記事一覧
日付:2012-02-27
国家公務員給与引き下げ法案/経済破壊は明りょう
「しんぶん赤旗」2月27日付に掲載の記事
内需縮小させ財政悪化/労働者の生活を脅かす
民主、自民、公明3党は国家公務員給与を大幅に引き下げる法案をわずか2時間余の審議(衆院総務委員会)で可決し、参院に送付しました(23日)。国民経済への影響など衆院審議で明らかになった問題点をみると――。
賃下げ案は平均0・23%削減の2011年度人事院勧告(人勧)を昨年4月にさかのぼって実施、12、13年度に平均7・8%の大幅削減を行うものです。
甚大な影響
しかも自民、公明両党は、地方公務員についても「同法の趣旨を踏まえ自主的かつ適正に対応されるものとする」として引き下げを押し付ける条項を法案付則に明記する修正案を提出。民主党も賛成して可決しました。
国家公務員の給与は地方公務員や独立行政法人職員など約600万人の給与に波及し、民間賃金にも影響を及ぼしてきました。今回の削減が行われると甚大な影響を広げることになりかねません。
日本共産党の塩川鉄也議員が、給与削減が民間の賃下げを加速し、内需を縮小させ、経済財政の悪化を招くと追及すると、川端達夫総務相は「経済にどういう影響を与えるかは注視していかなければならない」と述べざるをえませんでした。
「憲法違反」
国家公務員は憲法に反して労働基本権を制約されています。塩川氏は、その代償措置である人勧制度さえ無視して一方的な不利益を押し付けるのは「二重の憲法違反」となると指摘しました。
マイナス人勧を大幅に上回る給与引き下げを議員立法として行うという点でも前例のない異常なものです。
しかも3党は、当事者である労働組合の意見すら聞かずに衆院で可決を強行しました。
国会議員が、当事者を無視して一方的に給与を決めれば、憲法が保障する労働基本権は絵に描いた餅と化します。
塩川氏は「国会として不利益をこうむる国家公務員の意見を聞くのは最低限の責務だ」と主張。これには3党も同意せざるをえず、塩川氏が配布した国公労連や全労連の見解が議事録に掲載されることになりました。
復興に運行
労働基準法は民間労働者の減給処分の上限を賃金総額の10%としています。厚労省の金子順一労働基準局長は塩川氏に対し、「減給の制裁は一定の限度にしないと、労働者の生活を脅かすからだ」と説明。
江利川毅人事院総裁は、課長級以上が受ける10%減給は懲戒処分と同水準であり、処分例として飲酒後、部下に夕クシー車両でセクハラ行為をした場合などをあげました。同じような措置を全ての国家公務員に押し付ける不当性は明らかです。
自ら被災しながらも大震災の復興に奮闘する国家公務員へも例外なく大幅削減を押し付けることになり、道理はありません。
塩川氏が復興に逆行すると批判すると、3党代表は「さまざまな方々が復旧にかかわっていただいた」といいながら、自衛隊員にだけ特別措置を設けると答えるにとどまりました。
なにより生計費である給与は無駄や浪費などではなく、削るべきは八ツ場ダムなどの無駄遣いです。
「暮らしと経済を破壊し、憲法にそむき、民主主義を壊す」(日本共産党の志位和夫委員長)ことは明りょうです。3党は参院総務委員会で28日に採決をねらっていますが、何重にも重大な問題点を抱える法案をごり押しすることは許されません。(佐藤高志)