【内閣委員会】LGBT理解増進法案/自公維国案可決/「多数派の権利」持ち込み、マイノリティ差別をなくす流れに逆行

 LGBT理解増進法案をめぐり、修正与党案が、自民・公明・維新・国民などの賛成多数で可決。共産・立憲は反対しました。また、共産・立憲が提出した2021年超党派の議連合意の法案は、反対多数で否決となりました。

 この法案をめぐり、自公案、立共案、維国案の3案が提出されていました。昨日8日夜、突然、自公が維国案を“ほぼ丸のみ”した4党修正案の概要が示されました。

 私は、質疑の中で、4党修正案の最大の問題点は、「全ての国民が安心して生活できる」という文言を用いて、「多数者の権利擁護」のための留意事項を創設していることだと指摘。「多数派の権利擁護の必要」との発想は、「『多数派が認める範囲内』でしか性的マイノリティの人権・尊厳は認められないとのメッセージになりかねない。LGBTの理解増進を阻むものだ」とただしました。

 自民党の新藤義孝議員は「留意事項であり、義務ではない。心配されないように運用する」と述べるに留まりました。

 また、トランスジェンダーが女性トイレなどの「安全」を脅かす存在になるとの誤った言説について、答弁に立った宮本岳志議員は「安全と安心は、すべての性の人に保障されなければならないあ。性の多様性と認め合い、誰もが『個人の尊厳』を尊重される社会を作ることが、求められている」と述べました。

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反対討論は、以下の通りです

 LGBT理解増進法案の、立憲・共産案に賛成、自民・公明・維新・国民4党の修正案、自民・公明の原案、維新・国民案に反対の討論を行います。

 今回の立憲・共産案は、2021年に超党派のLGBT議連で合意した内容をそのまま提出したものです。当事者との話し合いを重ね、差別を許さないために最低限必要な措置を定めた、この「議連合意」立憲・共産案の成立を強く求めるものです。

 議連にも加わっている自民・公明、維新・国民が、合意を無視して、それぞれ別の法案を提出したことは、合意した法案を壊すもので許されません。さらに、昨晩22時過ぎ、突然4党の修正案の概要が示されました。当事者の声も聞かず、たった1時間20分の質疑で、今日採決しようなど、許されるものではありません。強く抗議するものです。

 修正案は、自民・公明が維新・国民案を、ほぼ丸のみしたものです。

 修正案の最大の問題は、性的マイノリティ以外の権利擁護のためなどと言って「留意事項」を新設していることです。「全ての国民が安心して生活できる」というワードを用いていますが、「多数派の権利擁護も必要」として設けられているものです。この発想は、「多数派が認める範囲内」でしかマイノリティの人権・尊厳は認められないとのメッセージになりかねません。これは、性的マイノリティの方々の現実の苦悩を軽視するものです。

 また、学校における教育・啓発は「家庭・地域住民・その他の関係者の協力を得つつ」行うと追加しています。これも、「多数派が認める範囲内」での教育・啓発しか認めないという発想です。あえて法律に盛り込むことで、教育現場が委縮しかねません。

 自公原案では、議連合意の「差別は許されない」を「不当な差別はあってはならない」に変更しています。これでは「正当な差別」が存在するかのようなメッセージとなり、差別を温存することになりかねません。

 今回の法案は、LGBTの方々に対する「理解」を増進させることが目的のはずです。このような規定は、理解増進を阻み、マイノリティに対する差別をなくそうという流れに逆行するもので、容認できません。

 また、自公原案は、議連合意で国に対して義務付けた「調査研究」を、「学術研究」に置き換え「調査」を削除しています。理解増進のためには、性の多様性の実態や差別の現状を明らかにすることが重要であり、公的調査を行う国の責務を弱めるものです。

 修正案は、「民間団体などの自発的な活動の促進」を削除しており、民間団体が担っている居場所づくり事業や各種相談事業などの後退を招きかねません。

 さらに、多数派の権利擁護のための「留意事項」を「政府が指針を策定する」としていることは、自治体による先進的な条例や民間団体の自発的な活動など、この法律全体を「多数派が認める範囲内」での施策に抑え込もうとするものです。

 このような後退は、認められません。

 最後に、修正案では、日本でも差別的文脈があるとして最高裁判決や自治体条例などで使われなくなった「性同一性」を持ち込まなかったとはいえ、「ジェンダーアイデンティティ」に置き換えています。なぜ「性自認」を用いなかったのでしょうか。

 「性自認」を用いないことに固執する背景に、一定の連続性・一貫性・持続性を伴った「性自認」と “自称”や“なりすまし”を混同させ、差別と偏見を煽り、運動や世論を敵視する勢力がいます。

 性的マイノリティの方々を排除することなく、性の多様性を認め合い、誰もが「個人の尊厳」を尊重される社会をつくることが、世界の流れであり、求められていることです。

 LGBT当事者の方々が求めているのは、現実に起きている差別の解消、基本的人権と個人の尊重の保障です。本来必要なのは、わが党を含む野党が提出している「LGBT差別解消法案」の成立であると申し述べ、討論を終わります。