【内閣委員会】人事院の申出/給与減額ありきを批判

 人事院が8月10日に出した「定年延長に関する意見の申出」について質問。「意見の申出」は、国家公務員の定年を65歳まで段階的に引き上げ、60歳を超える国家公務員の年間給与を60歳前の7割の水準にするのが適当としています。

 給与水準を7割に引き下げる根拠をただすと、一宮なほみ人事院総裁は「厚生労働省の賃金調査と人事院の民間給与実態調査を用いた」と答弁。

 わたしは厚労省調査の対象は、いったん雇用契約が切られる再雇用が8割を占めている。定年延長後の給与の比較対象に使うのはふさわしくないと批判。

 また、人事院の民間給与実態調査で60歳を超える従業員の年間給与水準平均を60歳前の7割としていることについて、定年を61歳以上に引き上げている事業所のうち、給与減額を行っている事業所のみを選んで比較している。

 人事院は「その通り」と認めました。

 人事院の調査でも定年延長後も給与を下げていない事業所の割合は6~7割ある。給与引き下げありきの議論を批判しました。

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「議事録」

<第197通常国会 2018年11月14日 内閣委員会 3号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、定年延長に関連して、宮腰大臣、そして人事院総裁にお尋ねいたします。
 最初に、人事院総裁に定年延長に関する意見の申出についてお尋ねをいたします。
 人事院は、国家公務員の定年を段階的に六十五歳に引き上げるという意見の申出を行いました。「六十歳を超える職員の年間給与は、六十歳前の七割の水準に設定することが適当」としていますが、その根拠は何か、御説明ください。

○一宮政府特別補佐人 国家公務員の給与は、社会一般の情勢に適応するように変更することとされております。
 民間企業の六十歳を超える従業員の給与の状況を厚生労働省の賃金構造基本統計調査で見ますと、公務の行政職俸給表(一)の適用を受ける常勤職員と類似する管理・事務・技術労働者のフルタイム、正社員の六十歳代前半層の年間給与は、五十歳代後半層と比較して七割程度となっております。
 また、本院が本年実施した職種別民間給与実態調査においても、定年を六十歳から六十一歳以上に引き上げている事業所のうち六十歳時点で従業員の給与の減額を行っている事業所における六十歳を超える従業員の年間給与水準を見ますと、平均で六十歳前の七割台となっております。
 これらの民間企業における高齢層従業員の給与の状況を踏まえ、定年引上げ後の六十歳超職員の年間給与は、当面、六十歳前の七割の水準に設定することが適当であると判断したところでございます。

○塩川委員 厚生労働省と人事院の調査を踏まえて七割程度としたということですが、ただ、その中身をきちっと見ておく必要があると思います。
 最初に、厚生労働省の賃金構造基本統計調査ですけれども、これは定年延長の話なんですけれども、この賃金構造基本統計調査というのは再雇用も含んでいる数字ではありませんか。

○一宮政府特別補佐人 おっしゃるとおり、先ほど申し上げた賃金構造基本統計調査の数値には、再雇用者も正社員であれば含まれることとなります。
 一方、定年が六十歳を超える事業所等の割合は低く、多くの民間企業においては再雇用制度により対応しているということを踏まえますと、現時点では、定年を引き上げた企業の状況だけでなく、再雇用の従業員も含む正社員全体の給与水準を参考に六十歳超の職員の給与水準を設定することが適当と考えております。

○塩川委員 再雇用なわけですから、一度切れているわけですよ。定年延長の話じゃないんですよね。
 こういった賃金構造基本統計調査では、六十五歳までの定年延長が一七%、定年がないのが二%とか、再雇用が八割とかになっているということですけれども、今言ったように、八割が再雇用の例ですから、これを定年延長の話の資料で挙げるというのは妥当なものとは言えない、定年延長の給与について比較するのにふさわしくないんじゃないかと思うんですが、人事院総裁、いかがですか。

○一宮政府特別補佐人 先ほども申し上げましたように、定年が六十歳を超える事業所等の割合が低く、多くの民間企業において再雇用制度によって対応しているということを踏まえると、現時点では、定年を引き上げた企業の状況だけでなく、再雇用の従業員も含む正社員全体の給与水準を参考に六十歳超の職員の給与水準を設定することが適当であると考えたところでございます。

○塩川委員 定年延長の議論の際の資料としてやっているわけですから、再雇用の話を持ち出せるんだったら、では、今の再任用の話と比較するような話じゃないですか。公務における再任用と比較するのであればまだしも、公務の定年延長の話なんですよ。そういう際に、民間はどうかといったときに、再雇用を含むような、それが八割を占めるようなこういった資料をもとに議論するというのは、これはそもそも定年延長の数字として妥当なものではないということははっきりしていると思います。
 もう一つ挙げている人事院が実施をした職種別の民間給与実態調査ですけれども、これは、「定年を六十歳から六十一歳以上に引き上げている事業所のうち六十歳時点で従業員の給与の減額を行っている事業所における六十歳を超える従業員の年間給与水準について見ると、平均で六十歳前の七割台となっている。」ということなんですが、ここで説明があったように、定年延長をしている事業所のうち六十歳時点で給与を減額している事業所だけをとって比較をしているわけですよね。そういうことですよね。

○森永政府参考人 お答えいたします。
 先ほど委員が述べられました意見の申出の根拠につきましては、おっしゃるとおり、減額をしている企業の数字の平均値でございます。

○塩川委員 そうすると、定年を六十歳から引き上げた事業所において、給与減額ありの事業所の割合と給与減額なしという事業所の割合はどういうふうになっていますか。

○森永政府参考人 お答えいたします。
 定年を六十歳から引き上げた事業所において一定年齢到達を理由に給与減額を行った事業所の割合は、課長級で三七・五%、非管理職で三二・三%となってございまして、給与減額を行っていない事業所の割合は、課長級で六二・五%、非管理職で六七・七%となってございます。

○塩川委員 つまり、人事院の調査でも、定年延長をしている民間事業所を調べた場合に、給与減額を行っている事業所というのが三割から四割と少数なんですよね。一方、六割、七割を占める給与減額なしのそういった事業所については、これは比較の対象から外しちゃっているわけですよ。
 減らす方のところだけ取り出して、六割、七割を占める多数の給与減額なしという事業所との比較は脇に置いてしまっている。これはおかしいんじゃないですか。いかがですか。

○一宮政府特別補佐人 定年が六十歳を超える事業所等の割合は一三・〇%であり、多くの民間企業はいまだ再雇用制度により対応しているということも踏まえますと、定年が六十歳を超える事業所等の状況のみを参考に六十歳を超える職員の給与水準を設定することは適当ではないと考えております。
 他方、六十歳を超えて引き続き同一の職務を担う場合は、本来、給与水準が維持されることが望ましいこと等から、六十歳を超える職員の給与水準の設定につきましては、当分の間の措置として位置づけております。
 今後、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況等を踏まえ、六十歳前の職員の給与カーブも含めてそのあり方を引き続き検討することとしたいと考えております。

○塩川委員 給与カーブの話で、中高年を引き下げて何となくならすような話というのは、これは受け入れられない話なわけです。
 当分の間の措置と言いますけれども、当分の間というので未来永劫やっているような制度なんて山ほどあるわけですから、当分の間なんという言葉でこれはあたかも時限であるかのように言われるというのは、こんなのは是認することができないわけであります。
 意見の申出の中でも、「六十歳を超えても引き続き同一の職務を担うのであれば、本来は、六十歳前後で給与水準が維持されることが望ましい。」と言っているわけじゃないですか。だから、当分の間という形で、これがずっと続くわけじゃないかのように言うんだけれども、当分の間はずっと続く制度になっているところも多々あるので、これで引き合いに出してほしくはないんですけれども。
 ここに言っているように、「六十歳を超えても引き続き同一の職務を担うのであれば、本来は、六十歳前後で給与水準が維持されることが望ましい。」これはもっともな話だと思うんですけれども、そうですよね。ここの立場でやるということが、本来、基本じゃないですか。

○森永政府参考人 国家公務員の給与につきましては、国家公務員法により、社会一般の情勢に適応するようにと、情勢適応の原則を定めておりまして、民間の動向等を踏まえて適切に設定していく必要があるということでございまして、給与に対する国民の御理解でございますとか、納税者の、税金の使い道としての国民の目等もいろいろ考慮しまして、現時点では、意見の申出のように、当分の間の措置として七割の水準を設定した上で、今後の民間の動向をしっかりと把握して、今後必要な見直しを進めてまいりたい、そういうふうに考えてございます。

○塩川委員 いやいや、だから、比較の対象としておかしいんじゃないですかということをただしているわけで、厚労省の場合でいえば、定年延長の議論のはずなのに、再雇用が八割というデータをもとに比較する、それで七割ですよと言われても、これは納得いく話ではありませんし、人事院の調査でいえば、定年延長をしている民間事業所のうち給与を減額しているところだけを取り出して七割程度ですと。
 つまり、下げるということありきでの議論になっている。そこがおかしいんじゃないですか。そう思いませんか。

○森永政府参考人 先ほど総裁からも御答弁いたしましたけれども、定年が六十歳を超える事業所等の割合は一三%にとどまってございまして、多くの民間企業はいまだ再雇用制度により対応しているということも踏まえますと、定年が六十歳を超える事業所等の状況のみを参考に、六十歳を超える職員の給与水準設定をすることは適当でないと考えているところでございます。

○塩川委員 そこは慎重に考えないといけないと思いますよ。だって、官の方がそういうふうに決めたら、民間がそれに学ぶという話になっちゃうじゃないですか。こういった形で、一方的にこういう数字を決めるようなことというのを、減額ありきの議論ということは絶対おかしいんですよ。
 それって、人事院のそもそもこの検討そのものが、政府からの要請を受けてのものですよね。政府の公務員の定年の引上げに関する検討会、この論点整理の中で、「六十歳以上の職員の給与水準については六十歳時に比し一定程度引き下げることが適当」だと。要するに、そもそも、引き下げてくれということを踏まえた検討になっているからじゃないですか。

○一宮政府特別補佐人 確かに、政府の方からの要請はございました。しかしながら、人事院といたしましては、平成二十三年に既に意見の申出をしておりまして、そのときも同様の意見の申出になっております。

○塩川委員 政府全体として、人件費の抑制方針を持っているということが大前提にあるわけです。
 宮腰大臣にお尋ねをいたしますけれども、率直に言って、給与引下げありきじゃないのかということが問われている。今申し上げましたように、政府の公務員の定年の引上げに関する検討会論点整理で、「六十歳以上の職員の給与水準については六十歳時に比し一定程度引き下げることが適当」としている。こういうことを前提に給与引下げありきで進めるようなことというのは、絶対認めることができない。その大もとにある総人件費抑制方針そのものをもうやめるときじゃないのか。担当大臣として、そのことについてお答えをいただきたい。

○牧原委員長 宮腰大臣、申合せの時間が来ておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

○宮腰国務大臣 お答え申し上げます。
 本年二月の論点整理におきましては、これは、公務員の定年の引上げに関する検討会の中で種々検討されてきた、その論点の整理を出したものでございます。
 御指摘のとおり、「給与制度については、人事院勧告事項であるという前提の下、国民の理解を得るためには、民間給与水準との均衡の確保及び総人件費の増加の抑制の必要性を踏まえたものとする必要がある。」ということ、「こうした基本的な考え方の下、」「六十歳以上の職員の給与水準については六十歳時に比し一定程度引き下げることが適当ではないか」という論点をお示しした上で、同日、二月十六日付で人事院に検討を要請したところであります。
 本年八月の人事院の意見の申出におきましては、六十歳を超える職員の給与について、第三者機関である人事院において、専門的な見地から判断されたものというふうに認識をいたしております。

○塩川委員 七割、削減前提で話を進めるというのは断固反対であります。総人件費抑制方針の撤回を求めて、質問を終わります。