【倫理選挙特別委員会】期日前投票増加受け/事前運動禁止見直し提起

 公職選挙法の「事前運動禁止」の規定を見直すようただしました。

 制度創設以来、期日前投票が2.3倍に激増し、2017年総選挙では3票に1票が期日前投票になっています。日本の公選法は、公示・告示日から投票日前日までを「選挙運動期間」と定め、期間前の選挙運動を「事前運動」として禁止しています。

 公示・告示日の翌日から投票できる「期日前投票」が増加する現状では、候補者情報が有権者にわたっているとは言えない。事前運動の禁止はもはや必要がないと、見直しを提起。

 石田真敏総務相は、「選挙運動費用を抑制し、無用の競争を避けるため、期間が定められている」などと答弁しました。

 総務省は、諸外国では選挙運動期間や事前運動の規制がないことを答弁。

 わたしは、このような日本の仕組みは異例。戦前の規定をいまだに続けている。国民・有権者も含めて日常的に政治的議論・選挙運動を自由に行うことができるようにすることが大事だ。

 さらに、選挙経費の削減によって投票所数の減少や投票時間の短縮が生じている。期日前投票が増えているからといって当日の投票環境を後退させたままで良いとはならない。選挙経費削減をやめるよう求めました。

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「議事録」

<第197通常国会 2018年11月19日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 3号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、増加をしている期日前投票に関連して幾つか質問したいと思っております。
 公職選挙法の第四十四条では、「選挙人は、選挙の当日、自ら投票所に行き、投票をしなければならない。」とあります。
 大臣にお尋ねいたしますけれども、我が国は投票日当日投票所主義をとっております。例外として、期日前投票制度や不在者投票制度、在外投票制度があるわけです。この考え方について確認をしたいと思います。

○石田国務大臣 期日前投票制度につきましては、不在者投票数の増加に伴いまして、投票用紙を直接投票箱に入れることができないこと、投票用紙を内封筒及び外封筒に入れなければならないこと、外封筒に署名しなければならないことに改善を求める声が大きくなっていたことを踏まえまして、平成十五年に投票日当日における投票の例外として導入されたものと承知をいたしております。

○塩川委員 例外としての期日前投票の話がありましたが、投票日にみずから投票所に行って投票する、秘密投票の原則を貫き、選挙の公正を保たんとするのがもともとの投票日当日投票所主義であります。
 最近の選挙を見ると、期日前投票が激増しております。九月の沖縄知事選挙を見ると、大型台風の影響もあり、投票日の繰上げを行うような自治体もあったわけですけれども、期日前投票者が当日の投票者数を上回る、有権者の三人に一人、投票者のうち五六%が期日前投票を行っておりました。
 総務省の方に確認しますが、この期日前投票制度創設後の二〇〇五年総選挙の小選挙区と二〇一七年総選挙の小選挙区における投票者数、期日前投票者数、総投票者数に占める期日前投票者の割合を示してください。

○大泉政府参考人 お答え申し上げます。
 期日前投票制度導入直後の国政選挙でございました平成十七年、二〇〇五年の衆議院議員総選挙における投票者数は約六千九百五十三万人、期日前投票者数は約八百九十六万人となっておりまして、投票者数に占める期日前投票者数の割合は約一二・九%でございました。
 直近の国政選挙である平成二十九年、二〇一七年の衆議院総選挙におきましては、投票者数は約五千六百九十五万人、期日前投票者数は約二千百三十八万人となっており、投票者数に占める期日前投票者数の割合は約三七・五%でございました。

○塩川委員 ですから、昨年の総選挙も、四割近くが投票者のうちに占める期日前投票となっております。十年余りで二・三倍になっております。先ほど言ったように、昨年の総選挙は、台風の影響があったとはいえ、投票のうち三票に一票が期日前投票で行われているということです。
 大臣にお尋ねしますが、このように期日前投票者が増加をしている理由は何なのかという点です。

○石田国務大臣 お尋ねの、増加している理由についてでありますけれども、一概には申し上げられないと思いますけれども、平成十六年の参議院通常選挙で導入されて以降、まず、有権者に浸透してきたこと、さらには、最近では人の往来が多く利便性の高い商業施設等への設置も進んでいること、期日前投票時間の弾力的な設定などの制度改正を行ってきたことが考えられるほか、特に昨年十月の衆議院議員総選挙におきましては、期日前投票事由に天災又は悪天候により投票所に到達することが困難であることを追加したこともございまして、台風二十一号の接近や秋雨前線による大雨等の影響なども要因ではなかったかと考えられております。

○塩川委員 有権者に浸透してきている、大型集客施設への設置ですとか、天災、悪天候の場合についての利用の話もありました。ただ、こういった理由だけなのかということが問われているわけです。
 ちょっと数字の確認を総務省にしますけれども、二〇〇五年と二〇一七年のそれぞれの総選挙小選挙区における当日の投票所数、期日前の投票所数、投票所の経費予算額、期日前投票所経費予算額について確認をしたいと思います。

○大泉政府参考人 お答え申し上げます。
 期日前投票制度導入直後の国政選挙であります平成十七年、二〇〇五年の衆議院総選挙におきまして、投票所数は五万三千二十一カ所、期日前投票所数は四千四百五十一カ所となっておりまして、平成二十九年、二〇一七年の衆議院議員総選挙における投票所数は四万七千七百四十一カ所、期日前投票所数は五千三百四十六カ所となってございます。
 これにかかります予算でございますが、平成十七年、二〇〇五年の衆議院議員総選挙における投票所経費の予算額は約二百三十九億八千万円、期日前投票所経費の予算額は約十七・七億円となっておりまして、平成二十九年、昨年の衆議院議員総選挙における投票所経費の予算額は約百四十六・八億円、期日前投票所の予算額は約三十九・五億円となってございます。

○塩川委員 期日前投票所が二割ぐらいふえて予算も倍以上にふえている点と、一方で当日の投票所数というのが五千カ所、全体の一割減っているんですよね。また、当日の投票所に係る経費についても九十三億円も減って六割になっているわけです。
 ですから、大臣、お聞きしたいんですが、投票日当日投票所主義であるにもかかわらず、その投票日当日の投票所の数も減り、予算も減っているという点がそのままでいいのかということが問われているわけで、そもそも期日前投票の導入の理由は何だったのか、選挙人が自由に投票する日を選択できる複数投票日制を導入したということなのか、その点について確認したいと思います。

○石田国務大臣 現行の選挙制度は、選挙期日の公示又は告示の日に立候補の届出を認め、そして、候補者が選挙運動を行って、選挙人に投票を行うに当たっての情報を提供し、最後に選挙人が投票を行うというその流れを基本としているところでありまして、期日前投票制度の導入は複数投票日制の採用を意味するものではないと考えております。

○塩川委員 投票日当日投票所主義の原則が崩れるような複数投票日制は導入していないということであります。
 期日前投票がふえているから投票日当日の投票所の投票環境を後退させてもよいとはならないわけで、全国一律の国政選挙において投票所の数や投票時間の保障というのは、有権者の投票権の行使、投票機会の公平を確保する上で極めて重要であります。現状は、選挙経費の削減によって投票所数の減少や閉鎖時刻の繰上げに拍車をかけていると言わざるを得ません。
 大臣に重ねてお尋ねしますが、投票環境の向上を言うのであれば、真っ先にすべきは投票所数を減らすんじゃなくてふやすことであり、投票時間、閉鎖時間の繰上げをやめて規定どおりの時間投票所を開くことが必須ではないかと思いますが、御見解を伺わせてください。

○石田国務大臣 先ほども御議論がございましたけれども、投票所数については減少してきていると承知をいたしております。
 投票所の設置につきましては、市町村の選挙管理委員会が地域の実情などを踏まえて決定すべきものでございまして、地域の実情を踏まえて投票所や期日前投票所を設置するほか、かつて投票所があった地域での期日前投票所の設置とか、あるいは移動期日前投票所の取組、あるいは移動困難者に対する支援など、選挙人の投票機会の確保に努めているものと承知をいたしております。
 また、投票所の閉鎖時刻の繰上げ、これにつきましても、市町村の選挙管理委員会の判断で、選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別の事情のある場合などに限り行うことができるとされているわけでございまして、先ほども答弁申し上げましたけれども、例えば、高齢者が多く、大半が午後六時までに投票を済ませ、以降の投票者がほとんどいない場合、あるいは、台風による増水により橋梁が通行不能となるおそれが発生したなどの理由があると伺っております。
 私も、先ほど申し上げましたけれども、閉鎖時刻をむやみに繰り上げることは決して好ましいことではないと考えておりまして、総務省では、選挙の都度、投票所の設置についての積極的な措置、あるいは投票所閉鎖時刻の繰上げへの厳正な対応を各選挙管理委員会に対し要請をしておるところでございます。

○塩川委員 県庁所在地でも閉鎖時刻を繰り上げているような例もあったりするわけですから、こういった事態が生まれている背景というのを、単に自治体の判断だ、選管の判断だとか地域の実情を踏まえてというだけに見るというのは、私は適切ではないと思います。指摘をしたように、投票日当日の投票所を開くための予算そのものがぐっと減ってきているわけですから、そこのところをしっかりと見る必要がある。
 そういう点で、年明けの通常国会には国政選挙の執行経費法案を出すというような話もお聞きするわけで、投票所の経費を更に削るようなことがあってはならないということを指摘をしておくものであります。
 それで、もう一つ考えたいのが、そもそも、期日前投票によって、選挙期間中、告示、公示の直後から投票が可能になるといった場合に、選挙期間が持つ意味は何なのかということが問われてくるわけです。
 我が国の選挙は、選挙期日の公示、告示日に立候補の届出をして、そこから候補者が選挙運動を行って、有権者に投票のための情報を提供し、有権者が投票を行うという制度です。選挙が正当に行われるためにも、有権者に、誰が立候補し、どういう公約を出しているのか、候補者情報がきちんと伝わることが必要です。
 日本国憲法は、国民主権、議会制民主主義の基本理念のもと、主権者たる国民が政治に参加する手段として選挙制度を位置づけています。憲法上の権利行使にとって選挙が重要であることは言うまでもありません。
 しかしながら、公選法が公示、告示日から投票前日までを選挙運動期間と定め、その期間前に選挙運動をすることを事前運動として禁止しているもとで、公示、告示日の翌日から投票できる期日前投票では、候補者情報が有権者に十分に渡っているとは言えない状況になっているのではないのか。しかも、その選挙運動期間もどんどん短くなってきているというのがこの間の経緯であります。
 選挙運動期間の日数というのは、憲法施行後、一九五〇年の公選法制定時には三十日間、衆議院も参議院も、知事、都道府県議もありましたけれども、それぞれ、衆議院は十二、参議院や知事は十七、都道府県議は九日に減り、一般市の長や議員、町村長と議員、二十日間だったものが、一般市では七、町村では五日というふうに大幅に減ってきているわけです。
 ネット選挙運動が解禁されたことで、有権者も主体的に選挙運動にかかわるようになってきた。各政党や候補者が有権者にみずからの政策を訴えるのが、この短い選挙運動の期間の設定で、民主主義の発展にとって本当にふさわしいのかということになってくるわけです。
 大臣に伺いますが、そもそも、選挙運動期間が定められ、事前運動が禁止された理由は何だったのか。

○石田国務大臣 議員御指摘のように、公職選挙法第百二十九条におきまして、選挙運動は、立候補の届出のあった日から当該選挙の期日の前日まででなければすることができないと規定をされております。
 これは、選挙運動の開始の時期を特定することにより、各候補者の選挙運動を可能な限り同時にスタートさせて無用の競争を避けるとともに、選挙運動費用の増加を抑制するために定められたものと承知をいたしております。

○塩川委員 これは、逐条解説などを見ても、いろいろ異論があるわけです、こういった仕組みでいいのかと。だって、戦前から引きずっている制度をそのまま運用しているというのが実態ですから。
 選挙運動をそもそもすべからく自由にすべきだという理念というのは当然あるわけで、例えば、地盤培養行為と選挙運動の差は紙一重で実質的に区別しがたいとかという意見なんかも当然ありますし、こういった反対論があるにもかかわらず、従前どおり禁止しているといった経緯というのは、今言ったように、無用の競争を避けたいという考え方によるものだということにとどまっているわけです。
 選挙運動は、判例により、特定の公職の選挙につき、特定の候補者の当選を目的として投票を得又は得させるために直接又は間接的に必要かつ有利な行為と考えられているわけですが、事前運動の禁止というのは、戦前の規定をそのまま引き継いで、反対論が多いにもかかわらず、括弧つきの公平のためにいまだ続けているものですから、これは諸外国じゃちょっと考えられない仕組みと言わざるを得ません。
 総務省に確認しますけれども、主要国において、こういった選挙運動期間の設定、事前運動の禁止がどうなっているのか、紹介してもらえますか。

○大泉政府参考人 詳細は承知していないところでございますが、国会図書館がまとめた資料によりますと、フランスにおいて、選挙運動の期間の始期、投票日の二十日前から制限があるということでございますが、イギリス、アメリカ、ドイツなど主要国では基本的には制限がないものと承知をしております。

○塩川委員 フランスは選挙運動期間の設定はありますけれども、我が国におけるような事前運動規制の概念というのはそもそもないんですよ。アメリカは州によって選挙運動規制の内容が異なりますけれども、規制がなしということがありますし、イギリス、ドイツも規制がありません。ですから、日本のような仕組みそのものが異例なんです。いわば、国民の参政権、選挙権を大幅に制約をするような、そういう選挙制度のあり方そのものが問われているんじゃないのかということが、今、この期日前投票の問題ともかかわって改めて浮き彫りになっているときではないでしょうか。
 ですから、選挙運動と政治活動を区別をして選挙運動期間を設定をし、事前運動を禁止している国というのは、国際的にもまれな存在であるわけで、本来、選挙運動というのは政治活動の一部でありますから、こういう規定は見直すべきではないのか。
 大臣に伺いますけれども、期日前投票がふえて、候補者の情報が入らないままに投票が行われている実態を見れば、事前運動の禁止はもはや必要ないと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。
    〔委員長退席、宮内委員長代理着席〕

○石田国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、選挙運動期間を定めて事前運動を禁止しているのは、選挙運動の開始の時期を特定することにより、各候補者等の選挙運動を可能な限り同時にスタートさせて無用の競争を避けるとともに、選挙運動費用の増加を抑制しようとするものでございまして、この趣旨は、投票日より前に投票する者が増加している現状においても妥当するものと考えておりますが、いずれにせよ、事前運動の禁止を含めた選挙運動のあり方につきましては、これは選挙制度の根幹にかかわる事柄でございますので、各党各会派において御議論いただくべきものと考えております。

○塩川委員 無用の競争というのは何なのかわからないというのが率直なところであるわけで、主権者国民の代表を選ぶ選挙というのは民主主義の根本、根幹でありますから、公務員の選定、罷免権の行使という憲法上保障された国民主権と議会制民主主義上の原則にかかわる問題であります。
 よく知られているように、我が国の公選法というのは、べからず集と言われているように、いわば、できることはごくごく限定、箇条書きになっているというのが今の実態であります。それ自身が有権者の選挙への参画を大きく狭めることになる。先ほど言ったインターネット選挙の中で、何ができる、できないみたいなこと、参加しようと思う市民の皆さんが戸惑うような選挙制度というのはそもそもおかしいんですよ。
 こういうことこそ今見直すときだという点で、民主主義の発展を考えても、日常的に候補者、政党だけではなく、国民、有権者も含めて、政治的議論、選挙運動を自由に行うことができるようにすることが必要だということを申し上げて、質問を終わります。