【内閣委員会】大規模火山噴火降灰対策/国の責任で行え

 大規模火山噴火による降灰被害対策について質問しました。

 降灰の影響について気象庁の資料(表↑)では「0.1mm積もるとぜんそくなどの症状の悪化。1mmで航空機や鉄道の運行不能の可能性、農作物への影響。1cm以上積もると一般車両での移動への影響、送電施設への付着で停電の可能性」などわずかな堆積でも被害は深刻だ。その認識を問いました。

 小此木八郎内閣府防災担当大臣は「移動手段が限定される。迅速な救助活動・交通対策など降灰時の対応力の向上を図っていくことが重要」と答えました。

 私は、『大規模火山災害対策への提言(2013)』の中で、国に対し、降灰対策の指針を作るよう求めている。その措置状況について質問。

 内閣府は「これから検討を進める」と答弁。

 5年も経っているのにまだ作っていない、と批判すると。内閣府は「今年度から富士山を想定した降灰対策の調査検討を行う」と答えました。

 大規模噴火のおそれのある火山は浅間山など他にも想定される。富士山に限定するのはおかしい。広域の降灰被害については、国の責任で、人もお金も出して対策するべきだ。

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「議事録」
<第196通常国会 2018年04月11日 内閣委員会 9号>

○塩川委員 それでは、次のテーマへ入りますので、官房長官や関係の部署の方は御退席いただいて結構です。
 次にお尋ねするのが火山災害対策、特に大規模降灰対策についてお尋ねをいたします。
 死傷者が出ました草津白根山の水蒸気噴火ですとか新燃岳の大きな噴火など、火山災害対策に国民的な関心が高まっております。二〇一三年に、内閣府防災のもと、広域的な火山防災対策に係る検討会が行われ、大規模火山災害対策への提言がまとめられました。
 提言では、環太平洋造山帯に位置し百十もの活火山を有する我が国では、古来幾度となく大規模な火山災害に見舞われており、その歴史を振り返ればいつの日か再び大規模な火山災害が発生することは避けられないであろう、特に東北地方太平洋沖地震発生後の日本列島は、同じく三陸沖で大きな地震が発生し火山活動が著しく活発であった九世紀の状況に似ているとの指摘もあり、今世紀中に大規模噴火など大規模な火山災害が発生してもおかしくないと述べております。
 そこで、お配りしました資料の一枚目をごらんいただきたいんですが、気象庁がつくりました降灰の影響と降灰量の関係という図であります。
 一番下の欄が、〇・一ミリから一ミリという降灰量の厚さにありますように、要するに、一ミリという降灰であっても、例えば、道路で白線が見えなくなる、あるいはJRの運休や滑走路が使えなくなる、こういう事態が生まれますし、稲作では一年間収穫が不可になるとか、家畜の中毒の可能性とか、ぜんそく患者の方の症状が悪化をする。一ミリから一センチであれば、「健康」のところに書かれていますように、喉や鼻への異常の訴え、慢性疾患者の健康問題が増加をするということで、わずか一ミリといっても大変大きな影響を与えるというのがこの大規模降灰の問題であります。
 健康、公共交通機関、農作物などに甚大な被害が及ぶこのような降灰ですけれども、内閣府にお尋ねをいたします。提言においてもこの大規模な降灰の影響について指摘をしておりますが、該当部分を紹介してもらえますか。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 大規模火山対策への提言におきましては、大規模な降灰に備えて取り組むべき事項について、噴火口からの距離に応じまして、山麓から近郊地域、遠隔地域、そして地域共通の三つに分けて記載されているところでございます。
 具体的な内容といたしましては、主に、山麓から近郊地域につきましては、降灰を対象とした噴火警報の運用手法の設定、遠隔地域につきましては、降灰下で住民がとるべき対応に関する指針の作成や、除灰作業に関しまして関係機関と調整する仕組みの構築につきまして、そして、地域共通につきましては、降灰による産業構造や社会システムへの影響に関する調査研究の推進などが記載されております。

○塩川委員 質問に答えていないんですけれども。
 大規模な降灰の影響をどのように提言では指摘をしているのかということです。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 大規模な降灰の発生につきましては、山麓におきまして数十センチ以上、都市部など遠隔地域でも数センチ以上の火山灰が堆積する可能性があるということでございまして、山麓では、降灰によりまして避難を強いられる、さらに、除灰作業が完了するまで避難が継続することで地域全体が機能不全に陥るおそれがある、道路につきましては、火山灰が〇・五ミリメートル程度堆積すれば一般車両での移動に影響が生じ、湿潤時には数ミリメートル、乾燥時には一から二センチメートル程度堆積すれば一般車両での避難が困難となる、そのため大規模降灰時には住民の避難などの移動手段が大幅に限定される、このような内容が記載されております。

○塩川委員 小此木大臣にお尋ねいたします。
 今、紹介もし、答弁にもありましたように、この大規模な噴火に伴う降灰というのが、健康や公共交通機関、また農作物などに大きな被害をもたらすということであります。
 ぜひ、大規模噴火による降灰の社会的な影響について大臣が率直に感じておられること、所感をお聞かせいただけないでしょうか。

○小此木国務大臣 塩川委員には、予算委員会におきましても火山について御質問をいただきました。
 本白根山、あるいは、昨年、ちょうど秋口ですけれども、霧島・新燃岳の噴火もございまして、いまだにまだレベルが低くない状況にあるところでありますので、おっしゃった観点から、国民の生活に与える影響は多々と思いますし、不安も残っているところだと思います。
 今、政府として一生懸命それに当たっているところであると思いますけれども、警察において、例えば降灰によって、住民の移動手段、こういったものは限定されるなどの影響があることも念頭に置きつつ、迅速的確な災害救助活動や交通対策が行われるよう降灰時の対応力の向上等を図っていくことが今私として重要なことであるというふうに思っております。
 今後とも、噴火に伴う各種警察活動が迅速的確に行えるように指導してまいりたいと思います。

○塩川委員 大臣からも、降灰の社会的な影響について、そういう中での移動手段が限定される、こういったことについての対策の必要性のお話がございました。
 内閣府防災にお尋ねしますが、では、この提言を具体的にどのように措置してきたのかということであります。特に大規模な降灰対策についてです。山麓のことはもちろん別途あるんですけれども、遠隔地域の対策として、提言では「国は、降灰下で住民が取るべき対応について指針を作成すべきである。」としておりますが、指針はつくりましたか。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 遠隔地域において住民がとるべき対応に関する指針も含めました降灰対策の推進に向けましては、これまで、降灰が及ぼす影響や被害の想定手法等の調査検討を行ってきたところでございます。
 広域的な降灰への対策は重要な課題と認識しておりまして、今後は、これらの調査検討の成果を踏まえて、具体的な対策の検討を進めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 いや、五年前の提言で、指針をつくると言っていたんですよ。書いてあるでしょう。五年前の提言で言っていた指針をつくったのかと聞いているんです。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 これまで取り組んでおりましたのが、その指針の具体的検討作業の、いわば準備段階に相当するものでございますので、本年度におきまして、これまでの調査検討の成果を踏まえまして、都市機能が集積している地域を含めた大規模な降灰時の影響や対応策について検討することとしております。

○塩川委員 いや、ことしとか去年の話じゃないんですよ、提言が出ているのは。五年前なんだよ。五年前なのに、五年間も指針をつくらずに来たと。何でそんなことができるんだと。何でそんなことになっているのか。おかしいじゃないですか。その点を答えてください。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、提言なされた時期につきましてはおっしゃるとおりでございます。
 火山対策全般につきましては、御嶽山の噴火などへの対応ということで、活動火山対策特別措置法の改正、そして、それに伴います火山防災協議会あるいは避難計画策定、義務づけ、こういったことの取組も並行して行ってきていたところでございます。そのような時間経過の中で今に至っているというのが実情でございます。

○塩川委員 御嶽山の水蒸気噴火は、多くの方々が犠牲になられた。これを踏まえた対処措置としての火山対策特措法の改正というのは重要だと思います。そういう対策はしっかりやると言うんですけれども、並行してと言うけれども、並行していないじゃないですか。この五年間、具体的に指針をつくると決めていたのに、決めていたにもかかわらず五年間つくらないで来たということについての、私、やはり内閣府防災の責任が問われると思いますよ。こういったことについて曖昧にするということは許されないということを申し上げておくものです。
 今年度の予算事業として、広域噴火災害対策の検討が入っております。広域噴火災害時に国の各機関が行う具体的な防災対策の検討をモデル火山地域を設定して実施するとしておりますが、この広域噴火災害対策の検討というのはどういうものか、ここで挙げられているモデル火山地域というのはどこになるのか、このことについて説明してください。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 具体的な検討内容というお尋ねでございましたけれども、先ほど答弁でも触れさせていただきましたが、都市機能が集積している地域も含めまして、大規模降灰時の影響、それからそれへの対応策、こういったことを具体的に検討していくこととしております。
 この検討に当たりましては、首都圏に大量の降灰をもたらした実績がございまして、その状況について多数の研究実績がございます富士山をモデルケースにして取り組んでまいりたいと考えております。

○塩川委員 大規模降灰時の影響を踏まえて、富士山を念頭に、予算措置、防災対策の検討を行うということです。
 資料の二枚目をごらんいただきたいんですが、これは、国も関与してつくりました、富士山ハザードマップ検討委員会の報告書です。これは二〇〇四年の六月ですけれども、そこに掲載してあります降灰可能性マップであります。降灰が、東京都心、二センチというところが入っておりますけれども、広範囲に降灰の被害が及ぶということがよくわかります。
 富士山などをモデル火山地域に設定して、広域噴火災害時に国の機関が行う具体的な防災対策の検討を行うというのが今回の予算措置ということであります。
 そこでお尋ねしますけれども、首都圏に大きな影響を及ぼすということでは、浅間山などもあるんですよね。偏西風の影響を大きく受けるという点では、西側の方の山ですから、富士山はもちろんのことですけれども、浅間山というのも、当然、首都圏、都心に大きな影響を及ぼすわけです。
 この浅間山の広域噴火災害対策というのはどうなっているのか。つまり、都心に影響を及ぼすような、そういった噴火、降灰を念頭に置いた、そういった調査、検討などが行われているんでしょうか。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 浅間山に関しましては、現地の火山防災協議会を中心に検討が進められておりますけれども、現状におきましては、住宅が倒壊する危険が生じる一つの目安である降灰量、これが二十センチメートルということでございますが、これまでを念頭に置いてハザードマップを作成し、それをもとに防災対策をまず考えておる状況という状況でございます。

○塩川委員 今お答えいただいたのが資料の三枚目ですけれども、浅間山火山防災協議会が作成をしました大規模噴火のハザードマップということで、浅間山火山防災協議会は、大規模噴火を想定した火山ハザードマップの新規を作成した。これがこの図になるわけです。
 これを見ていただくと、青い円がありますけれども、内側から、五十センチ以上積もるおそれ、三十センチ以上積もるおそれ、二十センチ以上積もるおそれというのが範囲として示されているわけですけれども、何で二十センチなのか。先ほど見てもらった富士山のハザードマップは十センチ、二センチと入っているじゃないですか。ですから、当然、都心まで及ぶような降灰のハザードマップになっているんですよ。何で、浅間山の場合については二十センチのところで終わっているんですか。十センチとか二センチ、まさに一ミリでも影響を受けるわけですから。
 こういったことについて、何で浅間山のハザードマップには入っていないのか。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 こうした火山ハザードマップに表示する、いわゆる降灰量についてでございますが、内閣府及び関係省庁では、念頭に置く被害や影響の程度を勘案して、各地の火山防災協議会において決めるということを指針の一つとして掲げて取り組んできております。
 浅間山の場合につきましては、先ほどの答弁でも触れさせていただきましたが、住宅が倒壊する危険が生じる一つの目安ということで、降灰量二十センチということを取り上げて整理をされているというふうに認識しております。

○塩川委員 それはおかしいじゃないですか。気象庁も言っているし、内閣府防災も、一ミリでも大きな影響を受けますよと言っているわけですから、当然、それを念頭に、このことしのいろいろな調査の予算もとっているし、指針ももちろんそういう趣旨でつくるべき話なんですよ。
 それなのに、何で、家屋が倒壊する、家屋が倒壊すること自身は極めて重大ですけれども、それにとどまるのか。農作物への影響だとか健康への影響とか、十センチ、二センチ、一センチ、入れればいいじゃないですか。そういうアドバイスをしなかったんですか。

○伊丹政府参考人 浅間山の火山ハザードマップにつきましては、まず、どういったことを念頭に置いて、あるいは影響を勘案して取り組むかということが、やはり地元の協議会での議論がベースになるところでございます。まず人命の尊重、確保ということで、避難、これに伴うところにまず取り組まれているというのが状況でございます。

○塩川委員 いや、それはわかるんですよ。それはわかるんです。だけれども、大規模噴火のハザードマップなんでしょう。大規模噴火については、降灰の被害は甚大に及ぶということは政府も言っているわけですから、何で、そういった十センチとか二センチというところまで入れないのか。
 結局、何でこうなっているかというと、この浅間山のハザードマップをつくっている協議会の自治体の範囲にハザードマップをとどめようという話があるわけですよ。いわばこのマップだけじゃなくて対策も必要ですから、そういう対策の部分で、いや、お隣の埼玉県とか栃木県とかいうところと調整がしていないものだから、結局は、群馬県、長野県を中心とした範囲のものにとどまっている。
 もちろん、群馬や長野の皆さんにとって必要なハザードマップなんです。しかし、大規模噴火のマップをつくるのであれば、首都圏に及ぶような、都心に影響が及ぶようなものをつくるべきなんですよ。そういうものをつくらないのは、結局、自治体任せに国がしているからじゃないですか。
 富士山の場合には、国が関与してつくっているんですよ。だったら浅間山だって、国がしっかりかかわって、人も出すし金も出して、首都圏に降灰被害が及ぶようなハザードマップをつくればいいじゃないですか。何でそんなことをやらないんですか。

○伊丹政府参考人 お答えいたします。
 広域的な降灰が及ぼす影響や対策、これについては深めた検討が必要だと認識しておりまして、先ほどの答弁でも触れましたけれども、今年度、富士山をまずモデルケースとして検討をして、具体的な内容を深めたい、このようなことでございます。
 浅間山につきましては、浅間山も含めた他の火山ということになろうかと思いますが、どのような取組を進めるかということに関しましては、関係機関とともに、こういった富士山をモデルケースにした検討結果も踏まえて、検討してまいりたいと考えております。

○塩川委員 自治体など関係機関のこういう努力を本当に生かしていくためにも、国は積極的に役割を果たす必要があるんですよ。大規模噴火の降灰対策について、国がしっかりとかかわったハザードマップをつくるし対策もつくる。五年間も指針を放置しているようなこと自身が重大問題だと、直ちに対策をとることを強く求めて、質問を終わります。