
<第186通常国会 2014年05月27日 総務委員会 24号>
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
認定放送持ち株会社の認定要件の緩和に関連して質問いたします。
二〇一〇年の改正で、マスメディア集中排除原則の特例として、議決権保有の上限五分の一が三分の一に緩和をされました。各認定放送持ち株会社においてこの特例を活用している件数が何件になっているのかについて、お答えください。
あわせて、今回の法改正に向けて放送政策に関する調査研究会が行われましたが、その第一次取りまとめでは、この三分の一の上限近くまで、三割以上ですね、ローカル局の議決権を保有している事例が既に六つあるとも触れておりますけれども、その持ち株会社がどこかについても、あわせてお答えいただけますでしょうか。
○福岡政府参考人 お答えを申し上げます。
平成二十三年の緩和を受けまして、本年の四月一日現在で、五分の一以上の議決権を保有する事例といたしまして、総務省で公表している出資比率のデータで見ますと、まずフジ・メディア・ホールディングスにおいて十一事業者、それから日本テレビホールディングスにおいて二事業者、テレビ朝日ホールディングスにおきまして一事業者の事例があるというように承知をしているところでございます。
それから、三分の一の上限近くになっているというお尋ねでございますが、三〇%を超えている事例といたしまして、これはいわゆるフジテレビの系列でございますが、六事例、具体的には、岩手めんこいテレビ、仙台放送、福島テレビ、新潟総合テレビ、テレビ新広島、沖縄テレビ放送の計六事例であるということで承知してございます。
○塩川委員 この上限規制のところでは、つまり、二割を超えているというところも、日本テレビやテレビ朝日系列も一つ、二つありますけれども、十一と特段に多いというのがフジであります。そういう中で、三分の一の上限近くというのが六つを占めるというのもフジだけであります。そういう点では、フジが活用しているということです。
これは、結果として、今回、三分の一を二分の一に引き上げるということなんですけれども、そういう要望というのは、もちろん民放連から出されていますが、それは、各キー局、ローカル局を含めての要望が取りまとめで出ているから入っているだけで、実際にキー局、持ち株の中での要望を私も見ましても、フジだけだと思うんですよね。そういう点では、フジの要望に応えるというのが、この三分の一を二分の一に引き上げるということなんですけれども、何でそういう要望が出ているんでしょうか。
○福岡政府参考人 お答えを申し上げます。
前回と申しますか、平成二十三年の六月に、議決権比率の上限を五分の一から三分の一に引き上げるという、施行されたときもそうでございますし、今回の、三分の一近くまで認められているものを、認定放送持ち株会社の傘下に置くことのできるという形に限ってという法案を提出させていただいているわけでございますが、これを緩和してほしい、するべきであるということにつきましては、ともに、これも御指摘のとおり、日本民間放送連盟から、放送事業者の総意として、要望として承ってきたということが一つの経緯となっていることは事実でございます。
また、私どもがこういった制度改正を行うに当たってパブリックコメントを行いました際には、御指摘のフジテレビ、あるいはフジテレビの系列以外のいわゆるキー局、あるいは他の放送会社からも、賛同するというコメントはいただいているところでございます。
実態上、フジテレビホールディングスあるいはその系列の各社におきまして保有率が高くなってきているというのは、もちろん事実でございますけれども、個別の制度を活用する、あるいはしないといったような判断につきましては、個別の社の判断でございますし、それがどのような特別な事情があるのかということにつきましては、私どもはそこに余り深入りはすべきではないと思っております。あくまで、その実態を踏まえて私どもとしては対応すべきかなというふうに考えているところでございます。
○塩川委員 ぎりぎりまで使っているのはフジだけということは実際のところでありまして、そういう点では、フジの経営戦略との関係で上限規制の緩和を求めるというのが出てくるんじゃないのかなと思うんです。
例えば、フジのホールディングス、フジ・メディア・ホールディングスの有価証券報告書を拝見しますと、系列局がネットワークを離れると、その地方での放送エリアを失い、結果として、全国規模の広告を行う広告主にコマーシャル放送時間枠を販売できない事態が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります、このように述べているわけです。
つまり、系列を維持しようという動機が出資引き上げの背景にあるんじゃないのか。そういう点では、個別のホールディングスの経営戦略に応える緩和ということも言えるところであります。
あわせて、先ほどの参考人質疑でも、この認定放送持ち株会社の資産要件の緩和について、東京放送ホールディングスの例を紹介いたしました。認定持ち株会社が事業会社から利益剰余金を配当の形で吸収する、放送事業との境界面の事業拡大を通じて経営基盤の強化を図るなど、認定放送持ち株会社としてのグループ戦略に取り組むほど、資産要件から乖離する度合いを強めてしまう、このように、要するに、持ち株会社の経営戦略として、現預金をふやしている、あるいは放送外収入を拡大していきたい、こういう要望というのがこの緩和の背景にもあるということです。
大臣にお尋ねしますけれども、今回の改正によって、キー局、認定放送持ち株会社の経営戦略、経営強化策が優先をされて、結果として、放送の多元性、多様性、地域性が損なわれることになりはしないのか、特に地域性が損なわれることになりはしないのかという危惧を覚えるわけですけれども、この点についてお答えをいただきたいと思います。
○新藤国務大臣 今般のマスメディア集中排除原則の緩和、これは、持ち株会社のもとでグループ経営を強化することを民間放送事業者にとっての経営の選択肢として挙げたわけであります。
しかし一方で、改正後の持ち株会社に対しても、現行制度と同様の規律がございます。それは、放送事業者、子会社と合わせて、全国の放送対象地域を十二ということで区切っているわけでありますし、また、関係会社、放送事業者に対し、地域向け番組の自主制作努力義務を課すですとか、そういったものはこれまで同様にあるわけでございまして、そもそも、経営の多角化、強化を図りつつ、放送の多元性、多様性、地域性というものはそれぞれ発揮していただきたいと期待をしておりますし、制度においてこういったものが損なわれることにはならないのではないか、このように考えております。
○塩川委員 もともと、地方のローカル局を支える地域経済が疲弊をして、株を放出したいというときに受け皿がないという話がありますけれども、しかし、今の地方のローカル局を含めて経営実態を見たときに、全産業平均の経常利益率に対して、こういう民放関係はなべて高いわけですよね。それはローカル局を含めて高い傾向にあるわけです。
そういった実態を考えると、そういう地方の実情というよりは、先ほど指摘をしたような、フジグループがいわばネットワークを強化していく、ローカル局に対する支配を強めていく、そういう意図に応えるというのが前面に出るような改正というのは、やはり結果としては地域性を後退させることになりはしないのかという懸念というのは拭えないわけで、先ほどの経営基盤強化計画で、同一放送ということを含めて、今回の法改正というのが地域性の後退になりかねないという問題があるということを指摘して、時間が参りましたので、終わります。