<第180通常国会 2012年08月07日 総務委員会 15号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 大都市地域における特別区の設置に関する法律案について質問をいたします。
 最初に、提出者にお尋ねしますが、今回の法案は東京都以外の道府県においても特別区を設置することを可能とする、そういう手続、仕組みの法案だと受けとめておりますけれども、そのとおりでよろしいでしょうか。

○逢坂議員 お答えいたします。
 本法案第三条には、総務大臣は、東京都以外の道府県の区域内においても特別区の設置を行うことができることとされております。したがいまして、委員御指摘のように、今回の法案は、東京都以外の道府県においても特別区の設置を可能にするものでございます。

○塩川委員 それでは、総務省にお尋ねしますけれども、この東京都の都区制度、特別区制度の特徴というのはどういうところにあるのか、この点についてお答えください。

○久元政府参考人 特別区制度の特徴についてお答えを申し上げます。
 現行の地方自治法上、特別区制度が設けられている理由は、東京都の特別区の存する区域におきましては、人口が高度に集中しておりまして、行政の一体性及び統一性を確保する必要がある、こういうふうに説明されております。そのために、通常の市町村であれば市町村が処理する上下水道や消防に関する事務を、都が一体的に処理しております。そして、そのために必要な財源といたしまして、法人住民税、固定資産税、特別土地保有税につきましては都が課税することになっておりまして、この財源は、二十三区の財源の均衡化を図るための都区財政調整制度に充てられます。
 このように、一言で申しますと、基礎自治体の権限の一部を広域自治体が有する、その理由は大都市地域における一体性に求められる、これが現行の都区制度の特徴ではないかと考えております。

○塩川委員 基礎自治体の事務の一部を広域自治体が請け負う、その背景として大都市地域における行政の一体性及び統一性の観点がある、市町村の事務を都が一体的に処理する、その上で、そのための財源についても、財政調整制度などを通じて、都が確保した上で配分をするという中身ということであります。
 つまり、特別区制度、都区制度というのが、市町村が処理する事務のうち、人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から、特別区の存する区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務を処理する制度ということです。
 そこで、重ねて総務省にお尋ねしますけれども、特別区制度というのが市町村の事務のうち一体的に処理することが必要であると認められる事務について広域自治体の処理を可能とする仕組み、そのための財政調整制度はどのようになっているのか、このことについてお答えいただけますか。

○久元政府参考人 都区の事務配分に応じた財源の均衡を図るために、都区財政調整制度が設けられております。
 これは、特別区の行政の自主的かつ計画的な運営を確保するために、都が法定の都税、これは法人市民税と固定資産税でありますが、条例で定める一定の割合を特別区財政調整交付金として特別区に交付する、こういう制度でございます。そして、その交付金の算定方法につきましては、地方交付税と類似の方法で基準財政需要額と基準財政収入額が算定されまして、交付金が交付されるという仕組みになっております。

○塩川委員 特別区制度によって、事務、権限とそれに必要とする財源を市町村から広域自治体に移すことが可能となる、そういう仕組みとして特別区制度ということになっております。
 大臣にお尋ねしますが、大都市制度の課題がある、その課題の解決に当たってはさまざまな提案もあるところであります。そういうときに、今回の法案におきましては、この大都市問題の解決に当たって、特別区の設置、いわばそれだけを可能とする法案となっているわけですけれども、こういう法案を通じて地方の大都市問題解決に当たってのさまざまな要望やニーズに応えることにつながるのかどうか、総務省としてのお考えをお聞かせください。

○川端国務大臣 先ほど来の議論にもありましたように、大都市制度については、今回のいわゆる大阪都構想のほかにも、指定都市市長会が提唱している特別自治市構想を初めさまざまな御提案がされておるものと認識をしておりまして、これらの提案も含めて、現在、地方制度調査会で幅広い議論をしていただいておりまして、それぞれの構想についてもヒアリング等々も行わせていただいているところでございます。
 このたび、東京都以外の区域に特別区を設置する手続を定めた本法案が七会派から共同提案されたことについては、大都市の現状を踏まえて各党各会派がそれぞれ法案を用意され、協議が行われて、七会派の一致した御提案として結実したものというふうに受けとめております。
 この法案は、道府県における特別区を設置するための手続を定めたものでありますけれども、先ほど局長も東京都の例を申し上げましたけれども、実際に特別区制度を東京以外の地域に適用する際には、道府県と特別区の事務配分のあり方、税源配分、財政調整のあり方、個別法の都、特別区に関する特例の取り扱い等の論点がありまして、これらについては引き続き地方制度調査会で御議論をいただけるものと考えております。
 総務省としては、地方制度調査会の審議の状況を踏まえて、大都市制度の現状や課題、その解決方策について、さまざまな観点から検討してまいりたいと思っております。

○塩川委員 地方制度調査会でさまざまな議論が行われている、特別区制度についてのいろいろな課題の洗い出しもしながら検討も行っているということでありました。
 そこで、提出者にお尋ねをいたしますけれども、大都市制度の課題の解決に当たりましてはさまざまな提案もあるところですけれども、なぜ特別区の設置だけを可能とする法案を提出されたのか、その理由についてお答えください。

○山花議員 塩川委員御指摘のとおり、また今総務大臣からも答弁がございましたけれども、大阪だけではなくて、特別自治市であるとか、あるいは新潟州、中京都等々、こういったことについて今議論があるということについては承知をいたしております。
 今回の法案につきましては、道府県に特別区を設置したいという地域の提案を受けまして、各党がその提案を真摯に受けとめまして、幾度の議論を重ねた結果、最終的な合意を得た到達点として七会派共同で国会に提出したものでございます。
 提案者としては、他の大都市制度に関する方法とか提案に関する課題につきましては、必要に応じて適切に対処していければと思っておりますが、ほかの今具体的に提案があるものについては、既存の制度とはちょっと違う中身を有しているのかなと思っております。
 それに比べまして、特別区というのは、例えば東京都に既存の制度があって、今回の場合、先ほど御議論があったような事務の分配であるとか財政調整だとか、その部分はやや変形いたしますけれども、基本的な型があるものではないかと思っております。他方、ほかの提案というのは全くオーダーメードのような形になっていますので、まだちょっとその部分については、七会派ではそこまでの合意には至りませんでした。
 今回、特別区の部分について合意を得たということで、その部分について提出をした、こういう経緯でございます。

○塩川委員 特別区については、二十三の特別区の側からも現状についての、基礎自治体の事務、権限の問題や災害の問題についてさらなる検討を求めるような要望もあるわけで、そういういわば課題つきの制度ということが前提の上で、なぜ特別区だけを実現可能とするような手続法を出されたのか、その点について改めてお答えいただけませんか。

○山花議員 東京都の特別区、私も東京都の、まあ多摩地域の選出の人間ではありますけれども、二十三特別区のあり方についてはもっとこうあるべきだという議論があることについては承知をいたしております。
 ただ、自治のあり方ということについて、固定的に、これが完成形であるというのは恐らくないんだと思います。そのときそのときでいろいろな提案があるんだと思います。ただ、既存の東京の二十三特別区の中でいろいろな御提案があるということはさておきましても、現行、仕組みとして少なくとも機能している、ワークしているということについては否定できないことでありますし、それをモデルとする形でやりたいという自治体が手を挙げてきているわけでありますので、そこから先、仄聞しているところによりますと、この先の展開としては、今の東京二十三区の権能というよりも、中核市並みの権能を与えるような形でこれから進めていきたいと聞いております。そういった地方の提案を受けとめるということでは、あくまでも今回は手続法でありますので、その部分について合意ができたので提出をした、こういう経緯でございます。

○塩川委員 地方の提案という話がありました。
 今回の特別区を可能とする法案というのが、大阪維新の会の大阪都構想、これが念頭にあるということはそのとおりですね。

○山花議員 実際、具体的にこのような提案をされているのは、大阪市、大阪府からの提案というふうに認識をいたしております。

○塩川委員 では、この特別区制度によって大阪などの大都市問題についてどのように課題の解決を図ることが可能となるのか、それについてどのようにお考えですか。

○逢坂議員 今回の法案は、先ほど来説明しておりますとおり、地域でどんな自治体を形成するかの中身について言及している法案ではございません。御提案のあった、特別区をどう実現するかというその手続についての法案でございます。
 具体的に、事務の配分をどうするか、あるいは財政調整をどうするか、税源配分はどうあるべきか、こういったことについては、関係自治体で構成する協議会において、協定書の中で、御議論をいただいて最終的に決定することになるわけであります。そして、その際には当然議会の議決が必要である、加えて住民投票の手続を経るということでありますので、さまざまな形で、地域の納得の上でそういったことがつくられていく。その中で地域として最善の方向を探っていただけるよう、我々としては期待をしているところであります。

○塩川委員 法案の提案理由説明の中で、指定都市制度については道府県との二重行政の弊害等の指摘もあるということで、地域の実情に応じた大都市制度を構築できるように制度改正を行うということが述べられております。
 二重行政の弊害ということが言われていますけれども、例えば大阪維新の会橋下市長などは、二重行政に関して、大阪に司令塔は二人も要らない、一人の司令官が産業政策、空港戦略、広域インフラを進める、このように言っております。
 先ほど確認しましたように、特別区制度というのが、市町村の事務のうち一体的に処理することが必要であると認められる事務について広域自治体が処理することを可能とする仕組みであります。事務、権限とそれに必要とする財源を市町村から広域自治体に移すものとなります。
 そうしますと、今回の法案というのは、結局のところ、二重行政の排除というスローガンのもとで、大阪市など基礎自治体の権限と財源を広域自治体の府などに吸い上げて、大型開発を推進するために特別区制度を活用するということになりはしませんか。

○山花議員 先ほど、東京の特別区の特徴であるとか趣旨ということについては政府側から御説明がありました。あれは、もともと東京都で特別区の制度が設置された当時の趣旨と思います。
 今、それこそ分権改革、あるいは民主党ですと地域主権改革と申し上げておりますけれども、こういったことが進んでくる中で、例えば先ほど御指摘があった二重行政についても、そういうことがあるんだというふうに現地からは聞いておりますけれども、国の側から自治体の行政に対してこれが二重行政であるということを指摘するのは余り適切ではないのではないか。やはり地域の方々が、本来こうあった方が効率的じゃないかとかそういった議論をしていただいて、それを国の方で受けとめる、こういうことだと思います。
 国の方で何か大規模な開発を後押しするとかそういうことではなくて、やはり本来、自治のあり方について、先ほど手続についても説明がありましたとおり、協定書をつくり、議会でも議決をし、それに対して最終的には地域の住民の方々の住民投票で決していく、こういうことでありますので、こちらの方で何か政策目的を持ってという趣旨ではないということは御理解いただきたいと思います。

○塩川委員 特別区制度を可能とするという仕組みであること自身が、この法案というのが、二重行政の排除ということを口実にして、大企業優先の巨大開発事業に集中投資するための仕組みづくりであり、結果として、大型開発に集中投資をすれば福祉や教育の予算にしわ寄せをされることになる。
 こういう法案は廃案にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。