【内閣委員会】ギャンブル依存症対策/予防が重要/事業者への規制を

 ギャンブル(等)依存症対策基本法案について参考人質疑。

 意見陳述で、日本弁護士連合会カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ事務局長の三上理氏は「ギャンブル依存症対策として、依存症の進行の防止や回復ももちろん大切でありやらなければならないことだが、一番大切なことは予防であり、新たに依存症者を生み出さないことだ」と述べました。

 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表理事の田中紀子氏は「依存症対策予算は6.1億円(2018年度)。そのうち民間団体への支援は1800万円しかない。民間団体は大きな役割を果たしているが、あまりにも公的支援が少ない」と述べました。

 わたしは、カジノを解禁すれば、新たな依存症者を増やすことにつながるのではないか――と質問。

 三上氏は「依存症対策について法律を作って、対策を進めていこうというときに、新たにカジノを作って、新たな依存症の人を増やしていくというのは非常に大きな矛盾だ。カジノが経済対策として効果があるという意見があるが、カジノの儲けは負けた人のお金であり、人の不幸をもとにした経済政策には反対だ」と述べました。

 さらに、依存症対策には、ギャンブル事業者への規制が必要ではないか――と質問。

 三上氏は「予防として一番大切なことは、時間的・場所的にいつでもどこでもギャンブルが身近にある状況を変えることだ。公営ギャンブルやパチンコなど、すべてのギャンブルを対象にした入場制限や自己申告・家族申告の制限などに加え、パチンコの出店規制も必要だ」と述べました。

衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」
<第196通常国会 2018年05月24日 内閣委員会 20号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 三人の参考人の皆さんには、それぞれ貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
 私の方からは、やはりギャンブル依存症の問題を考える際に、今政府が提出をして審議に入っておりますIR実施法案、カジノの解禁について、まずお尋ねをしたいと思っております。
 三人の皆さんにそれぞれお尋ねしたいんですけれども、やはり、ギャンブル依存症者を減らそうという今回の法案ではありますけれども、新たにギャンブルをつくるという仕組みになるわけです。そういう点で、制度設計上、世界最高水準のカジノ規制ということも言われているんですけれども、このIR実施法案におけるカジノ規制についての評価について、お三方にそれぞれお答えいただけないでしょうか。

○西村参考人 この会は、いわゆる依存症対策のところなので、カジノの規制について私がお答えするのはどうかと思うんですが。
 現在、実施法等の中で依存症対策という名前の中で行われているものが、一体どの程度本当に実効性があるのか。それから、海外での対策をしてきたエビデンスのレベル、また研究者の目から見ると、やはりかなり奇異に見える部分があるというところがあります。そこはやはり、世界最高水準ということ、国内の事情もありますが、世界の評価というときには、これはどうなのかなというのは正直感じる部分はあります。
 あとは、カジノというのとIRというのは本来私は別のものだと思っておりまして、IRのないカジノもありますし、IRのあるカジノもありますし、カジノのないIRもあるので、そこの部分は少し、規模もあるので、一つを置いて全てカジノの中の対策、依存症対策というと、余りにもざっくりし過ぎていて、今度、国内における規模の中におけるフロア内の問題か地域の問題かというふうに少し分けていかないと、なかなかこの問題の規制の効果というのを評価するのは難しいかなというふうに思っております。

○田中参考人 ありがとうございます。
 実は先生、私、はまったギャンブルが競艇とカジノなんですね。なので、カジノのことはすごく本当にかつて大好きだった人間として申し上げますが、入り口でやられている規制、いろいろ出てきている規制というのは、あれはギャンブラーにとって余り意味がないかなというふうに思っています。
 六千円の入場料みたいなものというのは、こちらは、やはりカジノに行ったときは何十万、何百万取り返してやろうと思って行っているので、六千円ぐらい取ったからといって、別にどうということないなというふうに思っちゃうんですね。
 あとは、入場規制といっても、本当に月何回というのが果たして効果があるのか。日本には、それこそ闇カジノもたくさんありますし、やろうと思えばオンラインカジノもありますし、そもそも海外に行けばいいことなので、あの入場回数の制限というのが果たして効果があるのかなというふうにも思っています。
 唯一、入り口の規制で効果があるなというふうに思うのは、家族と本人の申告です。あれは、やはり海外でもエビデンスありますよ。私たちの経験からいっても、あれは効果があるんじゃないかなというふうに思っているんですね。
 何よりも、何かお金の話ばっかりして、あいつ、金が欲しいのかなと思われていないかと思ってちょっと心配なんですけれども、やはり海外のカジノというのは、〇・一%から〇・五%の、売上げからギャンブル依存症対策費に回すという明示があるんですね。でも、今度の制度設計でもやはりそれがないということで、結局、公益に回すみたいな感じになっているんですけれども、その公益の中にギャンブル依存症対策が入っていないわけですよね。なので、私たちとしては、そこが一番片手落ちじゃないかなというふうに思っております。
 元ギャンブラーの経験からですけれども、以上です。

○三上参考人 入場回数制限について、一週間三回、月十回という制限が依存症対策になるのかどうか、入場料六千円という金額がカジノ施設に安易に入場することを抑止する効果を持つのかということについては、非常に疑問を持っておりますし、そういう依存症対策としての効果があるとは言えないんだろうというふうに思っております。
 何よりも、今ここで依存症対策基本法案について審議されて、依存症というのが非常に深刻な問題になっているということを踏まえて、これから基本計画をつくって各種の取組を進めていこう、実態把握等をやっていこうというときに、新たにカジノをつくって新たな依存症の人をふやしていくというのは、非常に大きな矛盾なんだろうというふうに思っております。
 以上です。

○塩川委員 それぞれ貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
 私は、きのうの質疑の中でも、法案の提出者の方々に、この法案はギャンブル依存症の方を減らしていこうという法案ですねということを、そうですという確認をいただいたわけです。その場合に、既存の公営ギャンブルやパチンコなどもある、それに新たに、刑法で禁じられている賭博を解禁する、カジノを導入するということは、これは相入れないんじゃないですかということもお尋ねしたんです。
 ですから、今回の法案とまさに密接にかかわっているのがカジノ解禁を核とするIR法案であるわけです。私、率直に、カジノを解禁すれば、新たなギャンブル依存症者をふやすことにつながると思いますので、お三方にお尋ねしますが、こういったカジノ解禁はやめるべきではないかと思うわけですけれども、お三方の御意見をお聞かせください。

○西村参考人 これにつきましては政治的な判断ですので、どうあるべきかというのはなかなか難しいんですが、ただ、対策をとっている側としては、現実問題、カジノができたエリアで対策を重点的にやっているところでの、ギャンブルの依存の問題を持っている人たちが開設前よりも減っていくという問題、それから治安の改善等々、やはり産業がある程度地域に投資をしていくということで社会問題をある意味起こす部分と抑止する部分というものが、これは両方、両面あると思うんですね。
 いかにその部分がバランスよくされるかであって、それが基本的に、カジノであろうが町の工場であろうが、どんな産業であれ、そこに来れば、例えば、私は沖縄にいますが、沖縄はインバウンドで今経済を活性化させております。その結果、何が起こっているかというと、今、感染症の問題が出ております。これは引き受けざるを得ない問題なんですね。
 何をとるかというのは、それは今後の、国益の問題であって、その中の一つとして、カジノというよりもIRというものを使う、そこは、やはりそれなりの覚悟の上で対策をしていくということであれば、いかにイニシャルの、今ある問題をより減らす。さらに、ギャンブルだけではなくて、他の、福祉財源がなくなっていく中でこれを活用するか、そこは知恵の問題であって、純粋にカジノがよいか悪いかという話だけでやはり議論するべきではないというふうに思っております。

○田中参考人 ありがとうございます。
 私も、本当にギャンブル依存症者として思うことは、やはり、もしカジノができたとしたら、相当今ある既存ギャンブルに対しても規制がかけられるようであれば、総体的にギャンブル依存症を減らすことができるというふうには思います。
 例えば、今マイナンバーで管理するみたいなことがカジノで出ていますけれども、あれを、マイナンバーとかはやめて、もうちょっと出回っている運転免許証とかその程度の身分証明書で、パチンコとか競馬とか公営競技にもきちんと、機械を開発して年齢制限なんかをきっちりできるぐらいのことまでできれば、総体的にギャンブル依存症を減らすということはできるんじゃないかなというふうには思っています。
 息抜きとしてギャンブルということを楽しみたい人たちがいるという気持ちは本当に重々わかるんですけれども、本当に依存症対策がどの程度できるかというところ、そこがどこまで踏み込めるかということがカジノの是非にかかっているのではないかなというふうに思っております。

○三上参考人 先ほど述べましたけれども、依存症対策についてこれからやっていこうというときに新たなカジノ施設をつくることは矛盾であるというふうに私は考えておりますし、少なくとも、今、特定複合観光施設区域整備法案として提出されているものについては、依存症対策は不十分であるというふうに言わざるを得ない内容だと思っていますので、これをつくることによって依存症の人が減るということはあり得ないだろうというふうに思っております。
 カジノについて、高い経済効果が期待されていると言われていますけれども、そこで期待される経済効果の中身は何かというと、突き詰めれば、単純に言えば、ギャンブルで負けた人のお金ということになるわけで、依存症の人をふやしていくことによって経済効果を上げる。それだけの経済効果を上げるためには、それだけ多くの人の生活が破壊されることになる。人の不幸をもとにして経済効果を上げるという経済政策でいいのかどうかということについては、私は反対意見を持っております。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、田中参考人にお尋ねします。
 依存症者の団体をつくられて、支援を行っておられる。そういう点では、アルコールと薬物とそしてこういったギャンブルと、それぞれ団体の方がやっていらっしゃる、いろいろな努力をなされておられるわけです。
 そういった依存症に係るような、そういう自主的な運動をされておられる方同士の連携といいますか、それぞれの役割とそういう連携と、その持つ意味も大きいのではないかなと思うんですが、そういう点での体験、経験などを踏まえて、お聞かせいただけないでしょうか。

○田中参考人 ありがとうございます。
 本当に、カジノのこの問題が出てギャンブル依存症対策ということが言われるようになって、初めて私たちも、アルコール、薬物、ギャンブルの御家族が連携するということが始まったばかりなんですね。
 それで、やはりギャンブルの基本法ができたら、アルコールはできたし、ギャンブルはできたし、次は薬物というふうに、私たち、悲願として考えております。そして、依存症ということが包括的に社会の中で認知されていけばありがたいなというふうに思っております。
 ただ、薬物の御家族というのは、なかなか声を上げたりとか、やはり違法であるということがあるので、顔出しで発言したりということはできないので、アルコールとかギャンブルの家族がその分を助けていくというようなことは必要ではないかなというふうに思っている。
 やはりアルコールに関しては社会が受け入れている部分というのもすごく多くて、それがよしあしなんですけれども、アルコールというのはたくさんの味方がいるんですね。お医者さんもたくさんかかわっていらっしゃいますし、何より議連もありますし、ほかにも、長い歴史があって、断酒会さんという地域に根差した活動をされている方たちがいて、またそういう方たちがたくさんの連携や知恵を持っておられるということがあるので、私たちのような、本当に今始まったばかりのギャンブルとか、あと、なかなか声を上げられない薬物というのは、アルコールの方々が敷いたレールに乗るというか、そこで耕していただいた土壌を使わせていただくということで、大変恩恵を受けております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 三上参考人にお尋ねいたします。
 日弁連のギャンブル依存対策推進に関する意見書で、ギャンブルとの物理的、精神的近接性の排除をギャンブル依存対策の重要な柱の一つとすべきことという話のところであります。
 依存症が疑われる方々に対してのさまざまな相談活動ですとか支援を行うと同時に、やはりギャンブル事業者に対する規制というのをしっかり行っていくということが必要だろうと思うんですけれども、こういう点で幾つかの例示もされておられるわけですが、その中身はどのようなものなのか、また、その意味するところがどういうことなのか、こういうことについて御説明いただけないでしょうか。

○三上参考人 やはり依存症対策、予防という意味で一番大切なのは、今のように、時間的、場所的に、いつでもどこでもギャンブルが身近にあるという状況を変えていく必要があるのではないかというふうに思っております。
 そういう意味では、ギャンブル事業者のCMがテレビで普通に流されていると子供も目にするということがあり、駅前のすぐ近くにパチンコがあって、そこからにぎやかな音が聞こえてきて、子供と一緒にその目の前を通るというようなことがあり、子供のころから身近にギャンブルがあるという状況で育っていくことについては、非常に問題が大きいのではないかというふうに思っておりますというのが一点です。
 もう一点は、入場回数制限等入場制限という問題になってきますけれども、やはり全てのギャンブルを包括した形での入場回数制限等というのはあるべきだと思いますし、自己申告、家族申告による制限というものも、カジノだけではなくて全てのギャンブルを包括したものとしてやっていく必要があるんだろう。
 あるいは、収入に応じてかけ金額の上限を決めるとか、いろいろ、いつでもどこでも簡単にギャンブルができるという状況を変えていくためにやらなければいけないことはたくさんあるんだろうというふうに思っております。

○塩川委員 実際に依存症で大きな比重を占めるのはパチンコですけれども、パチンコは一万店舗ある、こういった出店規制のような、そういった取組についてはどのようにお考えでしょうか。

○三上参考人 出店規制というのもあるべきだろうと思っております。
 出玉規制ということがやられましたけれども、出玉規制ということよりも、やはり、どこに行っても何軒もパチンコが目の前にあるという状況でいいのかどうかということについて、風俗営業法の中でも、もうちょっと今の状況というのは、学校の近くにも駅の近くにも、どこにでもパチンコが並んでいるというのは変えなければいけないのではないかというふうに思っております。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。