということであります。是非、ストーカー規制法の運用状況をしっかりと把握をするという場が必要だと思います。そういった会議を定期的に行って、現場をよく知る関係者の方などもお招きして一緒に協議もする中で今後の素早い法改正などに対応していく、こういった定期的な会議の場をしっかりと設ける必要があるのではないか、この点についてお尋ねします。
○小此木国務大臣 ストーカー総合対策関係省庁会議について、その会議の構成員を内閣府、警察庁等の関係省庁の職員としているほか、必要に応じ、構成員以外の関係行政機関の職員その他の関係者が出席できるとされているものと承知しています。
 警察においては、平成二十七年三月にストーカー総合対策関係省庁会議において策定されたストーカー総合対策等を踏まえ、配偶者からの暴力に関する関係機関協議会の活用のほか、関連する被害者支援連絡協議会、被害者支援地域ネットワークなど、既存の地域における関係機関の協議会の活用を考慮しつつ、関係機関との連携協力を推進していると承知しています。
 委員お尋ねの会議は開催されておりませんけれども、ストーカー総合対策に基づく施策の取組状況については毎年関係省庁においてフォローアップしており、その情報共有を行っているところでありますが、今後、適切な会議の開催の在り方について、内閣府と検討を行うよう警察を指導してまいります。
○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。
 ありがとうございました。