【議院運営委員会】人事官の所信質疑/国家公務員の賃下げ/賃上げに逆行

 政府が提示した国会同意人事案のうち、伊藤かつら人事官候補から所信を聴取しました。

 私は、岸田文雄首相がケア労働者の賃上げを掲げながら、保育士や幼稚園教諭などの賃下げにつながるマイナス人勧による国家公務員の賃下げを行うことは「矛盾しないか」と質問。

 伊藤氏は「経済全体への影響も考慮の一つとして入れる必要がある」と答えました。

 私は、政権中枢で民間企業からの出向者が、国の重点政策を企画立案する例が増えていると指摘。国家公務員の非常勤職員は兼業が可能で、出身企業から給与補てんを受けられることについて、公務の公正性に疑念が生じないかと質問しました。

 伊藤氏は「官民癒着の疑念を抱かれることの無いようにする必要がある」としつつ、「勤務の対価として給与を受け取ることがあり得る」と答え、容認する姿勢を示しました。

 さらに私は、デジタル庁について、職員600人のうち200人が民間企業に在職したまま非常勤で勤務していると指摘。委託事業の一社入札や相次ぐ随意契約など、不透明な契約が問題となっている時に、官民癒着が問われると質問。

 伊藤氏は、「それぞれ担当の府省がルールを設定している」などと述べました。


「議事録」

<第208通常国会 2022年3月3日 議院運営委員会 第12号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 伊藤かつら参考人、今日はありがとうございます。
 最初に、人事官の仕事に求められるものということでお尋ねします。
 公務員は、憲法で全体の奉仕者と定められ、職務の遂行に当たっては中立公正性が強く求められます。このため、国家公務員法に基づき、人事行政に関する公正の確保及び国家公務員の利益の保護等に関する事務をつかさどる中立第三者機関として設けられたのが人事院であります。最も重要なのは、公務員の労働基本権制約の代償機能としての役割です。
 人事官は、こうした人事院の役割を自覚して、政府から独立して、中立の立場で職務を遂行することが求められているのではないでしょうか。
○伊藤参考人 公務の民主的、能率的な運営を保障することを目的とした国家公務員法において、おっしゃるように、人事院は、中央人事機関として、国民全体の奉仕者として、公務員の人事制度運用の公平性の確保、労働基本権が制約されている職員の利益保護という、憲法に由来する重要な役割を持っているというふうに認識しております。
 公務員の人事行政の中立公正性の確保として、内閣の所轄の下に独立性の高い中立的第三者機関としての人事院が設置されており、任免の基準の設定、採用試験、研修などを実施しながら、公務員が不偏不党、中立公正の立場で能率的に公務を遂行していくことを可能にしていくものというふうに承知しております。
 私も人事官としてこの責任を負うものということを理解しております。
○塩川委員 先ほどの質疑で、公務と民間の仕事の違いのお話がありました。民間は、リターンを求める、利益、利を求める、公務は、民主主義に基づき、全体の奉仕者として中立公正が求められると述べられました。
 そこで、お尋ねします。
 二〇〇〇年以降、官邸機能強化の下で、政権中枢の内閣官房や内閣府において、民間企業から出向してきた人が非常勤の国家公務員として勤務し、重点政策の企画立案を行っている事例が増加をしています。民間企業出身者の方が、非常勤ということで、その身分のまま公務で仕事をする。
 人事院が所管する官民人事交流法では、出身元企業の業務に従事することや給与補填を禁止するなど、公務の公正性を確保するための規制を定めています。一方、非常勤職員は、兼業が可能だということを理由に、出身企業からの給与補填を容認しています。
 公務で得た給与よりも、出向元企業から得る給与の方が多い場合もあり得ます。これでは、誰のために仕事をしているのか、公務の公正性に疑念が生じることになりはしないのか、この点についてのお考えをお聞かせください。
○伊藤参考人 非常勤職員に民間企業出身者を採用する場合には、公務の公正性を確保し、官民癒着等の疑念を抱かれることのないようにする必要がございます。非常勤職員についても、国家公務員としての各種服務規律が課されております。各府省において、服務規律を遵守させるとともに、職員の配置や従事する業務等に十分配慮するなど、適切な運用を図るよう、人事院としても引き続き制度を周知徹底していくことが必要であると考えます。
 また、非常勤職員についても公務の公正性を確保する必要がございますけれども、兼業として民間企業の業務に従事した場合、その勤務の対価として給与を受け取ることがあり得るのではないかということを考えます。非常勤職員については、勤務時間等において常勤職員との性格に違いがあることから、兼業等の取扱いについても違いが生じているのではないかなというふうに思いますが、いずれにしても、公平性それから透明性ということが重要であるということを承知しております。
○塩川委員 官民人事交流法でいろいろ規制があるのに、非常勤というだけでそれが適用されない、そこは問題はありはしないのか。
○伊藤参考人 そこは様々な御意見があろうかというふうに理解しております。また、同時に、例えばデジタル人材のように、ある特別な技能を持った方たちの力が公務として必要だ、これも事実でございます。ですので、様々な意見を伺いながら、先任の二人の人事官とも御相談しながら検討してまいりたいと思います。
○塩川委員 その点で、新たに六百人で発足したデジタル庁は、民間企業在籍者がその身分のまま非常勤職員として二百人勤務をしております。デジタル関連の委託事業でも、一者応札、随意契約ばかりとなっているなど、不透明な契約が問題となっているときに、デジタル事業の企画立案、総合調整を担うこういったデジタル庁、民間企業在籍者が多数勤務しているのでは、官民癒着が問われることになりはしないでしょうか。
○伊藤参考人 官民癒着はあってはならないことですので、そのような非常勤の国家公務員の採用に当たっては、それぞれの担当の府省がきちっとしたルールを設定しているというふうに理解しておりますし、人事院としても、そのルールが徹底されているのかどうか、常に気にしていく必要があるというふうに考えます。
○塩川委員 最後に、岸田総理は、経団連始め経済団体に、三%を超える賃上げを要請しています。その一方で、公務員については、マイナス人勧を踏まえた賃下げを行おうとしております。
 民間に賃上げを求めながら、参考人もおっしゃったように、コロナ禍で果たすべき役割は一層増していると述べている公務の賃金を引き下げるというのは大きな矛盾ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○伊藤参考人 公務員の給与基準というのは、その年々の情勢に合わせてきちっと調整されるべきであると考えます。
 今回の賃下げというのは昨年の人事院勧告に基づいたもので、六月のボーナスで、承認されれば適用されるというふうに伺っておりますが、また次の人事院勧告には、当然、その時々の情勢というのを反映することが重要であろうと考えます。
○塩川委員 終わります。ありがとうございました。

<自由質疑>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 岸田総理は、公的価格の抜本的見直しとして、診療報酬、介護報酬、子ども・子育て支援新制度の公定価格など、賃金の原資が公的に決められるケア労働者の賃上げを掲げております。
 そのうち保育士や幼稚園教諭などの処遇は、公定価格に基づいて算定をされます。その公定価格の人件費は、国家公務員の給与に準じて算定をします。全産業平均の労働者の月額賃金は四十・六万円に対して、保育士は三十一・二万円、九万円の格差があります。マイナス人勧の影響で、国家公務員給与が下がり、公定価格も下げられると、賃金格差が拡大することになります。
 こういった矛盾は解消される必要があるのではないか。お考えをお聞かせください。
○伊藤参考人 国家公務員給与の水準というのは、人事院の毎年の勧告の中で御提案しております。そして、それはその時々の情勢をきちっと反映することが必要でございますし、その中で、今御意見がございましたように、経済全体への影響ということも考慮の一つとして入れる必要があるというふうに考えております。そして、ネットニュースなんかで拝見しますと、公務員給料は高過ぎるという御意見もあれば安過ぎるという御意見もあるようでございますので、それは真摯に勉強しながら、いい勧告ができるように努めてまいります。