日付:2013-09-26 |
「しんぶん赤旗」9月26日付より転載
原発事故・汚染水対策/現地調査、漁民の願い「提言」に/国の責任体制求める
「状況はコントロールされている」。国際オリンピック委員会総会のプレゼンテーションで東京電力福島第1原発の放射能汚染水の影響を否定し、東京五輪招致を売り込んだ安倍晋三首相。しかし、汚染水漏れを起こしたタンク付近の井戸の水から1リットルあたり17万ベクレルという高濃度のトリチウムが検出されるなど、事態はいっそう深刻さを増しています。(林信誠)
汚染水問題の危機を打開するため、日本共産党の志位和夫委員長は17日、「緊急提言」を発表。提言は、原発への態度や将来のエネルギー政策の違いを超えて解決に向け英知と総力を結集しようと呼びかけ、東電の破綻処理で国の全面的な責任体制の構築を求める抜本的なものです(提言骨子=別項)。専門家からも「国が前面に立って対策するためには、『海を汚さない』などの指摘は、きわめて重要」(野口邦和日大准教授=放射線防護学)だと歓迎する声が寄せられています。
同提言には、自ら原発事故現場を視察した志位委員長を先頭とする日本共産党国会議員団による調査や検討の成果と到達が盛り込まれています。
「緊急提言」の骨子 |
原発への態度や将来のエネルギー政策の違いをこえ、政府や全政党、科学者などの英知と総力を結集。 政府が全責任を持って危機を打開するなら四つの転換が必要。 (1)「放射能で海を汚さない」を基本原則として確立する。 (2)放射能汚染水の現状を徹底的に調査・公表し、「収束宣言」を撒回し、非常事態との認識を共有。 (3)再稼働と原発輸出の活動をただちに停止し、問題解決のために、もてる人材・物的資源を集中する。 (4)東京電力を「破たん処理」し「コスト優先・安全なおざり」を抜本的にただす。資産を徹底的に洗い出し、メガバンクの債権放棄などで利害関係者に当然の責任を取らせる。 |
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福島漁連の野崎哲会長(左)と懇談する(右から)高橋ちづ子衆院議員、紙智子参院議員、笠井亮、塩川鉄也両衆院議員=8月21日、福島県いわき市 |
福島漁連の野崎哲会長は、汚染水の海洋流出が明らかになったことで「フェーズ(段階)が変わった」と指摘。「もっと国の関与を明確にして国家的プロジェクトとして(事故収束に)当たってもらいたい」と述べ、日本共産党の対応への期待を表明しました。
党議員団は「みなさんの思いをしっかり受け止め、『収束宣言』を撤回させたい。非常事態の認識の下、政府の責任で、これまでの対策を抜本的に見直し、事故を収束させる」と表明しました。
「漁連関係者との懇談を終えて移動する車中で、〝議員団として汚染水問題の閉会中審査を緊急に求めるよう取り組もう″という声が上がり、さっそく申し入れることになった」――塩川議員はこう振り返ります。
閉会中審査が実現へ
現地調査を踏まえ、塩川議員と倉林明子参院議員は、それぞれ衆参の経済産業委員長や各党の理事に汚染水問題での閉会中審査開催を申し入れました。
しかし、政府の汚染水対策の発表、両院経産委員長の外遊もあり、当初、閉会中審査の日程はなかなか決まりませんでした。
18日の野党6党の国対委員長会談では、日本共産党の穀田恵二国対委員長が「経産委員長が外遊していて閉会中審査が開けないというのはひどい」と批判しました。6党は閉会中審査の早期開催を与党に求めることを確認。24日の衆院経産委理事懇談会で協議した結果、閉会中審査を開くことが合意されました。
3日に発表された政府の汚染水対策の「基本方針」に盛り込まれたのは、原子炉建屋に流れ込む地下水を抑止するための「遮水壁」の設置や、同建屋手前の山側で地下水をくみ上げて海に排出する「バイパス計画」など。しかしこれらはみな、東電が検討しながら資金的な問題や漁業者の反対で行き詰まった小手先の対策ばかりで、技術的にも実現の保証のないものばかりです。
タンクからの300トンの放射能汚染水漏れを東電が発表した8月20日、日本共産党議員団が経産省資源エネルギー庁と原子力規制庁から汚染水問題についての聞き取り調査を実施しましたが、両庁提示のデータや説明のほとんどは、東電提供の資料によるものばかりでした。原子炉建屋の地下に流入する地下水の実際の量についても「わからない」と述べるだけで、政府による独自の調査を行った形跡すらなく、東電任せの姿勢がいっそう明らかになりました。
それから1カ月たった今月20日、ふくしま復興共同センターの関係者ら約80人が上京し、経産省、文科省、東電などに汚染水の海洋流出防止のための抜本対策や完全賠償に加え、福島県内の全原発廃炉を要請しました。
6回目となる同センターの交渉に毎回参加してきた高橋議員は「首相の『状況はコントロールされている』発言で怒りが増している。きちんと答えさせる」と参加者を激励。政府と東電に「責任を果たせ」と迫りました。