【内閣委員会】指導員処遇改善こそ/学童保育には専門性

 学童保育指導員の処遇改善について質問しました。

 
  指導員の高い専門性に見合った処遇改善が必要だ。厚生労働省が行っている「処遇改善事業」「キャリアアップ処遇改善事業」の市町村における利用実績が20%に届いていない理由について問う。  
 
 厚労省の成田裕紀・大臣官房審議官は、財政上の理由などをあげました。
 
  松山政司・少子化対策担当相は「処遇改善は大変重要。(財政上の支援措置は)今後の検討課題としたい」と答弁しました。 
 
 地方分権改革の中で、職員の配置基準について「従うべき基準」から「参酌基準」への緩和を検討していることは、専門性に見合った処遇改善の取り組みに逆行するものだと批判し、政府の認識を問いました。
 
  成田氏は「安全性などの一定の担保が必要」、松山担当相は「質の確保は重要だ」と答弁しました。
 
  職員の配置基準は国が自治体を縛っているものではない。子どもたちの安全を確保するために、国民が行政を縛っているのであり、それを後退させるのは許されない。
 
 
 

「議事録」
<第196通常国会 2018年04月04日 内閣委員会 7号>

○塩川委員 

 次に、関連して、子ども・子育て支援制度の一環でもあります学童保育について、特にその指導員の処遇改善の問題について質問をいたします。
 学童保育の今の詰め込みの現状が大変深刻でもあります。そういうのとあわせて、指導員の確保というのは大変に困難な状況になっているというのが率直なところで、私は埼玉の所沢が地元ですけれども、地元の学童保育の指導員の方が東京の方に行ってしまわれたということなんかも含めて、非常に確保をするのに苦労されているという話というのはたくさん耳にするわけであります。
 こういった学童保育について、やはり多くの関係者の方々は、保育所並みの支援体制、これを実現をしてほしいということで繰り返し要望もされ、この間の法改正などで、こういった学童保育の位置づけについて、専門性をきちっと備えたものという立場での取組になってきているというのも、関係者の皆さんの御努力の結果でもあると思います。
 その上で、そうはいっても、現状は、なかなか、学童保育の指導員の確保も困難となっている。
 それに関連して、厚労省の施策について幾つかお尋ねをいたします。
 一つは、放課後児童支援員等処遇改善事業というのがありますけれども、この事業というのはどういう内容なのか、説明をいただけますか。

○成田政府参考人 お答え申し上げます。
 放課後児童支援員等処遇改善事業は、放課後児童支援員等の処遇の改善と、開所時間の延長を図るために、平成二十六年度に放課後児童クラブ開所時間延長支援事業として創設し、放課後児童クラブの運営費の基本分に対する加算として実施しているものでございます。
 この事業は、平日は十八時半を超えて開所していること、家庭、学校等との連絡及び情報交換等を行っていること、平成二十五年度の賃金に対する改善を行っていることなどを要件として、非常勤職員も含めた賃金改善に必要な費用や常勤職員を新たに配置するための追加費用を補助するものでございます。

○塩川委員 十八時半を超えて開所する、そういう放課後児童クラブ、学童保育を支援をしていこうということで、これは今、保育園は延長保育があります。ですから、保育園で延長保育で預けている親御さんにすれば、学童保育でもそういった延長保育をお願いしたい、それを促すという点での財政措置としての処遇改善事業でもあるわけです。
 こういった放課後児童支援員等処遇改善事業の実施状況というのはどうなっているんでしょうか。分母の市町村数が幾つかというのとあわせて、実施の状況を教えてもらえますか。

○成田政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十九年度におきましては、二百九十七市区町村で実施しているところでございます。放課後児童クラブ実施自治体数が千六百十九でございますので、一八・三%となります。

○塩川委員 ですから、まだ二割に及ばないという状況であります。
 これは、利用が進まないのはどういうことなのか、何かつかんでおられますか。

○成田政府参考人 放課後児童支援員等処遇改善事業等の活用が進んでいない要因としては、平日十八時半以降に開所しているクラブが全体の五五%にとどまっていること、自治体内の他の職員との均衡を考えると児童クラブの職員のみを処遇改善することが難しいこと、自治体での予算措置が難しいことが考えられるところでございます。
 厚生労働省といたしましては、放課後児童支援員の処遇改善は重要であると考えており、各自治体に対して、各種会議の場を通じて本事業について説明し、積極的な活用を促してまいりたいと考えております。

○塩川委員 十八時半以降開所していないという事業所もあるということですけれども、その辺もいろいろ聞くと、そもそも市町村の条例で十八時半までとなっているということで、そうなんだと言うんだけれども、ニーズが違うわけですし、現に、そういった学童保育でも十九時までやっているようなところなんかもあるんですよね。そういう点でも、ほかの自治体の職員との均衡の話ですとか、あるいは予算措置が難しいという、やはり金目の面というのが問われるんじゃないかと率直に思っているところです。
 埼玉県の学童保育連絡協議会の方にお話をお聞きしましたら、県内の自治体のアンケート調査を行っていると、やはり、こういった条例の話、六時半までとなっている条例の話ですとか、財政上の理由としてこの処遇改善事業を利用していないという回答が多かったということでもありますので、この点をやはりどうするのかというのが問われてまいります。
 もう一つお聞きしたい事業が放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業ですけれども、これはどのような事業でしょうか。

○成田政府参考人 お答え申し上げます。
 放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業は、放課後児童支援員の処遇改善及び資質の確保、向上を図るため、勤続年数と研修実績に応じ処遇改善を図る事業でございます。
 具体的には、経験年数がおおむね十年以上で一定の研修を修了した事業所長的立場にある支援員を対象に月額約三万円、年額三十七・七万円の改善を、経験年数がおおむね五年以上で一定の研修を修了した者を対象に月額約二万円、年額二十五・一万円の改善を、これ以外の支援員を対象に月額約一万円、年額十二・五万円の処遇改善を図るものでございます。

○塩川委員 勤続年数や研修実績等、あと、その学童保育に果たしている役割というところに着目をして賃金改善に要する費用を補助するということですけれども、この放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業の実施状況はどうなっているでしょうか。

○成田政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十九年度におきましては、二百十三市区町村で実施しているところでございます。

○塩川委員 全体の分母との関係でいうと、何%ぐらいになるんですか。

○成田政府参考人 お答え申し上げます。
 一三・二%になります。
○塩川委員 まだまだその数字が少ないというのは、どういう理由なんでしょうか。

○成田政府参考人 お答え申し上げます。
 放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業の活用が進んでいない要因といたしましては、放課後児童支援員等処遇改善等事業と同様でございますけれども、自治体内での他の職員との均衡を考えると児童クラブの職員のみを処遇改善することが難しいこと、自治体内での予算措置が難しいこと等が考えられるところでございます。
 これにつきましても、繰り返しでございますが、厚生労働省といたしましては、放課後児童支援員の処遇改善が重要であると考えており、各自治体に対して各種会議の場を通じて本事業について説明し、積極的な活用を促してまいりたいと考えております。

○塩川委員 同じように、他の職員との均衡ですとか予算措置が難しいという話が出ているということですけれども、同様にやはり、埼玉の学童保育連絡協議会の方の自治体アンケート調査では、財政上の理由を指摘をしているということと、公立公営の学童保育の場合に、実際、非常勤であるがためにそもそも昇給制度がないものだから、キャリアアップを使うまでもないというか、使う余地がないというか、そういう状況なんかもあるんですよね。他の職員との均衡といっても、やはり非常勤の形態とかというのがネックになっているというのが前提だと思います。
 そこにこそ、やはり打開をしていく必要があるんじゃないのかということで、厚労省に重ねてお尋ねしますけれども、学童保育の指導員の仕事というのは、子供を預かる教員や保育士と同様に、専門性を持った仕事であります。学童保育の職員は、そういった特別な専門性が求められているのではありませんか。

○成田政府参考人 お答え申し上げます。
 放課後児童支援員の職務に伴う専門性につきましては、平成二十七年三月に定めました放課後児童クラブ運営指針におきまして、放課後児童支援員は、豊かな人間性と倫理観を備え、常に自己研さんに励みながら必要な知識と技能を持って育成支援に当たる役割を担うとともに、関係機関と連携して子供にとって適切な養育環境が得られるよう支援する役割を担うと整理しているように、放課後児童支援員には放課後児童クラブを運営する上で必要となる専門性が必要であると認識しております。

○塩川委員 この放課後児童支援員の方というのは専門性が必要だという話であります。やはりそこに着目をして、その専門性にふさわしい処遇改善を図っていくということこそ求められているということで、もともと、地方の自治体における運動から学童保育は進んでまいりました。
 そういう中で、例えば埼玉県などでガイドラインをつくって、そういうのも参考にしながら、国としてもガイドラインの制定や法定化の話なんかにもつながってきているわけなんです。
 そういう意味では、まさに今は国の仕事として、どうやはり学童保育を前に進めていくのかというので積極的な役割を果たすことが必要だということが求められていると思います。
 そこで、大臣にお尋ねをいたします。
 今のお話、答弁にありましたように、学童保育、やはり専門性が必要なんだ、それにふさわしい処遇改善こそ求められているときで、大臣の立場から、この専門性に見合った学童保育の指導員の皆さんの処遇改善を進めるために、市町村にぜひ、どういう働きかけができるのか考えていただいて、やっていただきたいんですが、どんな働きかけをしていただけるでしょうか。

○松山国務大臣 ただいま厚生労働省より答弁がありましたとおり、放課後児童クラブの処遇改善事業の実施、これについては、現状では市町村によって取組にかなり差があるという状況であると認識しております。
 放課後児童クラブの質の向上を図る観点から、放課後児童支援員の処遇の改善は大変重要であると考えております。
 今後とも、厚生労働省と連携しながら、あらゆる機会を捉えて市町村への働きをしっかり行ってまいりたいと思います。

○塩川委員 今、こういった処遇改善の事業をめぐって市町村の実情を確認してきたわけですけれども、そういった際に、やはり専門性にふさわしい職員として処遇する、非常勤ではやはり専門性を発揮するに至らないという点では、非常勤の方の力もかりながらも本当に常勤にしていく、そういった形での支援というのを賃金面、処遇改善で行っていくと同時に、そのためにも、市町村における財政措置の話がありまして、子ども・子育て支援制度に基づいて、内閣府経由で制度上も市町村に三分の一の補助を行っているのが、今紹介をした処遇改善事業やキャリアアップの事業でもあるわけで、こういった市町村への補助率の引上げなど財政上の支援をとる、そういうことも含めて検討する必要があるのではないのかと率直に思いますが、いかがですか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 子ども・子育て支援をしっかりと進めていく上では、自治体は非常に重要な役割を担っていただいておりますので、補助率のかさ上げというのがすぐにというわけにはなかなかいかない、いろいろな課題もありますけれども、いずれにしましても、国、自治体、連携しながら、しっかり子ども・子育てに取り組んでいきたいと思ってございます。

○塩川委員 国、自治体連携はもちろん結構ですし、やはりこういった支援制度を国としてあらゆる機会を通じて利用を促すということはぜひやっていただきたいんですけれども、やはりそういう点でも財政上の措置が必要なんじゃないのか。
 ぜひそういう点での、大臣として、前に進めるということであれば、財政上の措置についてもぜひ具体的に検討いただきたいと思いますが、いかがですか。

○松山国務大臣 御指摘のとおり、大変重要な課題だと思っておりますので、しっかり受けとめて、今後の検討課題とさせていただきます。

○塩川委員 実際に、なかなか現状で困難な状況にあるときに、今言ったように、やはり人手不足が本当に深刻なんですよ。それをやはり本当に改善するとしたら処遇改善しかないわけで、専門性の発揮をする、それにふさわしいような労働条件を確保していく、そのためにも、市町村の背中を押すという点での財政措置についてもしっかりと対応していただくということを強く求めておくものであります。
 そういう意味で、学童保育において今重大な問題となっているのが、地方分権の改革の流れの中で、この人員配置基準などについての見直しの話が出ているということであります。閣議決定された文章の中にも、こういった学童保育の指導員の配置基準について、現行は従うべき基準であるものを、参酌基準へと緩和するということについて検討するということが閣議決定で決められているということでありますけれども、率直に言って、何でこんなことを今行うのか、おかしいじゃないかと思うわけであります。
 厚労省としては、こういった、今議論が出されているこの配置基準についての変更、これはどのように受けとめておられますか。

○成田政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘いただきました従うべき基準に関する参酌化に関する御提案につきましては、子供の安全性等、一定の質の担保を行いつつ、登録児童数が少ない場合、地域の人口が少ない場合など、地域の特性によっては継続的に放課後児童クラブの運営が難しいという状況が生じていることもあることから、引き続き、地方分権の議論の場で検討することとされたものでございます。
 厚生労働省といたしましては、現在行っております放課後児童対策に関する専門委員会での放課後児童クラブの量の拡充、質の確保、役割とメニューの充実など、今後の対策についての御議論も踏まえ、引き続き、地方分権の議論の場での検討に適切に対応してまいりたいと考えております。

○塩川委員 厚労省としては、この放課後児童支援員の員数に関する従うべき基準というのは、子供の安全性の確保にとって不可欠な要件だと受けとめているのか、受けとめていないのか、その点について、厚労省としての立場をもう一回聞かせてもらえますか。

○成田政府参考人 今回の御議論は、子供の安全性等、一定の質の担保を行いつつ、どのようにしていくかということについて検討が行われるというふうに理解しております。

○塩川委員 ですから、従うべき基準とすることが本来だというのが厚労省としての立場ということですよね。

○成田政府参考人 繰り返しになりますけれども、閣議決定を受けまして、子供の安全性等の一定の質の担保を行いつつ、そうは申しましてもいろいろな状態が生じていることもございますので、引き続き、地方分権の議論の場で検討されるということになっておりますので、厚生労働省といたしましても適切に対応してまいりたいと考えております。

○塩川委員 子供の安全性の確保のため不可欠だという立場であることには変わりがないんですよね。もちろん、地方分権で議論はするんだけれども、厚労省の立場はそうだということでいいですか。

○成田政府参考人 子供の安全性等、一定の質の担保を行うことは必要であると考えております。

○塩川委員 ですから、厚労省でも、専門委員会でそういう議論をしているわけですよ。ですから、まさにそういった専門性を必要とする学童保育の指導員のあり方について、より専門性を発揮するような仕事としてどうしていくのかという議論を厚労省内で議論しているときに、地方分権などといって横から話を持ってくるというのは全く認められないという話であります。
 本当に、保育の現場もそうですけれども、学童保育の現場でも、今詰め込みも重大になっているようなときに、その詰め込みの解消のような施設建設を行うのと、あわせてやはり処遇改善につながる取組こそ求められているのに、職員の配置基準について、従うべき基準を参酌基準へと緩和するというのは断じて認められるものではありません。
 松山大臣にお尋ねしますけれども、地方分権改革の中で、職員の配置基準について、従うべき基準を参酌基準へと緩和をする、こういうことについて検討するとなっているわけですけれども、大臣もお認めになっている、専門性に見合った処遇改善の取組に逆行するものと言わざるを得ないのが地方分権での議論ではありませんか。

○松山国務大臣 御指摘の地方分権の議論については承知をしているところでございますが、いずれにしましても、児童の安全、安心な居場所を確保するということで、放課後児童クラブの質の確保を図るということは極めて重要であるというふうに認識をいたしておりますので、厚労省などがしっかり取り組むよう、私としても注視しながら、そして連携をとってまいりたいと思います。

○塩川委員 いずれにしろというのは話をそらすときのワードですから、答えていただきたいんですが、今の地方分権改革の中で、職員の配置基準について、従うべき基準を参酌基準へと緩和するというのは専門性に見合った処遇改善の取組に逆行するんじゃないのか、この点についてもう一回お答えください。

○松山国務大臣 厚労省が答弁したとおりに、この質の確保を図ることは極めて重要でありますので、私としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

○塩川委員 地方分権改革の議論が私はおかしいと思っているのは、国が地方を縛る、この国の地方への縛りを取り払うのが地方分権改革だというんですよ。
 もちろん、そういう面もないとは言えない。しかし、この保育士の配置基準のような安全の問題、ふさわしい保育の内容を確保する、そういう基準を従うべき基準としているのは、何も国が地方を従えさせるためにやっているんじゃないんですよ。国が地方を縛っているんじゃないんです。これは、国民、住民、保護者が、まさに自分の子供たちのためにその安全をしっかりと守る、そのために従うべき基準としているわけで、国民、住民、保護者が国と地方自治体、行政を縛っているというのがこの基準なんですよ。
 それを取り払うというのはとんでもない。国民の安全を損なうものを、そういう基準を取り払うというのは、地方分権改革の名のもとにやっていること自身が間違っているんですよ。こういう議論をしっかりしなくちゃいけない。松山大臣もそう思いませんか。

○松山国務大臣 委員の御指摘を踏まえて、厚労省が適切にしっかりと進めていくものと承知しております。

○塩川委員 専門職にふさわしい処遇改善に取り組んでこそ、人手不足の解消につながりますし、学童保育の改善につながるということを改めて強調して、質問を終わります。