【本会議】重要経済安保情報法案=秘密保護法拡大法案審議入り/「憲法違反そのもの」

 重要経済安保情報法案=秘密保護法拡大法案が、審議入りしました。私は、国民には何が秘密かも知らされないまま、政府が勝手に秘密を指定し、秘密に触れれば厳罰を科す秘密保護法体制を経済分野まで拡大するものだとして「基本的人権、国民主権、平和主義という憲法の基本原理を根底から覆す秘密保護法の拡大は許されない。徹底審議で廃案にすることを求める」と主張しました。

 同法案は、秘密の範囲を、秘密保護法の「防衛・外交・スパイ活動・テロ活動」の4分野から、医療や食料まで含む経済分野へ拡大するものです。

 私は、秘密を扱う人は民間の労働者・技術者・研究者まで飛躍的に拡大することになると強調。岸田文雄首相は「指摘は当たらない」と強弁しました。

 私は、経済分野に対象を広げる同法案に合わせて、岸田首相が「特定秘密保護法の運用基準の見直しを含め、必要な措置を講じる」よう指示したと指摘し、「法改正せずに秘密保護法を拡大しようというものではないか」と批判。岸田首相は「特定秘密に該当するか行政機関が的確に判断できるよう、運用基準を見直す」趣旨だと答弁しました。

 法案では、セキュリティ・クリアランス=適性評価制度として、身辺調査を行います。調査では秘密を扱う人の政治的思想や、精神疾患などの病歴、借金などの信用情報など、個人情報を調べます。

 私は「労働者は、調査を拒否すれば不利益を受けるおそれがあり、事実上の強制だ」と強調。集められた情報は政府に溜まり続け、一度でも秘密に触れた人は障害監視され続ける危険があるとして「思想・良心の自由、プライバシー権を踏みにじる憲法違反そのものだ」と批判しました。

 また、取材などで秘密を取得する行為も捜査機関の判断で逮捕拘留等が可能であり、さらに秘密は国民の代表である国会議員にも明らかにされず、国民の知る権利が侵害されると指摘。

 秘密指定の拡大で、研究成果の自由な公開などを制限し、学問の自由を侵害すると批判しました。

 私は、本案の狙いについて、岸田政権が安保3文書に基づき進める米国との極超音速兵器迎撃誘導弾などの共同開発のため、適性評価が必要なのではないかと指摘。

 米国がかねてより日本に求めてきた米国内と同等の包括的な秘密保護法制として、米国基準の3段階のうち、トップシークレット、シークレットについては秘密保護法で対応し、コンフィデンシャル級については同法案で対応するということではないかと質問。岸田首相は「米国から要求されたからではない」と否定しました。

 私は、「米国と財界の要求に応えて、日米軍事一体化を推し進め、デュアル・ユースも含む武器輸出を進め、日本を死の商人国家にしようというのが法案の正体だ」と強調しました。

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本会議質問の要旨は以下の通りです

 私は、日本共産党を代表して、重要経済安保情報法案すなわち秘密保護法拡大法案について質問いたします。

 本法案は、10年前、政府が多くの国民の反対を押し切って強行した秘密保護法を拡大するものです。秘密保護法は、国民には何が秘密かも知らされないまま、政府が勝手に秘密を指定し、秘密に触れれば拘禁刑という厳罰を科す稀代の悪法です。

 秘密保護法は、秘密の範囲を「防衛・外交・スパイ活動・テロ活動」の4分野としていました。今回の法案は、秘密の範囲を、さらに医療や食料分野なども含む、経済分野のあらゆる情報に拡大し、政府の一存で秘密指定を可能とするものです。これによって、秘密を扱う人は、民間の労働者、技術者、研究者など飛躍的に広がります。まさに秘密保護体制を際限なく拡大しようというものではありませんか。

 重大なのは、岸田総理が「新制度が、我が国の既存の情報保全制度とシームレスに運用されるよう、特定秘密保護法の運用基準の見直しの検討を含め、必要な措置を講じること」を指示したことです。これは、法改正せずに、運用見直しで、秘密保護法そのものの適用を拡大しようというものではありませんか。看過できない大問題であります。

 まず、労働者・技術者に対する身辺調査の問題です。

 秘密を扱う人に対するセキュリティ・クリアランス=適性評価について法案は、本人の政治的思想や精神疾患などの病歴、借金などの信用情報などを調査項目と規定しています。これは、機微な個人情報を根こそぎ調べ上げる秘密保護法と、まったく同じではありませんか。

 適性評価は本人の同意が前提という建前ですが、労働者は調査を拒否すれば不利益を受けるおそれがあり、事実上の強制ではありませんか。

 さらに家族や同居人の国籍なども家族本人の同意なく調査されるのです。

 しかも収集された大量の機微な個人情報は削除のルールすらなく、政府に溜まり続けていくことになります。一度でも秘密に触れた人は、生涯監視され続けることになるのではありませんか。

 秘密の漏えいだけでなく、未遂、過失、さらに共謀、教唆、煽動まで処罰の対象としているために、監視対象は本人だけでなく家族、知人友人、同僚などにまで及びます。

 思想・良心の自由、プライバシー権を踏みにじる憲法違反そのものではありませんか。

 次に、国民の知る権利の問題です。取材などで秘密を取得する行為も処罰対象となります。正当な取材は除外されるといいますが、捜査機関が必要と判断するなら、逮捕、拘留で身柄を拘束し、密室での取り調べも、捜索、差押えも行えるのではありませんか。報道の自由の侵害は明らかではありませんか。

 しかも、秘密指定された情報は、国民の代表である国会議員にすら明らかにされないのであります。断じて許されません。

 さらに、経済分野への秘密指定の拡大は、本来あるべき研究成果の自由な公開やオープンな研究環境を制限し、学問の自由を侵害するものではありませんか。

 総理、一体なぜ、秘密保護法を経済分野にまで広げようというのですか。

 岸田政権は、安保三文書で、装備品の共同開発・生産、装備・技術協力を一層強化するために「日米間の情報共有を促進する情報保全を強化する」と宣言しています。総理は「セキュリティ・クリアランスは、同盟国・同志国との円滑な協力のために重要」と発言しました。このもとで、実際に、米国との極超音速兵器を迎撃する滑走段階迎撃用誘導弾GPIの共同開発を決定し、イギリス、イタリアと次期戦闘機の共同開発も進めています。これらの共同開発のために、セキュリティ・クリアランス制度を必要としたのではありませんか。

 米国政府は、かねてより米国内と同等の包括的な秘密保護法制を日本に要求してきました。米国基準の3段階のうちトップシークレット、シークレットについては秘密保護法で対応し、コンフィデンシャル級については今回の法案で対応するというものではありませんか。

 日本の財界は、政府設置の有識者会議の中で「相手国の国防省関係のビジネスは増加傾向であり、さらなる業務獲得・円滑化のためにはクリアランスが必要」と述べています。軍事分野で、企業の儲けを確保するために本案が必要だということではありませんか。

 米国と財界の要求に応えて、日米軍事一体化を推し進め、デュアル・ユースも含む武器輸出を進め、日本を死の商人国家にしようというのが本案の正体ではありませんか。

 最後に、大川原化工機事件です。経済安保の名のもとに、長期拘留された相嶋さんが亡くなるなど、人権蹂躙の違法捜査が行われました。あの冤罪事件を政府はどのように反省しているのですか。4年前、経済安保を推進する中で、政府がでっちあげた事件であります。経済分野全般への秘密保護体制の拡大が、さらに同じような事件を引き起こすのは明白ではありませんか。

 基本的人権、国民主権、平和主義という日本国憲法の基本原理を根底から覆す秘密保護法の拡大は断じて許されません。徹底審議で、廃案にすることを求めて質問を終わります。