【内閣委員会】技能実習/悪徳機関をどう排除するか

 外国人技能実習制度にはびこる悪徳業者の問題を追及しました。

 技能実習では悪徳業者による中間搾取が問題になっています。在ベトナム日本大使館は「ベトナム、そして日本において悪徳ブローカー、悪徳業者、悪徳企業がばっこしており、ベトナムの若者を食い物にしている」「送り出し機関は300以上あります。悪徳機関もあります」と指摘しています。悪徳機関をどう排除するのか質問しました。

 外務省の高橋克彦大臣官房審議官は、悪質な業者については「許認可を行うベトナム政府に情報提供する」「悪質なブローカーに近寄らないよう促す」などと答弁。

 わたしは、情報提供や注意喚起だけで、排除する仕組みがないと批判。

 テレビ番組では、日本で実習生を受け入れる監理団体が送り出し機関からキックバックを受けていたことが告発されました。送り出し機関と結託した監理団体による技能実習生に対する高額手数料の徴収などを排除する仕組みがあるのかとただしました。

 法務省の佐々木聖子大臣官房審議官は、監理団体が技能実習法28条で「監理費以外の手数料や報酬の受け取りを禁止されている」と述べ、「不適正な実態を把握する」と発言。

 実態把握というが失踪実習生への聴取票には監理団体に関する項目がない。聴取票への項目の追加を求めました。

 佐々木審議官は「検討する」と答えました。

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「議事録」

<第197通常国会 2018年11月28日 内閣委員会 7号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、外国人労働者の問題をお尋ねいたします。
 政府としても、入管法の改正案とともに、外国人の受入れや共生のための総合的な対応策をとるところであります。その点で、最初に官房長官にお尋ねをいたします。
 昨日の入管法改正案のああいう強行採決は、余りにもひどいと言わざるを得ません。議運の理事会で重要広範議案として確認していたにもかかわらず、連合審査もやらなければ、総理出席の委員会での質疑も行わない。
 新しい制度では、現行の多数の技能実習生が新しい制度に移行するということも政府は認めているわけであります。このような現在の技能実習生の深刻な労働実態、権利侵害の実態があるときに、新しい制度をそのまま認めるというわけにはいかない。こんなやり方は禍根を残す。
 これで国民の理解が得られると率直にお考えでしょうか。

○菅国務大臣 国会のことは政府の立場で発言することは控えたいというふうに思いますけれども、国会の議論の中で進んできたことだろうと思います。

○塩川委員 国民は、今国会で急ぐ必要はないと。世論調査などを見ても明らかであります。慎重かつ十分な審議を行うべきで、重要事項がほとんど省令以下という政府白紙委任法は認められない。撤回をすることを改めて求めておくものであります。
 実際のこの技能実習生の問題について、外務省、法務省にお尋ねします。
 最初に、在ベトナム日本大使館のホームページですけれども、十月十三日に、日越人材育成交流会イン・ハティンという集まりにおいて、大使館から挨拶を行った、その挨拶の中身がホームページ上でも紹介をされているところです。
 「日越両国の交流の拡大は大変喜ばしい」「しかし、留学・技能実習の急増により問題も生じています。日越関係に影を落とすものです。技能実習生の失踪者数はワースト一位で、全体の半数以上をベトナムが占めています。不法残留者も年々増加しています。そして何よりも、犯罪の増加が問題です。昨年の刑法犯の検挙件数はベトナムがワースト一位」「ベトナムの若者は夢や希望を抱いて訪日しており、決して最初から犯罪をしようと思って日本に行っているのではなく、犯罪をせざるを得ない状況に追い込まれています。多額の借金を抱え、日本に行っても借金が返せず犯罪に走る。ベトナム、そして日本において、悪徳ブローカー、悪徳業者、悪徳企業がばっこしており、ベトナムの若者を食い物にしています。ベトナムの若者の人生をメチャクチャにしています。日本におけるベトナムのイメージ、そしてベトナムにおける日本のイメージが悪化することを懸念しています。本問題は大使館にとって最重要課題の一つです。」
 このように大使館の挨拶があるわけであります。
 この挨拶にある悪質ブローカー、悪徳業者、悪徳企業、この実態について、外務省としてはどんな把握をしておられますか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年の十一月に外国人の技能実習の適正な実施と技能実習生の保護に関する法律が施行され、それに基づき制度の適正化を図っておるところでございます。
 その効果を十分に上げるという観点から、在ベトナム大使館では、不適切なブローカーや企業等の情報収集について、あらゆる手段を挙げて努めているところでございます。

○塩川委員 情報収集しているだけということですか。こういう悪徳ブローカーについて排除する、こういったことについては何かやっているんですか。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 得られた情報、特にベトナム関係者に関しましては、ベトナム政府に情報提供いたします。基本的には許認可等の権限はベトナム政府にございますので、彼らに対して情報提供をして、対応を促すということでございます。

○塩川委員 情報提供だけの話で、じゃ、実際に、悪徳業者がばっこしていると大使館が言っているじゃないですか、そういうばっこしている状況について、単なる情報提供だけでいいのか。
 そもそも、こういう悪徳業者、悪徳ブローカーなどを排除する仕組みはどうなっているのかということが問われているんじゃないですか。それはどうですか。

○高橋政府参考人 そこは委員の御指摘のとおりだと思います。
 先ほど申し上げましたとおり、許認可についてはベトナム政府にございまして、例えばベトナムの労働・傷病兵・社会省のところで、海外派遣を扱う企業というのはベトナム政府の認定を受けております。したがいまして、そういう問題のある業者等について日本政府が情報を得た場合には、ベトナム政府に情報提供して、しかるべき対応をとっていただくということだと思います。
 本件に関しましては、例えば日越首脳会談、外相会談の場でも、適正な対応をすべく協力していこうということで確認をされているところでございます。

○塩川委員 大使館の挨拶の中では、「送出機関は三百以上あります。残念ながら良い会社だけでなく、悪徳機関もあります。」「だまされないでください。」というのを、実習を希望するような人たちに向けてしゃべっているんですよ。悪徳業者がいるということを認めている、そういう挨拶になっているわけなんですよね。
 つまり、そう言って、ベトナムの日本に来たいというそういった方々をだますような業者を排除する仕組みがないということじゃありませんか。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 例えば、ベトナム大使館のホームページを見ますと、ブローカーに注意という形でメッセージを出しております。基本的に、送り出し機関は関与できますけれども、ブローカーは関与できない。一方で、ブローカーをかたって、日本に技能実習で出しますよという業者がいますので、そういう人たちには近寄らないようにしてくださいというメッセージを出しております。
 したがいまして、ブローカー自体はそもそも制度の中にない存在でございますので、こういう形で排除をするということで注意喚起をしているということです。

○塩川委員 いやいや、大使館の挨拶には、送り出し機関が三百以上あります、しかし、その三百以上ある送り出し機関の中には、残念ながら悪徳機関もありますと言っているんですよ。こうはっきり認めているのに、そういうのが排除されないということを前提とされているということじゃないですか。

○高橋政府参考人 個別具体的に何を根拠にして悪徳機関がありますと断定的に大使館が申し上げたかについては、ここで説明する材料を持ち合わせておりませんけれども、一方におきまして、繰り返しになりますが、悪徳であろうという業者の情報が入ったときには、ベトナム政府に情報提供して、しかるべき対応をとっていただくということでございます。

○塩川委員 ですから、こういう形で、送り出し機関等々、悪徳ブローカーを排除する仕組みが現状としてないというのが率直なところで、送り出し国において高額な手数料などを徴収する送り出し機関などブローカー排除の仕組みがないという前提で、やはりそういう実態を踏まえて対策をとらなくちゃいけない。
 ですから、入管法改正案の参考人質疑でも、参考人の方々から、こういう悪徳ブローカーの排除はどうなっているのかということについて、実態としてそういった悪徳ブローカーがはびこっているという参考人からの御意見もいただいたところです。
 現行の技能実習制度で、ブローカー規制について、保証金の徴収とか違約金契約は禁止とされているけれども、ある参考人の方は、ミャンマーに行ったときに送り出し機関からヒアリングをしたら、みんなやっていたという話なんかも紹介をされているわけなんです。
 外務省でも法務省でもいいんですけれども、こういった手数料や保証金以外の名目で多額の費用が取られるといったことはきちっと防げるんですか。

○佐々木政府参考人 ベトナムの例でお問いをいただきましたので、一つ御紹介をしたいと思います。
 ベトナムとの間で二国間取決めを昨年の六月六日に締結いたしたところでございます。その主な目的は、日本側だけでは把握をすることが困難な保証金あるいは不当に高額な手数料を徴収するような不適正な送り出し機関を排除することにございます。
 具体的な内容でございますけれども、その二国間取決めにおいて定めた送り出し機関の認定基準に基づいて、まず、ベトナム側において送り出し機関の認定を行い、日本側は、ベトナム側が認定した送り出し機関からのみ技能実習生を受け入れることとしております。また、逆に、日本側が不適正な送り出し機関があることを認知した場合には、その旨をベトナム側に通知し、ベトナム側において当該送り出し機関に対する調査、指導、送り出し機関の取消しを行うこと等が規定をされているところでございます。
 他方で、ベトナム側が日本側に何らかの不正な行為があるということを認知した場合は、それを御連絡いただいて、日本側として、監理団体などが想定をされますけれども、調査、それから指導、それから許可の取消しを行うことについても規定されておりまして、もともと、ある程度ベトナム側で送り出し機関にマル適マークをつけてもらうという仕組みがこの二国間取決めを通じてできておるところでございます。

○塩川委員 でも、大使館の挨拶の中には、三百以上の送り出し機関があるけれども、悪徳業者もいるという実態を指摘しているわけですから、今のような話では納得いかないわけです。民間の送り出し機関、あっせん仲介業者がかかわっている中で、やはりそういう不届きな例というのは出てくるわけですから。
 そういう意味でも、公的機関がしっかりと送り出し、受入れにかかわる、そういう仕組みというのは考えないんですか。

○佐々木政府参考人 他国におきまして、技能実習生という形ではなくて、外国人材の受入れに関して、二国間の協定に基づいて受入れをしているという制度を承知してございますけれども、私どもの日本におけます技能実習制度、また、今回、新しく創設いたします制度等におきましては、基本的に民間の力で適正化を図っていただく。ただし、制度としては、昨年の十一月から施行されました新しい技能実習法におきまして、ただいま御紹介ありましたような点も含めまして、監理団体の許可制あるいは技能実習計画の認定制、その仕組みの中で公的にといいますか、役所がきちんと管理をする仕組みを盛り込んでいるところでございます。

○塩川委員 そういう不届きな事業者を現行の制度で排除できないというところが、今まさにベトナムの事例なんかでも紹介されているということであります。
 関連して、法務省が失踪技能実習生に行ってきた聴取票についてお尋ねいたします。
 この聴取票を見ますと、月額給与ですとか給与から控除される金額とか労働時間について、送り出し国における説明と実態の両方を聞き取って、その違いについて確認をする、そういう聴取項目があるわけです。実際にその聴取票も私も拝見しましたけれども、送り出し機関に百万円を超える金額を払った事例など、たくさんあるわけです。
 ベトナム国では三千六百USドル以上の保証金はだめよと言っているわけで、実際にはそれを上回るような金額がたくさんあるということが実習生への聴取でも紹介されているわけですけれども、こういった入国前の説明と実際の実態と食い違いがあるといったことをつかんでいるわけなんですが、これを踏まえてどんな対応をしているんですか。

○佐々木政府参考人 具体的に、その聞き取りの内容そのものが端緒になったのか否かということについては、まとめて把握はできませんけれども、御指摘の聴取票に基づく調査によりまして、法令違反等がうかがわれる場合には、まず、地方入国管理局において、監理団体等に対する実態調査を実施することになります。
 ですので、この聴取票のみならず、いろいろな情報、例えば提報などを一般の方からいただく場合もございますし、技能実習生御本人からの申告等もありますので、それに基づいて、何か不正事案がその監理団体あるいは実習実施機関にあるのではないかと地方入国官において考えたときには、実際に現地に赴いて調査をしております。

○塩川委員 聴取票全体の話じゃなくて、この実習実施者等についてということで、入国前の説明と実際の実態と両方聞いているわけですよ。それは、なぜそういった項目で聞いているのかということと、それを、じゃ、何に生かしているのか、そこをもう一回。

○佐々木政府参考人 何に生かしているかという点について申し上げますと、そもそも、その方がきっちりと事前に送り出し機関から、日本に来たらこうこうこういうことになるという説明を受けていないということの一つの端緒になりますので、それをきっかけにして、その監理団体あるいは実習実施機関についての調査に着手をするということでございます。

○塩川委員 ですから、個々の事例をしっかりつかんでいるわけですよね。つまり、送り出し国においてどんな説明を受けていたのか。それは、送り出し機関の問題も、当然そこには浮かび上がってくるわけなんです。同時に、日本に来て、ここには当然、受入れ機関の実施者側の問題もありますし、監理団体もそれにかかわっているかもしれない。私は、この聴取票に監理団体の項目が入っていないのはおかしいというのは前回も指摘をしたわけですが、そういう点でも、聴取票そのものをきちっと国会に提出してほしいというのは、改めて要求するものです。
 昨年の十二月十四日に、法務省とそれから外務省等で、「送出機関との不適切な関係についての注意喚起」という通知が出されました。これは、「ガイアの夜明け」の番組で、送り出し機関から監理団体がキックバックを受けていた、このことが告発をされて、技能実習法の規定に反することなので通知を出したものであります。
 こういったことが行われることが明らかになった場合は、監理団体の許可の取消しを含めた処分がされるということですけれども、現状ではそういう処分の例がないということを伺っているところなんですが、こういうように、送り出し機関と結託した監理団体による技能実習生に対する高額な手数料徴収などを排除する仕組みというのは、どうなるんですか。

○佐々木政府参考人 技能実習法の二十八条によりまして、今御指摘の監理団体は、監理費以外の手数料又は報酬を受けてはならないということが法定をされております。
 先ほど申しましたように、いろいろなことを端緒として、そのことに違反をしているのではないかということの蓋然性が高い監理団体などを把握いたしますので、そのような場合には、詳細な調査を行った上で、許可の取消し等々、厳しく対処をする旨、この先ほど御紹介をいただきました通知でも注意喚起をしたものでございますし、そのように取り組んでいるところでございます。

○塩川委員 ですから、注意喚起だけじゃなくて、こういった送り出し機関と結託した監理団体による実習生に対する高額な手数料徴収、これを排除する。技能実習法の二十八条で書いてあるところではあるわけですけれども、それをどう担保するのかということなんですよ。どうするんですか。

○佐々木政府参考人 委員御指摘の担保という意味で申しますと、いかにやはりその情報を把握するのかというところが鍵になってまいります。
 その意味では、先ほど申しましたように、技能実習生の申告あるいは母国語相談、それから関係機関等からの情報提供、それから、外国人技能実習機構によりまして実地検査を行っておりますので、その検査の場面で把握したこと等、監理団体による技能実習生への不適正な実態を把握することに努めまして、その結果を踏まえまして、さまざま対処をするということでございます。

○塩川委員 技能実習法の二十八条は、実習生保護の観点から、監理団体が、監理事業に関し、技能実習生から、「いかなる名義でも、手数料又は報酬を受けてはならない。」としているわけです。
 ですから、監理団体が実習生から手数料とか報酬を取るということは許されないわけで、そういったことについて、どうつかむのか。実態把握ですとおっしゃるんだけれども、例えばこの聴取票に入っていないわけですよ。実態把握するというんだったら、失踪の実態をつかむという点では、監理団体についてきちっと聞くということはあってしかるべきじゃないですか。これは、聴取票にきちっと実態把握を入れるというのは約束できますか。

○牧原委員長 既に持ち時間が経過しております。答弁を簡潔にお願いします。

○佐々木政府参考人 今般、法務大臣の指示で、大臣政務官をキャップとしました技能実習の適正化のプロジェクトチームがつくられましたので、その中で検討していきます。

○塩川委員 監理団体による多額の保証金徴収を排除する仕組みがないという点は大問題だという点について、官房長官もしっかり受けとめていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。