【内閣委員会】国家公務員減らすな/地方機関の業務に支障

 国家公務員を削減する「定員合理化計画」(2015~19年度)が地方機関の業務遂行上の重大な支障の要因になっている。計画の中止を求めました。

 人事院の年次報告(15年度)が若年層職員の減少で技能などが世代間で継承されないなど「業務遂行上の重大な支障」が生じている。要因を質問。

 人事院は「政府の総人件費抑制方針のもと、継続的な定員削減や新規採用抑制の取り組みが進められてきた影響」だと認めました。

 総務省地方総合通信局では50歳超が年齢構成の中心となり「電波の秩序が危ない」(国公労連『公務員酷書』)と言う実態。人事院の指摘への認識をただした。

 宮腰光寛国家公務員制度担当相は「指摘は理解できる」と述べる一方、「適切に定員を配置する」と繰り返し、具体策を示しませんでした。

 定員合理化計画のもとで、現場では長時間過密労働や非正規・不安定雇用、健康被害が増大している。国家公務員の定年延長や障害者雇用を阻む要因となりかねない。定員管理を柔軟に運用し、必要な要員を確保する仕組みに改めるよう求めました。

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「議事録」
【質疑】

<第197通常国会 2018年11月16日 内閣委員会 4号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、総人件費抑制方針に関連して質問をいたします。
 最初に、人事院にお尋ねをいたします。
 平成二十七年の人事院の年次報告を見ますと、各府省の職員の在籍状況は、従前に比べて、特に地方機関において若年層の職員が極端に少なくなっている実態があるとし、そのため、業務遂行上の重大な支障が生じていると述べております。
 そこで、どのような業務遂行上の重大な支障が生じているのか、この点について人事院にお聞きします。

○松尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘の記述は、平成二十七年度年次報告書において、特別テーマといたしまして、「在職状況(年齢別人員構成)の変化と人事管理への影響」、こういうことを取り上げる中で言及をしているものでございます。
 この報告に当たりましては、各省の人事担当部局に聞き取り調査を行いました。この調査の中では、若年層が極端に少ないことによりまして、将来、地方機関の管理職となる職員が年齢や勤務年数に応じた必要な業務経験を十分に積めないなどの人事管理上の課題が生じていることが指摘されるとともに、組織として蓄積すべき技術やノウハウが世代間で円滑に継承されなくなるという業務遂行上の支障が生じてきているとの声があったところでございます。

○塩川委員 今、話にありましたように、若年層が非常に少ないという中で、組織に蓄積されるべき技能やノウハウが継承されないなどの重大な支障が生じていると指摘をしています。
 宮腰大臣にその点お聞きしたいんですけれども、地方機関の若年層が極端に少ない実態によって業務遂行上の重大な支障が生じているという人事院の指摘については、大臣としてはどのように受けとめておられますか。

○宮腰国務大臣 人事院が平成二十七年度年次報告におきまして在職状況の変化と人事管理への影響を取り上げていることについては、承知をいたしております。
 職員の年齢構成は省庁、組織によりさまざまであると思いますけれども、行政課題が複雑高度化する中、年齢構成の偏りについては、それぞれの省庁において、業務改革の推進、経験者採用試験による中途採用や再任用の活用、職員の配置の見直し、働き方改革の推進などを行うことにより、工夫して対応されているものというふうに考えております。

○塩川委員 どう工夫するかというのはまた別の話で、そもそも、現状が重大な支障を生じているということについてはどうお考えですか。

○宮腰国務大臣 それぞれの省庁の出先機関によっては、確かに、若い方々が極端に少なくて、ここ十年で定年をお迎えになる方々がぐっと多いという出先があるということはよくわかっております。これではやはり将来的に心配であるという委員の御指摘もよく理解できます。
 当面は工夫をしながらやっていただくということになろうとは思いますけれども、長期的な課題としては、しっかりと受けとめて対応していく必要があるのではないかというふうに考えております。

○塩川委員 将来心配という指摘については理解できるというお話での現状認識を伺いました。
 国家公務員の労働組合でありますと、国公労連が公務員酷書、ひどいという酷の方ですけれども、まとめておりまして、深刻な実態を告発しておられます。
 例えば、総務省の地方総合通信局ですけれども、仕事は、今、携帯、インターネットが現代社会で普及、不可欠となり、新しい技術開発で、いつでも、どこでも、誰とでもといった通信可能な時代が進みながら、一方で、複雑な要因で、電波とか交信障害とか、発生が増加をしています。これに対処するのがこの地方総合通信局の皆さんの仕事ですけれども、現状は、これらの事態に対処する職員の年齢構成が、五十歳を超える人がほとんど中心となっていて、十年後には職員の半数、二十年後には八割の職員が退職する、こういうような人員構成の中で、貴重なノウハウを次世代に継承できず、電波の秩序が危ないと訴えておられます。このような実態に目を向けるべきであります。
 人事院にお聞きします。
 このような業務遂行上の重大な支障が生じている要因は何か、年次報告ではどのように指摘をしておられますか。

○松尾政府参考人 先ほど言及させていただきました平成二十七年度年次報告書の特別テーマにおきましては、地方機関において若年層が大幅に減少している背景として、継続的な定員削減や新規採用抑制の取組が進められてきたことが影響している旨、言及しておるところでございます。

○塩川委員 継続的な定員削減や新規採用抑制の取組が進められてきた結果だと。
 政府の総人件費抑制方針のもと、こういうことを行ってきたという指摘が年次報告の中にもあるところであります。宮腰大臣は、この点はいかがでしょうか。

○宮腰国務大臣 国の行政機関におきましては、現下の厳しい財政事情に鑑み、不断の業務の見直しを進め、定員合理化を図る一方で、必要なところにはしっかりと定員を配置し、政府の重要課題に機動的かつ柔軟に対応できる体制の構築を図ってきたところであります。
 いずれにせよ、年齢構成の偏りについては、それぞれの省庁において、業務改革の推進、経験者採用試験による中途採用や再任用の活用、職員の配置の見直し、働き方改革の推進などを行うことにより、現在、工夫して対応されているものというふうに理解をいたしております。

○塩川委員 必要なところはしっかり配置するといいながら、この間でいえば、今言ったような年齢構成の偏りの中で、技能、ノウハウの継承も困難という深刻な業務遂行上の重大な支障が生じているという指摘があって、そこの点は大臣もお認めになったわけですよね。その要因が、総人件費抑制方針のもとの継続的な定員削減や新規抑制方針があるということはお認めになりませんか。

○宮腰国務大臣 人事院の年次報告におきまして、地方機関において若年層が大幅に減少している背景として、今ほど委員御指摘の、継続的な定員削減あるいは新規採用抑制が原因となっているという御指摘をいただいているということについては承知をいたしております。

○塩川委員 そこのところをはっきりとさせるということが、今、今後の施策において極めて重要だということであります。政府の総人件費抑制方針が行政組織のゆがみをつくり出しているということは明らかだ、このことを踏まえた対策こそ求められているということです。
 もう一つ、二つ目の事例で取り上げたいのが定年延長の問題なんですが、人事院の定年延長に関する意見の申出の中では、「定年を引き上げる年度においては定年退職者が生じないこととなるため、定員が一定であれば、その翌年度の新規採用者数が大幅に減少することとなる。こうした事態を緩和し、定年の引上げ期間中も真に必要な規模の新規採用を計画的に継続していくことができるような措置を適切に講ずる。」ということがあります。
 これは、政府の公務員の定年の引上げに関する検討会論点整理でも同様の指摘になっているわけですが、ちょっと時間の関係もありますので大臣にお尋ねしますけれども、定年の引上げの際に、やはり定員管理上問題が出てくる。定年を引き上げたその年というのは、翌年度の新規採用を大幅に抑えざるを得なくなるという指摘があるわけで、このようなときに、真に必要な規模の新規採用を継続していくことが必要だ、こういう点について、政府として、大臣として、どのように考えておられるか、お聞きします。

○宮腰国務大臣 本年二月に取りまとめました論点整理におきまして、定年引上げを行う場合、定員が一定であれば、その翌年度の採用者数を大幅に減少せざるを得なくなりますが、その上で、今後の少子化の進展や行政課題の複雑高度化への対応を踏まえますと、継続的な組織運営に支障が出ないようにする必要があることから、真に必要な規模の新規採用を計画的に継続していくことが必要であるとしていたところであります。
 国家公務員の定年の引上げにつきましては、現在、人事院の意見の申出も踏まえつつ検討を行っているところでありまして、真に必要な規模の新規採用の継続のあり方も含め、政府としてさらなる検討を行ってまいりたいと考えております。

○塩川委員 定年延長という観点でも、総人件費抑制方針、そのもとでの定員削減、定員合理化計画の見直しが必要だと言わざるを得ません。
 三点目に指摘をしたいのが、障害者雇用の問題であります。
 この間報道されておりますように、国家公務員における障害者雇用の水増し問題が大問題となりました。障害者手帳や医師の診断書を確認しないという形で計上するとか、退職者を含めていたような事例ですとか、眼鏡をかけていて視力が弱いというだけでカウントするような、そういう実態があった、極めて重大な事態であります。
 大臣に伺いますけれども、やはり、こういう水増しの背景にも定員合理化計画があるんじゃないのか、このことを問われているんですけれども、どう受けとめておられますか。

○宮腰国務大臣 今後、各府省において、障害者採用計画に基づき、本格的に採用が行われることになると承知をいたしております。
 常勤での採用に当たって定員措置が必要となる場合には、障害者の方々に安定的な雇用環境を提供する観点から、公務部門における障害者雇用に関する基本方針に基づきまして、適切に措置してまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 基本方針に、適切に措置するというのはそのとおりなんですけれども、その前提として、何でこんな水増しが起こったのかといった際にも、やはり各府省における定員管理の中で、全体の定員削減、定員合理化計画のもとでこういった水増しにつながっているんじゃないのか。その点については率直に、どのように受けとめておられますか。

○宮腰国務大臣 障害者雇用の問題と今の定員管理の問題とは、直接的にはリンクしていないのではないかというふうに考えております。

○塩川委員 そこは極めて検証が必要なところだと思っております。しっかりとこの実態を踏まえて、原因究明の問題は各府省においてしっかり行うと同時に、内閣人事局、内閣官房としても行うべき課題だということは申し上げておきます。
 その上で、やはり、しっかりと受け入れる体制をどう整えていくかという問題ですが、今大臣が御答弁になりましたように、基本方針では「施策の推進に必要となる定員及び予算については適切に措置するものとする。」とありますけれども、これは具体的にどうするのか、そこがまさに問われているんですが、その点はいかがですか。

○宮腰国務大臣 基本方針の中で、「公務員の任用面での対応等」「定員・予算措置」というところで、「上記施策の推進に必要となる定員及び予算については適切に措置するものとする。」というふうに明記をしておりまして、これ以上でもこれ以下でもありません。

○塩川委員 これは、でも、今年度と来年度で行うという話なわけですよね。そういったときに、常勤雇用、もちろん非常勤という話もあるでしょう。だから、常勤でしっかりと雇用するということを求めていくときに、現状の定員管理の中で、欠員だけでは当然のみ込めないような話が出てくるわけですよ。そういった場合なんかについても、しっかりと、今年度と来年度で四千人、政府が言っているわけですから、どうするのかといったときに工夫が必要だと思うんですが、その点、改めていかがですか。

○宮腰国務大臣 定員の問題につきましては、先ほども申し上げたように、常勤での採用に当たって定員措置が必要となる場合には、障害者の方々に安定的な雇用環境を提供する観点から、この基本方針に基づき適切に措置をしていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 この点、実際に、本当に障害者の雇用につながるというあり方として、具体化を求めていきたいと思っています。定員削減や定員合理化計画が障害者雇用の拡大を阻むことになってはならないわけで、そういった点でも、総人件費抑制方針を見直すということを求めていくものです。
 大臣に伺いますが、きょうやりとりしましたように、蓄積されるべき技能やノウハウが継承できない地方機関の実態や、定年延長、障害者雇用など、いずれも定員削減の定員合理化計画によって改善策がとれなくなる、こういう事態になっています。
 今、頻発する自然災害への対処ですとか、ブラック企業を監督する労働行政など、公務に対する国民の期待、要求が高まっております。それなのに、定員削減によって長時間過密労働が強いられ、職場の非正規、不安定雇用が増大をし、国民のニーズに応えることができないという事態にあります。
 大臣に問いますが、このような定員削減を押しつけてきた定員合理化計画は中止をすべきであります。また、二〇二〇年からの次期定員合理化計画はもう策定するべきではないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○宮腰国務大臣 国の行政機関の機構・定員管理に関する方針、これは平成二十六年の七月の閣議決定でありますけれども、この方針に基づきまして、平成二十七年度以降、行政機関全体で計画的に定員合理化に取り組んでいるところであります。
 この計画的な合理化の取組は、既存業務の見直しを進めることによって生まれた原資を活用し、新たな行政課題に対して必要な増員を行うものであります。
 現下の厳しい財政事情に鑑み、不断の業務の見直しを進める一方で、必要なところにはしっかりと定員を配置し、政府の重要課題に機動的かつ柔軟に対処できる体制の構築を図ることが基本であると考えておりますので、引き続き、現場の実情を始め、政策課題を丁寧に伺いながら定員管理を行ってまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 必要なところにしっかり人を配置するという話なんですが、もともとこの定員合理化計画は、今、平成二十七年から三十一年、この五年間が回っているところです。毎年二%、五年間で一〇%以上合理化するというのが定員合理化計画で、この間でいえば、ずっと純減が前提で行われてきているわけですよね。実際に減らされてきているという経緯もあったわけです。
 めり張りをつけるということで言われていますけれども、新規業務で増員要求を行った場合でも、既存業務の人員は削られ続けるわけです。既存業務の仕事というのが、減るどころかふえているような場合だって当然あるわけで、既存業務の人員が削られて、長時間労働が強いられ、健康被害が増加をしているという実態もあるわけですから。
 私は、こういった定員合理化計画をやり続けるのはそもそも無理なんだ、きっぱりとこれはやめようというのが現場の声であり、それでこそ公務公共サービスを国民の皆さんにしっかりと提供していく国家公務員の役割を果たせると思うんですが、改めていかがでしょうか。

○宮腰国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、現下の厳しい財政事情に鑑みまして、不断の業務の見直しを進め、必要なところにはしっかりと定員を配置し、そして万全を期していきたいというふうに考えております。

○塩川委員 定員合理化計画は撤回をし、定員の上限を規制する総定員法は廃止をする、定員管理の柔軟な運用で必要な要員を確保する仕組みに改めるということを求めて、質問を終わります。

 

【反対討論】

<第197通常国会 2018年11月16日 内閣委員会 4号>

○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、国家公務員の一般職の給与法改正案に賛成、特別職の給与法改正案に反対の討論を行います。
 一般職の改正案は、本年八月の人事院勧告どおり、月例給や特別給の引上げ、宿日直手当や初任給調整手当を上げるものです。消費者物価指数の伸びを考慮しても不十分な水準ではありますが、実際に給与を引き上げるものであり、賛成とします。
 特別職の改正案について、我が党は、公務員の給与体系が内閣総理大臣、国務大臣、副大臣、政務官といった幹部職に厚いことから、その引上げに反対してきました。本案も、総理大臣などの特別給を引き上げることとなっており、反対であります。
 この間、給与制度の総合的見直しの実施により、高齢層を中心に一般職職員の給与が引き下げられている中で、総理大臣などの特別給を引き上げるべきではありません。
 また、総理大臣などは、二〇一四年四月以降、組閣のたびに給与の一部返納を申し合わせており、現内閣も申合せを継続しています。本案により特別給を引き上げることは整合性がとれず、一貫性のある措置ではありません。
 なお、特別職のうち秘書官の月例給、特別給を、一般職職員に準じ、引き上げることには賛成であります。
 最後に、政府は、公務員の定年延長に関して、「六十歳以上の職員の給与水準については六十歳時に比し一定程度引き下げることが適当」と論点整理しています。給与引下げありきで進めることは認められません。
 人事院は、地方機関の若年層が極端に少なく、業務遂行上の重大な支障が生じており、その要因は、「政府の総人件費抑制方針の下、」「継続的な定員削減や新規採用抑制の取組が進められてきた結果、」と年次報告書で指摘をしています。
 また、水増しにより問題となっている中央省庁の障害者雇用においても、定員削減、定員合理化計画が雇用拡大を阻む要因となりかねません。
 公務の現場で長時間過密労働、非正規雇用の拡大をもたらし、行政組織のゆがみをつくり出している総定員法、総人件費抑制方針、定員削減、定員合理化計画をやめ、必要な要員を確保する仕組みに改めるべきです。
 以上、討論を終わります。