国会質問

<第186通常国会 2014年05月27日 総務委員会 24号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 二人の参考人の皆様には、貴重な御意見、本当にありがとうございます。
 早速、大谷参考人からお聞きしたいと思います。
 放送政策に関する調査研究会の第一次取りまとめにおきまして、マスメディア集中排除原則との関係で、これまで、五分の一の出資規制、これを三分の一に引き上げるということが過去行われました。それをさらに二分の一に引き上げる、認定のもとで関連会社としていくという規制緩和が今回盛り込まれるわけですけれども、その第一次取りまとめにおきまして、この上限、つまり三分の一近くまでローカル局の議決権を保有している事例が既に六つあるという例示がありました。
 これは具体的に見ていきますと、皆、フジ・メディア・ホールディングスの系列のローカル局であります。ほかのホールディングスを見ましても、五分の一をちょっと超えているようなところというのは幾つか見受けられますけれども、三分の一にぎりぎりに張りついているような、そういう出資というのはフジだけであります。
 そういう点で、今回、三分の一を超えて二分の一というときは、実質、要望そのものをお聞きしても、民放連が出しているのは全体の要望ですから、その中に入っているとしても、個別のホールディングスで見ると、フジの要望ということもありますので、そういう点では、何かフジだけの要望というふうにも受けとめられかねないんですけれども、その辺の事情についてはどのように御承知でしょうか。

○大谷参考人 御質問ありがとうございます。
 やはり個社別の事業戦略、最初に述べましたように、非常にそれぞれである。認定放送持ち株会社においても、どういった事業経営に力を入れるのか。フジについては、ヒアリングの過程でも、地方のローカル局との連携を強めていこう、そういった戦略をよく認識することができました。
 ですので、塩川先生の御指摘は全くそのとおりだなとは受けとめておりますが、恐らく、そういう潜在的なニーズというのは、地方で放送局になかなか出資ができない、ちょっと疲弊した地方などには共通してあると思われますので、たまたま顕在化しているのはフジを取り巻く事情であっても、ほかの認定放送持ち株会社においても、ある意味、そういう経営の選択肢もあるんだなといったことで広がりを見せていく、ちょっと可能性を秘めている制度ではないかと思っております。
 もちろん、上限もありますので、それがいたずらに東京の一極集中になったり、系列化による支配といったことが強まるといった懸念は、今のところは心配はしておりません。
 以上でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 このホールディングス、キー局の事業戦略の一つの選択肢という話でございます。
 あわせて、認定放送持ち株会社の資産要件の緩和について重ねて大谷参考人に伺います。
 これは、研究会のいろいろな議論、ヒアリングをお聞きしましても、例えば東京放送ホールディングスにおきましては、認定持ち株会社が事業会社から利益剰余金を配当の形で吸収する、放送事業との境界面の事業拡大を通じて経営基盤の強化を図るなど、認定放送持ち株会社としてのグループ戦略に取り組むほど、資産要件から乖離する度合いを強めてしまう、こういう指摘をしておりますし、その他の関係者の方のコメントでも、事業者が頑張って現預金がたまると資産要件上ではマイナスに働く点が課題として指摘されるとか、一番の問題は、現預金、売り上げに色がついていないこと、こういう指摘があります。
 そうなりますと、今回の認定放送持ち株会社の資産要件の緩和については、資産の要件の見直しではありますけれども、そもそも放送の資産に入らないような現預金がふえている、こういう点というのが一つ理由としてあるのではないのか。つまり、背景には、持ち株会社において利益剰余金などの現預金がふえているということがあり、また、放送外収入をふやしたいという経営戦略というのがその背景にあるのではないかと考えますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

○大谷参考人 ありがとうございます。
 全くその点は御指摘のとおりだと思っておりまして、リーマン・ショック以降、そして地デジ化といったことでかなり吐き出した部分といったものを今、回収しつつあり、経営の安定化に向けて、現預金も含めた構成といったものが資産に占める割合というのが大きくなってきている。その使い道については、中長期的な戦略の中でまだ十分に見出せていないのか、あるいはこれから模索していくのかという状況だと思いますが、それについて資産要件といったものがあるので、決算のときにその処遇を慌てて決めなければいけないというようなことが、ささいなことと言ってしまってはしようがないと思いますけれども、かなり苦慮されているといったことをヒアリングの過程で吐露していただいていたと思います。
 こういった現預金も含めた企業体力に基本的につながっていくといったものは、設備投資もさることながら、特にコンテンツのインターネット展開とか、これから産業競争力を高めていくためのそれぞれの民放各社のイノベーションにどのように投資していただくかということについては、私も大変興味を持って、関心を持って見詰めているところです。そのための自由度が、この資産要件の緩和によってできることになるということを期待して、この制度に賛同しているものです。
 以上です。

○塩川委員 そういう点では、キー局、持ち株会社の経営の自由度を高めるという方向のものではあるわけですけれども、一方でやはり、マスメディア集中排除原則のような、放送を通じた表現の自由を確保する、国民の知る権利を確保する、そういう観点がどうかということもまた問われてくるわけであります。
 その点で、水島参考人に伺いますが、冒頭の意見陳述におきまして、今回の法案は業界の延命措置、業界内部の話というコメントがございました。今お聞きした点などについては、まさにそこと重なる部分があるんだろうなと思うんですが、そういう点でも、放送外収入をふやしていくような各持ち株会社の経営戦略に応えるような今回の法改正というのが、そもそもの、ホールディングスの経営戦略、経営強化策に資するものというのが、結果として、表現の自由や国民の知る権利との関係でさまざまな支障も出てきはしないのかという懸念というのも、ローカル局との関係で思うわけですが、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

○水島参考人 質問ありがとうございます。
 この問題に関しては、大谷参考人ほど私は知識を持ち合わせていないのが正直なところでありますけれども、何回か申し上げましたように、集中排除原則の緩和によって、地方局がこれまで地域密着でいろいろな形の番組を開発したりしてきていたのが突然なくなったり、あるいは、東京の経営者が入ってくることで少し環境が変わったりということを散見はしております。そういうことを考えますと、やはり、地域の放送をどう守るかということはとても大事だというふうに思っています。
 それから、私自身が先ほど、業界の延命措置、そういう面がもちろんあるわけですが、これが民主主義にとってすごく大事だというふうに申し上げましたのは、やはり、私、インターネットの人たちと最近一緒につき合ってニュースをつくったりとかということをやったりしているんですね、授業の関係もありまして。そうすると、少なからず、ジャーナリズムのルールとかいうことがよくわからないまま参入している人たちもいらっしゃるわけですよ。
 そうすると、放送局というのは、これまで、報道の自由とは何かとか、あるいは実名報道か匿名報道かとかいろいろなことを考えて、これまでの蓄積の中で現在の形があるわけですね。それは、もちろん、今のままでも偏っているとかいろいろな批判があるのは重々承知なんですが、しかし、それを経験している局と全く未経験なところの人たちと、どっちがまだ国民にとって豊富な、役に立つ報道になるかということをちょっと考えていく必要があるだろうというふうに思います。
 ぼやぼやしていると、こっちが、未経験な方が、気がついたら報道の大半を占めているということを私自身は懸念しますし、そうした中で、地方局は、何か、埋もれていく、ガラパゴスの取り残されていく側のほんの末端みたいな取り扱いになりやしないか。それを避けるためには、ここで建設的な議論を繰り返していただければと思っております。

○塩川委員 時間が参りました。終わります。ありがとうございました。