【「しんぶん赤旗」掲載】経済安保/大企業の対応部署/「天下り」の受け皿に/役員・理事に経産省OB/塩川議員が追及

「しんぶん赤旗」4月20日・6面より

 2020年以降、大手企業が経済安全保障に対応する部署を相次いで設立しています。各社は経済産業省OBを担当役員や理事に起用。経済安保の専門部が「天下り」の受け皿と化しています。

 「経済安全保障法案」を審議する衆院内閣委員会で日本共産党の塩川鉄也議員は6日、「天下り」の実態を追及。政府側は経産省OBが再就職している事実を認めました。

 再就職先は三菱電機をはじめデンソー、NEC、パナソニック、富士通の5社です。いずれも経済安保に対応する部署を新設しています。

元・前長官ら

 三菱電機は、経産省資源エネルギー庁の元長官だった日下部聡氏を「経済安全保障統括室」の担当役員へ起用。日下部氏の後任を務めた前長官の高橋泰三氏も富士通が設けた「経済安全保障室」の役員に着任しています。デンソーと株式会社パナソニック総研が、いずれも経産省大臣官房付だった横尾英博氏と三又裕生氏を、NECが経済産業審議官を務めた石黒憲彦氏をそれぞれ抜てきしています。パナソニック総研は経済安保などの政策を扱うため21年4月に設立されたパナソニックの100%出資企業です。

経済安全保障法制準備室設置に係る看板掛けを行う岸田首相(中央)=2021年11月19日(首相官邸ホームページから)

 経済安保法案は4本柱で構成。政府が指定した「特定重要物資」の供給網強化や、軍事技術を含む先端技術の開発支援などを含みます。技術流出を防ぐため企業などに規制の網をかけつつ、同時に官民の軍事研究を推進する狙いです。先端技術をめぐり中国と覇権を争う米国に足並みをそろえています。

 法案は、138カ所もの事項を国会の審議を経ない政令や省令に委ねているため、規制の線引きが不透明です。どのような技術が規制対象になり得るかは、法案成立後に政府が具体化します。

政府とパイプ

 経産省OBを登用する背景には、政府とのパイプをつくることで経済安保に関する情報を収集し便宜を図ってもらう意図がにじみます。塩川議員は事実上の「天下り」だと問題視。経済安保政策の下で企業と政府の接点が広がると批判しました。

 本紙の取材に対し、三菱電機は10人強で構成された「経済安全保障統括室」を中心に輸出管理や開発、さらに人事など各部における経済安保のリスクを横断的に検討すると回答。社外的には「(経産省を含む)政府機関や経済団体などに対して情報収集をしていく」としています。

 富士通が新設した「経済安全保障室」は室長を含む4人体制で運営。室長は21年11月まで安全保障輸出管理に関する業務を担当していました。「経済安全保障上のさまざまな課題に対応するため、関連する部門に経済安全保障統括責任者を設置し、経済安全保障室とともに全社的に取り組みを行う」としています。