【内閣委員会】本人同意形骸化の恐れ/医療ビックデータ法案可決

 医療ビックデータ法案(次世代医療基盤法)の改定案を賛成多数で可決しました。日本共産党、れいわ新選組は反対しました。

 本制度は本来本人の同意が必要な医療情報の第三者提供を、認定事業者相手に限り本人への通知のみですますことができるものとしています。

 私は「本人同意の形骸化につながる」と指摘。実際2022年には認定事業者が通知をせずに95,195人分の医療情報を提供した問題が起きています。

 そのうえで他の情報と合わせることで復元可能な「仮名加工医療情報」や、公的データベースとの連結を可能とする「連結可能匿名加工医療情報」を創設する改定案について、個人特定のリスクが高まると批判しました。

 高市担当大臣は個人の権利利益が侵害されることを防ぐ仕組みになっていると述べるにとどまりました。

 また、医療機関や自治体などすべての医療情報を取り扱う者に対し、国の施策への協力を求める努力規定も改定案に含まれています。改定案が検討されたWGでは、前述の問題を起こした事業者の委員が「病院の協力を得るのが非常に大きな足かせ」「任意というよりほぼ義務化を」と事業者の都合を優先させた発言をしています。

 私は「医療情報提供への圧力をかける規定になる」と指摘、医療情報の保護よりも利活用優先、企業利益を優先するあり方を批判しました。

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「議事録」

<第211回通常国会 2023年4月12日 内閣委員会 第12号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 次世代医療基盤法案、医療ビッグデータ法案について質問をいたします。
 個人情報保護法におきましては、個人の心身に関する情報である医療情報は、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮する個人情報である要配慮個人情報に当たります。要配慮個人情報の取得や第三者提供の際には、あらかじめ本人の同意を得るオプトインの手続が必要であり、本人に通知をした上で本人が停止を求めなければ提供するオプトアウトの手続は認めておりません。医療情報の第三者提供については、オプトアウト手続は認められないということであります。
 一方、次世代医療基盤法に基づく匿名加工医療情報は、医療情報の利活用を推進するために、利活用の壁となっているとした本人同意のオプトイン手続を外して、オプトアウト手続としたものであります。
 これは、本人同意の手続を形骸化をするものではないのか、その点についてまずお伺いします。
○高市国務大臣 次世代医療基盤法は、個人情報保護法の特例法として、主務大臣の認定を受けた事業者に対する場合に限り、同意でなく、オプトアウト手続によって医療機関から医療情報を提供することを認めるものでございます。
 これは、患者などへの丁寧な通知が行われることによって自分の医療情報の提供を拒否する機会が付与されること、認定作成事業者は、十分な安全管理措置が確保されていることなどについて主務大臣から認定を受けるとともに、その監督下に置かれることにより医療情報の慎重な取扱いが確保されること、また、医療機関等から提供された医療情報は認定作成事業者によって特定の個人が識別されることがないよう匿名加工が施された形で利用されることなどによりまして、個人の権利利益が侵害されることを防ぐ仕組みとなっていることによるものでございます。
○塩川委員 やはり個人情報、特にこういった医療情報などの要配慮個人情報というのは、その人自身の個人情報をしっかりとコントロールできるような仕組みにしていくことが必要であって、それについて、丁寧なとはいいながらも、オプトアウト手続ではそれに応えるものとは言えないという点を指摘をしておくものです。
 その上で、今回の法改正で措置する連結可能匿名加工医療情報は、公的データベースとの結合で、個人の医療情報が時系列で把握をできるようになります。また、仮名加工医療情報は希少な症例や薬剤使用などの特異な記述も残すので、容易に個人が特定可能となり得ます。
 より慎重に取り扱うべき個人情報の第三者提供なのにオプトアウト手続でよいのか、明確な本人同意の手続を取るべきではないのか、この点についてお答えください。
○高市国務大臣 NDBなどの公的データベースとの連結を可能とする連結可能匿名加工医療情報につきましては、あくまでも匿名加工し、本人を特定できない形で提供するものでございます。従来の匿名加工医療情報と同様の理由によりまして、適切に個人の権利利益の保護が図られると考えております。
 また、新たに創設する仮名加工医療情報については、匿名加工医療情報と同様に、患者さんへの丁寧な通知が行われることによって、自分の医療情報の提供を拒否する機会が付与されております。
 また、認定作成事業者は、十分な安全管理措置等が確保されていることなどについて主務大臣から認定を受けるとともに、その監督下に置かれることにより医療情報の慎重な取扱いが確保されます。
 また、医療機関などから提供された医療情報は、認定作成事業者により、その情報だけでは特定の個人が識別されることがないよう加工された形で、安全管理措置を適切に講じる体制を有する者として国の認定を受けた利用事業者に限って利用を認めることによって、個人の権利利益が侵害されることを防ぐ仕組みとしております。
 このため、同意ではなく、オプトアウト手続により、医療機関などから認定事業者への医療情報の提供を認めるものでございます。
○塩川委員 仮名加工情報は、本来、第三者提供が禁止されておりますが、仮名加工医療情報は本人通知のみで第三者提供を可能としております。個人情報保護の規定の緩和ばかり進めているというのが実態であります。
 そこでお尋ねしますが、匿名加工医療情報について、利用の停止を求める意思表示がされた件数及び割合はどうなっているのかについてお答えください。
○西辻政府参考人 お答え申し上げます。
 次世代医療基盤法におきましては、医療機関等から本人に通知を行う方法として、インターネット掲示や院内掲示など単に本人が容易に知り得る状況に置くのではなく、あらかじめ本人に通知するということを求めております。
 オプトアウトの具体的な件数、割合でございますが、正確に把握しているわけではございませんが、認定匿名加工医療情報作成事業者において一定の期間におけるオプトアウトが行われた割合については、おおむね一%未満であったというふうに聞いております。
○塩川委員 オプトアウトの手続で、拒否が一%未満ということでありました。
 もう一つお尋ねしますが、難病患者データベースや小児慢性特定疾病患者等のデータベースにつきまして、本人同意を基に医療情報を取得をするとなっておりますが、この難病DBや小慢DBについて、同意を拒否した件数及び割合がどうなっているのかについて御説明ください。
○鳥井政府参考人 お答え申し上げます。
 厚生労働省の健康局難病対策課で実施した平成三十年のウェブアンケートによりますと、難病患者では、毎回同意していないが二%、同意していないときも何度かあったが一〇%、小児慢性特定疾患患者等では、毎回同意していないが一%、同意していないときも何度かあったが一二%となってございます。
 アンケートでございますので、件数は承知しておりません。
○塩川委員 今お答えいただきましたように、オプトアウトの匿名加工医療情報の場合に拒否は一%未満でしたが、オプトインの難病データベースや小慢データベースの場合には十数%が拒否のときがあるということであります。難病患者や小児慢性特定疾病患者で医療情報提供に同意しない理由として、個人情報をむやみに提供したくないからという回答も多かったわけであります。
 大臣にお尋ねしますが、やはりオプトアウト手続では、このような本人の意思表示が明確にされないのではないかと思いますが、お答えください。
○高市国務大臣 次世代医療基盤法は、医療情報について匿名加工又は仮名加工を施した上で利活用を行う制度ではございますが、その利活用につきましては、患者さん御本人に対してしっかりあらかじめ認識をしていただくことが重要であると考えております。
 ですから、同法におけるオプトアウトでは、ウェブページへの掲載など単に患者本人が知り得る状態に置くということではなく、御本人が認識する機会の確保の観点から、あらかじめ本人に対して通知することを求めております。
 通知の手段としましては、その内容が御本人に認識される適切かつ合理的な方法により行うことを求めております。主に医療機関の窓口などにおいて患者さん御本人に対して書面などを用いて通知が行われていると承知をしております。
 また、通知に関しましては、十六歳未満の方については保護者に対しても通知を行うことや、障害をお持ちの方や高齢者に対しては十分な配慮を行うこと、また、さらには御本人またその御遺族などからの問合せに係る窓口機能の確保なども求めております。
 患者本人の皆様などに対して本制度をしっかりと認識していただいた上で、医療情報を提供していただく仕組みを構築いたしております。
○塩川委員 これまでオプトインで行っていた難病の場合などにつきましては、イエス、ノーにチェックをする、あるいは署名をするという形での明確な意思表示というのがあるわけですけれども、オプトアウトの場合には通知ですから、そういう点でも非常に本人の意思表示というのが明確にされるような状況にないということを指摘をし、個人情報保護の根幹である本人同意の手続がなし崩しとなるといった点が強く危惧されるものであります。
 一方で、医療情報を利活用する事業者サイドを見ますと、要配慮個人情報である医療情報に対する適切な取扱いが軽んじられている。このことは、昨年の、認定事業者であるライフデータイニシアティブとNTTデータが第三十条に基づく本人への通知を行わずに計九万五千百九十五人分の医療情報を提供した、プライバシーの侵害が懸念される、こういった事態があったことも極めて重大であります。
 そこで、今回の法改正で、医療機関や介護事業所、自治体、学校等に対し、国の施策への協力の努力規定が盛り込まれております。
 本改正案に向けた検討の場でありますワーキンググループでは、さきに示した問題を起こしたLDIの委員の方が、病院の協力を得るのが非常に大きな足かせだ、今の法律では医療機関からデータを出すのはあくまでも任意、ここが非常に効率も悪いし、一診療機関当たり五百万ほどの費用が必要になってくる、データ集めは義務化してほしいと要求するなど、事業者の都合を優先する発言を行っております。
 医療提供取扱事業者には医療情報提供の義務づけはないのに、医療情報提供への圧力をかける、そういう規定になってしまうのではないのかと強く懸念するところですが、この点、いかがでしょうか。
○高市国務大臣 この改正法で新設する協力規定でございますが、医療分野の研究開発を推進するために医療情報の利活用がますます重要となる中、収集する医療情報の充実を図るために、本法の趣旨を医療機関や地方自治体などに御理解いただき、御協力をお願いする目的で設けるものでございます。
 今回の協力規定を設けた後も、医療機関などが本法に基づく医療情報の提供を行うかどうかは任意でございます。さらに、医療機関などから提供する旨の通知を受けた患者さんが協力することも任意でございます。
 医療情報の提供は任意であるということを前提に、医療情報を研究開発に利用することの意義、またその成果を分かりやすく広報してまいりたいと存じます。
○塩川委員 任意といいながら、医療情報の提供を求めていくといったことが新たに規定で盛り込まれるわけですから、関係の、医療情報についての、医療提供の取扱事業者に新たな大きな負担、負荷をかける、こういった点でも、それぞれの国民への、個人情報の提供、医療情報の提供を促進するという流れを強める点でも懸念するものであります。
 次世代医療基盤法の見直しに当たって、経団連の要望書では、医療機関による通知の事務負担軽減のためといって、ポスターに印刷されたQRコード等によりスマホ上での通知文書の誘導、閲覧をもって通知とみなすことについても検討すべきだといった要求も出されています。
 こういった利活用優先、個人情報保護軽視の姿勢は許されないと思いますが、この点、いかがですか。
○高市国務大臣 あくまでも、個人情報をしっかりと保護した上で、貴重な医療情報の活用を促していくということでございます。
○塩川委員 事業者サイドでは、より一層情報収集がしやすいような、そういうスキームということで個人情報保護の規定をどんどん後退させる、こういった要求が背景にあるということは極めて問題があるわけで、現在の認定医療情報等取扱受託事業者はNTTデータ、日鉄ソリューションズ、日立製作所の三社でありますが、一方、医療ビッグデータを推進する国の機関を見ると、健康・医療戦略室に日立製作所、デジタル庁にNTTデータ、日鉄ソリューションズ、日立製作所がある。国の組織体制では、医療情報の保護よりも利活用優先、企業利益を優先する構図となっている。こういった組織の構成そのものが問題があるということを最後に指摘をして、質問を終わります。