【内閣委員会】カジノ法案/負の影響の検討必要/参考人質疑

 刑法が禁じる賭博場を解禁するカジノ実施法案を審議している衆院内閣委員会で、参考人質疑を行いました。参考人の陳述から、「カジノの負の影響が検討されていない」「地方創生の効果はのぞめない」など、同法案の問題点が多面的に明らかにされました。法案に賛成する美原融大阪商業大学教授は「カジノは健全な成人が自己責任で楽しむものだ」などと主張しました。

 反対の立場から鳥畑与一静岡大学教授は「カジノの高収益と『世界最高水準のカジノ規制』とは矛盾する」「カジノは人の不幸を最大化することで収益をあげる」と述べました。

 日本弁護士連合会の新里宏二カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ座長は、同法案をめぐり国民的な議論が尽くされていないこと、カジノの負の影響が検討されていないことなどをあげ、「カジノ解禁には反対する」と語りました。

 わたしは、カジノ事業者が客に賭け金を貸し付ける「特定資金貸付業務」について参考人に質問。

 美原氏は「金融機能を認めないとVIP客(高額をかける客)が来なくなる」と発言。

 鳥畑氏は「借金ができることで歯止めがきかなくなる」と述べ、新里氏は「貸金業法のルールとは別にカジノ事業者の貸金の仕組みをつくり、二重のルールで多額の貸し付けが起きる」と指摘しました。

 わたしがカジノの運営事業者についてたずねたのに、鳥畑氏は「経験があるということから当然海外の事業者が入ってくる」として、米国のカジノ運営企業ラスベガス・サンズのビジネススタイルを紹介し、「カジノ売り上げの35%前後は確実に海外に流出する」と答えました。

 立憲民主党の阿部知子議員が世界のカジノの動向をたずねたのに対し、鳥畑氏は「世界中のカジノ市場が縮小する中で海外のカジノ資本は新市場として日本進出に躍起になっている」と答弁。阿部氏は「日本の高齢者がカモネギのようにされるのに反対しなければならない」と語りました。

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「議事録」
<第196通常国会 2018年05月31日 内閣委員会 23号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、四人の参考人の皆様に貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。
 早速質問をさせていただきます。
 今ちょうど、最後に、新里参考人から、カジノ事業者に係る貸付けの話がございました。その関係で、美原参考人、鳥畑参考人、そして石川参考人にお尋ねをいたします。
 本法案では、カジノ事業者が顧客に金銭を貸し付ける業務が規定をされております。その点、依存を助長し、過剰貸付けとなる懸念があります。顧客の利便性向上のためという説明ではあるんですけれども、お金を事前に預託するということはあっても、貸付けまでする必要があるのかという懸念はあるんですが、このようなカジノ事業者による金銭貸付けというのは不可欠なのか、この点についてお尋ねをいたします。

○美原参考人 お答えいたします。
 実は、この貸付業務というのは、通常の一般国民を対象にしたものではございません。カジノ管理委員会が別途定める一定金額以上の金額を預け入れる者。相当な高額だと思ってください。この対象は、富裕層と呼ばれるVIPを対象にしたものでございます。
 なぜでございましょう。
 都議会で、バッグに何千万円を積み込むようなショーケースがございました。一億円をバッグに積んでください。十キロ以上で、持てません。
 実は、高額富裕層をカジノに招聘するためには、彼らは金を一銭も持ってこないわけです、彼らに対して高額消費をさせるためには、あくまでも限定的に現在の金融業法を逸脱するような形にして、同等の規制をかけながらVIPに対して利便性を供与することが、VIP顧客を日本に招致する唯一の方法だからでもあるわけです。
 繰り返し申しますが、依存症等の対策等に関しましては、これら富裕層にも共通して適用する項目でもございます。ただし、かけ金額の前提というのは、一般の国民とは全く違った行動パターンをしますので、それをもし認めないとするならば、我が国のカジノにはVIP顧客は一人も来られないという結果になるわけです。
 あくまでも、厳格な規制のもとに、特定の対象者をもとに認めるということでございまして、一般国民に対して特定金融業務といった形で金を貸し付けるということは、当然のことながら好ましくないものと判断しております。

○鳥畑参考人 お答えさせていただきます。
 例えば、アメリカのゲーミング協会が責任あるギャンブラーといったときに、自分で時間を決めて、自分でかけ金額を決めて、予算を決めて、それをオーバーしたときにやめることができる。
 ところが、実際に各地、世界、いろいろなところに行きますと、例えばシンガポールであれば、すぐ外にATMがありますから、予定した金額をオーバーして、やめようと思ったけれども誘惑に勝てなくて、外に一遍出てATMというような形で、結局、借金できるということが歯どめをなくすわけですね。これは、井川大王製紙会長の「熔ける」という本を読めば、非常にはっきりしている。
 その貸し付けるといったときに、恐らく、例えば、ジャンケットに任せて、ジャンケットがお金を貸すという場合がある。アメリカのカジノ事業者のアニュアルレポートなんかを読みますと、国によってはギャンブルでの負けを債権として保護してくれない国がある、中国のようですが。そうしますと、中国の富裕層を呼んで、金を貸し付けて、大負けをさせる、その取立てというのは法的に保護されませんので、それなりのノウハウを持ったジャンケットに任せるしかない。
 日本では、ジャンケットは認めません。当然、一定の要件をもって、一定の資産、信用調査をして、もちろん対象を限定するわけですけれども、そこにお金を貸し付けて、負けた場合は取り立てる。
 例えば、私、昨年九月にラスベガスに行きまして、ちょうどスティーブン・パドックの乱射事件の時期と重ね合わさったんですが、彼は、ビジネスで資産を蓄えまして、引退して、ラスベガスでカジノにはまった、ポーカーですけれども。一定の資産がありますので、信用枠ということで主要なカジノ企業からお金を借りて、できていた。ところが、やはり財産を費消しますと、もうそうやって遊べなくなるわけですね。
 こういう、特定金融業務という形で、資産評価して、この客は財産があるからこれだけ貸すよということは、結局そこで、借金の取立てということでその人の財産を奪っていく危険性が非常に高い。そういった意味では、日本のある意味富裕層といいますか財産を持った人を対象にしてビジネスをする仕組みであろうというふうに考えております。

○石川参考人 美原参考人の意見に私も全く同意見でありますが、一点つけ加えさせていただきます。
 依存症、これは貸付けの問題もそうですが、一番の利害関係者はむしろ民間の事業者、カジノ免許事業者でありまして、自分の施設から依存症、借金、債務問題、そういった問題が発生しますと自分たちのレピュテーションにかかわる、事業上の大きなリスクになりますので、今、世界の流れでは、事業者が積極的に、むしろ事業者が一番積極的にと言っていいかもしれませんが、そういったプログラム、場内の見回り、与信の管理ということをみずから、法律で義務づけられていない国もありますので、そういった国でも、事業者みずからプログラムをつくってモニターしているというのが実際であろうというふうに理解しております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、新里参考人にお尋ねをいたします。
 新里参考人、お話の中にもありましたように、多重債務問題に取り組んでこられた。そういう中で、お尋ねしたいのが、公営ギャンブルやまたパチンコなどの既存のギャンブル、その害悪、弊害、これはどのようなものか。その辺について、いろいろ御体験を通じてお考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

○新里参考人 先ほど述べましたように、三十六年弁護士をし、ほとんど多重債務の問題に取り組んできた中で、何度も何度も借金をつくって、整理をするんだけれども、結局、僕らも叱っていたんです、どうしてこんなばかなことをするんだ、家族が泣くじゃないかといって。だんだん家族がなくなっていき、そして会社もなくなっていく、その中で自殺した人も体験しました。まさしくギャンブル依存症による借金で自殺につながる。
 実は私、江原ランド、韓国の唯一の自国民が入るところにも行きましたけれども、そこで、一番近くの駅のところにワゴンカーがあって、どうもそこに女の子のポスターがあって、お父さん、お母さん、自殺しないでくださいと書いていました。まさしく江原ランドの中で、数年間で四十八名の方が自殺をする。まさしく借金をつくって自殺をしていくということ、それが大変な悲劇。
 そして、日本が非常に今、三百二十万人というギャンブル依存症が疑われる方、三・八%程度ですけれども、これは諸外国と比べて大変多い数字でございます。
 ちょっとだけ、先ほどの件ですけれども、一番問題なのは、一番大事なのは、幾らお金を預けるかということについての基準が政令等に委任されていてわからないということなんですね。だから、美原先生が言ったことは、カジノ管理規則をわかっていればそういうことかもしれません。ただ、それでも、結局、千八百兆と言われる個人の金融資産が狙われるということではある。それが庶民の方まで下がってくるかどうかというのはよくわからない。ただ、日本でこれまで事業者が貸付けをするということは認めてこなかった、それと大変矛盾するんだというふうには考えております。
 以上です。

○塩川委員 続けて新里参考人に伺います。
 日本における公営ギャンブルやパチンコなどのギャンブルの害悪の話をいただきました。また、海外の事例で、江原ランドのそういった具体的な呼びかけの話なんかもあるわけですが、その他の海外の事例、例えばシンガポールですとか、カジノの害悪、社会的弊害などについて、お聞きになっているようなことがありましたら御紹介いただけないでしょうか。

○新里参考人 私は、江原ランドだけじゃなくて、シンガポールの方にもお邪魔してきました。二カ所のカジノのところに行ってきましたけれども、やはり高齢者の方が非常に多くて、中国系の方が非常に多いなという印象を持ったところでした。
 市民グループの方と、大変相談が多くなってきているということで、牧師さんがやっている市民グループのところに相談に行きましたけれども、牧師の中まで、やはり借金をつくってしまって、仲間で一回お金を出してやったんだけれども、その後、また船上カジノをやって、結局、もう協力しないと言って投身自殺をされたということで、反対運動もされたということを聞きました。
 そこで出てきたのは、やはり日本で言う闇金が大変ばっこしているということを聞きました。韓国でもサチェという私金融、闇金がばっこしているとも聞きましたし、それから、シンガポールではローンシャークという闇金がばっこしているということも聞いております。そのように、正規のところから借りられなくて闇金まで追われていく、そういう状況がシンガポールでも出てきているということを聞いてまいりました。
 以上でございます。

○塩川委員 続けて新里参考人にお尋ねいたします。
 カジノ事業者に貸付業務を認めるという今回の法案についての懸念を述べていただいたわけです。
 制度設計のつくり込みのところでいえば、カジノ規制委員会の規則、政省令のところに落としていくということで、こういう議論をこの後しっかりこの委員会でもやっていかなければならないと思うんですけれども、貸金業法と同等というんですけれども、同等であれば貸金業法を適用すればいいと思うんですが、そうなっていないという点で、これが一体どういうふうになるのかというところではいろいろな心配もあるわけですけれども、その辺について、お考えのところがあればお聞かせいただけないでしょうか。

○新里参考人 貸金業法では、収入の三分の一規制という格好で、収入証明書を出して進めるということですけれども、今回は、収入だけではなくて資産も含めて行われるということで、どうも規制が違っているのではないか、多くを貸せるような仕組みになっているのではないか。
 それから、当然に、貸金業法の場合については、収入の三分の一ということで決まっていて、信用情報を見て、既存の借入れがどのくらいあるかということで、もうきちっとわかるわけですけれども、今回は、上限についてカジノ事業者が定めるという格好になっていて、これについても、カジノ管理委員会の規則に方法が委ねられていて、それがどうなっているのかが十分わからない。
 そういう意味では、カジノ管理委員会規則とともに見ていかないと詳細はわからないけれども、どうも、二重のルールにして、ここでは多額な貸付けができるような仕組みが検討される。そうでなければ貸金業のルールでやったはずですから。そのように考えております。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、鳥畑参考人にお尋ねをいたします。
 海外の事例、ラスベガスの話などもお聞きいたしました。
 日本がいろいろモデルとしている際にはシンガポールの例を出されるわけですが、その収益の柱、収益のエンジンというのはもちろんカジノであって、それは七七%とかという例があります。一方、ラスベガスの場合にはそれが少し低いような話なんかもお聞きしているわけです。
 ラスベガスの話なんかも聞きながら、収益の三分の二がカジノ以外だという話も聞きますけれども、カジノに依拠しないビジネスモデルとなり得るのか、その辺について、お考えのところを少しお聞かせをいただけないでしょうか。

○鳥畑参考人 IRの場合にカジノの面積規制がありまして、日本では三%、シンガポールでは一万五千平米ということで、カジノは面積的にはほんの一部だというふうに言われているわけですけれども、きょう、お手元の図表の十五のところ、シンガポールのカジノ収益の構成を見ますと、マリーナ・ベイ・サンズそれからリゾート・ワールド・セントーサあわせて、やはりカジノに対する収益依存が七割から八割ということなんですね。
 それから、カジノが収益エンジンである、さらに、収益を還元するというのはどういうことなんだろうということで、その上の図表の十三をごらんになってください。
 もうとにかくカジノのもうけでさまざまな価格サービスを行ってお客さんを誘引するということになります。例えば、アトランティックシティーで最も典型的なIRと言えるボルガタですか、ここは、例えば二〇一七年はカジノのもうけの三二・七%をいわゆるコンプに使い、そのコンプで、部屋であるとか食事であるとか飲物であるとか、さまざまな料金サービスを延べ千二百七十七万人に対して行って引き寄せるということなんですね。
 さまざまな形でこのコンプというサービスを通じてお客さんを誘引して、それをカジノに誘導して、遊んでとにかく金を使ってもらう、これがIR型のカジノビジネスのたてつけといいますか仕組みなわけです。
 では、統合型リゾート、IRといった場合に、本当にカジノがなければ成り立たないのかということについては、少々疑問に思っているわけです。
 例えば、この春に、横浜の横浜港運協会の方にお伺いしました。山下ふ頭の再開発、あそこで四十七ヘクタールぐらいの土地ができる、あそこで十分MICEだけでビジネスが成り立つ、我々は、カジノのないIR、MICE中心のIRで十分やっていくんだという計画を打ち出しておりますと。これは、実際に、そういう会議、展示協会ですか、その業界とコンサルをやった上で、十分収益として成り立つということで進めているわけですね。
 そういった意味では、本当に観光資源が豊富な日本において、カジノがなくても、カジノがないIR、可能じゃないか、そういう意味で創意工夫を凝らすべきじゃないかなというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて鳥畑参考人に伺いますが、日本型IRの場合に運営事業者はどうなっていくんだろうかというところがあるわけですけれども、日本の事業者というのはそもそも想定されるのかというところが率直に思うわけです。
 こういったように、まさに、カジノが収益のエンジン、カジノに精通をしているということがその核心ということになった場合に、日本の事業者でそのノウハウを直接持っている者はありません。そういった際に、やはり日本型IRの運営事業者が海外のカジノ資本とならざるを得ないんじゃないのか。その辺については、いろいろお聞きしているところでお話しいただけないでしょうか。

○鳥畑参考人 在日アメリカの商工会議所がこの問題について提言を出しております。IR事業者の選定においては、経験が豊富であるということを重視すべきであるということを言っているわけですね。
 実際、IRをつくる、では、その成功というのは、やはりカジノ収益、収益エンジンとしてのカジノということで、そこのビジネスといいますか、経験、ノウハウが豊富な海外の大手のカジノ事業者が優先的にとっていくんじゃないか。
 大都市部では、いわゆるビッグフォーと呼ばれるような、例えばラスベガス・サンズであるとかMGMとかが有力視されると思いますが、地方では、アメリカの中堅カジノ事業者が積極的に働きかけているということなんですが、やはり日本の企業がカジノ事業というところで食い込んでいくことはできずに、その周辺の、ホテルとか周辺のところで何とか参加していくような形になっていくんじゃないかなというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 それとの関連で、先ほどもお話に出た収益の海外漏出の話というのが出てくるということで、日本国民を対象とするようなビジネスで、さらには株主還元ということを考えれば、海外資本となれば本当に日本に富が集まってくるのか、そういう懸念というのがあるわけですが、その点について一言伺って、終わりにしたいと思います。

○鳥畑参考人 先ほども少し紹介をさせていただきました、例えばラスベガス・サンズがどういうビジネスをやっているんだということで、ラスベガス・サンズの収益構造ということで図表十を示しております。
 よく、海外資本による投資、百億ドル規模で投資してくれる、今どきそんな投資機会はないんだよということが言われるわけですけれども、そういう投資、例えば百億ドルがあれば、それが五年とか六年で回収されていくという意味では、それが海外資本による投資であれば、海外に回収をされていく。
 さらに、運営において、ただ、ラスベガス・サンズは非常に高い収益率目標を設定しているわけでして、実際、純益率は二〇%をクリアしております。その利益を、ほとんどといいますか、実態的にはそれを上回る収益還元を株主、要するにアデルソン一族と海外ファンドに還元をしていくということになるわけです。
 そうしますと、その中のEBITDAというのがありますが、いわゆる償還であるとか還元前の利益ということですが、これがラスベガス・サンズの場合は大体三五%前後ということになるわけですが、ここに相当する部分は確実に海外に持っていかれるという点であれば、要するに、海外の純粋な外国客、外国ギャンブラー獲得で上げた利益の部分がこの部分を超えない限り、海外流出の方が多いという話になってしまう。
 もちろん、さまざまな資材を地元で調達しているかどうか。江原ランドの話では、江原ランドは、地元で、ローカルでいろいろな資材を調達しない、非常に外からいろいろ安い資材を調達しているので、地元経済にはそういう意味では貢献をしていないという話もあるわけです。
 以上です。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。

 


「しんぶん赤旗」6月1日付・4面より

カジノ法案/参考人質疑の意見陳述 

 衆院内閣委員会で31日に行われたカジノ実施法案についての参考人質疑での、静岡大学の鳥畑与一教授と、日弁連カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループの新里宏二座長による意見陳述(要旨)は次の通りです。

依存症対策が形骸化/静岡大学・鳥畑与一教授

 IR(統合型リゾート)型カジノは、日本経済の発展、地域社会の安定と振興に逆行します。

 政府は、カジノ単独では刑法の賭博禁止の違法性を阻却できないが、IRのなかに組み込んだカジノは違法性を阻却できるとしています。

 その論拠は、カジノの高収益で世界最高水準の国際会議場、展示施設や宿泊施設等を備えたMICE(マイス)が実現し、観光振興や巨大な雇用と税収の実現などの経済効果が生まれるというものです。

 カジノの収益性の水準がIR型カジノの経済効果を左右する仕組みで、不可避的に「世界最高水準の依存症対策」とは矛盾します。

 今国会でも巨大なMICE施設が国民負担なしに実現するとの説明がされていますが、ギャンブルの負けという国民犠牲のうえに民間の投資が回収されるというのが実態ではないでしょうか。

 経済効果をカジノの高収益性に依存するIR型カジノは必然的に依存症対策を形骸化せざるをえません。

 入場料徴収は、入場料も含めた負け額を取り戻せると信じる依存症者の行動を促進することはあれ、抑制することはありません。

 週3回・月10回という入場回数制限は、72時間連続カジノづけを容認することであり、年間120回の入場を認めるということです。

 世界最高水準のカジノ規制というならば、欧州におけるギャンブル継続時間や賭け金額の制限、事前に賭け金額を決定させるなどの規制を導入するべきです。

 今回の法案は、公設・公営・公益のギャンブルのみ認めるというこれまでの方針を百八十度転換させるものです。カジノ事業者の私益を追求しながらその利益の一部が納付金や寄付等で社会還元されることをもって、カジノ事業者の利潤極大化行動を公益性で粉飾することはできません。

 今この段階での経済効果と社会的コストの評価をすべきです。

 IR型カジノがなくても国際観光客が増大しているいま、そもそもカジノ合法化がIRにとって不可欠なのかという根本にたちかえった議論が必要です。

国民の理解得られず/日弁連カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ・新里宏二座長

 日本弁護士連合会では2014年5月、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律、いわゆるカジノ解禁推進法に反対する意見書を発表しています。

 カジノ解禁には暴力団対策上の問題、マネーロンダリング対策上の問題、ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響など多数の弊害があることを理由にしており、一貫してカジノ解禁に反対です。

 本法案(カジノ実施法案)に反対の立場から四点について意見を述べます。

 第一は国民的議論がつくされていないことです。政府の推進会議のとりまとめについて昨年8月、一般からの意見募集が行われましたが、カジノ解禁に反対が67.1%にのぼるなど、これまでの世論調査とほぼ同様の結果があらわれたといってよいと考えます。

 第二にカジノ解禁について負の影響の検討が不十分な点でございます。推進会議や本法案でも経済効果や地方への波及効果は述べられておられますけど、負の影響についての記載がなされておりません。したがって、経済効果から負の影響を差し引いて真に経済的効果が期待されるかは定かではないといえます。

 第三にカジノについて「世界最高水準の規制とはいえない」ことです。

 第四に、カジノ解禁について違法性の阻却ができるとは考えられないことです。

 本法案の85条以下で、特定資金貸付業務として、カジノ事業者に貸し付けの業務を認めております。

 これまで日本の公営ギャンブル、パチンコで、事業者が現場で貸付することはあってはならないと考えられてきました。ギャンブル依存症に直結するからにほかなりません。この部分が、これまでの公営ギャンブルの違法性阻却との関係で大きく逸脱していると考えます。国民の理解を得られないカジノ実施法案には反対させていただきます。