国会質問

<第186通常国会 2014年05月20日 総務委員会 22号>




○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、行政不服審査法等関連法案に対する討論を行います。
 行政手続法改正案は、権限濫用型の行政指導からの救済規定、処分や行政指導の手続についての申し出制度の追加であり、権利救済に資するものとして賛成です。
 しかし、行政不服審査法案及び同法律の施行に伴う整備法案については、行政事件訴訟の改正を踏まえて審査請求期間を延長したこと、審理における口頭意見陳述や質問権を付与したこと、不服申し立て前置を縮小、廃止したこと等の改善点も含みながら、改正の柱の一つである不服申し立ての審査請求への一元化などは、国民の権利利益の救済の仕組みを後退させるものと言わざるを得ません。
 まず、一元化により異議申し立てが廃止されることです。
 公害健康被害補償法では、公害被害に苦しむ患者の多くが、企業や国の責任とあわせ、健康被害の認定、補償給付の決定など県の処分に対する異議申し立てを通して、公害被害に対する県行政のあり方を問うてきました。異議申し立ての廃止は、患者の権利利益の救済に重大な影響を与えるものです。しかも、異議申し立てにかわる再調査の請求は、簡便、簡略な手続で要件事実の当否の確認をするもので、現行の異議申し立ての鑑定の要求、物件の提出要求、処分庁による検証、請求人または参考人の審尋はできなくなるのであります。
 さらに、異議申し立ての廃止と審査請求への一元化によって、基本的に都道府県単位に申し立て先があったものが、大臣宛てへの審査請求となり、審査請求が精神的にも物理的にも国民から遠ざけられていくことも重大であります。
 国税通則法では、税務調査の一環として再調査が導入されています。罰則つきの質問検査権が行使される再調査と不服申し立ての再調査の請求との混同によって、納税者が不服申し立てをちゅうちょすることにもなりかねません。結果として、納税者の権利救済の仕組みを覆い隠すことになることは問題です。
 次に、審理員と行政不服審査会制度です。
 本法案の参考人質疑では、今回の改正によって、公正性が真に担保され、同じ行政内で決定された処分を覆すことが十分に期待できると断言した参考人はいませんでした。審理の公正性を真に担保するのであれば、処分を行った同じ行政庁やその上級行政庁の範囲から完全に切り離され、独立して審理を行う資格と能力、十分な身分保障に裏打ちされた人材による機関が必要なのであります。
 四十九法律に存置となった不服申し立て前置の固定化は許されません。行政事件訴訟法の制定当時も、約五十法律で前置がありました。その後増加した数に相当する分が廃止となっただけであり、今後その増加をとめる具体的な担保がないことも指摘しなければなりません。
 最後に、行政不服審査法案に対する修正案については、施行後五年の見直しという規定であり、賛成であることを述べて、討論を終わります。