○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
クール・ジャパン推進機構法案について質問をいたします。
きょうの委員会でも議論になってまいりましたけれども、投資先の情報開示の問題についてであります。
財政資金、国費を投入するわけですから、機構が出資する投資先の財務諸表など、情報公開が必要だと考えますが、この点についての対応はどのようになるんでしょうか。
○永塚政府参考人 情報公開に関するお問い合わせでございますけれども、この機構の運営につきましては、経済産業省としてしっかりと監督することとしております。
具体的な方法といたしましては、財務諸表の提出あるいは業績の評価、こういったものを行い、その結果を公表するという形でチェックをしっかりしていきたいというふうに考えております。
○塩川委員 そんな質問はしていないですよ。機構の話じゃないんです。
機構からの投資を行った出資先について、国費を使うわけですから、しっかりとした情報開示が必要なんじゃないかということを聞いているんですが、大臣、いかがですか。
○茂木国務大臣 普通の企業でもそうだと思いますけれども、全体の財務諸表の公表とかはいたします。その上で、個々の事業の採算性等々につきましては、社内ではいろいろな議論があると思いますけれども、一般的には外に公表しておりません。恐らくこれは、そういった情報を公開することによって、事業が他の企業と比べて競争上不利になるということもあり得るんだと思います。
基本的な考え方は同じでありますけれども、そういった前提を置きながら、できる限りの情報公開には努めていきたいと思っております。
○塩川委員 会社法上の会社であれば、財務諸表の作成や開示義務などもかかるわけですけれども、この機構の対象事業者、出資等を行う対象事業者には投資組合も含まれているわけであります。
例えば、民法組合、任意組合、匿名組合とか、LLP、LPSなどと書いてあるわけですけれども、匿名組合というのは、名前のとおり出資者は匿名ですから、そういう意味では、何をやっているのか外からはわからないということであるわけで、私はやはり、国民への十分な説明責任を果たすという点で、こういうことでいいのかなと率直に思わざるを得ないんですが、大臣はいかがですか。
○茂木国務大臣 国として、監督すべき点については、しっかりと監督していきたいと思っています。そこの中で、公開できる情報については公開してまいりたい。
ただ、先ほども申し上げましたように、匿名組合であって開示していない部分もある、普通の企業でも、個々の事業についてまで全て、どういった形でやっているか、こういったことは開示いたしておりません、競争上不利にならないような形で、またクール・ジャパンが順調に進展するような形での情報公開に努めてまいりたいと考えております。
○塩川委員 条文を見ますと、この対象事業者の中には、外国の法令に基づいて設立された、日本の法令に基づく投資組合に似たものも含むというふうに書いてあるわけであります。
例えば、タックスヘイブンで有名なケイマン諸島にもこういう法律があるわけですけれども、外国の法令といった場合に、ケイマン諸島の法律というのは、当経済産業委員会で昔質問したこともありますけれども、エグゼンプト・リミテッド・パートナーシップ法ということで、つまりファンド免税法、こういうものがあるわけですね。
こういう外国の法令に基づく投資組合も対象事業者になっているという点でいいますと、もともと投資組合というのは、二重課税回避、租税回避等、リスク遮断ということが大きな趣旨としてあるわけですから、こういったものに対して機構が出資するということは、私は、国費を使うのであれば節度というものが必要で、こういうスキームをつくることの妥当性が問われているのではないか、この点を指摘しておくものであります。
クール・ジャパンということであれば、やはり、その担い手をどういうふうに支援していくのかということが求められているわけであります。
法案は、いわゆる文化を産業化する考えのものですけれども、海外展開を急ぐ余りに、我が国文化を薄利多売するようなことになりはしないか。その産業を担う中小企業や労働者の経営条件や労働条件の悪化につながるようなことがあってはなりません。
我が国の映画、アニメ、漫画、テレビゲームなどは、既に海外でも高い評価を得ております。いわゆるコンテンツ産業について言えば、それらを育んできた作家やプロデューサー、現場の個人クリエーター、中小下請企業、業者の支えがあって初めて実現したものですけれども、その働きに対する正当な報酬がない、労働条件も劣悪だ、この結果、これらの分野において、下請作業工程の大事な部分が海外に流出して、後継者が質、量ともに育成できず、先細りになるなどの深刻な現状にあるということが指摘されております。
文科省にお尋ねしますけれども、アニメーターの現状について、芸団協に委託して、文科省、文化庁として過去に調査を行っております。そこでは、アニメーターの所得が国民全体の収入との比較でどのようになっているのか、お答えください。
○義家大臣政務官 お答えいたします。
文部科学省からの委託によりまして、五年に一度、委託事業を行っています。
前回は、アニメーターのみに特筆していない、含まれるデータですが、その前にアニメーターのみのデータが残っているのは平成十六年であります。アニメーターの総収入は、サンプル数の少ない六十歳以上の年代を除く全ての年代において、全産業の平均額より下回っております。具体的には、二十歳から二十九歳が、産業全体の平均額が三百四十二万九千円に対してアニメーターは百三十一万四千円等々、全年代において下回っているというデータがあります。
○塩川委員 非常に収入が少ないということが実態調査でも明らかであります。
経済産業省にお尋ねをいたします。
日本アニメーター・演出協会がアニメーター労働白書二〇〇九というのをまとめておられます。その中で、アニメーターの年収等、待遇面がどういうふうになっているのか、そういう実態についてお答えいただけるでしょうか。
○永塚政府参考人 お答えいたします。
日本アニメーター・演出協会の調査の結果によりますと、アニメーターの平均年収は、年代別に出ておりますが、二十代で百十・四万円、三十歳代で二百十三・九万円、四十歳代で四百一・二万円、五十歳代で四百十三・七万円、六十歳代で四百九十一・五万円となっております。
○塩川委員 いずれも、全体の平均の収入との関係でも大きく下回っているという現状があります。
ある動画担当の元アニメーターの方のお話を紹介しますと、給料は完全出来高払い、カット一枚二百円、どんなに頑張っても描けるのは一日に十枚から十五枚くらいが限界で、月給は月五万から六万円でした、四年働いて月収が十万円を超えたのは四回だけです、周りを見ると同僚の多くは職場を去っていきました、私も体調悪化をきっかけに退職を決めました、お金も時間もない中で自分の感性がすり減っていくのが怖かったんです、こんなふうにアニメーターが貧困に苦しまないと作品が生まれない構造は健全とは言えないと思います、このように述べておられます。
大臣、クール・ジャパンの担い手のアニメーターの置かれている実態とこういう訴えについてどのように受けとめておられるのか、お聞かせください。
○茂木国務大臣 先ほども答弁させていただいたように、まず所得水準も低いということでありまして、仕事としての安定性というのも少ないのではないかなと思っておりますけれども、アニメーターの存在というのは極めて重要だと私は思っております。そんな中にあって、アニメーションは多くの下請業者が関与しておりまして、取引の透明化というのが十分ではない、こういう側面もあるんだと思っております。
こういった状況を踏まえまして、ことしの四月に、アニメーションの制作を委託する親事業者と下請事業者との間の公正な取引を促進し、下請事業者の利益の保護を図るためのガイドラインを作成したところであります。このガイドラインを普及啓発していくことによりまして、下請事業者の利益の保護を図り、クリエーターの制作環境の向上につながるように努めてまいりたいと思っております。
同時に、先ほど塩川先生は薄利多売というお話をされましたけれども、海外にまで出ていっていないんですよ、売れるものが。売り上げを上げるということによって、ボリュームを稼ぐということによって利益も出てくるんです。そういった意味でも、このクール・ジャパンをきちんと進めていきたいと思っています。
そして、付加価値の高いものがきちんとその価値で正当に販売されるためには、海賊版であったりとか、知的所有権の保護、こういったことも必要でありまして、そういったことも制度的に保持して、DVD、CD等の侵害物品の摘発等の対策も進めていくということが必要だと思っております。
いずれにしても、やはりこういった産業が振興され、企業にも利潤が入り、そしてそれが現場、クリエーター、アニメーターにきちんと還元される、こういった仕組みをつくることが極めて重要だと考えております。
○塩川委員 必要な制度を整え活用していく、こういう取り組みというのが重要だ、そのとおりであります。
同時に、今実態がどうなっているのかというのは、リアルにつかむ必要がある。
例えば、このアニメーター労働白書二〇〇九の中でも紹介しているんですが、アニメーションをつくる場合にもいろいろな工程があって、それぞれに担当の方がいらっしゃいます。
まず原画があって、その間を埋める動画をつくるわけですから、動画をつくる人が当然多いということですけれども、実際には、この調査によると、本来、原画担当者の倍近く存在すべき動画担当者の数が、逆に半分程度になっているということなんですね。なぜかというと、コストが安いからなんです。コストが安過ぎるために、もちろん原画の担当者の方も低い、それを下回るように動画担当者の方も低いために、こういうところがいわば外注に出ているのが実態であります。
そういう意味では、まさに、クール・ジャパンというよりも、産業を振興すべき根幹の土台のところが実際には崩れかねないような事態にあるんじゃないか、こういうことを強く懸念せざるを得ません。こういった実態についてリアルにつかむ調査というのを改めてやる必要があるんじゃないか。この点どうでしょうか。
○茂木国務大臣 先ほども、非常にこの業界は複雑な下請の構造になっている、こういうお話を申し上げました。
これからまさにクール・ジャパンを展開していく上で、国内の各産業の実態がどうなっているか、しっかり把握した上でないと、いい戦略も描けないわけでありますから、そういった努力をしてまいりたいと考えております。
○塩川委員 アニメーターの厚生年金の加入者が一二・八%、雇用保険の加入者は一〇・六%、不安定な待遇。つまり、実際にはアニメ労働者の大半が請負契約で、個人事業主扱いになっている、一枚幾らの出来高払いという実態があるわけですね。アニメ業界というのが、発注側のテレビ局を頂点に、下請、二次下請などの重層構造になっていて、テレビ局に対してアニメ制作会社の立場が弱いということもあります。
そういう点でも、現場の声として、作品ごと請け負う場合でも、制作会社はテレビ局の言い値でつくるしかない、単価が低い上に、今、ハイビジョン化で、細密な作画を求められ、現場の負担感がすごい、こういう声も上げておられます。こういう声にしっかりと応えた支援策、こういった事態を改めるような打開策を改めて強く求めておくものであります。
さらに、クール・ジャパンというのであれば、日本文化そのものの振興が必要であります。
文科省にお尋ねいたします。
国家予算に占める文化予算の割合、またGDPに占める寄附、この割合の国際比較を文化庁としてしていると思うんですが、その数字を紹介してもらえますか。
○義家大臣政務官 この点に関しましては、国によって文化行政の組織や制度、文化予算の範囲等を異にしておりますので、各国の文化に関する予算の単純比較は困難であるという前提のもとで、日本の国家予算に占める文化予算の割合は、二〇一二年においては〇・一一%、一千三十二億円である一方、例えばフランスは一・〇六%、四千四百七十四億円、韓国は〇・八七%、一千四百十八億円、ドイツが〇・三九%、一千三百四十九億円などとなっております。
また、GDPに占める寄附の割合に関しても、日本は〇・一三%である一方、アメリカが一・六七%、イギリスが〇・七三%、ドイツが〇・二二%などとなっております。
こうした数値を比較すると、我が国の文化に関する予算及び寄附額は諸外国と比して少ない状況にあると思われます。
○塩川委員 国際比較をした場合に、日本の文化にかけるお金が少ないという御答弁でありました。
そういった点で、やはり一つ一つの文化を振興していくという取り組みも重要であるわけで、コンテンツの一つでもあります映画に関連して、フィルムセンターのお話をお聞きしたいと思います。
国立美術館に附属しますフィルムセンターは、我が国唯一の国立の映画に関する専門機関として、日本における映画文化振興の中核となる総合的な映画保存所を目指しております。
そこで、文科省の方にお尋ねしますが、国立美術館とフィルムセンターの予算額と人員の推移について、二十一年度と二十五年度の比較で紹介していただけますか。
○義家大臣政務官 委員御指摘のとおり、東京国立美術館フィルムセンターは、我が国唯一の国立の映画に関する専門機関でありまして、平成十三年度からは独立行政法人国立美術館内の一組織として、映画フィルムの収集、保存を中心とした事業を実施しております。
このフィルムセンターの予算についてでございますが、平成二十五年度が七億三千万円、平成二十一年度の六億三千万円と比較すると一億円増となっております。一方で、独立行政法人国立美術館の予算は、平成二十五年度が四十三億一千万円であり、平成二十一年度の五十三億六千万円と比較して十億五千万円減となっているのが現状であります。
また、フィルムセンターの常勤職員数でございますが、平成二十五年度は八名でありまして、業務の効率化により、平成二十一年度の十一名と比較して三名減となっております。独立行政法人国立美術館の常勤職員は、平成二十五年度は百七名であり、平成二十一年度の百二十五名と比較して十八名減となっております。
文部科学省といたしましては、映画振興の観点からも、引き続き、東京国立近代美術館フィルムセンターの機能の充実等に向けて取り組んでまいりたいと思っております。
○塩川委員 フィルムセンターは国立美術館の附属ですから、国立美術館全体の運営費交付金の影響を受けるわけです。切り出した場合に若干ふえているような場面もあるかもしれないけれども、大もとの国立美術館の運営費交付金が削られる、独自資金を確保するといっても、では入場料収入をどんどん上げればいい、こういう話には当然ならないわけで、私は、やはりこういうところにこそ必要な国費をかけていくことが求められていると重ねて申し上げておくものであります。
その点で、映画の保存の問題について要望が出されております。
演劇や映画にかかわる映画演劇労働組合連合会、映演労連の要望書におきまして、二〇一二年の五月十六日、これは経産省の方にも出されているようですけれども、デジタル映画を含めた映画原版の保存への支援策についてです。
そこでは、「映画の原版保存は、制作プロダクション任せになっています。また、デジタル制作される映画が増えていますが、デジタル原版の保存様式はバラバラです。富士フィルムが開発した保存専用アーカイブフィルムがハリウッドで評価されていますが、日本の中小プロダクションがそれを採用するには経費的に無理があります。 このままでは将来、日本映画のコンテンツが失われかねません。デジタル映画を含めた映画原版の保存方法について映画業界と行政が至急協議し、原版保存の標準規格を確立するとともに、原版保存について国の公的支援を強く要請いたします。」このようにあります。
こういう要望に対して、国としてどのように対応されるのか。
○義家大臣政務官 御指摘のとおり、近年、デジタル技術の進展によりまして、フィルムを用いない、いわゆるデジタル映画が多数を占めるようになってきております。
しかしながら、映画のデジタルデータを記録する媒体である磁気テープ、光ディスク、ハードディスク等につきましては、フィルムに比べて短命と一般的に言われておりまして、またハードウエア、ソフトウエアも、技術革新の速度が非常に速いため、定期的なデータ変換や機器の変更等に多額の経費を要するなどの課題の声が寄せられております。
また、我が国の映画業界のみならず、国際的にも、映画のデジタルデータの記録媒体、長期保管の方法についての統一的ルールが現時点では確立されていないという実情もございます。
このような観点から、国立近代美術館フィルムセンターでは、映画業界における映画のデジタルデータの長期保管の方法の確立に向けた動きを現在注視しているという段階でありますが、御指摘のように、しっかりと中身を精査し、世界の動きも精査しながら、国として、文化庁としてできることをしっかり進めてまいりたいと思っております。
○塩川委員 文化庁の予算そのものもこの十年ずっと同じですから、そういう点で考えても、しっかりとした支援策なしには文化の土台自身に大きく毀損が生じかねないということを指摘しておくものであります。
大臣と、あわせて義家政務官の方にもお尋ねしたいんです。
今議論になっているクール・ジャパン、コンテンツということであれば、やはりこういった文化予算そのものをふやしていく、それがコンテンツ産業の裾野を大きく広げていくことにつながるんじゃないか、こういう点での積極的な対応が求められている。そういう点で、経済産業大臣として、また文部科学大臣政務官として、お答えをいただきたい。
○茂木国務大臣 国内における文化の振興、これはクール・ジャパンを進める上でも極めて重要だと思っております。
どこまでやるか、フランスのように、文化振興していますけれども、原発とルーブル美術館をパッケージで売る、そこまでやるのがいいのかどうかというのはあると思いますが、国内における文化の振興は極めて重要だと思っております。
○義家大臣政務官 まず、文化というものをどのような範囲で考えるかでありますけれども、伝統的文化の保持、これをしっかりと守るべきは守る、さらには日本のコンテンツ、日本の強みをどのように外に向けて発信していくかという二通りの考え方があると思います。
守るべきは、断固守っていくために担保していく、そして選択と集中、進めるべきは、一斉に発信していくべきは、さらなる力を挙げて発信していく、このめり張りが今求められているのだろうと思っております。
いずれにしても、予算ありきではなくて、方針としてこういう方向でいくんだ、方針としてこれは断固として守るんだということを、省内でもしっかりと検討した上で対応してまいりたいと思っております。
○塩川委員 予算ありきではなくてといっても、予算そのものが足りないんですから、やはりやるべきことはある。しかし、それがつけられていないというところが現状なわけです。
そういう点でも、しっかりとした支援策につながるような予算の確保こそ必要で、OECD諸国中、最低水準、こういう汚名を晴らすような、政府としてそういった底上げこそ図るべきで、海外需要の確保というのはそういう中でより実りのあるものにもなってくる。安易に目先の収益拡大に走ることが、かえってつまずくことになることもあるということを指摘して、質問を終わります。