【内閣委員会】フリーランス取引適正化法案/全会一致で可決

 フリーランスの取引適正化と就業環境を整備する「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」が、衆院内閣委員会で、全会一致で可決されました。

 フリーランスという働き方は報酬の支払い遅延や一方的な契約内容の変更などのトラブルが多発する一方、法的保護が弱いことが問題とされてきました。

 わが党はこの間、労働者性を拡張・適用してフリーランスを保護することを求めてきました。

 質疑で「労働者性があいまいなフリーランス就業者は、労働者でありながら企業に自営業者に偽装される場合や、従属性のある自営業者にされる場合がある」と指摘。「本案が偽装雇用の背中を押すようなやり方になってはいけない」として、労働者として保護の対象を拡大するよう訴えました。

 後藤茂之担当大臣は「必要な場合は、既存の法律で保護される」との答弁に留まりました。

 私は、取引の適正化についても、長時間労働を強いる納期や締め切りの規制を設けることも必須だと述べ、「フリーランス保護においても、業種業界ごとにガイドラインを制定し、運用する必要がある。所管省庁と業界が協議して、ふさわしいルール作りを促す働きかけをぜひやってほしい」と求めました。

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「議事録」

<第211回通常国会 2023年4月5日 内閣委員会 第10号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 フリーランス法案について質問をいたします。
 今回の法案の策定過程におきまして、そもそもフリーランスに対しての保護をどういうふうに行っていくのかといった制度の検討が行われてきたわけですけれども、この法案については、労政審には報告だけで、議論が行われておりませんでした。
 昨年九月の労政審雇用環境・均等分科会において、労働者代表委員が、労働側として唐突感、違和感があるとして、世界的には、新たな就業形態に対応した法的保護に関しては、労働者性を認める方向で保護を図っていこうという取組が進んでおり、日本でも労働者性の早急な見直しは必須であり、労政審で検討すべきだと述べておりました。
 大臣、お尋ねしますけれども、このフリーランスの対応につきまして、労働者性の拡張についての見直しを行うことは必須ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○後藤国務大臣 使用者に対し立場が弱い労働者が劣悪な環境で働くことがないように、労働基準法は、事業又は事務所で使用される者で、賃金を支払われる者を保護すべき労働者と定義した上で、使用者が遵守しなければならない労働条件の最低基準を定め、罰則をもって担保をいたしております。
 その上で、労働者の具体的な判断基準を明確にする観点から、それまでの裁判例等を基にしました判断基準を定めまして、労働者として保護されるべき者か否かを実態を勘案して総合的に判断しております。
 いわゆるフリーランスと呼ばれる方でありましても、実態を勘案して総合的に判断した結果、労働者性があると判断されれば、労働基準法等に基づいて労働者として必要な保護を図っていく。また、フリーランスの労働者性の判断基準については、令和三年三月に策定したガイドラインにより周知を図ってきております。
 一方で、労働基準法による労働者の範囲を拡大することによりまして、フリーランスを労働基準法上の労働者として、発注事業者に使用者と同様の義務を課すことにつきましては、発注事業者に過大な義務を課すことになりかねないといった法制的な課題、フリーランスへの発注控えにつながり、就業機会の縮小を招く可能性があるなど、課題が多いと考えております。
 一方で、我が国でフリーランスが直面しているトラブルについて見ますと、事業者間取引において見られるものが多く、また、ハラスメントなどのトラブルについても取引上の力関係に由来しているものと考えることができることから、本法案は、取引適正化等を図る法制として立案し、対策を講じたものでございます。
○塩川委員 フリーランス・トラブル一一〇番の相談で、この間、社員からフリーランスに変更される事例が増えているという話もされております。事務とか営業とかマッサージとかスポーツインストラクターとかなどが多いということですが、雇用契約を業務委託契約に変更する、雇用契約にしたらもうからないからとうそぶくような企業もあったということであります。
 このようなトラブルに対しては、契約の形式にとらわれず、実態判断をして労働者保護をかけると言っておりますが、実際には、労基署にかけ合っても、契約の形式が委託であれば門前払いされてしまうケースが少なくない。
 こういった現状、実態を踏まえた場合に、このような今起こっている問題に対処できるように、労働者性の拡張の議論を行うべきではありませんか。
○後藤国務大臣 労働基準法等の適用については、業務委託や請負等の契約の名称にかかわらず、実態を勘案して総合的に判断することになっておりますし、いわゆるフリーランスと呼ばれる方であっても、こうした判断の結果、労働者と認められる場合には、今回の新法とは関係なく、労働基準法等の適用をしてまいります。
 引き続き、労働基準監督署においてもこうした取扱いの徹底を図るとともに、フリーランスの労働者性の判断基準に関するガイドラインの周知徹底を図りまして、労働基準法等による保護が適切に行われるように努めてまいりたいと思います。
○塩川委員 実態を勘案してといっても、そうなっていない実態というのも現にあるわけですから、そういった点におきましても、この一九八五年の労基法上の労働者性の判断基準がいわば古くて狭いといった点が今問われているわけで、その見直しが必要であります。
 ILOにおいては、労働者性が曖昧な就業者は、本来は労働者でありながら、企業が故意に自営業者に偽装する場合、いわゆる偽装雇用と、従属性のある自営業者、従属的自営業者に分かれ、偽装雇用については誤分類の修正、従属的自営業者には一定の保護を提供する必要があるとしています。
 ですから、この両面での法的措置が必要なんじゃないのか。つまり、従属的自営業者についての一定の保護、今回のフリーランス法案としてそういう対処というのは必要なものと考えています。同時に、やはり偽装雇用になるような今の現状というのが率直に言ってあったときに、労働者性の拡張、こういった議論が法的措置も含めて必要ではないのか。改めてお尋ねします。
○後藤国務大臣 偽装雇用と考えられるようなケースについては、実態判断として、法律的な形式は別として、そこはしっかりと労働基準法等の適用をしていくということで、そういった意味での対応は今後ともしっかりと進めてまいりたいと思います。
○塩川委員 JILPTのフリーランスの労働基準法上の労働者性に関する調査を見ましても、労働者性が高いとか中程度というのを合わせると七一・九%、七割以上が労働者に近い働き方をしているという傾向が示されております。まさにそういう労働者に近い働き方をしているという実態があるといった点でも、フリーランスの保護は労働者性の適用を広げる方向を検討、具体化をすべきだということを重ねて求めたいと思いますが、改めて、いかがでしょうか。
○後藤国務大臣 重ねて同じ答弁では恐縮なんでありますけれども、基本的には、労働者性の認められる方について言えば、それは、どんな法律形態であろうとも、労働者として必要な保護をしていくわけでありますけれども、労働者の範囲を拡大することによって、フリーランスを労働基準法上の労働者として、発注事業者に使用者と同様の義務を課すことについては、法制的な課題、例えば、雇用関係において見られるような使用従属関係があるとは言えないために、発注事業者に対して使用者と同様の義務を課すことができるのかどうかといったような課題をしっかりと整理する必要がありますし、また、フリーランスへの発注控えにつながり、就業機会の減少を招く可能性があることなども課題としてあるというふうに思っております。
 そうした観点から、今回の取引法に基づく対応という形で検討をいたしております。
○塩川委員 この間、政府として、多様な働き方といった形で、偽装雇用を背中を押すようなやり方になっては決してならないわけで、そういった点での政府の対応がこの点でも極めて不十分だということを言わざるを得ません。改めて、労働者性の拡張、これはしっかりと宿題として行うべきだということを強く求めておきます。
 その上で、実態として、労働基準法や労働契約法、労働組合法が定める労働者に当たるフリーランスについては、この法律の制定をもって、こういった労働関係諸法令による救済が否定されるようなことがあってはならないと思いますが、改めて確認をいたします。
○後藤国務大臣 これはもう先生がおっしゃるとおりであります。
 今回の法律を作ることによって、フリーランスの取引法による規定で十分だというようなことにならないように、実際に、労働基準法等の適用については、業務委託とか請負とかの契約の名称にかかわらず、総合的に判断をして、しっかりと適用を図っていく。引き続き、労働基準監督署においてもこうした取扱いの徹底を図るとともに、フリーランスの労働者性の判断基準に関するガイドラインの周知徹底を図って、労働基準法等による保護が適切に行われるように努めてまいりたいと思います。
○塩川委員 法案に関わって何点かお尋ねをいたします。
 やはりフリーランスで働く方々の報酬が余りにも低いといった点も問われてまいります。その点で、最低報酬規制、こういった仕組みを設ける必要があるのではないのかという点であります。
 この間、政府として具体化している取組の中で、自営型テレワークのガイドラインなどもあります。そこにおきましては、例えば、最低賃金を一つの参考として自営型テレワーカーの報酬を決定することも考えられるとあります。
 従事者の報酬の最低規制を図る、こういった工夫というのが行われる必要があるのではないのかと思いますが、お答えください。
○後藤国務大臣 本法案では、いわゆるフリーランスを保護する観点から、下請代金法では規制対象にならない資本金一千万円以下の小規模な発注事業者であっても、フリーランスに委託を行う場合には発注書面の交付等の義務を課すことといたしております。
 他方、事業者間取引における契約自由の観点からは、原則として、事業者取引に対する行政の介入は最小限にとどまるべきであるということに加えまして、小規模な発注事業者に対して過剰な義務を課した場合には、発注事業者が義務履行に係る負担を避けようとして特定受託事業者と取引することを避ける、いわば発注控えが生じること、財政基盤が脆弱な発注事業者も多く、義務が負担となり経営に支障を来すことも懸念されることから、規制内容はできるだけ限定することが適当であるというふうに考えております。
 さらに、特定受託事業者の役務や成果物は多種多様であることから、一律の最低報酬を定めることは困難であるとも考えられます。
 したがって、本法案において、特定受託事業者の最低報酬に係る規制を盛り込んでおりません。
○塩川委員 業種、業態は多種多様で、一律の最低報酬を定めるのは困難という話もありました。
 そういう際にも、やはり業種、業態においてはいろいろな工夫もできることだろうと思ってはいます。お話を伺っている中では、例えば音楽家の方々の組合などにおきましては、演奏における時間、そこに最低時給というのを設けて、テレビ局の各局と交渉して協定を結んでいるといった格好での最低報酬のルール作りなどが行われているわけであります。
 そういった現場で行っている取組も含めて、しっかりとやはり、労働者でいえば最低賃金に相当するような、こういったことを担保できるようなフリーランスにおける最低報酬規制というのは考えられるべきだと思っております。
 もう一つ、長時間の作業時間を強いる納期や締切りの規制の問題であります。
 この点も、自営型テレワークのガイドラインなどでは、成果物の納期については、作業時間が長時間に及び健康を害することがないように設定をすること、その際、通常の労働者の一日の所定労働時間の上限八時間を作業時間の目安にする、こういうことなんかも示されているところであります。
 こういった長時間の作業時間を強いるような働かされ方を一定規制をする、そういう仕組みづくりというのが必要ではないでしょうか。
○後藤国務大臣 フリーランスの方についても、今先生御指摘のように、働き過ぎにより健康を害することのないように配慮をすることは非常に重要なことだと思います。
 この点、現在、厚生労働省では、個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を開催しまして、その中で、フリーランスの方々の作業時間が長時間に及び健康を害することのないようにすることも議論していると聞いております。この有識者検討会における検討結果も踏まえて、厚生労働省において適切な対応が取られていくものと考えております。
○塩川委員 やはり長時間労働を強いる、健康にも支障を来すような、そういった働かされ方がなくなるような仕組みづくりというのは必須ということを改めて強調しておきます。
 今回のフリーランス法案、審議をしていて、当然、広く適用する、そういった多様な業種、業態の中において、業種横断的な規制という点では一定の制約というのは出てくるわけですけれども、やはり業種、業態に対応したような様々な工夫をする必要があるんじゃないのか。
 そういう点では、下請取引の適正化におきましては、業界、業種ごとにガイドラインを策定をして、遵守状況のフォローアップですとか、ガイドラインの改定なども行われてきております。今回のフリーランス保護においても、業種、業態ごとにこういったガイドラインを設ける、それで運用していく、そういったことは必要なことではないかと思うんですが、この点についてはどうでしょうか。
○後藤国務大臣 下請取引適正化の取組においては、今御指摘もあったように、業種別の取引実績等を踏まえた対応が有効でありますことから、各業所管省庁において、下請法や独禁法の違反事例やベストプラクティス等についてまとめたガイドラインを作成して、業界に遵守を呼びかけているわけであります。
 他方で、フリーランスについては多種多様な業態が想定されることから、今回の法案が成立すれば、その施行後の状況等を分析し、まずは業種別の課題、例えば映画産業だとか食品産業だとか、そうした課題の把握にまず努めることとしたいと考えています。
○塩川委員 結構、所管省庁と、それから関連する業界団体などが協議をされて、今、映画の話ですとか食品の話がありましたけれども、芸能関係者、あるいはウーバーのようなデリバリーの話、あるいは一人親方ですとか放送コンテンツ、それぞれの所管省庁が、関連する業界、フリーランスの方と協議をして、そういった点でのふさわしいルール作りを行っていく。こういうところは更に踏み込んできちっと行っていく。だから、関係の所管省庁がしっかりと対応するといったことを促す働きかけを是非やっていただきたいと思うんですが、改めて、いかがでしょうか。
○後藤国務大臣 いわゆるフリーランスについて言えば、大変に、取引、その実施される状況については多種多様で、実態についても今後把握していく必要があるというふうに思いますけれども、今御指摘されたような問題意識を持ってしっかりと分析をしていきたいと思います。
○塩川委員 業種ごとの標準契約書を作る、こういったことなんかも含めて、実際に有効に運用される、そういう取組につなげることを改めて求めて、質問を終わります。