【内閣委員会】人権侵害部署格上げ/警察法改定案を批判

 警察庁を組織改編して警備局に「警備運用部」を創設する警察法改定案について、国民の人権を侵害する活動を行ってきた警備課を格上げするものだと批判しました。

 他省庁では政令が内部部局の設置を定めているのに対し、警察庁では法改定を必要としているのは、公権力を行使する警察組織だからだ。

 「部」に格上げする警備課の業務として、沖縄辺野古の米軍新基地建設の強行に抗議する住民を排除するための警視庁機動隊投入や、岐阜県警大垣署警備課による風力発電建設に対する住民運動監視など、国民の思想信条の自由、表現・集会の自由を侵害する活動を行ってきたのが警備課だと指摘。警備課の体制を強化する法案に反対を表明しました。

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「議事録」(質疑)

<第198通常国会 2018年03月08日 内閣委員会 4号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 警察法改正案について質問をいたします。
 最初に、山本国家公安委員長にお尋ねをいたします。
 国の機関におきまして、内部部局を改廃する際にどういう措置を行うのかということですが、一九八三年の国家行政組織法改正の際に、国家行政組織法上の行政機関である府、省、庁及び委員会の内部部局として置かれる官房、局及び部は、組織規制の弾力化の観点から、従来法律で定めていたものを政令で定めることとされました。もちろん、国家行政組織法上に警察庁があるわけではないんですけれども、ほかの役所については、部や局についてはこれは法定事項ではないという対応なんですけれども、警察庁はそうなっておりません。
 警察庁については法律で定めることが維持されておりますが、それはなぜでしょうか。

○山本国務大臣 御指摘のとおり、府省の内部部局の設置等については、かつて各省設置法等において定められておりましたけれども、国の行政機関の組織編成の弾力化を図る観点から、昭和五十八年に、政令で規定することとされたものと承知をいたしております。
 そうした中で、警察庁につきましては、第一線において警察活動を行う都道府県警察の指揮監督を行う組織であることに鑑み、内部部局の設置等について国会の判断に委ねることが適当であるというふうに判断されたものと認識をいたしております。

○塩川委員 都道府県県警の指揮監督を行う、こういう観点で国会の関与ということなんですが、それはもう少し解説するとどういうことなんでしょうか。

○中村政府参考人 お答えをいたします。
 警察庁は、捜査等をみずから行うことはございません。ただ、捜査等の警察活動を行う都道府県警察の指揮監督を行う組織、そういうことに鑑みてということでございます。

○塩川委員 いま一つよくわからないんですが、指揮監督を行うから法定事項という、政令事項ではない、その違いがわかるように説明してもらえますか。

○中村政府参考人 失礼いたしました。
 お答え申し上げます。
 警察庁が、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持することを任務といたします警察組織の中央機関であるということでございまして、先ほど申しましたとおり、捜査等をみずから行うことはないものの、捜査等の警察活動を行う、特別の機関であるということから、警察の内部組織の設置、改廃については、従前どおり国会の判断に委ねることが妥当であると判断したというふうに以前も国会で答弁させていただいていると思います。

○塩川委員 いや、過去の答弁はいいんですけれども、要するに、よくわからない。ほかの府省については政令事項にしたのに、法定のままに残しているというのが、特別な機関だからという、そこの理由がもうちょっとわかるように説明してもらえないですか。

○中村政府参考人 捜査等の警察活動というのは、個人の権利と自由にかかわるものでございます、それに影響を与えるものでもございます。そういったことから、そういったことを行う都道府県警察の指揮監督を行うということは、いわば国会の御判断で、民主的統制のもとで、組織については法律で規定をするということになっているものと承知をいたしております。

○塩川委員 そういうことだと思います。個人の権利と自由に影響を与える、そういった警察の活動について、都道府県県警との関係でも、いわば警察庁の権限を警察庁の判断で変更するようなことというのは戒めるべきだ、それはやはり国会の関与が必要だということと、先ほどの大島さんの議論にもありましたように、民主的統制の問題があるわけです。ですから、そういった観点で、やはり国会の関与が必要だ。
 そういう点でいいますと、例えば自衛隊も、シビリアンコントロールの観点から、防衛省設置法や自衛隊法の改正のように、局、部等に相当するようなところについては国会の関与というのが法定されているという組織としてしっかり我々は受けとめて議論をしなければならない。国会の役割が重要だということを指摘したいと思います。
 ですから、山本大臣、伺いますけれども、今やりとりをしましたように、やはり警察庁の内部部局の改廃について法定化しているというのは、公権力である警察組織に対する民主的統制を確保するためだということだと思うんですが、改めてお願いをします。

○山本国務大臣 まさに今、中村官房長からも答弁したとおりでございますし、また、国家公安委員会ということで、警察を監督していく、管理をしていくというような我々の立場でもございますので、今ほどの委員のお話のとおり、民主的な統制がきくような努力をしてまいりたい、このように思っているところでございます。

○塩川委員 その上で、今回の法案についてですけれども、今回の法改正の一つが、警備局に警備運用部を設置するということであります。
 警備運用部は、警衛、警護、警備実施、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態の布告に対処するための計画及びその実施に関する事務をつかさどるということになっております。
 現行の体制は、警備局のもとに警備課が置かれており、法案成立後には、警備課を廃止した上で警備運用部を設置し、警備第一課、警備第二課を置くということを聞いております。
 こういった警備課の活動についてですけれども、警察白書を見ますと、大衆運動への警察の対応について、これらの活動を担っているのは警備課と承知をしておりますが、それでよろしいでしょうか。

○大石政府参考人 御指摘の警察白書第六章第三節第五項に記載されております「大衆運動への警察の対応」につきましては、記載されている警備措置につきましては、警備局警備課が所掌しているものでございます。

○塩川委員 政府は、現行の警備課の業務について、災害時の警備や大規模イベントの警衛、警護、このように取り上げておりますが、もちろん警備課の業務はそれに限定されるものではありません。都道府県警察で集団警備力によって有事即応態勢を保持する常設部隊として設置している機動隊の管理一般の事務をつかさどることも、警備課の業務であります。
 先ほど紹介しました警察白書によれば、大衆運動への警察の対応として、沖縄県辺野古移設工事の抗議行動など反基地運動、毎週金曜日の首相官邸前における抗議行動を始め、大規模な反対集会等の原発再稼働抗議行動、憲法改正等をめぐる抗議行動などを対象に必要な警備措置を講ずるとあります。これらの措置を実施しているのが警備課であります。
 例えば、岐阜県大垣市における風力発電所建設をめぐって、同県警大垣署の警備課長らが事業者の中部電力の子会社シーテックに、反対住民の過去の活動や関係のない市民や法律事務所の実名を挙げて、連携を警戒するよう助言をするとか、学歴や病歴、年齢など計六人の個人情報を漏らしていたといったことも起こっております。
 本改正案は、国民の思想信条の自由や表現の自由、集会の自由などを侵害する、そういったことにかかわってきた警備課を警備運用部へと格上げをし、体制を増員し、警備強化を図るものだということを指摘したい。
 その上で、こういった公権力を行使する警察は、高い規範意識や倫理性が求められるわけであります。

 

「議事録」(反対討論)

<第198通常国会 2018年03月08日 内閣委員会 4号>

○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、警察法改正案に対し、反対の討論を行います。
 本案は、警察庁を組織改編し、警備局警備課を警備運用部に格上げするとともに、中国管区と四国管区を統合し中国四国管区警察局を設置する等の措置を行うものです。
 警備課の業務は、災害時の警備や大規模イベントの警衛、警護だけではありません。機動隊の管理一般の事務をつかさどることも含まれております。
 このもとで、沖縄県辺野古の米軍新基地建設をめぐって、工事を強行する政府に対し抗議する住民を排除するため、警視庁機動隊が投入されています。また、風力発電所建設に対する住民運動を、岐阜県警大垣警察署の警備課長らが過激な集団に仕立て上げ、企業側に情報提供していた事件も起きています。
 警察白書では、大衆運動への必要な警備実施の対象として、沖縄県の状況を示した反基地運動、毎週金曜日の首相官邸前における抗議行動を始めとした原発再稼働抗議行動、憲法改正等をめぐる抗議行動などを挙げています。答弁で、これらを実施しているのが警備課であることを認めました。
 警察法は、責務の遂行に当たって、日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる権限濫用を戒めています。しかし、警備課は、政権の政策に抗議する大衆運動を監視し、必要な警備措置を実施することを事務としており、国民の思想信条の自由や表現の自由、集会の自由を侵害する活動を行ってきました。
 本案は、このような警備課の体制、活動を強化するものであり、反対を申し上げ、討論を終わります。