【内閣委員会】「国家安保戦略に経済安保を位置づける」岸田総理が答弁/経済安保法案/衆院委で可決、反対討論

 岸田文雄総理は、年内策定を進めている国家安全保障戦略で「経済安全保障を位置づける」と答弁しました。

 私は、経済政策を法華安全保障の一つの柱として外交・防衛政策と一体に運用するということだと批判しました。

 また、私は、科学技術の軍事研究化をすすめる問題で、政府から機微情報の共有など「伴走支援」が行われる「協議会」が軍事も含めた、政府のニーズ(要求)を研究者と結びつけるものかと追及。

 岸田総理は「指摘はあたらない」と述べながら、協議会が「防衛省も含めたすべての省庁に適用される」と答弁しました。

 また、私は、政官業癒着についても追及。三菱電機、富士通、NEC、デンソー、パナソニックと言った大手企業は経済安全保障関連の部署を相次ぎ設置。これら企業への5人の元経済産業省幹部職員の天下りがあり、サプライチェーン(供給網)関連での基金の事務局のみずほリサーチ&テクノロジーズにも元総務事務次官が天下りしていることを明らかにしました。

 私は、経済安保政策のもとで、政府の規制が拡大し、巨額補助金など支援策を拡充すれば、企業と政府の接点が拡大すると指摘。「癒着の拡大につながるのではないか」とただすと、小林担当大臣は「経済関係者に耳を傾けることは重要だ」と開き直りました。

 衆院内閣委員会は、経済安全保障推進法案の採決を行い、日本共産党とれいわ新選組が反対しましたが、他の会派の賛成多数で可決。私が反対討論を行いました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年4月6日 内閣委員会 第16号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 経済安全保障推進法案について質問いたします。
 この間、大手企業において経済安全保障に対応する部署を設けるということが続いていると、毎日新聞の報道等によって紹介がされておりました。三菱電機は経済安全保障統括室を設置するとか、デンソーや富士通、NECも経済安全保障室を設置するとか、パナソニックは経済安保やカーボンニュートラルの政策などに対応するパナソニック総研を設立するとか、続いております。
 これらの企業に経産省のOBが再就職をしたということですけれども、その再就職先と最終官職を明らかにしていただきたい。また、ほかにも経済安保担当という名目で再就職した事例があれば紹介していただけますか。
○片岡政府参考人 お答え申し上げます。
 毎日新聞の御指摘の記事につきましては承知をしてございます。
 この記事で触れられております五名の経産省OBの再就職先と最終官職でございますけれども、法律上、離職後二年間は再就職の届出を出すことになってございまして、それらを確認いたしましたところ、まず、日下部氏でございますけれども、最終官職は資源エネルギー庁長官、再就職先は、令和元年七月に三菱電機株式会社に再就職されております。二人目、高橋氏でございますけれども、最終官職は資源エネルギー庁長官、令和二年十一月に富士通株式会社に再就職されております。三人目、横尾氏でございますけれども、最終官職は経産省大臣官房付、平成二十九年十月に株式会社デンソーに再就職されております。四人目、石黒氏でございますけれども、最終官職は経済産業審議官、平成二十八年八月に日本電気株式会社に再就職されております。最後、三又氏でございますけれども、最終官職は経済産業省大臣官房付、令和三年四月に株式会社パナソニック総研に再就職されております。
 また、お尋ねの、経済安全保障担当という名目で経済産業省の本省庁課長相当職以上の離職職員が民間企業等に再就職した事例でございますけれども、保存されている届出等を確認しましたところ、該当する者は見当たらないということでございます。
○塩川委員 大臣にお尋ねしますけれども、このように、経済安全保障の担当室などを企業が設ける、そういったところに経産省OBなどがいわば天下りをするといったことについて、何で企業側はこういった経済安全保障担当部署にこういったOBを採用するのか、どのようにお考えでしょうか。
○小林国務大臣 それは、それぞれの企業が考えてやられていることだと考えますので、私の方から何かコメントをすることは控えたいと思います。
○塩川委員 政府は、この間、サプライチェーン関連の基金を造成してきました。サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金五千百六十八億円、ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業二千二百七十四億円などがあります。これらの基金の基金設置法人である環境パートナーシップ会議及び受託事業者でありますみずほリサーチ&テクノロジーズへの国家公務員の再就職の状況について、分かれば教えてもらえますか。
○岡本政府参考人 お答えいたします。
 国家公務員法に基づきまして、職員のうち管理職職員であった者が離職後二年間に再就職した場合は、速やかに内閣総理大臣に再就職情報の届出を行うとともに、公表することとされているところでございます。
 これに基づきまして、平成三十一年一月から令和三年十二月までの三年間にあった届出につきまして確認いたしましたところ、御質問いただいた一般社団法人環境パートナーシップ会議への再就職の届出はゼロ件、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社への再就職の届出は一件であり、離職時の官職は総務事務次官となっております。
○塩川委員 こういった受託事業者への総務事務次官の天下りの例などもあります。
 今後、基金の造成が行われて支援法人の在り方なども問われてくるときに、大臣、この経済安保政策の下、このように、今回の法案でも議論してきていますように、政府の規制が拡大をし、また、巨額補助金など支援策が拡充をすることで企業側と政府の接点が拡大する契機となる、これが天下りなども通じて癒着が拡大することにつながりはしないのか、こういう懸念についてはどう受け止めておられますか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 一般論としてまず申し上げれば、施策の実施に当たって、関係業界の意見などに耳を傾けるということは、私は必要なんだろうと思います。
 一方で、これは経済安保政策に限った話ではございませんが、当然、官民の癒着などの疑念を抱かれるようなことがあってはいけないわけでございまして、職員の職務の遂行に関しましては、国家公務員法の服務に関する規律を遵守することは当然だと考えます。その上で、こうした規律に違反した場合には、国家公務員法に基づく懲戒処分を受けるということによって公務の公正性を確保することになっているものと考えます。
 なお、この法案について申し上げますと、まず、措置の対象となる物資、事業、あるいは技術分野などにつきましては、有識者の意見を聞いて制度ごとに策定する基本指針において考え方を明らかにします。これらを定める下位法令の要件は、法律上、可能な限り明確化していきます。そして、政省令の策定に当たりましては、先ほどもありましたが、パブリックコメントの実施など、広く意見を聞く手続を設けていくなど、客観性、公平性の担保に配慮しておりまして、癒着につながるような判断が行われることはないと考えます。
○塩川委員 百三十八の政省令、当然、それを立案する過程があるわけであります。案を作ってパブリックコメント、その前の、まさに立案するその過程においてどういう関わりがあるのかということが問われてくるわけで、そういった際に、担当官庁のOBが当該企業にいるということが癒着の懸念ということにつながりかねないという疑念は拭えないわけですし、やはり、藤井敏彦元経済安保法制準備室長の特定企業との特別な関係を見ても、癒着の疑念が拭えないということを申し上げておきます。
 次に、基幹インフラの関係で何点かお尋ねをいたします。
 この法案におきまして、導入等計画の策定の件がありますけれども、この導入等計画には取引先の情報がどのように書き込まれることになるんでしょうか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 この基幹インフラに関する導入等計画書には、導入しようとする設備の概要に加えまして、設備の供給者や委託の相手先に関する事項などを記載をいたしまして、主務大臣に届けていただくこととしております。
 具体的な届出事項につきましては、今後、関係者からの意見も承った上で、各事業の実態に即しつつ、事業者負担なども考慮をいたしまして主務省令において定めることとなりますが、取引先の情報に関するものとしては、例えば、設備又は構成部品の供給者の名称、主な事務所の所在地ですとか、委託先や再委託先の名称、また主な事務所の所在地などを想定しているところでございます。
○塩川委員 特定重要設備の導入では、特定重要設備の供給者それから委託の相手方という答弁がありましたけれども、この特定重要設備の供給者及び特定重要設備の一部を構成する設備、機器、装置、プログラムの供給者、委託の方では委託の相手方及び再委託の相手方ということもあると思うんですが、この再委託の相手方というのはどこまで遡るというふうになるんでしょうか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 設備の部品などのサプライチェーンあるいは維持管理などの再委託先につきまして、どの範囲まで記載を求めることとするかという委員の御質問につきましては、事業ごとに実態が異なります。
 あらかじめ一律に定めることは適切でないことから、関係者から意見を聴取した上で、あくまで、事業者負担なども考慮をして、主務省令において対象を定めてまいりたいと考えます。
○塩川委員 デジタル関連なんかは本当に重層下請構造になっておりますので、そういった際にどこまで及ぶのかといったのは、事業者、当事者としては非常に懸念するところがあるということがあります。多くの取引先企業の情報を政府に提供することになるといった点での懸念というのもあるだろうと思います。
 そうしますと、やはり、基幹インフラ事業者や設備の供給者、維持管理委託業者等の経済活動が萎縮することにならないのか、このような懸念がありますが、この点はいかがでしょうか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 今回の法案におきましては、基本指針におきまして、特定社会基盤事業者の指定に関する基本的事項、また勧告及び命令に関する基本的事項について明示することに加えまして、特定社会基盤事業者その他の関係者との連携に関する事項として事業所管省庁におきまして事業者と密接な意思疎通を図っていくことを定めることとしておりまして、こうした取組を通じて事業者の予見可能性の確保に努めることとしております。
 また、勧告、命令の内容につきましても、調達先の変更に限らず、重要設備の検査や点検の実施など、事業ごとの実態を踏まえた適当な措置を求める予定でございます。
 こうした形で、規制の対象の検討、また制度の適用などの各場面におきまして、事業者の実態や負担に配慮しつつ、経済活動の萎縮につながるような無用の不安を生ずることのないよう政府として努めてまいりたいと考えます。
○塩川委員 事業所管省庁が事業者と密接な意見交換を行う、予見可能性を高める、これは裏返して言うと、かなり裁量的に対応されるんじゃないかという問題という点では、癒着の懸念のことにもつながってくるわけであります。
 その上で、基幹インフラの取組と、この間、サイバーセキュリティーにおける重要インフラへの対処があります。サイバーセキュリティーに係るという点では重なり合うところが当然あると思うんですけれども、基幹インフラへの対応とサイバーセキュリティーにおける重要インフラへの対応は、どのように違い、どのように重なっているのか、この点について御説明ください。
○小林国務大臣 委員御指摘のサイバーセキュリティー上の基幹インフラと今回の重要インフラとの関係についてでございますけれども、サイバーセキュリティーにおける重要インフラというのは、国民生活及び経済活動の基盤であって、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼすおそれが生ずるものとされておりまして、サイバーセキュリティ基本法に基づいて、官民が一丸となって重点的に防護する必要があるとの認識の下で指定をされているものでございます。
 一方で、今回、この政府提出法案の基幹インフラに関する制度につきましては、国民生活及び経済活動の基盤となる役務の中でも、まず、国民の生存に必要不可欠で代替困難なもの、又は、国民生活、経済活動が依存する役務で、その利用を欠くことによって広範囲若しくは大規模な混乱などが生じるものを提供する事業を対象とすることを基本としておりますが、事業規模などの基準に該当する事業者が導入する重要設備を事前審査することから、規制対象となる事業者や設備が具体的に想定されない事業などは対象としていないところでございます。
 したがって、サイバーセキュリティーにおける重要インフラとこの法案における基幹インフラというものは、一部対象事業が異なるという関係になっております。
○塩川委員 一部異なるというと、大宗は重なり合っているということでしょうかね。
○小林国務大臣 大宗は重なっております。結構たくさんありますので一つ一つ申し上げることはいたしませんが、サイバーセキュリティーの重要インフラ、これは第四次行動計画にあるんですけれども、例えば電力、ガス、石油、水道等々、いろいろありまして、この法案で規定する事業としてもそれに相当する事業というものが規定されているところであります。
○塩川委員 そうしますと、経済安保に係る基幹インフラとサイバーセキュリティーに係る重要インフラと、重なる事業者というのは当然及ぶわけであります。そういった事業者にとっては負担が大きなものにならないのかという懸念というのがあるんですが、その点はどうでしょうか。
○小林国務大臣 今答弁申し上げたとおり、サイバーセキュリティーに関係する重要インフラと、十四分野ございますけれども、今回の法案における基幹インフラ事業とには、当然重なるところがあります。
 一方で、この法制の有識者会議からは、基幹インフラの役務の安定的な提供を確保するためには、「多層防御の考え方に立ち、引き続きサイバーセキュリティ対策を推進するとともに、設備の導入が行われる前にリスクを把握・排除する必要がある。」との提言をいただいたところであります。
 その上で、今回の基幹インフラに関する制度では、まず、規制対象を真に必要なものに限定します。二つ目として、事業実態などを十分踏まえた制度の整備、運用とする。三つ目として、政省令の策定に当たってはパブコメを実施するなど広く意見を聞く。四つ目として、事業所管省庁に相談窓口を設置をしてきめ細かい情報提供に努めるといった内容を基本指針において定めることとしておりまして、規制措置が事業者の方々にとって過度な負担とならないように政府として努めてまいりたいと考えます。
○塩川委員 そうはいっても、重なり合うような、様々な規制が積み重なっていくということですので、基幹インフラに係る規制と重要インフラに係る規制と重なる事業者にとっての大きな負担になる。
 一方で、こういった審査を通じて、政府が妨害行為のおそれがあると判断すれば審査が通らないといった点では、非常に、下請、取引先企業に対して選別、監視するような対応につながらないのかという点についてはいかがでしょうか。
○小林国務大臣 選別、監視することにはならないというのは先日答弁申し上げたとおりですけれども、この制度というのは、そもそも各業法ですとかあるいはサイバーセキュリティ基本法などに基づく各種の取組というのを前提にしつつ、それに上乗せする形で、外部からの妨害行為に対して、役務の安定的な提供の確保の観点から新たな制度を設けるものでございます。
 今申し上げましたとおり、基本指針で定める内容などによって、この規制の措置が事業者の皆様にとって過度な負担とならないように努めていきたいと考えます。
○塩川委員 最後に、経済安全保障に係る冤罪事件について取り上げます。
 スプレードライヤー、噴霧乾燥機を中国にある企業に不正に輸出したとして、警視庁は大川原化工機の社長ら三名を逮捕しました。無実の人を十一か月も長期勾留をした。しかし、起訴したものの、輸出が規制されている製品に当たることを立証できず、起訴取り消しとなりました。昨年十二月においては、東京地裁は、刑事補償計一千百三十万円を支払うことを決定しました。
 刑事補償というのは、身体拘束された人が無罪となったときの補償制度であります。裁判長も、関係記録によれば、仮に起訴内容について審理が続いた場合、無罪判決を受けるべきと認められる十分な理由があると述べたということであります。まさに冤罪事件であります。
 大臣、経済安保の名の下にこういった冤罪事件があっては決してならないと思いますが、その点はいかがですか。
○小林国務大臣 御指摘の事案については、この委員会でも紹介されたところで、承知をしておりますが、刑事事件の捜査、公判の在り方については所管外でございまして、お答えは控えたいと考えます。
 その上で、経済安保の取組を進める上では、企業の経済活動は原則自由であるとの大前提に立った上で、これを大きく阻害することがないようにすることが重要だと考えております。この法案の制度設計の際にも、安全保障の確保と自由な経済活動の両立を図ることが重要だと考えておりまして、それは累次答弁申し上げているとおりです。
 経済安保の推進の名の下に不当に企業活動に対する規制あるいは監視を広げるようなことがあってはならないと考えておりまして、この法案による制度を含め、適切に運用してまいります。
○塩川委員 百三十八項目の政省令、政府への白紙委任、様々な規制がある。経済安保の名の下で恣意的な規制が拡大をし、こういった冤罪事件が引き起こされる懸念が拭えないということを申し上げて、質問を終わります。