【本会議】願い逆手に増税強要/子育て支援法改定案

 幼児教育と保育の一部を無償化する「子ども・子育て支援法」改定案が、衆院で審議入りしました。

 国が「子育て世帯を応援する」のに、低所得者ほど負担が重い消費税を「無償化」の財源としている。切実な願いを逆手にとって消費税増税を押し付けることはやめるべきだ。

 安倍首相は「税収が安定している消費税がふさわしい」と固執する姿勢を示しました。

 私は、今回の「無償化」には、保育を根本からゆがめる問題がある。経過措置の5年間は国基準以下の施設でも「無償化」の対象としたのは、国が一定の“お墨付き”を与えることになる。公立をはじめとした認可保育所の整備など保護者が求める「安心・安全の保育」と「無償化」を一体で進めるよう求めました。

 また、私立と違って公立保育所は100%市町村負担で、公立を多く抱える自治体ほど負担増になる。公立の廃止、民営化をいっそう加速させることになる。「無償化」の0~2歳児は一部に限定した問題や「給食費」を実費化する問題があり、公的保育を後退させるもの、保育制度にゆがみが生じ、現場に大きな混乱をもたらす――と追及しました。

 さらに、待機児童問題は深刻だとして、保育士配置基準の緩和、企業主導型保育の拡大などしか進めてきていない。保育士は子どもの成長と発達を援助する専門性が必要とされる仕事だ。待機児童の解消には認可保育所の増設とともに保育士の処遇改善に緊急に取り組むべきだ、と求めました。

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「議事録」

<第198通常国会 2018年03月12日 本会議 11号>

○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、警察法改正案に対し、反対の討論を行います。
 本案は、警察庁を組織改編し、警備局警備課を警備運用部に格上げするとともに、中国管区と四国管区を統合し中国四国管区警察局を設置する等の措置を行うものです。
 警備課の業務は、災害時の警備や大規模イベントの警衛、警護だけではありません。機動隊の管理一般の事務をつかさどることも含まれております。
 このもとで、沖縄県辺野古の米軍新基地建設をめぐって、工事を強行する政府に対し抗議する住民を排除するため、警視庁機動隊が投入されています。また、風力発電所建設に対する住民運動を、岐阜県警大垣警察署の警備課長らが過激な集団に仕立て上げ、企業側に情報提供していた事件も起きています。
 警察白書では、大衆運動への必要な警備実施の対象として、沖縄県の状況を示した反基地運動、毎週金曜日の首相官邸前における抗議行動を始めとした原発再稼働抗議行動、憲法改正等をめぐる抗議行動などを挙げています。答弁で、これらを実施しているのが警備課であることを認めました。
 警察法は、責務の遂行に当たって、日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる権限濫用を戒めています。しかし、警備課は、政権の政策に抗議する大衆運動を監視し、必要な警備措置を実施することを事務としており、国民の思想信条の自由や表現の自由、集会の自由を侵害する活動を行ってきました。
 本案は、このような警備課の体制、活動を強化するものであり、反対を申し上げ、討論を終わります。

○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、子ども・子育て支援法改正案について質問します。(拍手)
 安倍総理は、二〇一七年九月、幼児教育の無償化を一気に進めると打ち出し、その財源に消費税増税分を活用するとして、解散・総選挙の口実としました。
 消費税は、所得が低くなればなるほど負担が重くのしかかる逆進性を持つ税です。私の予算委員会での質問に、総理もそのことを認めました。国が子育て世帯を応援するのに、なぜ逆進性を持つ消費税を財源にしなければならないのですか。
 また、総理は、幼児教育無償化などに加えて、軽減税率を実施することで逆進性を緩和できると答弁しました。
 保育料は、既に所得に応じて段階的になっており、住民税非課税の一人親世帯などの低所得者層では免除されています。幼稚園でも低所得者層には減免制度があります。このような世帯には、消費税増税分が重くのしかかるだけで、今回の無償化による恩恵はありません。これのどこが逆進性を緩和できるというのですか。
 切実な教育、子育ての願いを逆手にとって、消費税増税を国民に押しつけることはやめるべきです。
 今回の無償化措置は、保育の方向性を根本からゆがめる問題が潜んでいます。
 第一に、保育は安心、安全に利用できることが大前提でなければなりません。
 しかし、経過措置期間の五年間、国の基準を下回る施設であっても無償化の対象としています。こうした施設を対象とすることは、保育士が一人もいないような施設であっても、国が保育施設として一定のお墨つきを与えることになるのではありませんか。
 保護者や保育関係者の願いは、公立を始めとした認可保育所を整備し、配置基準や保育士の処遇を改善し、安心、安全の保育をというものです。今回の無償化はこうした方向となるのでしょうか。安心、安全の保育と無償化を一体で進めなければ、保育制度は更にゆがみが生じ、現場に大きな混乱をもたらすことになるではありませんか。
 第二に、市町村負担の問題です。
 私立保育所には国が二分の一補助しますが、公立保育所は一〇〇%市町村負担です。公立を多く抱える市町村ほど負担がふえることになります。このことが、公立保育所の廃止、民営化を一層加速させることになるのではありませんか。
 二〇〇〇年の企業参入解禁以降、政府は、〇四年には公立保育所の運営費に対する国庫負担金を廃止して一般財源化し、〇六年には施設整備費補助金を公立施設には適用しなくしました。これによって、二十年間で公立保育所は三割も減っているのです。
 政府は、公立保育所を減らすという方針なのですか。これでは、自治体が保育に責任を負う公的保育制度を更に後退させるだけではありませんか。
 第三に、無償化の範囲についてです。
 今回、ゼロ―二歳児については一部に限定したのはなぜですか。また、給食費などの保護者負担は残しています。給食は保育の一環であり、公費で負担すべきです。給食費を実費化し、保育の給付から外すことは、公的保育の後退ではありませんか。
 保育施設の現場からは、給食費が実費化される理由を利用者にどう説明するのか、給食費の未納分を施設が立てかえることにならないかなど、強い懸念の声が上がっています。このような現場の声にどう応えるのですか。
 待機児童問題は、ますます深刻な事態です。
 この間の待機児童対策として安倍政権が進めてきたことは、保育士配置基準の緩和、企業主導型保育事業の拡大などの規制緩和策でした。その上、自治体が行っている上乗せ基準を引き下げるよう圧力までかけています。
 企業主導型保育事業は、保育士の一斉退職や定員割れによる閉園、助成金の不正受給など、相次いで問題が発生しています。政府の調査でも約七五%が基準違反となっているにもかかわらず、今後も企業主導型保育事業を保育の受皿としてふやし続けようというのですか。
 待機児童の解消のためには、認可保育所の増設とともに、保育士の処遇改善に緊急に取り組むことが必要です。
 子供が好きで、誇りを持って保育の仕事をしているのが保育士さんたちです。保育士の配置基準は低いままで、ある保育士さんは、自分が六つ子の一歳児を育てる姿を想像してみてほしいと訴えていました。保育の仕事は、子供の育ちを見通し、その成長と発達を援助するという専門性を必要としています。ところが、給与は労働者全体より月額七万円も低い水準で、過密労働や長時間残業となっているのです。
 総理は、保育の専門性をどのように認識していますか。保育士の配置基準の抜本的な改善と大幅な賃上げが必要ではありませんか。答弁を求めます。
 全ての子供が豊かな保育、幼児教育を受けられる体制を整えることと一体に保育、幼児教育の無償化を図ることを求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。
 幼児教育、保育の無償化への消費税財源の活用についてお尋ねがありました。
 消費税は、負担が特定の世代に集中せず、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していることから、社会保障に係る費用を賄うための財源としてふさわしいと考えています。
 幼児教育、保育の無償化については、その財源負担を未来の世代に回すことなく、安定財源を確保した上で進めるため、消費税率引上げの増収分を活用することにしております。
 高所得者優遇施策であるとの御指摘については、低所得者世帯を中心に、先んじて段階的に無償化の範囲を拡大してきており、今回の無償化による公費負担額のみをもって高所得者ほど大きな恩恵を受けるとする御指摘は当たらないと考えています。
 このほか、軽減税率の導入に加え、真に支援が必要な子供たちの高等教育無償化や低年金者への給付等の社会保障の充実策を実施することも総合的に勘案すれば、政策全体として、所得の低い世帯に手厚く、逆進性に十分な緩和策になるものと考えています。
 認可外保育施設を無償化の対象とすることや保育の質の向上についてお尋ねがありました。
 本年十月から実施する幼児教育、保育の無償化に当たっては、待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々についても、負担軽減の観点から無償化の対象とし、指導監督基準を満たさない認可外保育施設が基準を満たすために、五年間の猶予期間を設けることとしています。
 この経過措置期間においても子供の安全が確保されるよう、児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図るとともに、認可施設に移行するための運営費の支援を拡充することとしており、無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上を図っていきます。
 また、幼児教育、保育の無償化とあわせて、待機児童対策や保育士の処遇改善、保育の質の確保、向上なども重要な課題であると認識しており、これらの取組も進めてまいります。
 幼児教育、保育の無償化の財政負担と公立保育所の民営化についてお尋ねがありました。
 幼児教育、保育の無償化の財源については、消費税率引上げに伴い国と地方へ配分される増収分を活用し、国の責任において、必要な地方財源をしっかり確保します。
 さらに、地方負担分については、公立、私立にかかわらず、地方財政計画の歳出に全額計上し、一般財源総額を増額確保した上で、個別団体の地方交付税の算定に当たっても、基準財政需要額に全額算入することとしています。
 また、保育の受皿整備に当たっては、保育の実施責任がある市町村が、公立、私立の役割分担も含め、地域の実情に応じて取り組むことができるよう、国としては市町村を積極的に支援してまいります。
 ゼロ歳から二歳児までの無償化の範囲及び給付費の取扱いについてお尋ねがありました。
 ゼロ歳から二歳児については、待機児童の問題もあることから、まずは、その解消に取り組みつつ、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めることとしました。
 また、保育所等を利用する子供の食材料費については、現行制度において、実費又は保育料の一部として保護者に負担いただいてきたところですが、在宅で子育てをする場合でも生じる費用であること、既に無償化されている義務教育においても実費相当の負担をいただいていることから、その考え方を維持し、低所得者の副食費の免除範囲を拡充した上で、引き続き保護者に御負担をいただくことにいたしました。
 施設や保護者の方々に御理解いただけるよう、行政の責任において、丁寧に周知、説明を行ってまいります。
 企業主導型保育事業についてお尋ねがありました。
 企業主導型保育事業は、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援するとともに、待機児童解消に貢献する重要な事業です。
 制度創設から三年目を迎え、さまざまな問題が生じていることから、現在、有識者から成る検討委員会において改善策の検討を行っていただいており、保育の質の確保や事業の継続性、安定性の観点から、具体策が議論されているものと承知しています。
 こうした検討結果を踏まえ、しっかりと改善を行ってまいります。
 保育士の配置基準と処遇改善についてお尋ねがありました。
 保育士の処遇改善については、政権交代以降、月額三万八千円に加え、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施しており、さらに、ことし四月からは、月額約三千円の処遇改善を実施することとしています。
 あわせて、保育士の勤務環境の改善を図るため、保育業務のICT化や保育士配置基準の改善、業務補助者の雇い上げの支援などに取り組んでいます。
 高い使命感と希望を持って保育の道を選んだ方々が長く働くことができるよう、引き続き支援に努めてまいります。(拍手)