【内閣委員会】コロナ5類移行後も医療提供体制確保を/インフル特措法参考人質疑

 新型インフルエンザ等対策特別措置法等改正案の参考人質疑を行いました。

 意見陳述で、一般社団法人日本医療法人協会の太田圭洋副会長は、新型コロナウイルスの感染症法上の5類への移行について「厚生労働省の専門家会議では、感染症法上の私権制限に見合った状況ではないとの判断から類型変更を了承した。感染が拡大すれば、医療がひっ迫し、『国民の生命及び健康に重大な影響を与える』事態となりえる」とコロナの危険性を警告しました。

 私は、コロナの6波以降、死亡者数が大きく増加し、第8波では過去最多となっていると述べ、「5類移行後の政府の医療提供体制の取り組みは大丈夫か」と質問。

大曲参考人
太田参考人

 国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、高齢者施設等での陽性者に対する検査・医療提供体制について「日本全体を見たときに、十分な体制が整っているのかというとまだだ」と答え。

 太田氏は病床確保料や診療報酬の減額について触れ「適切に医療が提供できるか、(政府の)移行策を注視していかなければならない」「5類移行後にクラスターが発生した場合の経営的損失に対する支援が不明確だ。多くの医療機関が心配している」と述べました。

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「議事録」

<第211回通常国会 2023年3月17日 内閣委員会 第7号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 四人の参考人の皆様には、貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。何よりも、コロナ対応の最前線で御尽力をいただいてきたその取組に心から敬意を表するものであります。
 それで、私の方からは、最初、四人の参考人の皆様にお答えいただきたいということで、一問、お聞きをいたします。
 この間、新型コロナウイルス感染症につきまして、諸外国と比べて感染者数、死亡者数を抑えてきた、発生初期と比較をして、重症度が低下をしているということとともに、やはり感染者数が非常に増えている中で、死亡者数が大きく増加をしております。
 一つ一つの波を三か月単位ぐらいでくくった死亡者数を数えてみますと、第四波が五千人ぐらい、第五波が三千人ぐらい、オミクロン以降の第六波が一万、第七波が一万三千、第八波は二万を超えるという点では、非常にこの間、急速に、亡くなられた方が増えているという特徴があります。
 こういった状況について、深刻な事態だと私は受け止めているんですけれども、どのように評価をしておられるかということを一つお聞きしたいのと、それを踏まえて、この死亡者数が過去最多になったことを踏まえたときに、政府の今後の公衆衛生体制ですとか医療提供体制の取組が大丈夫なのか、この点についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。
○大曲参考人 ありがとうございます。
 まず、一点目のことからお答えしますと、恐らく日本は、諸外国がこれまでくぐり抜けてきた状況に至るまでに数倍時間がかかっているんだろうと思います。言い方を変えますと、これまでに国民の中で既にコロナにかかった方の比率が、諸外国と比べて明らかに低いんだと思います。それは、先日公開された抗体検査の結果でも明らかだと思います。
 ということは、まだかかっていらっしゃらない方が相当にいるということですので、今後、流行が繰り返されていく中で、ちゃんと対策をしないと、また多くの方が感染して、結果的に、リスクの高い方を中心に残念ながら亡くなる方が増えていくということは十分起こり得ることだと思います。
 当然それは防ぐべきことでありまして、それは二点目の御質問への回答につながっていくわけなんですけれども、一方で社会の活動は正常化する中で、これをどうするかというのは極めて簡単ではない問題だと思います。
 ただ、今、状況を見ていきますと、重症になられる方、亡くなられる方の多くは、やはり高齢の方を含めた、いわゆるハイリスクと言われる方々であります。そうした方々をいかに徹底的に守っていくのかということが非常に重要だと思います。そういう意味で、病院、介護施設の感染対策といったものは非常に重要だと思います。
 もう一つは、医療へのアクセスといいますか、仮にかかってしまったという場合に、そうしたリスクの高い方々にいかに早く診断と治療を届けるか、そういう体制づくりが必要だと思います。
 介護施設の話を聞いても、入所者がお熱を出されたという場合に、なかなか検査をするまで時間がかかるといった厳しい状況というのがあるのはまだ伺っていますし、じゃ、陽性になった、治療が要るとなったときに、内服のお薬なり点滴のお薬なりがすぐに届けられるのかどうかといいますと、日本全国、全体を見たところで、それが十分に体制が整っているのかといいますと、僕はまだだと思っています。
 ですので、そこをしっかりと迅速に整えていくということが必要で、結果的に、何とか亡くなる方を少なくできるというところにつながるのではないかと思っております。
 以上です。
○岡部参考人 御質問ありがとうございます。
 先ほどもちょっと申し上げましたように、どんな病気でも、数がどんどんどんどん増えてくれば、そこに一定の重症者、残念ながら亡くなられる方も出てくるので、できるだけ感染症はやはり小規模に抑えていくということがあると思います。ただ、小規模に抑えるために人々が物すごい不便を強いられるということではいけないので、そこのバランスが結局一番難しいところではありますけれども、そこを考えながら対策を取っていくということが必要だろうと思います。
 それから、死亡者数が第八波において数として増えているのは、アドバイザリーボードでも、専門家が集まっていろいろな議論をして、ペーパーを出しております。
 恐らくは、一つは、やはり今申し上げたように、母数が大きくなっている。しかも、それは、全数報告というものをやめたために、恐らくは、検査をしていない方、あるいは検査をしたけれども届けられていない方もいるだろうというふうには思います。しかし、それは、一方では、全数の登録をやることに対する負荷というところからきていることで、やむを得ないことではありますけれども、死者数が増えるというのはやはり余りありがたいことではない。
 したがって、基本的には数を減らすということですけれども、ただ、それだけではなく、死亡の状況が、一番最初、私、今臨床ではやっておりませんけれども、厳しい肺炎の状況から、慢性の病気の状態にある病気がかかって、それによって全身の状態が悪くなっていくというところで、全体の病気の経過が変わってきている。したがって、そこを全体で支援をしていく必要があると思います。
 また、一方では、現在の、我が国だけではないと思うんですけれども、死亡数の統計の取り方というところに、なるほど、いろいろな欠点があるなということが分かりました。例えば、死に至ったときの原因の定義であるとか、どのぐらいの間隔をもって、コロナが原因であったのか原因ではなかったのか、あるいは、実際にはコロナであっても届けていない場合もあるわけなので、そういう死亡統計ということに対する見直しも必要ではないかというような提言をしております。
 以上です。
○草場参考人 先ほど御指摘いただいたように、死亡者数の増加という点に関してはやはり懸念すべき状況だというふうに理解をしています。実際、本当に、こういった状況の中で高齢者の健康をどう守るか。そのためには、先ほど申し上げましたけれども、やはりめり張り。リスクが高い方、高リスクの方に対するしっかりとした感染防御、一般の比較的元気な方に関しては緩くしていく、そのめり張りをどうつけていくかというバランスですね、これを常に慎重に考えなきゃいけないということに私は尽きるかなというのがまず一点であります。
 もう一個は、医療提供体制のお話がございましたけれども、健康であっても、発熱、そして上気道症状が出て、せきが出て苦しいという状況は健康な方でも当然ありますので、そういったときにスムーズに受診できる、これが、今回のパンデミックでは当初非常に難しかった。受診が断られるというケースがあったり、保健所に連絡をしても電話がつながらないという形で、結果的に自宅で亡くなった方もおられた。こういったことはもう二度と繰り返してはいけない。
 そのためには、私は持論としてずっとお話ししていますけれども、いわゆるかかりつけ医というものを、国民がしっかりアクセスできる状況をしっかり提供する。それは、今は国民自身の責任の中でかかりつけ医というのを持つということをやっていますけれども、それだけではなくて、国の制度として、きちっとかかりつけ医を持って、何かあれば気軽に電話ができる、そして、そこに必ずアクセスをして、受診がもしできない状況でも、かかりつけ医が、例えば、この病院に行けば大丈夫であるとか、ここではちゃんと検査ができますから行ってごらんなさいというふうに言っていただく。そういった医療のアドバイザーとなるかかりつけ医というものを国民が必ず持つような方向性というものを是非つくっていく、それが一番重要なことかなと思っています。
○太田参考人 ありがとうございます。
 お亡くなりになられる方が非常に増えている、まさに私、問題だと思っておりますが、今後もやはり多くの患者さんがコロナにかかっていくということでいいますと、増えていくことは致し方ないというふうには私自身は思っています。
 ただ、欧米と比べますと、欧米は、第一波、第二波、第三波でかなり大きな感染になって、その段階で亡くなられた方が今まで出ている。日本は、何のかんの言って、国民がみんなで協力して時間を稼ぐことができたというのは非常に大きなメリットだろうと思います。ワクチンも手に入れることができました。治療薬も手に入れることができました。なので、これを適切に使えば、高齢化率が世界一で、高齢人口が非常に多い我が国ではありますけれども、諸外国と比べてしっかりとしたいい成績は私は残せるだろうと思います。
 そのために、今、政府の五月八日以降の移行策というのが提示されているわけで、方向性としては正しいと思います。高齢者施設にいかに早期に診断をして治療する体制を構築するか等々あるわけですが、万全かといいますと、これから我々医療現場が試される。病床確保の数も、かなり病床確保料が減額されることによって、大きく減ったりする地域も出てくるかもしれません。診療報酬の方の移行もあります。入院調整の問題もあります。これがちゃんと、求められる方々、高齢者、基礎疾患のある方々に適切に医療が提供できるというところまでこの移行策がスムーズに持っていけるかどうかというのは我々の努力にもかかっているところがありますし、注視していかなければいけないというふうに思っているところでございます。
○塩川委員 ありがとうございます。
 もう一問、やはり四人の皆様にお伺いしたいんですが、尾身茂コロナ対策分科会会長は、幾つかの場面で専門家の意見を聞かずに政府が決め、発表してしまうことがあった、安倍元総理のときのマスク配付や、菅前総理のときのGoToキャンペーン、岸田総理の濃厚接触者の待機期間短縮などがそうだ、あるときは十分に聞いてくれるけれども、あるときは全く聞いてくれないということが何度かあったのは事実ですと述べておられます。
 専門家の科学的知見が生かされなかったと感じたような場面がおありだったか、このような、尾身会長と同じようなことを感じたことがあったかどうか、その点についてそれぞれ御意見をいただけないでしょうか。
○大西委員長 申し上げます。
 塩川君の持ち時間が少なくなってきておりますので、参考人の御答弁は簡潔にお願いいたします。
○大曲参考人 ありがとうございます。
 実際の場でどうだったかということは、僕は実は見聞きできる立場にありませんので分からないわけですけれども、私自身は、国、あとは東京都という形で、専門家ということで発言する機会を与えていただいて、専門的な知見を打ち込んで、打ち込んでといいますか、お伝えしてきたつもりであります。
 最終的な判断としてそれを生かした判断がされるかどうかというのは、また別の場での御判断だと私は認識をしております。
○岡部参考人 御質問ありがとうございます。
 二〇〇九年のパンデミックのお話をしたんですけれども、そのときに比べれば随分、専門家と政府関係とのコミュニケーションが取れるようになってきていると思います。ただし、まだ十分ではないと思います。
○草場参考人 私は、国の組織に所属してやったことはないので、具体的な細かいことは分かりません。
 ただ、やはりもう少し、決定に関するプロセス、こういう形で考えて、でもこれを危険だと思うのであえてこうしたみたいな、そのワン、ツー、スリーのステップというものを示した形で結論が出てほしい。それが分からないので、突然ぱっと結果だけ出る、それに対して、今までの変化、なぜこう変化したかは分からない、その点は現場からもちょっと不安を感じる部分が非常にありましたので、そういったプロセスの明示、開示というものはやはりやっていただきたいなと思っておりました。
 以上です。
○太田参考人 私は、専門家の役割というのはあくまでも助言だと思っております。その助言を基に、最終的に責任のある者が方針を決定するという形です。
 なので、決して専門家の助言どおりにならないということが私は問題だとは思いませんが、あくまでも、その決断をした理由等々をやはり説明をしていただくということが重要なのではないかというふうに思っております。
○塩川委員 それぞれ簡潔にいただきまして、ありがとうございます。
 若干時間がありますので、もう一問。
 さきの問いに戻るんですけれども、やはり死亡者数の多い中で、今後の対応について、必要な医療提供体制などが求められているという点について、太田参考人の今日の意見陳述のペーパーでも記述がありましたけれども、クラスター発生時の医療機関への救済策がないと、感染者を受け入れる入院医療機関が増えない可能性が危惧される、適切な対応が必要だとしておられます。どのような対応が必要だとお考えなのかについてお示しいただけないでしょうか。
○太田参考人 ありがとうございます。
 先ほどから申し上げているように、これから高齢の方々を守っていくというのがコロナ対策の主眼になってくるだろうというふうに思います。
 そういう意味では、どうしても、感染力の強いウイルスですので、高齢者が集団でいる病院ですとか高齢者施設での院内感染、施設内感染、クラスター発生というのは防げないわけですが、できる限りその犠牲を小さくしていくというのが重要です。
 まずは、早期の検査です。今回の移行に際して、検査に関しては公費から外れるというのが一般の外来のルールにはなりましたが、一応、施設内、病院内でのクラスターの拡大防止のための検査に関しては公費負担を継続していただけるという形で、先日、三月十日の政府方針は出ているということで、ここに関しましては何とか御配慮いただいたというふうに思っています。
 あともう一つは、やはりクラスターが発生しますと、スタッフが疲弊するだけではなくて、その病棟等を一時的に閉じたりというような形で、かなり経済的、経営的に大きなダメージが施設、病院に発生します。今まではそれに対して重点医療機関等の制度をある一定程度流用して支援を行うということができていたわけですけれども、五月八日以降それがどうなるかというのがまだ明確に示されてございません。そこがやはり多くの医療機関等々が心配しているところでございますので、是非ともその辺に関しましては政府として御配慮いただきたいというふうに思っているところでございます。
 以上でございます。
○塩川委員 ありがとうございます。
 終わります。