【内閣委員会】行政の裁量権拡大し政官業の癒着招く/経済安保法案

 私は、経済安全保障法案に盛り込まれている「特定重要物資」の支援策で行政側の裁量権が広がることで「政官業の癒着をつくりだす構造だ」とただしました。

 法案は、民間事業者が指定重要物資の安定供給のため、新たに生産設備をつくったり、在庫を積み増したり、生産技術や代替物質の研究開発を行う際、新設の「安定供給確保支援法人基金」の助成を受けることが可能としています。

 私の質問に対し、政府はこの基金の規模や補助の上限などが未定であるとして明確にせず、重ねて支援法人の想定団体を質問したのに対し「技術的知見を有する団体。業界団体を想定」と認めました。

 私は、政府の判断で指定した特定重要物資に特別な支援おこなうことには、特別扱いの懸念がついてまわると批判しました。

 この間、政府はサプライチェーン関連の基金だけでも5~6千億円規模を造成。さらに、巨額の基金をつくり誘致した台湾の大手半導体企業TSMCの投資額は当初の8千億円から9800億円に増加しており、投資額の2分の1を助成するため補助金が増大する仕組みとなっています。

 私は、これらが新基金にスライドすることもあり得るかと質問。

 小林担当大臣は「区分経理することにしている」と答弁。

 私は、TSMCの事例のように、天井知らずの巨額の補助が行われることがあってはならないと強調しました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年4月1日 内閣委員会 第15号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 経済安全保障推進法案について質問をいたします。
 サプライチェーン、特定重要物資の関係でまずお尋ねいたします。
 供給確保計画において、取引先企業情報の記載についてお尋ねをいたします。
 法文の第九条第三項第八号に、「供給確保計画の作成者における当該特定重要物資等の調達及び供給又は使用の現状」とあります。現時点の取引先企業について、どのような情報を記載することになるのか。調達先や供給先、顧客の企業情報を全て提供するのか。その点について御説明ください。
○小林国務大臣 法案の第九条第三項第八号によって供給確保計画に記載していただく内容としましては、例えば、調達については、原材料をどの国から輸入しているのか、供給につきましては、どういった業種の企業が相手先かといったことが考えられます。
 これらは調達の現状などに関する情報の提供を求めるものでございまして、民間事業者が行おうとする安定供給確保のための取組に応じて、供給確保計画の認定に必要な限度で記載していただくものでございます。したがいまして、一律に、調達先や供給先、顧客の企業情報の全ての提供を求めることは想定しているところではございません。
○塩川委員 もう一つ、第九条第三項第三号で、取組の内容及び実施期間、これから何をやりますかというこの部分ですけれども、ここにおいて、取引先企業の情報についてはどのようなことを記載するようになるんでしょうか。
○小林国務大臣 この第三項第三号ですけれども、取組内容の説明に必要な限りにおきまして、例えば生産基盤の整備を取組の内容とする場合に、調達先として原材料の輸入相手国などを記載していただくことを念頭に置いたものでございます。例えば生産基盤の整備を取組の内容とする場合には、供給先として供給先企業の主たる業種を記載していただくことなどが考えられるところであります。
○塩川委員 これ以外に、供給確保計画において取引先の情報を記載するようなことというのはあるんでしょうか。
○泉政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど大臣から申し上げましたとおり、第九条第三項第三号、こちらで記載をさせていただこうと考えてございます。
 それで、具体的にどこまで記載を求める必要があるのかというのは、今後、安定供給確保のための取組であることを確認するための必要性ですとか物資の特性なども踏まえて、詳細については今後検討していく、こういうことでございます。
○塩川委員 そういった供給確保計画を作る上でも、外部に過度に依存といった状況というのは誰がどのように判断するようになるのか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 外部に過度に依存している場合というのは、供給が特定少数国に偏っていて、現状の依存状況では供給途絶発生時に支障を来す場合というものを想定しているところでございます。
 具体的に、特定重要物資を指定するに当たりましては、内閣府及び物資所管省庁などが連携をして、例えば、特定国への依存度の大きさですとか、特定国の供給が途絶したときの他国からの代替確保の可能性ですとか、また、物資自体の代替可能性、国内での代替調達あるいは生産の容易性、そして、供給途絶が国民の生存又は国民経済、経済活動に与える影響、こうした観点から総合的に勘案いたしまして判断することを想定しているところでございます。
 今後、基本指針の策定に向けて、要件の詳細について更に検討を進めてまいりたいと考えます。
○塩川委員 政府に、この点では、政省令を含めて基本指針等お任せというところでもありますので、総合的に勘案するということも含め、政府の恣意的な判断がまかり通るようなことがあってはならないということを申し上げておきます。
 それから、本法案では、重要物資の安定供給確保のために、国内生産基盤の整備、供給源の多様化、備蓄、生産技術の開発、代替物資の開発など、民間事業者による多様な取組について物資の特性に応じて支援することとしています。
 特徴的なことでいいんですが、それぞれどのような支援を想定しているのか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 民間事業者の多様な取組につきまして、イメージを持って御審議いただくため、想定され得る支援内容を例示いたしますと、例えば、生産基盤の整備でございますと、供給能力向上のために新たな生産設備を整備すること、また、供給源の多様化でございますと、これまで特定の国に生産設備が集中していた場合などに、ほかの国に新たに生産設備を整備すること、また、備蓄でございますと、不測の事態に備えて在庫を積み増していくこと、そして、生産技術の開発や代替物資の開発でございますと、例えば研究開発や実用化の取組、こうした様々な取組に対する支援が想定され得るところでございます。
 いずれにしても、今後、安定供給確保が図れるように、具体的な支援の内容を更に検討してまいります。
○塩川委員 そういう意味では、かなり多様な支援ということにつながってまいります。
 一つ備蓄についてお尋ねしたいんですが、備蓄についてもこの法案で、例示としては新型インフル特措法についての備蓄の例示があるんですけれども、他の個別法でも備蓄を規定をしているものがあると思います。それがそもそもどのようなもので、今回の法案と、そういう備蓄を掲げて規定をしているような個別法との関係はどういうふうになるのか、その点、御説明いただけますか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 既存の個別法に基づいて備蓄を行っている例といたしましては、今委員からは新型インフル特措法に言及がございましたが、これについては、抗インフルエンザウイルス薬やインフルエンザワクチン、こうしたものを備蓄をしている。そのほかにも、例えば食糧法に基づきまして備蓄を行っている米、また石油備蓄法に基づいて備蓄を行っている石油、こうしたものが既存の法令の対象としては挙げられるところです。
 一方、この法案は、国民の生存や国民生活、経済活動にとりまして重要な物資の安定供給確保を図るための枠組みを業種横断的に措置するものでございますが、民間事業者に対する支援では安定供給確保が困難である場合に、国が前面に出ていく、国が自ら備蓄等の措置を講じることとしています。
 なお、国が主体となって備蓄を行う場合には、主務大臣が指定する法人に備蓄に必要な施設の管理を委託することも可能なたてつけとなっています。その際に、委員から御質問ございました、既存の法令等に基づいて既に備蓄を行っている物資につきましては、そもそも、この法案によって更なる安定供給確保のための措置の必要性を認める場合でなければ特定重要物資として指定することはございませんが、仮に当該物資を特定重要物資に指定することがあったとしても、既に備蓄を実施していることから、この法案に基づいて別途備蓄を行うことは基本的には想定していないところでございます。
○塩川委員 このスキームでは、備蓄については、民間事業者が重要物資の安定供給確保のためにその手段の一つとして備蓄を行うということと同時に、国としても備蓄を行う場合というのがあると。特別な対策を講じる必要がある特定物資について国自らが対策に乗り出す、その一つとして備蓄の話が出たんですが、ここで言っている、主務大臣が指定する法人への委託という場合のこの法人は、この法律で規定している安定供給確保支援法人とは別ですか。
○泉政府参考人 お答え申し上げます。
 法律の第四十五条に、施設管理委託者という規定がございます。したがいまして、第四十四条の方で、主務大臣が安定供給確保のために特別な措置というものを講じた場合に、それに対して、それを効果的に実施するために必要があると認めるときは、施設管理委託者として主務大臣が指定する法人というものに管理を委託することができる、こういうことでございます。
○塩川委員 この備蓄をめぐっては、例えば、過去、国家備蓄をめぐっての不正事件なども生じております。石油備蓄基地で使われる製品の受注でカルテルが結ばれたと公正取引委員会が認定をし、大手メーカー五社に対し排除措置命令が出された、こういった事例もあります。
 こういう国家備蓄をめぐる話として、このような不正が起こらないということが言えるんでしょうか。
○小林国務大臣 当然、これは認定をするときに計画をしっかりと出してもらいますから、それをしっかりと精査した上でやりますので、そういうことにならないように丁寧に検討していきたいと思います。
○塩川委員 国の関与が大きくなる中で、癒着が拡大する懸念というのも大きくなるということを指摘するものです。
 次に、安定供給確保支援法人についてですが、これはどのような業務を行うのか、また、具体的にはどのような団体を想定をしているのかについて御説明ください。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 安定供給確保支援法人についてですけれども、事業者が行う特定重要物資の安定供給確保のための取組を支援することをその業務としております。
 具体的には、事業者が主務大臣の認定を受けた供給確保計画に沿って特定重要物資の安定供給確保に取り組むに際しまして、取組に必要な資金に充てる助成金の交付などの支援業務を行います。
 現時点ではいかなる法人が指定されるかは決まっておりませんが、特定重要物資に関する技術的知見を有する一般社団法人等を指定することを想定しておりまして、主務大臣が要件に合致するかどうかを客観的に審査をし、適切に判断していくことになるものと認識をしております。
○塩川委員 特定重要物資に係る技術的知見を有するような団体ということになると、そんなにたくさんあるわけではないと思うので、既存の団体なのか、例えば業界団体とか、そういうものが想定されるということでしょうか。
○泉政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど大臣からお話ししましたとおり、指定されるかは現時点では決まっておりませんが、想定されるものとしては、業界団体等も想定される、こういうふうに考えてございます。
○塩川委員 そういう意味では、業界団体という話になりますと、やはりその業界団体との特別な関係も生ずるということにもなってまいります。
 それと、必ずしもその業界団体でなくても可能なのか。いわゆる特定業界の事業者によって構成される団体、業界団体でなくても、安定供給確保支援法人に指定されるということはあるわけですね。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来大臣から御答弁をさせていただいておりますけれども、特定重要物資に関する技術的な知見を有する団体ということでございますので、一般的な業界団体に限定する仕組みとはしておらないところでございます。
○塩川委員 安定供給確保支援法人に基金を造成するとありますけれども、この安定供給確保支援法人基金には、例えば、それぞれなんでしょうけれども、どのぐらいの基金を積み上げるということを考えているのか、その場合に、助成金の交付なども行うわけですが、その助成金の場合の例えば補助率とか助成金の額の条件とか上限とか、そういうのは定めがあるんでしょうか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 特定重要物資は今後適切に決定をしていくということになってございますので、現時点におきまして、どのような規模の基金であるとか、あるいはその基金に基づく助成の条件等については決定しておらないということでございます。
 以上でございます。
○塩川委員 政府はこの間、サプライチェーン関連の基金を造成してきました。例えば、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金五千百六十八億円とか、先端半導体の国内生産拠点の確保六千百七十億円とか、ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業二千二百七十三億円とか、当委員会でもそういう答弁もあったところですけれども、こういった既存のサプライチェーン関連の基金と今回の安定供給確保支援法人の基金とは、仕組み的には同じようなものというイメージでいいのかな。
○泉政府参考人 お答え申し上げます。
 仕組み的にはとおっしゃいましたけれども、法律上は、第三十四条に安定供給確保支援法人基金という規定がございまして、これが何をするかと申しますと、安定確保支援業務について、これらの業務に要する費用に充てるための基金というふうに明記されてございます。
 したがいまして、この法律に基づいて実施される安定供給確保支援業務に要する基金、要する財源について基金を設けるということでございまして、そのための基金になる、こういうことでございます。
○塩川委員 例えば、去年、5G促進法の議論の中で半導体工場についての建設の基金の造成があったわけですけれども、先端半導体の国内生産拠点の確保という基金について言えば、これはNEDOが管理をしているわけですけれども、今回のように、既存のこういった補助金、例えば先端半導体のそういった基金というのがそのままこの安定供給確保支援法人の基金にスライドをするとか、若干入り繰りがあったとしても、そういうこともこれは想定されるということなんでしょうか。
○小林国務大臣 これについては、基本的には区分経理をすることにしておりますので、5G法で造成した基金が、こちらの方の、この法律の枠組みの基金にそのままスライドするということは想定しておりません。
○塩川委員 スキームとして今後の制度設計をどうするかという話ですので、なかなか踏み込んでの話にはならないところですけれども。
 安定供給確保支援独立行政法人ですけれども、これは、そもそも何で、どのような業務を担うのかについて、まず確認させてください。
○小林国務大臣 安定供給確保支援独立行政法人ですけれども、この独法の個別法で定める目的上、実施可能な範囲で、事業者が主務大臣の認定を受けた供給確保計画に沿って特定重要物資の安定供給確保に取り組むに際しまして、必要な資金に充てる助成金の交付などの業務を行うものであります。
 具体的には、個別法で定める目的上、生産基盤の整備、そして生産技術開発などを支援できる独法といたしまして、今委員から言及がございました、いわゆるNEDOのほか、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、いわゆるJOGMEC、また国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、いわゆる基盤研を別表に規定しておりまして、主務大臣がこれらの独法による支援が効果的と認める場合には安定供給確保支援独立行政法人に指定をして、安定供給確保のための業務を実施してもらうこととなります。
○塩川委員 それぞれ、この三つがどのような業務を担うのかという想定というか考え方があれば、教えてください。
○泉政府参考人 お答え申し上げます。
 別表に書いてございます三つの独立行政法人でございますけれども、これにつきましては、なぜこの三つが選ばれているのかと申し上げますと、物資の生産の事業を所管する大臣がまず所管する独法であることということ、そしてその上で、この三つの独法が物資の実用化段階における研究開発の知見を有すること、そしてさらに、民間事業者による生産基盤の整備に対する支援が可能な独法であること、こういった観点から、この三つの独法を選んでおる、こういうことでございます。
○塩川委員 それを踏まえて、例えば、NEDOが半導体を担当するとか、JOGMECはレアアースとか、基盤研については医薬品とか、そういう考え方というのはあるんでしょうか。
○小林国務大臣 そういうものも想定し得るところではございますが、これは繰り返しになりますけれども、特定重要物資を決めるプロセスというのは、この法案が通った後、政令等を含めて、基本方針、基本指針を含めて、検討していくことになりますので、この場で予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただければと思います。
○塩川委員 現状、NEDOについて、先端半導体の国内生産拠点の確保という形での基金が造成されています。区分経理ということですから、今回の法律に基づいて、別途そういった基金をつくれば、別なくくりで、別な経理でということでつくるというお話ではあるんでしょうけれども。
 5G促進法の議論のときにもありましたが、TSMCとソニーの合弁会社が造る半導体工場、建設費が九千八百億円とも報道されておりまして、二分の一の補助ですから、上限がありませんので、ですから、当初四千億円と言われていたのが、建設費が膨らむというので、五千億円の補助とかということも言われているわけです。
 こういったTSMCの事例のように、今回の法案に基づくような基金の造成というのが、天井知らずの巨額の補助ということにはならないのか。そういうことについてはどうお考えなんでしょうか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども御答弁させていただきましたけれども、重要物資の指定、これからでございます。基本方針、基本指針に沿った形で、適正な、基金に基づく助成条件、これも検討してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○塩川委員 既存のこのサプライチェーン関連の基金というのが、上限がないという基金なんかもあるものですから、そういった点で、どこまで膨らむのかといった危惧というのは当然浮かぶわけであります。
 政府の判断によって指定した特定重要物資に特別な支援を行うということには特別扱いの懸念がついて回る、そういう点での癒着の懸念ということは拭えないと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 安定供給確保支援法人に対するガバナンスに関する御指摘だというふうに存じます。
 この安定供給確保支援法人の行います業務は、その内容を法律で明記させていただいておりますほか、実際に業務を行うに当たりましては、業務規程を主務大臣の認可事項としてございます。そして、毎年度の事業報告書等も法律事項といたしまして事業年度終了後の報告、公表を定め、その他、区分経理規定や帳簿の保存のほか、必要な場合の主務大臣の監督命令規定や指定の取消し規定等も整備しているところでございまして、これらの規定を通じまして業務の適正かつ確実な実施を確保してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○塩川委員 実際、補助金の額が大きく膨らんで、その中身について非常に裁量的なこと、過去、事件も起こってきたところを考えても、行政側の裁量権の広がりの中で政官業の癒着をつくり出す構図への懸念があることを指摘をして、今日は終わります。
 ありがとうございました。