【内閣委員会】カジノ面積規制緩和/海外事業者が要求

 カジノ実施法がIR(カジノを中核とする統合型リゾート)施設内に置くカジノの面積規制が法案段階で緩和された背景となった資料の提出を求めました。

 法案の準備段階で、政府のIR整備推進会議「取りまとめ」では「依存症予防等の観点から…相対的な位置づけのみではなく、上限値(絶対値)でもカジノ施設の面積の規制を設けるべきである」とされていました。ところが2月から始まった与党協議で突然、絶対値の制限がとりはらわれました。この結果、IR施設全体を大きくすれば、いくらでも大きなカジノがつくれる仕組みとなりました。

 当初のカジノ面積規制案に米国のカジノ大手ラスベガス・サンズの会長が「われわれが望んでいたようなIRを実現できない」と強い不満を表明していた。海外のカジノ事業者の要求を優先したのか――と追及。

 中川真・IR推進本部事務局次長は「立地地域や規模が未確定なためだ」と答えました。

 根幹にかかわる問題だ。政策変更の経緯を明らかにし、与党協議の審議内容や政府提出資料などを開示すべきだと要求しました。

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「議事録」
<第196通常国会 2018年06月01日 内閣委員会 24号>

○塩川委員 
 次に、カジノの施設面積のことについてお尋ねをいたします。
 IR施設全体に占めるカジノ施設の面積に上限を設けるということですけれども、政令事項ということですが、どういう基準を設ける考えなのか、ここをちょっと説明してもらえますか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 IR整備法案では、カジノ施設の規模について、カジノ行為区画のうち専らカジノ行為の用に供される部分の床面積の合計が、ただいま委員から御指摘がありましたように、政令で定める面積を超えないことというふうにしております。
 この政令で定める面積についてでございますけれども、具体的には、我が国と同様に厳格なカジノ規制のもとで公共政策としてカジノを含むIRを整備し、一定の効果を上げているシンガポールのIRにおける実例なども踏まえまして、IR施設全体の延べ床面積の三%の面積とすることを考えてございます。

○塩川委員 IRの施設総面積に対して、カジノ施設の面積が三%を超えないことということでの説明がありました。
 重ねて伺いますけれども、昨年七月のIR整備推進会議の取りまとめでは、カジノ施設の規模の上限等の設定について、上限値(絶対値)でもカジノ施設の面積の規制を設けるべきであるとしていたわけです。相対的な位置づけのみではなく、上限値(絶対値)でもカジノ施設の面積の規制を設けるべきであるとしていたその理由は何ですか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 今、塩川委員御指摘の点は、昨年の夏に政府のIR推進会議での議論をIR推進会議が報告書として取りまとめた際の考え方だというふうに考えております。
 その際の議論は、先ほども援用させていただきましたシンガポールにおきましては、法規制としてはシンガポールは、シンガポールのカジノ管理法の政令に相当する法令におきまして、専らカジノ行為の用に供する部分、シンガポールのお言葉では、ゲーミングエリアという言葉を使っておりますけれども、そこの部分を絶対値として一万五千平米以下に規制をするという法制が既にございました。それを参考にして、IRの推進会議の委員での御議論を経て、推進会議の報告書として取りまとめられたものと理解しております。

○塩川委員 IRというワードそのものもシンガポールがつくったと聞いていますけれども、それでよろしいですか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 講学的に、IR、インテグレーテッド・リゾートという言葉の由来がどこにあるかということまでちょっと探求できてはおりませんけれども、確かに、シンガポールが二〇〇〇年代初めにこういう新しい政策の導入を議論した際に、二〇〇五年の四月だったと思いますけれども、リー・シェンロン首相の国会でのスピーチなどでインテグレーテッド・リゾートという言葉が登場していて、なお、その前には、例えば九〇年代などにはラスベガスなどではこのインテグレーテッド・リゾートという言葉は使われていなかったのではないかというふうに理解をしてございます。

○塩川委員 そういうように、リー・シェンロン首相がそういうワードも使いましたし、政策的な意図を持ってIRを推進したのはシンガポールであります。それに学んでいるのがこの日本ということになるわけです。
 そのシンガポールが、カジノ施設面積について、もともと、立地の場所との関係で逆算的に、そもそもカジノの施設面積が一万五千平米だよというところから出発しているわけですよね。それを総面積で比較をすると、三%になっているということですから。出発点は一万五千ということだったわけです。ですから、先ほどの答弁の中でも、絶対値として一万五千平米に限定するというシンガポールの法規制の例が紹介をされていたところだったわけです。
 ですから、昨年の取りまとめの段階では、相対的な位置づけのみではなく、上限値(絶対値)でもカジノ施設の面積の規制を設けるべきだと。そういう際に、シンガポールを参考に、一万五千平米というのが出ていたわけです。
 しかし、この法案の段階、政省令の話になっていますけれども、この上限規制、上限値(絶対値)というのは落ちてしまって、IRの施設床面積の三%以内という相対的な位置づけのみになってしまっているわけです。これはなぜですか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど御説明させていただきましたように、絶対値の規制を考えるべきだという議論は、IR推進会議の委員が、シンガポールの絶対値の規制を念頭に置いて、参考にしてまとめたものでございました。
 その際には、いろいろ議論がございましたが、シンガポールでは、この一万五千平米の規制を導入するに当たって、実は、シンガポール政府は既に、その規制をつくる前から、今、二つのIRが立地している二つの敷地とそこの大きさとを、あそこはいずれもシンガポールの国有地でございますので、国自身が選定をし、ここの場所に、この大きさの敷地のところにIRをつくってほしいという発注を出したわけでございます。
 したがいまして、お互い、一つはやや小さ目の敷地、もう一つはリゾート型の非常に大きい敷地ということになってございますので、そういう立地条件、敷地条件の違いがある中で、カジノの施設面積を有効に規制するには、専らカジノ行為に使われる部分を絶対値で規制するということになったんだというふうに考えております。
 一方、推進会議の議論では、そういうものも参考にいたしましたけれども、現時点におきましては、推進会議が取りまとめをまとめたときもそうですし、まさしく今議論をしているこの時点におきましても、日本のどこに、どういう敷地に、どういう大きさの敷地にIRが立地するかということが不明確、未確定でございますので、上限を絶対値にするという考え方もあるとは思いますけれども、敷地条件だとかが明確になっていない中で絶対値で上限を設定いたしますと、カジノ事業の収益を活用して整備されるIRの施設規模が制限される可能性もございます。
 そういう意味では、今、政府の考えでは、IR施設の延べ床面積の九七%をゲーミング以外の、ノンゲーミングの公共政策の目的に資する事業を行うものに当てたいという意図を持っているわけでございますけれども、そこの公共政策の目的がどの程度達成されるのかという上で制約要因になりかねないというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 それは逆さまなんじゃないですか。カジノの施設面積を広げたいという要求があるから、上限値(絶対値)を設けるということをやらないという話なんじゃないですか。
 そもそも、要するに、立地の地域、規模が未確定というのは、今答弁にあったように、今もそうだし、昨年七月の取りまとめのときも同じなんですよ。でも、昨年の取りまとめのときには、上限値(絶対値)が必要だよねということになっているわけですよ。それは、前提は、その文書にも書いてありますけれども、依存症予防の観点から、上限値(絶対値)でもカジノ施設の面積の規制を設けるべきだと。つまり、依存症予防の対策から上限値を設けましょうと言っているのが取りまとめだったんですよ。その限りでは、理屈のある話であるわけです。
 では、今のように、上限規制ありませんということになった場合には、この依存症予防の観点というのはどこに行っちゃったんですか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年の七月末に推進会議が報告を取りまとめた際は、上限値を絶対値として規制するという考え方も出しておりましたけれども、同時に、カジノ施設をIR施設のごくごく一部に限る、そういう相対的な、比例に基づく概念を組み合わせて考えるという形で意見を取りまとめているところでございます。
 したがいまして、依存症予防の観点からということでいえば、比例的に規模を規制していく、定率的に規模を規制していくということも含めて、依存予防の観点からの措置として意見が取りまとめられているところでございます。

○塩川委員 それはおかしいですよ。
 だって、取りまとめには、依存症予防の観点から、相対的な位置づけのみではなく、上限値(絶対値)でもカジノ施設の面積の規制を設けるべきだと、両方かけているんですよ。相対的だけじゃなくて絶対値上限値も、両方かけているんですよ。だけれども、法案ではこの上限値(絶対値)を取り払ってしまった。一体どういうことなのかというところが、議論の経過が全く見えてこないんですよ。そのところがまさに問われているということを言いたいわけであります。
 この点では、問われているのが、昨年の七月に取りまとめを行ったわけですけれども、その後にアメリカのカジノ資本からいろいろな要望が出てきております。
 昨年の九月の一日に、米カジノ大手のラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソン会長が大阪府庁を訪れて、府知事、大阪市長と会談をしました。アデルソン氏は、IR整備推進会議取りまとめを批判して、上限設定があると、カジノの収益で採算性の低い国際会議場や娯楽施設の運営が賄えず、我々が望んでいたようなIRを実現できないと述べていたということであります。
 絶対値規制を取り払ったというのは、こういったカジノ事業者の要求を優先したからじゃないですか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来の議論で御答弁申し上げておりますとおり、IR整備法案そのものの目的は、日本を世界に冠たる観光先進国に引き上げていく原動力となる制度をつくるということがございます。
 また同時に、世界最高水準の規制によって、依存予防ですとか、あるいは反社会勢力の排除といった、社会が持つ懸念事項に万全の対応をするという、この二つの目的があるわけでございます。
 先ほど来塩川委員が御指摘のカジノ規模の規制につきましても、先ほど御説明させていただきましたように、上限を絶対値にするという考えもございますけれども、立地規模だとか立地条件だとか、その規模が未確定である状況の中では、一定の上限値で、絶対値で上限を設定いたしますと、日本にできるIRがノンゲーミングの部分でどういう公益を達成することができるのかという、そのポテンシャルに対する制約要因になり得るという判断に基づくものでございます。

○塩川委員 いや、ですから、説明がわからないんですよ。委員長もそう思いませんか。
 そもそも、取りまとめでは、相対的な基準と絶対値上限値と、両方かけていたんですよ。それが、法案ではこの絶対値がなくなっちゃったんです。その経緯について説明がないじゃないですか。立地の地域が不確定だから、未確定だからと。それは、今だって去年の七月だって同じなんですよ。
 何でこんなことになったのか、この経緯についてきちっと説明してもらわなくちゃいけないんですけれども、今の答弁というのはそれを答えていないですよね。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年の夏に取りまとめられましたのは、推進会議の委員がまとめた、推進会議としての取りまとめでございます。
 その後、政府といたしましては、この推進会議の取りまとめについて、さまざまな方から、内外の方を含めて、意見をいただくためのパブリックコメントも実施いたしましたし、また日本の各地に出かけて説明・公聴会をいたしました。
 そういうパブリックコメントなどを踏まえて、寄せられた意見も踏まえて、政府の方で検討を進めた結果を先ほど来御答弁申し上げている次第でございます。

○塩川委員 いや、答えていませんよ。
 肝心の政策変更の過程というのがわからないんですよ。だから、政策立案過程をきちっと記録をして、それを保存し、そしてその後、公開をするという公文書管理法の基準から照らしても、こういう説明は納得いかない。
 実際、政策立案過程はどうなっていたのか、そういう文書を出してもらいたい。何で絶対値が落ちたのか、そのことについてはどんな議論を行ったのか、それをちょっと出してもらえますか。

○中川政府参考人 委員からの御指摘でございますので検討はさせていただきたいと考えておりますけれども、先ほど来申し上げておりますように、実施いたしましたパブリックコメントの結果などにつきましては、これまで政府が行ったパブリックコメントでは例を見ないぐらい、どういう意見がどれぐらいの数出てきていたのかということも含めて全て公開をしているところでございまして、政府といたしましては、これまでの制度設計の議論の透明性を確保するということにつきましては重々留意をしてきた所存でございます。

○塩川委員 パブリックコメントは、多数が反対なんですよ。
 そういう話じゃなくて、そもそも、絶対値上限値について落ちてしまったという、その政策立案過程の文書をしっかり出してもらいたいと重ねて要望します。
 その間には与党のワーキングチームが行われているんですよ。与党のワーキングチームでどういう議論をしていたかということもまさに問われているわけで、この核心となるような部分についてどんな議論をしたのか、こういうことというのは与党は責任を持って出していただきたいと思うんですよね。そこに当然政府は関連する資料も出しているわけですから、政府が出した資料もしっかりと出してもらって、絶対値上限値が落ちた、こういう経緯についてしっかりと本委員会に資料を提出していただきたい。
 このことについて、委員長に求めます。

○山際委員長 後ほど理事会で協議いたします。

○塩川委員 この問題を見ても、まさに二百条を超えるような新法というのが、介護保険法以来二十一年ぶりとかということでも言われているわけで、三百数十項目と言われる政省令もある。これは本当に、新法だから。改正案じゃないんですよ。一つ一つ、じゃ、政省令の中身がどうなっているのかという議論が必要なわけですよね。
 そういった意味でも、今言ったこと一つとっても、政令事項に落としている、そういう中身がどういう経緯でなっているのかということなんかもしっかりと審議しなければいけませんし、その前提となるような資料をきちっと出してもらうということは当然のことでありますし、二百条を超えるような法案、三百数十項目の政省令事項がある法案ですから、これは徹底審議をするということが必要だ。
 こういうことが、まさにこの問題について、国民の多数が反対なんですから、その反対の声があるからこそ、それをしっかりと受けとめる議論こそ、いわば与党であってもこれは議論すべき話であるわけで、地方公聴会を始めとした国民の声を聞くということを含めて徹底審議を求めて、質問を終わります。