日付:2014-07-27 |
民主党政権がいったんは中止を表明しながら、ゾンビのようによみがえった無駄な公共工事の典型、国土交通省発注のハツ場(やんば)ダム建設工事。安倍政権がすすめる国土強靭(きょうじん)化政策の“目玉”として現在、本体建設工事の入札が行われています。この入札で重大な不正疑惑が…。日本共産党衆院議員の塩川鉄也さんにも話を聞きました。
指名停止中の鹿島、大林が参加/ゼネコン関係者「国交省は共犯」
ハツ場ダムの建設予定地は、群馬県長野原町の山間にある温泉地帯。現在、地上から70mを超える高さに、大きな橋が建設されています。ダム湖になったときに対岸を結ぶ湖面橋です。
ハツ場ダムの総事業費は約4600億円でダム建設としては史上最高額。2019年度に完成の予定です。
民主党が政権をとった09年に前原誠司国交相(当時)が本体工事の「中止」を表明。しかし11年12月、同じ民主党の野田佳彦首相(当時)が建設継続としました。
政権交代後、安倍政権が1月8日に本体建設工事の一般競争入札を公告。8月6日に開札し、落札ゼネコンを決める予定です。
ダム建設を担当していたゼネコン元幹部は語ります。
「ダムエ事はもうけが大きいため、入札では大手ゼネコンの鹿島建設、大成建設、大林組の3社が参加し、受注を狙っている」
しかし、共同企業体(JV)の幹事社として入札に参加していた鹿島建設と大林組は3月1日、国交省発注のトンネルエ事で作業員の死亡事故を起こしました。そのため国交省関東地方整備局(関東地整)は、両社を5月2日からの指名停止処分としました。
入札公告によると入札参加資格には、入札期間中「指名停止を受けていないこと」と明記されています。入札期間中の5月2日からの指名停止処分となった両社は当然、入札参加資格を失います。
ところが―。同ダムエ事にかかわるゼネコン幹部が明かします。
「指名停止を受けた鹿島、大林の幹部が5月2日に関東地整が開いた入札の『技術対話』に参加していた」
5月2日からの指名停止なのに、同日開かれた「技術対話」に参加するのは問題ではないのか―。
国交省は「運用基準」で、指名停止の期間の始まりは「措置を決定したとき」としています。国交省大臣官房地方課は「決定」とは「各整備局長が決裁した時点」と説明しています。関東地整によると決裁は4月28日です。
つまり関東地整は、入札参加資格を失った業者を5月2日の「技術対話」に参加させたのです。「運用基準」に反する不正行為の疑いが濃厚です。
編集部の指摘に関東地整契約課は「調査中で回答できない」としています。
本命“救済”か
なぜ運用基準に反してまで両社が技術対話に参加したのか―。
複数のゼネコン関係者は指摘します。
「技術対話で議論されるのはコスト削減の技術提案だ。これはJVの幹事社がつくる。他のものでは技術提案の中身がわからない。本命は鹿島なので、役所も鹿島の案を採用したかった。ゼネコンと国交省は“共犯関係”だ」
ハツ場ダム建設に反対する市民団体「ハツ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は指摘します。
「ハツ場ダムは利水でも、治水でも何の効果もありません。こんなダムに私たちの巨額の税金をつき込むのは絶対に許せません。工事は、中止すべきです」 編集部の取材に鹿島建設は「コメントできない」、大林組は「技術対話に出席したが問題ない」と回答しました。
無駄の典型/即刻中止を/共産党衆院議員塩川鉄也さん
八ツ場ダムはもともと利水にも治水にも役立だないと批判されてきた無駄なダムです。民主党政権は一度中止を表明したにもかかわらず復活させ、安倍政権では成長戦略に位置付けられています。
安全面の問題もあります。ダムに水をためた場合、周辺で地滑りが起きる危険性があります。また、予定地周辺の造成地に使用された大同特殊鋼の鉄鋼スラグから、環境基準値をこえるフッ素などの有害物質が検出されています。ダム湖の汚染も懸念されます。
無駄に無駄を重ねたうえに入札不正疑惑まで浮上した八ツ場ダムは、入札を即刻とりやめ、建設を中止すべきです。