日付:2015-12-28 |
今年9月の関東・東北豪雨災害。その被災者支援策の一つとして実施されている「住宅応急修理」について、栃木県内は1件も実績がないことが、内閣府防災担当の調査によって明らかになりました。
災害救助法に基づく「住宅応急修理」は、住家被害認定が「半壊」以上の世帯にたいして適用され、年収要件などの制限はあるものの、56万7千円を上限に、市町村が支援を行う制度であり、被災世帯の住宅再建を応援するものとして活用されてきました。
実際、茨城県の実績は2611件、宮城県は72件です。それなのに栃木県は0件でした(12月25日現在)。
なぜこんなことになるのか。一つは、栃木県の「半壊」認定があまりにも少ないことです。内閣府の「被害認定基準運用指針」に基づき、浸水被害の場合、床上浸水ならば、一部の事例を除き、「半壊」の判定となります。茨城県の場合、「半壊」は3752件、「床上浸水」は207件。宮城県の場合、「半壊」は480件、「床上浸水」は179件。どちらも「半壊」認定が多いのに、栃木県の場合、「半壊」は133件に対し、「床上浸水」は2054件に上ります。これは、「床上浸水」の世帯に対して「半壊」認定を行っていないことが考えられます。現に、ある自治体の担当者は「二階建てだと半壊にはならない」などと、「運用指針」と異なる対応をしていることを述べていました。「半壊」認定が少ないために、「住宅応急修理」も活用されないということです。
もう一つは、「住宅応急修理」の制度そのものが、被災者に周知されていないことです。内閣府の防災担当は「小山市、日光市は、住宅応急修理を検討していた。避難所で住宅応急修理についてお知らせしたという。数件、申請があったが、対象とならなかった」と説明しました。私が「チラシなど文書で避難者、被災者にお知らせしたのか」と確認すると、「避難所で、口頭でお知らせした」とのことでした。これで周知したと言えるでしょうか。鹿沼市は、住宅応急修理の検討もしていないということでした。被災者への周知も行っていないことになります。
「今から住宅応急修理が活用できるように、各自治体に働きかけよ」と求めると、内閣府は「住宅応急修理の活用について、県と市で話がまとまって見直すということになれば、国として協議に応じる」と述べました。被災者の要望を行政に届け、ぜひとも制度の運用改善をはかっていくつもりです。
市の対応も問題がありますが、栃木県内の自治体がそろってゼロになっているのは、栃木県の対応も問われます。さらには、国の災害対策に対する姿勢も問われています。
茨城県と常総市は、所得制限により「住宅応急修理」の対象とならない世帯に対して、住宅応急修理の支援額と同等の補助を行うことを決めました。被災者の要望をくんだ取り組みとして重要です。このことは、国の制度の欠陥を示すものでもあります。自然災害の備えを国民任せにする「自立自助」論、小規模の災害は自治体任せという「国と地方の役割分担」論を打ち破り、全ての被災者の救助と生活再建に国が責任を負うことを求め、支援制度の抜本的な改革をすすめていきたいと思います。