第186 通常国会 2014/1/24~2014/6/22 日付:2014-08-10 |
(1)NHK問題
1)政府からの独立 籾井会長の発言をめぐって
NHKの政府からの独立についての認識をただし、この問題を理解しない籾井氏に対して辞職を求めた。
籾井氏は、日本軍「慰安婦」問題や秘密保護法など、戦争責任の認識や政権との距離が批判された自らの発言について、その後「真意が伝わっていないので取り消した」と答弁。
個人的見解そのものを変えたのか?とただすと「ここで言うことは控えたい」と答え、本音は変わっていないことを浮き彫りにした。
放送法の目的は「健全な民主主義の発達に資すること」だ。根本には国策を放送し戦争に加担した戦前のNHKの反省がある。戦後政治の原点は、侵略戦争への反省を踏まえた日本国憲法だ。民主主義の発展に貢献するNHKが政府からの独立を求められるのは当然だ。
それに対し籾井氏は「戦前の反省に立ったかどうかは分からないが、今の形になった」などと述べた。
安倍政権に迎合するような一連の発言は『政府からの独立』という立場と相いれない。籾井氏は「そういうことはない。政府からは何の指示も受けていない」と答弁。
国際放送について「政府が右というものを左というわけにはいかない」という籾井氏の認識について改めてただしたが、「この場でコメントは控えたい」と繰り返すだけ。
政府からの独立、公権力からの自立について無理解な籾井氏に、NHK会長の資格はない。(2月21日、総務委員会)
政府からの独立などNHKの役割について無理解な籾井会長の発言をめぐって、NHK会長の資格要件に照らして今の会長がふさわしいのかどうかということが問われている。
経営委員会の議論内容の開示を要求。浜田経営委員長は「委員と会長の間の自由な意見交換ができる非公表という前提で議論した」と開示を拒否。私は「次期会長の資格要件に照らして会長の言動というのがいかなるものだったのかというのは、まさに根幹にかかわる問題。開示しないことは、視聴者の不信を広げることになる」と指摘。
過去の経営委員会でも、海老沢勝二会長の続投に反対という委員の意見があったにもかかわらず、全会一致で承認にされたという事例もあった。議事録を開示して事実関係を明らかにすることを重ねて要求した。(2月25日、総務委員会)
質疑で、籾井会長発言でNHKに寄せられた意見が3月26日までに3万6100件、うち64%にあたる2万3300件が「偏った放送になるのが心配」など批判的な内容だったことが明らかになった。
2004年、受信料不正使用や、日本軍「慰安婦」の番組「ETV2001」が安倍晋三官房副長官(01年当時)らの圧力で改変された事件が明るみに出て、NHKに55日間で1万1000件の意見が寄せられたが、今回はそれをはるかに上回る深刻な事態だ。
公権力からの自立という姿勢が欠落した会長に、国民から厳しい意見が寄せられるのは当然だ。
またETV2001番組改変問題について取り上げ、NHK側が安倍晋三官房副長官(当時)ら政治家の意図を「忖度」して番組を改編した事実を指摘。今回の籾井会長の就任記者会見での発言「政府が右というものを左というわけにはいかない」など、まさに政治家の意向を「忖度」するものだと視聴者が受け止めるのは当然だと追及。
籾井会長は「ETV2001については政治家の発言を忖度したという事実はない。放送の自主自律を堅持することは、公共放送の生命線」などと答えた。NHKの生命線である政府からの独立に対する見識もなく、日本軍慰安婦問題など歴史歪曲の発言を改めていない籾井会長に厳しい視聴者の意見が寄せられるのは当然だ。(3月27日、総務委員会)
2)NHKの商業主義化批判
NHK予算に対する総務大臣意見では、成長戦略という言葉が三回も出てくる。政府の産業振興策の実施主体としてNHKを組み込むというのは、公共放送の独立性への配慮を欠いている。
新藤総務大臣は「NHKに、国の経済政策の一員としての役割を果たしてほしいと言っているのではない。公共の福祉の増進、豊かな国づくりのために、自分たちの役割を果たしてほしいと言っている」と答弁したが、今回のようにストレートに成長戦略への貢献を求めた例は過去にない。
NHKは、政府の産業政策に迎合せず、政府から独立し、商業主義にくみしないという基本的立場を貫くべきだ。
籾井会長は「放送法に基づき、国際親善の増進と経済交流の発展のために積極的に実施していく」などと答弁。
国の産業政策にNHKが関与することへの問題意識が欠落している。商業主義化と権力への迎合というのは、コインの裏表の関係だ。NHK自身の独立性を損なうことにもなりかねない。(4月3日、総務委員会)
架空発注や架空計上などNHKで相次ぐ「不祥事」問題の背景について、NHK執行部に事件の背景をただした。
不祥事の概要は次の通り。
▼2012年3月、NHK放送技術研究所の主任研究員が音響機器会社に約280万円の架空工事を発注
▼NHK出版の編集長が03年から約10年間、約900万円におよぶ架空の校正業務を親族に発注
▼NHKビジネスクリエイトの前身企業・NHKオフィスプランでの不適切な経理操作で、11年に2億7000万円を特別損失として計上
NHKの子会社や関連団体が舞台。とくにNHK出版の事件は、NHKの業務とは直接関係のない自主事業で行われたもの。
NHK執行部が子会社に対して自主事業で副次収入をあげるよう指導を強めている。今回の不祥事は、子会社の営利事業の強化を求める方針の結果起きたのではないか。
NHKの岩国浩二専務理事は、子会社の自主事業は「放送法や総務省のガイドラインでも規制されている」「採算性も指導している」と答弁。
非営利団体のNHKが、子会社を通じて営利事業を強化するゆがみの問題が改めて問われている。(5月20日、総務委員会)
3)NHK受信料値上げ問題
NHK受信料値上げ問題について、事業収支差金を受信料値上げ回避の費用に充てる考えはないかを質問。
籾井会長は「事業収支差金は老朽化が進む渋谷の放送センターの建てかえに繰り入れる」と答弁。
しかし現行の経営計画では、放送センターの規模、内容や建設時期、建設費用については何ら触れられていない。しかも、建設積立金を四百億円計上するだけで、積み増しをするということは経営計画には書いていない。視聴者は何も知らされていない。放送センター建設ありきのような事業収支差金のやり方はおかしい。視聴者の負担増を回避しようとするNHK側の経営姿勢が見られない。(3月27日、総務委員会)
(2)民放問題 放送法改定案に関して
放送局の「経営基盤強化」の名のもとに放送が持つ地域性を壊し、雇用への影響も懸念される放送法改定案の問題点をただした。
同改定案の柱の一つが、経営の悪化が著しい放送事業者を支援するとした制度の創設。放送局が作成した合理化を含む「経営基盤強化計画」を総務相が認定すれば、これまで放送対象地域(県)ごとに番組を放送することが前提だったのが、異なる地域で同じ番組を放送することができるようになる。総務省は、放送番組の同一化で制作費や中継設備費の削減効果があると説明している。
ローカルラジオ局の自社番組制作の比率がAM局で約53%、FM局で50%と高い水準だ。複数の放送局の番組をすべて同じにすると、結果として番組制作の独自性が後退することになる。
また、新藤義孝総務相が「経営基盤強化計画」とともに、産業競争力強化法の「事業再編計画」が併用可能と認めたことに対し、リストラや株主利益の追求を指標とすることが前提になる。国民から期待される放送事業者のあり方をゆがめる計画はやめるべきだと求めた。(5月22日、総務委員会)
マスメディア集中排除原則について、これまで五分の一の出資規制を三分の一に引き上げたが、今回の放送法改定案ではさらに二分の一に引き上げる規制緩和が盛り込まれている。しかし三分の一ぎりぎりまで出資をしている6例はすべてフジだけ。
大谷和子参考人(日本総研法務部長)は「指摘の通り。キー局の事業戦略の選択肢を広げるものになるのではないか」と答えた。
認定放送持ち株会社の資産要件緩和の改定案が出た背景には、持ち株会社(キー局)において利益剰余金などの現預金がふえているということがあり、また放送外収入をふやしたいという経営戦略があるのではないかと質問。
大谷参考人は「ご指摘の通り。資産要件緩和によって、経営の自由度が高まることが期待される」と説明。今回の改定案は、キー局、持株会社の経営の自由度を高めるものとなっている。
一方でマスメディア集中排除原則による放送を通じた表現の自由の確保、国民の知る権利の保障が問われてくる。
水島宏明参考人(法政大学社会学部教授)は「集中排除原則の緩和によって、地方局がこれまで地域密着でいろいろな形の番組を開発したりしてきていたのが突然なくなったり、あるいは、東京の経営者が入ってくることで少し環境が変わったりということを散見している。やはり地域の放送をどう守るかということはとても大事」と答えた。(5月27日、総務委員会参考人質疑)
今回の改定によって、キー局、認定放送持ち株会社の経営戦略、経営強化策が優先され、結果として、放送の多元性、多様性、地域性が損なわれることになりはしないのか。
新藤総務大臣は「今般のマスメディア集中排除原則の緩和は、持ち株会社のもとでグループ経営を強化することを民間放送事業者にとっての経営の選択肢として挙げたもの。経営の多角化、強化を図りつつ、放送の多元性、多様性、地域性を発揮することを期待しており、制度においてこういったものが損なわれることにはならない」と述べた。
フジグループなどがネットワークを強化していく、ローカル局に対する支配を強めるのがねらいの改定案だ。結果として地域性を後退させるという懸念は拭えない。(5月27日、政府質疑)
(3)コミュニティー放送の周波数確保
コミュニティー放送普及のための電波不足問題について取り上げた。首都圏や大阪の周波数逼迫宣言は解消されたのか。
新藤総務大臣は「コミュニティー放送の新規開局の促進を目指して、V―LOW帯の一部の周波数を、コミュニティー放送にも割り当てる方針を策定した。関東、近畿の周波数逼迫地域等でもコミュニティー放送の免許申請の受け付けを年内には開始できる予定ではないか」と答弁。(4月3日、総務委員会)