日付:2014-06-06 |
Q:国会で「小規模企業振興基本法案」が審議されていますが、どんな内容の法案ですか?
A(=塩川、以下同じ):小規模企業振興基本法案(以下、小規模基本法案)は、従業員20人(商業・サービス業は5人)以下の小規模企業が地域経済の支え手として、また、雇用の担い手として大きな役割を発揮していることに着目し、事業の持続的発展を支援する施策を、国・地方公共団体などが連携して講じるよう求める新法です。6月5日の衆議院本会議で可決され、参議院に送付されました。今後、法案審議の舞台は参議院にうつります。
Q:中小企業基本法と小規模基本法案はどのような関係なのですか?
A:1999年に改正された中小企業基本法は、大企業と中小企業の「格差是正」策を放棄し、支援策を中堅企業や急成長型の中小企業に特化させました。「中小企業の保護ではなく、強者を育てる」として、小規模・零細業者を切り捨てる大改悪です。
この間、小規模事業者の数は1999年の423万者から2012年の334万者まで激減しています。雇用の場がなくなり、地域経済の底が抜けたような状況がどこでも生まれました。衆議院経済産業委員会の参考人質疑で石澤義文全国商工会連合会会長も、「小規模企業振興策が後退」してしまったと指摘しています。
小規模企業に着目した、新たな基本法を制定することは、中小企業政策から切り捨てられてきた小規模企業に再び光を当てざるをえなくなったという、政権側の矛盾の表れなのではないでしょうか。
小規模企業基本法案には、第一条の目的に「中小企業基本法の基本理念にのっとり」とあり、中小企業基本法の考え方を踏襲している面もあります。しかし、昨年の通常国会で中小企業基本法の基本理念に「小規模企業の意義の重要性」を追加する法改正が行われましたから、今回の法案は小規模企業に焦点を当てるための第二弾の改正だと言えます。
Q:小規模基本法案のポイントを教えてください。
A:大きく3つあります。1つ目は、小規模企業については、中小企業基本法の基本理念である「成長発展」のみならず、技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持等を含む「事業の持続的発展」が重要だと位置づけていることです。大企業の多国籍企業化による産業の空洞化や長引く内需不振の中、事業を維持していること自体に意義があるという考え方です。
2つ目は、そのような小規模企業を、単に個社として支援するにとどまらず、商業集積や産業集積に果たす役割を評価し、「面」として支援する必要性を述べていることです。
そして3つ目は、従業員5人以下の「小企業者」に着目し、小規模企業の9割を占める小企業者の振興が必要だとしていることです。個人事業主や家族経営の零細業者は地域経済を支える主体でありながら、事業所としての組織体制が脆弱で外部環境の変化に弱いため、より個々の状況に寄り添った支援が求められているのです。
Q:今後、地方自治体の役割がいっそう重要になりますね。
A:小規模基本法案では、国が小規模企業施策の体系を示す基本計画(5年)を策定し、国会に告することになっています(第13条)。また、地方自治体に対しても、その区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、実施する責務規定が置かれています(第7条)。
衆議院経済産業委員会の参考人質疑で、中小企業家同友会全国協議会の国吉昌晴副会長は、自治体の取り組みに際しては
1)中小企業振興基本条例、
2)悉皆調査、
3)産業政策会議の3点セットが重要だと強調されました。
とりわけ、行政主体の悉皆調査がカギになります。1979年に、全国に先駆けて中小企業振興条例が制定された墨田区では、全事業所調査に取り組んだ自治体職員自身が中小企業・小規模事業者が果たす役割の重要性を実感し、それが区の産業施策を進めるうえでも大きな力となったそうです。
私も質問で紹介しましたが、日本有数のものづくり集積地である東大阪市では、2013年4月に中小企業振興条例が施行したことを受け、地域での中小企業政策の方向性を検討する材料として、日本共産党市議団も参加した研究会がアンケート調査に取り組み、先ごろその報告書(写真右→)をまとめました。事業所を訪問しての聞き取りも含め、寄せられた1163件の回答からは、中堅事業所から家族経営の零細事業所が集積していることによる強み、ものづくりのネットワークが地域にとっていかに重要かがはっきりと表れています。また、小規模な事業所が地域経済を循環させる役割を果たしながら、雇用の場を提供していることも明白です。職住接近の小規模企業が地域経済循環の要となっているだけでなく、地域の伝統や文化も含めたコミュニティを支える役割も発揮しているといえます。
地域経済の担い手であり、地域社会の支え手でもある小規模事業者を支援することは、地方自治体にとっても意義のあることなのです。
Q:今後の決意をお聞かせください。
A:2010年6月に中小企業憲章が閣議決定されました。中小企業家同友会全国協議会(中同協)をはじめとして、中小企業団体の粘り強い取り組みの結果、ようやく実現したものです。
憲章は中小企業の役割を「経済を牽引する力であり、社会の主役」であり、「地域社会と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承に重要な役割を果たす。小規模企業の多くは家族経営形態を採り、地域社主の安定をもたらす」と高く評価しています。
しかし、残念ながら憲章の精神が具体的な施策や予算に反映されていません。
全国商工団体連合会(全商運)は、小企業・家族経営の営業の自由が実質的に保障される経済社会を目指して、戦後の中小企業政策を転換し、自治体の産業政策と結び付いたきめ細かな支援策の実現を求める「日本版・小企業憲章」の制定を求める運動に取り組んでいます(全商連「日本版・小企業憲章(案)」2011年7月)。
日本共産党国会議員団ではこれまで、中小企業憲章を国会決議にすることを委員会の場などでも提案し、2010年12月にはその第一弾として衆議院経済産業委員会での「中小企業対策の抜本的強化に関する決議」採択が実現しています。
引き続き中小企業憲章を国会決議にする取り組みや、中小企業・小規模企業対策の抜本的な見直しと拡充のために、全力で頑張ります。