【内閣委員会】国民はカジノ認めぬ/米国が法案要求/首相に撤回迫る

 与党が今国会での成立を狙うカジノ実施法案を審議している内閣委員会で、安倍晋三首相への質疑を行いました。わたしは、賭博であるカジノを収益エンジンにするIR(統合型リゾート)を経済政策に掲げることを国民は受け入れていない――として、同法案の撤回を強く求めました。

 同法案は2016年12月の国会で自民、公明、維新が強行成立させたカジノ解禁推進法を受け、政府の責任でカジノの運営解禁を定めるもの。成立すれば日本国内で、依存症、多重債務、地域社会の荒廃をもたらすことが懸念されるカジノが解禁されます。

 わたしは、直近の世論調査でカジノ解禁「反対」が「賛成」を圧倒していることをあげ、首相の認識をただしました。

 安倍首相は「(IRが)日本の成長戦略に資する経済効果を有することについてイメージの共有が道半ばだ」とのべ、カジノ解禁に執着する態度をとりました。

 わたしは、17年2月の日米首脳会談でトランプ米大統領が首相にたいして米国の巨大カジノ企業名を示したとされる報道(「日経」同6月10日付)を示し、事実を確認。

 首相は「トランプ大統領からそんな話はなかった」と答えました。

 さらに、この首脳会談当日の全米商工会議所・米日経済協議会共催の朝食会に米大手カジノ企業のトップが出席している。日本のカジノについての要望をきいたのではないか――と追及しました。

 首相は、自身が、成立したばかりのカジノ解禁推進法を紹介し、課題解決に協力すると意見があったことを認めました。

 ギャンブル依存症対策として検討されたIR施設内のカジノ面積規制が、米カジノ企業の意向に沿って緩和された疑いがある。米国側の要望などの資料提出を要求。カジノ企業の要求ではなく国民の声を聞け――と法案撤回を求めました。

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「議事録」
<第196通常国会 2018年06月01日 内閣委員会 24号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 安倍総理にお尋ねをいたします。
 IRというのは、まさに収益のエンジンとしてのカジノを行うもの、だからカジノ解禁ということになるわけですが、このカジノ解禁に国民の多数は反対の声を上げている、六割、七割以上の方々が反対だ。こういうカジノ解禁に反対の声が多数だ、その理由はなぜだと総理はお考えですか。

○安倍内閣総理大臣 先ほど来答弁をさせていただいておりますように、このIRについては、カジノにばかり焦点が当たっていることから、その弊害を心配される方が多いのではないか、このように思います。

○塩川委員 カジノが収益エンジンなんですよ。まさにカジノで成り立っているのがIRなんですから。そのカジノの解禁について国民は不安を持っている。その理由について、国民の声を率直に受けとめるのであれば、なぜそう国民が思っているのか、そのことについてしっかりと総理として受けとめるべきじゃありませんか。なぜ国民がそういう反対の声を上げているのか。

○安倍内閣総理大臣 そこは、まさに先ほど答弁をさせていただきましたように、さまざまな弊害を心配しておられる声があるということは承知をしております。
 そこで、カジノの設置については、依存症防止対策、犯罪・治安維持対策、あるいは青少年の健全育成対策として厳格な入場規制や広告・勧誘規制など、重層的かつ多段階的な措置を講じているところであります。
 政府としては、IR整備法案の策定に当たり、その制度の大枠について、パブリックコメントや説明会を実施し、国民の意見を丁寧に伺う機会を設けてきたところであります。また、今後、単なるカジノ施設ではない日本型IRのイメージを具体的に共有させていただくための全国キャラバンを実施していく考えであります。
 引き続き、国民に丁寧に説明を行うとともに、依存症防止対策などに万全を期しながら、世界じゅうから観光客を集める滞在型観光を推進してまいりたいと思います。

○塩川委員 いや、だから、いろいろな対策をとらなければいけないような弊害を生むのがカジノの解禁なんですよ。依存症ですとか、治安ですとか、青少年への影響を懸念する、こういった国民の不安の声があるからこそ、カジノ解禁に反対が多数なんですよ。そのカジノ解禁をまさに中核とするIRであるわけで、安倍政権が成長戦略として日本型IRの整備推進を掲げているわけです。
 依存症や生活の破綻などをもたらす賭博であるカジノを収益エンジンとするIR、これを経済政策に掲げることに国民は納得していないということじゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 納得していないということは、今、再三答弁をさせていただいたところでありますが、いわばカジノにばかりこれは焦点が当たることによって、弊害について心配をされる声がある、こういうことではないか、これが大きな理由ではないか、こう思うところでございます。
 私自身も、以前、シンガポールの二つのIR施設を視察してまいりました。カジノによるさまざまな弊害についてかなり厳格な対応がとられていることや、カジノの収益を活用して新たな雇用や文化への投資を生み出す、大変な国際競争力を有する異次元のリゾート施設となっていることを知り、IRのイメージについては私も大きく変わったところであります。
 日本型IRは単なるカジノ施設ではありませんが、依存症防止や犯罪、治安維持に万全の対策が講じられ、また、日本の成長戦略に資する経済効果を有することについて、イメージの共有が道半ばであると感じております。
 今後とも、国民に繰り返し丁寧に説明を行うことに注力をし、世界じゅうから観光客に来ていただけるような滞在型観光を目指していることに理解を得るよう努めてまいりたいと思います。

○塩川委員 いや、そのシンガポールのIRのもうけの七七%はカジノなんですよ。こんなカジノを中心としたようなビジネスが行われるということについて国民は納得をしていないわけで、カジノで地域経済振興、カジノで金もうけというのは国民は受けとめていない、こういうのは受け入れていないということを強く申し上げておきます。
 そこで、別な角度からお尋ねしますが、日本経済新聞の二〇一七年六月十日付で、昨年の二月の日米首脳会談について報じた記事がありました。ここでは、晋三、こういった企業を知っているか、アメリカで開いた二月十日の日米首脳会談、トランプ大統領は安倍晋三首相にほほ笑みかけた、日本が取り組むIRの整備推進方針を歓迎した上で、米ラスベガス・サンズ、米MGMリゾーツなどの娯楽企業を列挙した、政府関係者によると首相は聞きおく姿勢だったが、隣の側近にすかさず企業名のメモをとらせたとあります。
 これは事実でしょうか。

○安倍内閣総理大臣 まるでその場にいたかのごとくの記事でございますが、そんな事実は、これは全く、一切なかったということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

○塩川委員 にわかに、そういった話がないと言えるのかということで、その日は、朝、首脳会談に先立って、総理出席の、全米商工会議所、米日経済協議会の共催の朝食会が開かれていたわけであります。アメリカ側からは、ビジネスリーダーが十四名参加をしている。そのアメリカ側のビジネスリーダーの十四名の中には、ラスベガス・サンズの会長、MGMリゾーツの会長、シーザーズ・エンターテインメントのCEOなど、カジノ企業のトップが出席をしているわけです。その場に総理が出席をして、意見も聞いている。
 直接、日本のIRカジノについて、米国の企業から要望をお聞きになったんじゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 それは、全米商工会議所、米日経済協議会共催朝食会では、超党派の連邦議員や米国企業CEO等、日米関係のさらなる強化に向けて意見交換を行ったところであります。私からは、二〇一六年十二月にIR推進法が国会を通過し、公布、施行されたこと等を紹介したところでございます。
 参加者の中にはカジノ経営者が含まれておりましたが、統合型リゾート施設は観光立国を目指す日本にとって有益である点、また、IRに対する社会的懸念等の課題の解決に貢献していきたい等の発言があったところでございますが、そこにはトランプ大統領はもちろん出席はしていないわけでございますし、繰り返しになりますが、トランプ大統領との間においてはそんな会話は一切なかったということでございます。

○塩川委員 その具体的な要望の中身をぜひ明らかにしていただきたいと思っています。トランプ大統領の最大の支援者がこのラスベガス・サンズのアデルソン会長だと言われているわけで、そういう点でも、実態はどうかということをぜひ明らかにしていただきたい。
 この共催の朝食会での具体的なアメリカのカジノ企業の要望について、明らかにしていただけますか。

○安倍内閣総理大臣 急な御下問でございますが、今事務方に確認をいたしましたら、要望等は一切なかったということでございます。

○塩川委員 その辺については改めてお尋ねしたいと思っています。
 私は、今回のカジノ実施法案の内容において、当初、依存症対策のためにも一万五千平米というカジノ施設面積の上限規制があったのに、それを外してしまうという経緯があるということは、きょうの委員会でもただしたところであります。
 そういったときに、昨年の七月の取りまとめで出されていた一万五千平米という上限規制を結果として法案でなくした、その経緯の中で、この間、ラスベガス・サンズのアデルソン会長や、あるいはMGMの日本法人のエド・バワーズCEOなどが、こういった上限設定を外してくれとか、最低三万平米は欲しい、こういう要望を上げていたわけであります。
 そういう意味でも、私は、絶対値の規制をIR施設面積に占める割合に変えたというのは、依存症対策よりも、このようなカジノ事業者の要求を優先したと言わざるを得ないのではないのか。この点について、総理のお考えをぜひお聞かせいただきたい。

○安倍内閣総理大臣 今、突然の質問でございまして、午前中のやりとりについて私は聞いておりませんので、何ともお答えのしようがないわけでございますが、いずれにいたしましても、我々、先ほど申し上げましたように、しっかりとさまざまな懸念に対しては対応していきたい、こう考えておりますし、海外から多くの観光客がやってくる、そういう施設にしたい、このように考えております。

○塩川委員 カジノで金もうけなど、国民の理解は得られません。カジノ企業の要求ではなく国民の声こそ聞け、カジノ実施法案は撤回せよ、このことを申し上げて、終わります。