【内閣委員会】秘密保護法拡大法案参考人質疑/曖昧な定義で秘密に指定/国民に厳罰

 秘密保護法拡大法案(重要経済安保情報法案)の参考人質疑が行われました。同法案は、国民には何が秘密かも知らされず、政府が勝手に秘密に指定し、秘密に触れれば厳罰を科す秘密保護法の「秘密の範囲」を経済分野に拡大するものです。

 秘密を扱う人が民間労働者、技術者、研究者などへ飛躍的に広がり、重大な人権侵害を引き起こすと危惧されます。

 参考人の三宅弘弁護士は「同法案における重要経済安保情報は、秘密保護法における特定秘密との区別が曖昧だ」と指摘。「5年以下の拘禁刑または罰金で処罰するのは、罪刑法定主義の観点から問題がある」と述べました。また、秘密情報を扱う適性評価の対象は「数十万人に上るのではないか」と述べました。

 齋藤裕日弁連副会長は、米国では強制的秘密解除という、市民が秘密の解除を求めるシステムがあるとし、「日本は米国に比べて秘密が拡大しやすく、市民の知る権利が制限されかねない」と強調。同法案は、秘密保護法のように別表で具体的に秘密とされている類型が規定されていないとし、罪刑法定主義の観点から「処罰範囲は国会が決めるべきで、市民がその行動について予測可能性を持つことができるように明確であるべきだ」と主張しました。

 私は、政府が、秘密保護法拡大法案によって経済分野まで拡大される秘密の範囲に合わせて、これまで4分野に限定されていた特定秘密の範囲も経済分野まで広げようとしていると指摘し、「政府の裁量で勝手に秘密の範囲を広げ、法律によらず罰則の対象を広げるのではないか」と質問しました。

 斎藤氏は「秘密保護法の対象はこれまで「国民の生命・身体が害される」場合とされてきたが、「国民の生活・経済が害される」場合まで拡大しようというものだ」と批判しました。

 私は、次期戦闘機の共同開発国である英国やイタリアとの関係について「今回の法案は多国間の共同開発の障害を取り除くものとなっているのか」と質問。

 政府の有識者会議の座長を務めた渡部俊也東大未来ビジョン研究センター教授は「他の国のことはよくわからない」と述べるに留まりました。

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「議事録」

第213回通常国会 令和6年3月28日(木曜日) 内閣委員会 第6号

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今日は、皆様、貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 最初に、齋藤参考人と三宅参考人にお尋ねをいたします。

 今回の法案は、特定秘密保護法を拡大をする、スキーム的にはそういう中身となってまいります。その際に、秘密保護法の方ですけれども、今回、秘密保護法については、特定秘密の範囲を、法改正をせずに運用基準の見直しで拡大しようとしております。政府の裁量で勝手に秘密の範囲を広げることになるのではないのか、法律によらず罰則の対象を広げるものでもあり、こういったやり方についてはどのようにお考えか、お答えいただければと思います。

○齋藤参考人 ありがとうございます。

 そもそも、秘密保護法と今回の法案ですけれども、もちろん対象が違うんですけれども、安全保障という概念が両方使われている、同じ言葉が使われているんですが、その言葉の意味が実質的には違うというふうに思っています。安全保障の概念の中に、国民の安全という言葉が両方とも含まれているんですね。これも概念が違うと思っています。

 特定秘密保護法の国民の安全というのは、注釈とかあるいは別表とかを見ますと、国民の生命や身体が害される場合をいうというふうに多分解されると思うんですね。今回の法案について言うと、重要基盤とかの関係で国民の生活や経済が害される場合が含まれていて、それが漏れた場合に安全保障が害されるという形になるので、多分、安全保障という概念の中には、国民の生命身体が害される場合だけじゃなくて国民生活、経済が害される場合も含まれるわけです。

 その上で、今回の法案でいうと、例えば半導体のサプライチェーンみたいなものは多分対象になるんだろうと思うんですけれども、大臣の答弁とかを聞いていると、じゃ、そういうものの保護の必要性が高い、コンフィデンシャル級じゃなくてシークレット級、トップシークレット級のものは恐らく秘密保護法で保護されるんだろうというようなことをおっしゃられているんですよね。そうだとすると、国民生活や経済には影響するけれども国民の生命身体には直接影響しないような情報を秘密保護法で対処しようとしているんだろうと思うんです、政府の方は。

 先ほども申しましたけれども、秘密保護法というのは、恐らく国民の生命身体を害するような事態を対象としていて、国民経済や国民生活だけを害するようなものは多分対象としていない。ところが、どうもそこに、秘密保護法の解釈の中に、生命身体には影響しないけれども経済、国民生活に影響するようなものも含ませようとしているように見えますので、そうしますと、立法のときの経過や文言からして明らかに想定されていなかったものをそこに含ませようとしているということだと思いますので、罪刑法定主義の観点から非常に問題だろうというふうに思っております。

 ありがとうございます。

○三宅参考人 先ほど御質問の御説明の中に、特定秘密法の拡大のスキームだという御説明がありましたが、私の資料の中でも二ページのところで、特定秘密というのは別表に掲げる事項に関する情報という、まず別表の限定がございますが、重要経済安保情報にはそれがない。それから、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障という、その著しい支障のところが、特定秘密の場合には要件とありますが、今回の場合はないということで、トップシークレット級、シークレット級と、コンフィデンシャルを分けて、二分しているという説明にはなっておるわけでございますけれども、残念ながら、別表の中の適用のところの見直し、審議というようなことがまだ尽くされていないのではないかなと思います、この十年。だからこそ、省庁で十四しかない、特定秘密法の対象となっているものを扱っている省庁。

 それは、特に特定秘密指定ということを、枠を決めてもそこに対象情報がないような場合はその枠を外せということを特定秘密保護法における審議の過程で国会で議論されたものですから、いろいろな省庁で特定秘密という箱をつくってもそこに入れる情報がない、そんな特定秘密の箱は要らないじゃないかということが審査されて、対象になる府省庁が少ないわけでございます。

 本来は、今日お話しになったところの刑罰法規の問題は、別表である程度書いて構成要件を整備して、それで刑罰法規が適用対象になるということになると、特定秘密保護法の見直しというようなことをちゃんと実績を踏まえてするということがないと、この法律との兼ね合いが不明確になってくる。

 なおかつ、重要経済安保情報の定義自体が、先ほど齋藤参考人がお話しになったように、国民の生命身体というよりは、国民生活というのは経済情報ですから、そこまで広げると、かえって今度は刑罰法規というところの構成要件がやはり曖昧になるので、特定秘密保護法の場合は別表で掲げるということで辛うじて構成要件が、罪刑法定主義の観点から刑罰法規としてオーケーだとしても、今回のものは別表がないものですから、運用基準で広がって、それが最高刑五年の拘禁刑になってしまう、そういう問題があるので。立法を進める方からいえば痛しかゆしの問題だろうと思いますが、我々からいえば、刑法学者とかのお話を聞くと、とても刑罰法規として堪えられるようなものではないというところになっておりますので、特定秘密保護法から見直していただくところを初めからやり直してもらう方がベターだと。

 必要性のところは、刑罰法規とかかわらず、ガイドラインで、刑罰法規のないもので作っていただいてもいいような、お話を今日お聞きして、特に大事だというようなことからは、思うように、今の段階では考えているところでございます。

○塩川委員 ありがとうございます。

 次に、渡部参考人にお尋ねいたします。

 先ほど冒頭の陳述の際に、齋藤参考人が、コンフィデンシャルの扱いについて、イギリスやフランスでは廃止をしている、アメリカでもISOOが廃止を勧告をする、同盟国、同志国でコンフィデンシャル廃止の動きがある中で今回の法案を作ることへの疑問を呈されたところでありますが、この点については渡部参考人はどのようにお考えでしょうか。

○渡部参考人 実態として今アメリカでどれぐらいコンフィデンシャルが使われているかという統計等はちょっと把握はしていないんですけれども、アメリカで、私の、ハーバードでクリアランスホルダーを持っている人をよく知っているんですけれども、よくブリーフィングやなんかでやっているものに関してはコンフィデンシャル級のものが含まれているということを聞いております。

 詳しくその辺どういう動向になっているかということを踏まえては必要だとは思いますが、一方、これは我が国の制度ですから、我が国として、例えば今経済産業省は特定秘密はないわけですけれども、コンフィデンシャル級の技術的な情報があるという前提でこれを運用するというふうに理解をしております。

○塩川委員 ありがとうございます。

 その点について、どうでしょうか、齋藤参考人の方で何か補足することとかございますか。

○齋藤参考人 ありがとうございます。

 先ほども申し上げたんですけれども、コンフィデンシャルで指定された秘密というのは、過去には指定されておりますし、そういう判こを押しているわけですから、急にコンフィデンシャルというものがぱっと消えるわけではないわけです。

 ただ、扱いとしては、やはり、コンフィデンシャルというものを廃止して、ほかのトップシークレット、シークレットの二段階の中でやっていくという方向には間違いなく動いているし、ISOOもそういうふうに勧告しているわけです。

 アメリカの情報を特に入手したいということで制度をつくるのであれば、そして、アメリカのISOOは、イギリスのようなアライアンスを組んでいる国がコンフィデンシャルを廃止しているからアメリカも廃止しなきゃ駄目だよというふうにまさに勧告しているわけですから、ほかの国から情報を取りたいということであれば、やはり日本の秘密制度というのもほかの国に合わせていかないといけない。

 そうであれば、やはりトップシークレット、シークレットという二段階の秘密区分に合わせた法制を作らなければならないのであって、日本だけガラパゴス的にコンフィデンシャル級の法律を作るというのは、私は非常に、何というか、成果がないだろうというふうに思っております。

 ありがとうございます。

○塩川委員 ありがとうございます。

 渡部参考人にお尋ねいたします。

 セキュリティークリアランスについての今回の情報保全体制の必要性について、ちょっと個別の案件ですけれども、今回の法案の意義の一つとして同盟国、同志国との協力関係を強化するものを強調しているわけですが、昨年六月に政府がまとめた宇宙安全保障構想、この中では、同盟国、同志国との各種衛星データの互換性の確保や相互運用性の確保が必要であり、そのためにセキュリティークリアランスを含む情報保全体制が必要だと指摘をしております。

 現状は何が足りないとしているのか、その上で、今回の法案はこのような要請に対応するものとなっているのか、その点について教えていただけないでしょうか。

○渡部参考人 宇宙関係につきましてはニーズがあるということは承知しております。

 現在、宇宙関係、特にスタートアップに日本はかなり力を入れようとしているときに、必ずそこでアメリカとの関係が問題になる。そこの中で、実態的に今の三階級のどこが問題になるのかということはちょっと把握はしておりません。その点については、今後もアメリカとのやり取りを、これはつくってから説明をするでしょうから、その中で処理をしていくということかと思っております。

○塩川委員 これは、コンフィデンシャル級だけで対応するようなスキームというのがあるということなんでしょうか。要するに、トップシークレット、シークレットはかかわらず、コンフィデンシャルにおいて、相互の秘密の情報の共有をするような、そういう共同開発とかいうのがあるというのが想定されているということなんでしょうか。

○渡部参考人 共同開発をどういう形でやっていくのかということについては承知をしておりません。

 今、トップシークレット、シークレットに関しては特定秘密があって、それで、報告書に関しては、仮に別にする場合はシームレスな制度にするという表現になっています。その中でどれぐらいのことができるかということになるかと思います。

○塩川委員 重ねて渡部参考人に伺います。

 有識者会議の議論の中で、第八回のときに、同盟国、同志国との情報保全の仕組みについて、「先ほど他の委員から「合わせ技」で信頼を得ればよいのではないかという話があった点に関し、おそらくアメリカに対してはそれなりの相互のやり取りがあるため、ある種の相場観があると思うが、今後の経済安全保障上の重要機微情報に関しては、アメリカだけではいけないのではないか。例えば、防衛の特定秘密保護法の話になるかとは思うが、GCAPのようなイギリス・イタリアといった国々との関係や、将来的にはAUKUSでのいわゆる新興技術を含めた技術協力だとか、そういったことに広がりが出てくることを考えると、日米間特有の理解が他国に共有されるかどうかということは考えておくべきだと思う。」と。

 アメリカとの間では、いろいろ、この間、積み重ねもずっとある。しかし、イギリスとかイタリアとかオーストラリアの場合では違うんじゃないのかと。そういった場合に、現行、アメリカとの関係と、それ以外のイギリス、イタリア、オーストラリアのような国々との間には、クリアランスの対応が異なっているものなんでしょうか。今回の法案は、このような多国間の共同開発の障害を除くものとなっているということなんでしょうか。

○渡部参考人 御質問ありがとうございます。

 この手の制度は、例えば特許非公開の制度をつくったときに、これは当然アメリカも、いろいろな国にあるわけでございますが、じゃ、どういう運用をしていてどういう形でそれは連携していけるのかということについては、制度がないとまず話をできないという状態でございました。

 そういう意味で、先ほど申しましたように、アメリカと比べると少し変わった形の制度をつくったわけですけれども、今まさにそういうコミュニケーションが取れる状態にはなってきたというふうに理解をしています。

 今回の場合も、先ほど申しましたけれども、ほぼ、ほかのG7の各国で制度を持っているわけでありますが、日本にはない。前提として、民間に広く提供されるような形では制度を持っていないわけですから。それを今回、初めてつくる。先ほど申しましたように、制度をつくればすぐシステムが機能するというものではないと考えています。逆に言うと、一遍に大量に、例えばアメリカは四百万人ですけれども、拡大するということは現実的にはできないし、あり得ないと考えています。

 そういう意味で、ステップを踏んで、今のようなことが現実にどういうふうにできるのかということを検討していくということが現実的だと思います。

 ほかの国についてはもっとよく分かりません、残念ながら。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。