【内閣委員会】財務省のセクハラ調査は異常/名乗り出は二次被害/「協力」要請批判

 福田淳一財務事務次官のセクハラ疑惑について、個人の尊厳を傷つける重大な人権侵害の問題だとし、財務省の調査手法の異常さを批判した。

 
  財務省が顧問契約を結び国が顧問料を支払っている弁護士事務所に調査を依頼するやり方は、客観性を確保できない。被害者に名乗り出るよう「協力」を迫ることは二次的被害を招くと批判した。
 
  調査に「違和感がある」と述べた野田聖子男女共同参画担当相は、「そちら(財務省)側の立場に立った弁護士に話をするハードルは大変高い」と答弁しました。
 
  松山政司少子化担当相や小此木八郎国家公安委員長も野田氏と同じ趣旨の発言をしている。菅義偉官房長官に「調査手法に違和感はないのか」と質問。
 
  菅氏は「心配をしたが財務省の責任で行うこと」と述べた。
 
  幹部人事の一元管理のもとで(事務次官)人事に同意してきた責任が問われている。
 
  セクハラ防止に関し、人事院規則は被害者が「不利益を受けることがないように」と定め、財務省の指針も職務で接する「職員以外」の人へのセクハラにも注意すべきだとしている。同省の調査はこれらに反する。国民の納得いく調査を行うべきだ。

 
 
 

「議事録」

<第196通常国会 2018年04月18日 内閣委員会 11号>

○塩川委員   次に、財務省の福田事務次官のセクシュアルハラスメント疑惑についてお尋ねをいたします。

 最初に、野田男女共同参画担当大臣にお尋ねをいたします。
 第四次男女共同参画基本計画においても、セクシュアルハラスメントには性的な関係の強要や必要なく身体に触れるなどの性的な行動のみならず、性的な事実関係を尋ねる、性的な内容の情報を意図的に流布するなど性的な発言も含まれるとしております。
 このようなセクシュアルハラスメントは個人としての尊厳を傷つける重大な人権侵害ではないかと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○野田国務大臣 お答えいたします。
 委員御指摘のとおりで、セクシュアルハラスメント、セクハラは、女性に対する暴力であり、重大な人権侵害であります。
 第四次男女共同参画基本計画、これは平成二十七年に閣議決定しているわけですが、そこにおいては、セクハラを含む女性に対する暴力の根絶を図ることは、男女共同参画社会を形成していく上で克服すべき重要な課題であり、国としての責務であるとしています。
 内閣府として、この基本計画に基づいて、関係府省庁が連携してセクハラの行為者に対する厳正な対処を始めとしたセクハラ防止対策を着実に推進していかなければならないと思っています。

○塩川委員 セクシュアルハラスメントの根絶は国としての責務であるわけで、その国の行政機関のトップにかかわる疑惑というのは極めて重大だと言わなければなりません。
 この疑惑に関する財務省の調査結果では、福田氏は報道内容を、女性記者との間でこのようなやりとりをしたことはないと否定をし、公開された音声データに関しても否定をしております。福田事務次官からの聴取のみの調査結果には、全く納得がいくものではありません。
 加えて、調査手法も大問題だ。財務省が顧問契約を結び、国から顧問料を支払っている弁護士事務所に調査を依頼するというのでは、客観性を確保することはできるはずがありません。しかも、被害を受けた当事者に名乗り出よというやり方は、二次被害を招くことになる極めて重大な対応だと言わなければなりません。
 野田大臣にお尋ねをいたします。
 この財務省の調査手法について違和感があると述べておられましたが、違和感というのはどういうことでしょうか。

○野田国務大臣 お答えいたします。
 先ほどもお答えした内容とほぼ重なるわけですけれども、まず、セクハラの被害というのは、被害者はそのことについて家族、友人、ましてや組織の上司にもなかなか話ができないものであると認識しています。私自身も過去経験がある中で、それは正しいと思っています。
 今回、なぜ違和感があるかといえば、加害者の側から、そして加害者の部下である官房長という方から被害者、女性記者と言われていますけれども、に対して協力を求めるというのは、被害者側からすると、違うんじゃないかなと。
 そして、財務省が委託した弁護士。弁護士の方というのは委託された側の仕事をするというのが前提ではないかと思っているので、そちら側の立場に立たれた弁護士の方にお話をするというのも、なかなか、そこに行くまでのハードルは大変高いような思い、感じをしているところであります。
 いずれにしろ、そういうことから、被害者の側に立って、自分がどうするかということを考えたときには、恐らくそちらに向かって言われたとおりのことをするとは一般的には考えにくいということを思い、違和感があるというふうに申し上げた次第であります。
 いずれにしても、繰り返しになりますけれども、セクハラの問題に対して一番大切なことは、セクハラの原理原則をしっかり、先ほど申し上げましたけれども、理解していただいた上で、まずは被害者の保護とか救済をするということを国は責務としていることをぜひ御理解いただいて、財務省において適切に対処していただきたいと考えています。

○塩川委員 こういう分野の専門であられる岡野八代同志社大学教授は、このように述べています。
 セクハラの本質の一つは、地位を利用し、性的な言動を通じて相手を性的な物のように扱う点にある。つまり、権力濫用の問題だ。性的な物扱いされた女性は、職場などで弱い立場にあるがゆえに、対等な労働者として、あるいは人格ある人間として扱われない傾向があると同時に、立場が弱いからこそ、組織全体に対して、物扱いという人格侵害に遭っても告発しにくいという二重の困難を強いられる。
 今回、財務省の事務次官の女性記者に対する発言が事実だとすれば、その立場上、記者が情報源の秘匿という職業倫理を破ることができないことを十分過ぎるほど知っているはずだ。すなわち、三重の意味で、財務省官僚は、弱い立場にある女性記者の人権を踏みにじったことになる。
 本来全体の奉仕者であるはずの官僚が、社会的立場を超えて、人一人を尊重できない。今回のセクハラ事件とその対応は、現在の安倍政権の権力観を象徴している。
 こういうコメントを私どものしんぶん赤旗にもいただきました。
 野田大臣にお尋ねしますが、先ほどお述べになったような違和感を踏まえたことについて、お考えを財務大臣と官房長官に伝えたと聞きましたが、そのとおりでしょうか。

○野田国務大臣 お答えします。
 正確に申し上げれば、違和感があると申し上げたのは前日の取材に応じた際のことでありまして、それはもう既に朝刊の記事に出ておりましたので、それを踏まえた上で、私は、今般の福田次官のセクハラ問題に対しての状況についてお尋ねをいたしました。
 そうしたところ、現時点では、財務省の調査によって福田次官はこの事案について全面否定をされているという旨をそれぞれお話しいただいた次第です。

○塩川委員 野田大臣が官房長官にもお話をされた、この件について尋ねられて、それについての回答が官房長官からあったという話ですけれども、伝えたということです。
 官房長官にお尋ねしますが、こういった財務省の調査手法について、野田大臣は違和感があると述べておられたわけですが、官房長官は違和感は感じられなかったんでしょうか。

○菅国務大臣 麻生大臣でありますけれども、麻生大臣は、報道されているような内容が事実であれば、セクハラという意味ではアウトである、こう明言した上で調査を指揮しておられます。
 そして、調査に当たって、財務省みずからが女性記者を聴取するのではなく、具体的な対応は外部の弁護士に委託し、協力をいただける方に不利益が生じないよう財務省において責任を持って対応する、そういうことであります。できるだけ速やかに調査を進めた上で適切に対応することが必要だと思います。

○塩川委員 麻生大臣の話ではなくて、官房長官としての所感を伺ったわけですけれども。例えば、松山大臣なんかも、この問題について、ある意味、野田大臣と同じような趣旨でお話をされておりましたし、小此木国家公安委員長もそういうことを発言しておられる。ですから、率直に、官房長官としてこれは違和感を感じなかったのか、こういう調査手法はいかがかと。その辺の率直な思いをお聞きしたいんですが。

○菅国務大臣 私もそこについては心配をしましたけれども、協力をいただける方に不利益が生じないように財務省としてしっかり責任を持って対応しているということでありました。

○塩川委員 ですから、こういった被害者が申出できないようなスキームということ自身が問題なわけで、心配しておられるんだったら、こういう調査手法そのものを見直せと言うことこそ官房長官としてのお仕事ではないのか。
 そもそも官房長官は、幹部人事の一元管理のもとで、幹部の任免について、任免協議を行っているわけですよ。だから、幹部人事承認に当たっても同意をしているわけですから、その責任が問われている。そういう人物にふさわしかったかどうかということが問われているんですから、こういった立場で事の解決に当たるということが求められているわけです。
 人事院にお尋ねします。
 人事院規則一〇―一〇、セクシュアル・ハラスメントの防止等の第四条に何と書いてあるのか。第四条部分を読み上げてもらえますか。

○合田政府参考人 お答えいたします。
 人事院規則一〇―一〇、セクシュアル・ハラスメントの防止等の第四条でございますが、各省各庁の長の責務といたしまして、「各省各庁の長は、職員がその能率を充分に発揮できるような勤務環境を確保するため、セクシュアル・ハラスメントの防止及び排除に関し、必要な措置を講ずるとともに、セクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合においては、必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならない。この場合において、セクシュアル・ハラスメントに対する苦情の申出、当該苦情等に係る調査への協力その他セクシュアル・ハラスメントに対する職員の対応に起因して当該職員が職場において不利益を受けることがないようにしなければならない。」と規定しております。

○塩川委員 このポイントというのは、やはり被害を受けた方が職場において不利益を受けることがないようにしなければならないということであって、この調査手法はまさにここに抵触するような問題だという点で、改めて官房長官にお尋ねしますが、この財務省の調査手法というのは、人事院規則に照らしても、被害者にとって不利益を受けるようなやり方になっているんじゃありませんか。

○矢野政府参考人 お答え申し上げます。
 週刊誌報道を受けまして、まず、人事院からも、調査して、その結果次第では適切な措置をとるようにという御連絡もいただきました。
 その上で、私ども、福田次官本人からまず聴取をいたしまして、その結果を踏まえて一方的な判断をするわけにもまいりませんので、もう一方の方の、誌面上は強く訴えかけをしておられるわけですので、その訴えかけをぜひ聞かせてくださいということで、ただ、先ほども御議論がございましたけれども、セクハラの担当官というものは財務省職員でございますので、これは職員と外部の方との間で起こっている珍しいケースでありますので、職員が聞くという形は慎もうということで、弁護士事務所にお願いをするということをさせていただいた。そもそも、その手法自体、弁護士と相談させていただいたわけでございます。
 官房長からということでございますけれども、お答えについては、官房長あるいは職員が受けるのではなくて、その弁護士事務所がプライバシーやらといったものを完全に保全するという前提でお話を聞かせていただく。繰り返しになりますけれども、誌面上ではもう訴えをしておられるので、私は被害を受けたけれども訴え出るのは嫌だというケースとは違いますので、それはぜひきちんとお話を聞かせていただきたいということをとったわけです。
 調査につきましては、第三者的な見地から弁護士事務所においてやっていただいて、その結果をしかと受けとめたいと思っております。

○塩川委員 財務省の顧問弁護士事務所の調査が何で第三者なんですか。根本が間違っているんですよ。
 財務省に、セクシュアル・ハラスメントをなくすために職員が認識すべき事項についての指針というのがあります。「職員間のセクシュアル・ハラスメントにだけ注意するのでは不十分であること。 行政サービスの相手方など職員がその職務に従事する際に接することとなる職員以外の者及び委託契約又は派遣契約により同じ職場で勤務する者との関係にも注意しなければならない。」こういうふうに書いてあって、要するに、職員以外の人に当たってもきちんと注意しなければならないというのは、当然のことに指針にも書いてある話なんですよ。
 そうであれば、そういう配慮を行うのは当然であって、被害者側の弁護士を立てるとか含めて、どう被害者の方の保護、救済を図るのか、そういう立場でこそ行うべきで、今回の財務省の調査手法は全く納得ができません。徹底解明が必要で、国民の納得いく調査を行えと申し上げて、質問を終わります。