【議院運営委員会】会計検査院検査官候補の参考人に質疑

 会計検査院検査官候補の挽(ひき)文子参考人に質疑。

 戦前、機密費や軍事関係費が検査対象外だった反省から、憲法第90条は国の収入・支出の全てを検査対象にすると規定。

 挽氏も「除外されるものはない」と述べ、軍事費の建設国債発行やFMS、官房機密費も検査対象になり得ると答えました。

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「議事録」

<第211回通常国会 2023年2月22日 議院運営委員会 第7号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 挽文子参考人にお尋ねいたします。
 まず、憲法第九十条の意義について。
 憲法第九十条は、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、」と規定をしています。
 戦前、機密費は調査対象から除外をされ、軍事関係費は旧会計検査院法の適用が除外をされ、増える軍関係経費等を検査できなかった反省から、日本国憲法は全てを対象とするとして、このような例外を認めないことを明らかにしたのではないでしょうか。
○挽参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
 憲法九十条についての解釈でございますが、憲法九十条の「すべて」とは、国の収入支出に関して会計検査院の検査の対象から除外されるものはないという意味で規定されたものと承知しております。
○塩川委員 次に、大軍拡予算に関連して、国債発行についてです。
 憲法は、前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と明記をしております。このことは財政民主主義の観点でも重要です。過去の戦争で戦費調達のために大量の国債を発行し、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の体験を踏まえたものであります。
 財政法の第四条は、公共事業費、出資金、貸付金の財源を除いて、国債の発行を禁じています。財政法制定時の逐条解説には、「第四条は健全財政を堅持して行くと同時に、財政を通じて戦争危険の防止を狙いとしてゐる規定である。」「公債のないところに戦争はないと断言し得るのである、従つて、本条は又憲法の戦争放棄の規定を裏書保証せんとするものであるともいい得る。」と述べています。
 今回、軍事費に建設国債を充てることは、憲法及び財政法の立法趣旨から見て到底許されるものではないと考えますが、お考えをお聞かせください。
○挽参考人 会計検査院の検査は、予算や政策の執行過程あるいは執行結果を対象としており、政策の裏づけとなる予算の執行に問題がある場合には、その原因の究明を徹底して行うこととし、そして、その結果、予算や政策上の問題が認められれば、これを積極的に取り上げていくものと承知しています。
 防衛費に建設国債を充てる予算案は現在審議中であり、この予算案が成立して予算が実際に執行されたならば、その段階で検査の対象となるものであると承知しております。
 また、会計検査院の検査の状況については、まだ承知しておりませんので、見解を述べるのは差し控えたいと思います。
 仮に今回任命について同意をいただけた場合は、防衛費について、これまでの検査の状況をしっかりと確認して、他の二人の検査官の御意見も聞きながら、適切に検査を実施してまいりたいと考えております。
○塩川委員 次に、対外有償軍事援助、FMSについてであります。
 来年度のFMS調達額は一兆四千七百六十八億円で、今年度の四倍、十年前の十三倍と、過去最大の突出した伸びとなっています。
 FMSについては、余りにアメリカに都合のよい契約方法が問題となってきました。元防衛装備庁長官官房の会計官が書いた論文には、FMSでは米政府の手数料や管理費等も加算される、通常三・五から五%、この手数料、管理費は、FMSを担当する国防安全保障協力庁における人件費等の諸経費や輸出推進の経費などに充てられるとあります。
 米国政府の職員の人件費や米国兵器の輸出推進の経費をなぜ日本国民の税金で払わなければならないのか。こういった点についてメスを入れる必要があるのではないでしょうか。
○挽参考人 FMSについては、会計検査院がこれまでも重点を置いて検査をしており、装備品等の納入が大幅に遅延している事態や未精算額が多額に上っている事態等、先ほど申し上げたとおりでございますが、意見表示事項や処置要求事項などとして複数回検査報告に掲記をしております。
 また、平成三十年の国会からの検査要請により、有償援助による防衛装備品等の調達に関する会計検査の結果についてを報告していると承知しておりますが、その報告書では、FMS調達に係る契約額の増加に伴って、手数料の負担額も増加することに鑑み、契約管理費の減免を受けることにより契約額を低減する余地がないか検討することなどを所見として記載していると承知しております。
 仮に今回任命について同意をいただけた場合は、FMSを含む防衛費の検査に当たって、防衛費が今後大幅に増加することが見込まれる状況下において防衛装備品等の調達は適切なものとなっているか、これは、私、原価計算の専門家でございますので、そこを見ていきたい、プロジェクト管理は適切か、より少ないコストで実施できないかなどについて検査していくことが考えられます。
 これまでの検査で明らかとなった状況や国会での御議論、国民の関心などを踏まえつつ、適切に厳正に検査を実施してまいりたいと考えております。
○塩川委員 このFMS関連では、グローバルホーク導入に当たって、四十人のノースロップ・グラマン社の社員に対し、技術支援の役務だけで九十億円、一人当たりの経費が年間二億円を上回る、余りにも高過ぎる、こういった点についても検査対象としてお考えになるのはいかがでしょうか。
○挽参考人 先ほども申し上げたとおり、会計検査院は、FMS調達についてこれまでも重点を置いて検査を実施しており、その結果を検査報告に掲記していると承知しております。私としては、防衛省において、より一層適切なFMS調達の実施に取り組むことが重要であると考えております。現時点では、個別具体的なFMS調達事案に対する検査の詳細については承知しておりません。
 仮に今回任命について同意をいただけた場合は、検査の詳細についてしっかり確認してみたいと思います。その上で、他の二人の検査官の御意見も聞きながら、適切に厳正な検査を行っていきたいと考えております。
○塩川委員 ありがとうございました。
○山口委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。
 これより自由質疑を行います。
 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。
 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
○若林委員 自由民主党、長野一区の若林健太でございます。
 私は、公認会計士でありまして、会計の専門家の挽先生に是非一度お聞きしたい、こう思ったもので、立たせていただきました。
 現在、国においては、貸借対照表を年一回作成しております。しかし、これは複式簿記化に向けた取組の一環としてやっているわけですが、完全な形での複式簿記化というのはまだまだ道半ば、こういう状況になっているところで、結果として、決算が遅かったりいろいろな問題がある、私はそう思っております。
 先生に、会計の専門家として、公会計、国の会計の複式簿記化という問題についてどうお考えになっておられるか、お聞きさせていただきたいと思います。
○挽参考人 一研究者としてのお答えということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。回答させていただきます。
 私のゼミでは毎年公認会計士を六名ほど、一橋大学としては三十数名ほど輩出して、数が少ないながらも公認会計士業界にも貢献しているんですけれども、その中で、東京都が複式簿記を採用するときに、石原都知事の下で採用するときにプロジェクトに当たった学生、OBがおります。東京都のレベルでも非常に大変でございました。その一方で、デジタル化が進んでおりますので、そういう意味ではこれはグッドニュースではないかというふうには思っております。そのときよりは恐らくやりやすいのではないかというふうに考えております。
 私、特に医療機関、地方独立行政法人等の医療機関に行きますと、設備があるとかないとか、固定資産台帳を作ったはずですよねというようなこともありますので、デジタル化が進んできたとしたらそれはグッドニュースなので、そういう方向への展開もあり得るとは思います。しかしながら、慣れ親しんできた、また、意味のある形で決算を行ってきているという面もありますので、全面的な複式簿記移行は多分難しいであろうけれども、コストとベネフィットの観点から検討すべきではないかというふうに考えております。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 過去、その不透明な支出が問題となってきた内閣官房報償費、いわゆる官房機密費についてお聞きいたします。
 三類型ある官房機密費のうち、調査情報対策費と活動関係費は領収書等支出先が確認できるものを保存することになっておりますが、官房長官が直接扱う政策推進費については、いつ、誰に、どのような目的で幾ら支払ったのか、適切に記録する仕組みがありません。まさに官房長官しか知り得ないことがあります。
 官房長官が直接扱う官房機密費について会計検査院が適切な検査を行っているのか、この点についてのお考えをお聞かせください。
○挽参考人 御質問にお答えいたします。
 現行の憲法の規定では、国の収入支出は全て会計検査院が検査することとなっており、内閣官房報償費についても会計検査院の検査の対象になるということは承知しております。
 そのため、報償費についても検査が行われているものと考えますが、現時点では、内閣官房報償費に対する検査の詳細については承知しておりませんので、仮に今回任命について同意をいただけた場合は、検査の詳細について、よく確認してみたいと思います。その上で、他の二人の検査官の御意見も聞きながら、適切な検査を行っていきたいと考えております。
○山口委員長 よろしゅうございますか。
 それでは、これにて挽参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。
 挽参考人、ありがとうございました。
 以上をもちまして検査官の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。