【内閣委員会】長時間・過密労働/実態調査し保育士の処遇改善を

 子ども・子育て支援法改正案の質疑に立ち、保育の質・量の確保のために保育士の処遇改善を求めました。

 保育士の求人数は伸びている一方で、求職者数は減少しており、2019年1月時点で保育士の有効求人倍率が3.64倍(全国平均)にのぼっていることを確認。その背景には全産業平均と比べて約10万円も低い賃金と長時間・過密労働がある。

 研究者らが行った愛知県の実態調査によると、約8割が、朝・昼・夕に加え、持ち帰りの時間外労働を行っていること、約4割で「そもそも残業申請する習慣が職場にない」など多くが時間外労働分の賃金が支払われていない。

 私は、政府は保育士の労働実態を調査しているのかと質問。

 厚生労働省は「保育士に特化したものはない」と答えました。

 実態を把握してこそ適切に対応できる。政府の対策は処遇改善につながっていないと批判しました。

 「保育士の処遇改善を通じて受け皿確保をしていかなければならない」などと答える宮腰光寛少子化対策担当大臣。

 それに対し、私は、政府は保育士の配置基準の引き下げなどで待機児童に対処してきた。長時間・過密労働を深刻にし、かえって保育士確保を困難にしている。このような規制緩和のやり方を是正してこそ保育士の確保につながる――と賃上げや配置基準の見直しによる処遇改善を重ねて求めました。

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「議事録」

<第198通常国会 2018年03月22日 内閣委員会 8号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、保育士の処遇改善についてお尋ねをいたします。
 大臣にまずお尋ねいたします。
 待機児童対策や保育の質の確保を進めるためにも、保育士の抜本的増員と労働条件の改善が必要であります。その点で、保育士不足の現状についてどのように受けとめておられるのか。保育士不足の現状認識について大臣にお尋ねをいたします。

○宮腰国務大臣 保育の受皿整備に伴いまして、全国的に保育士の有効求人倍率が高い水準で推移していると承知をいたしております。
 直近の平成三十一年一月には、保育士の有効求人倍率が、全国で三・六四倍、東京都に限って申し上げれば六・七一倍という状況にあります。
 保育人材の確保を図るため、政府を挙げて処遇や勤務環境の改善などに取り組んでいかなければならないというふうに認識をいたしております。

○塩川委員 今御答弁ありましたように、ことしの一月の有効求人倍率が三・六四倍ということで、東京では六・七一倍と大変高い数字で、これは、平成二十七年の一月の時点での有効求人倍率が二・一八だったものが、今回三・六四という形で、非常に大きくふえているということです。
 その点で、こういった有効求人倍率が高い保育士不足の状況というのは、大都市圏だけの話ではない、全国的にも保育士不足が広がっているのではないかと認識しておりますが、その点についてお答えいただけますか。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 有効求人倍率を見ますと、大都市圏以外の都道府県でも保育士の求人倍率は高くなっておりますので、人材を確保しがたい状況が広がっているものと認識しております。

○塩川委員 大都市圏以外でも広がっている。保育士確保がなかなか困難になっているという状況が全国的にも広がっているということです。
 首都圏でも、東京が六・七一ですけれども、埼玉は四・五九ですし、茨城も四・二五、栃木も三・六四という形で、非常に全体としても高い状況があるわけです。
 全国的にもそういう傾向があらわれているということで、その上でお聞きしたいんですが、求人数は非常に増加をする、その一方で、求職者数というのはどうなっているんでしょうか。

○本多政府参考人 申しわけございません。ちょっと御通告をいただいていなかったものですから、求職者数そのものの数値が今手元にございません。

○塩川委員 有効求人倍率ですから、求人数と求職者数ということで出るわけですけれども。
 有効求人倍率において求人数は大きく伸びているわけですけれども、一方で、求職者数を見ますと、二〇一三年の一月に一万二百五件だったのが、二〇一八年の一月では九千七件ということで、〇・八八倍ということで、求職者数はこの間で減少している。こういう実態にあるということは認識しておられますか。

○本多政府参考人 求人倍率が上昇しておりますので、要因は、求人の増加と、あとは求職の減少があり得るものと認識しております。

○塩川委員 ですから、求人がふえているだけじゃなくて、求職者数が減っているという点が極めて重大だと受けとめざるを得ません。
 その上で、ですから、こういった状況になっている、このような人手不足の要因は何なのか、この点はどのように分析しておられますか。

○本多政府参考人 お答えを申し上げます。
 保育士さんの就職を希望しない理由などを拝見いたしますと、就業時間が希望と合わないですとか、また健康や体力面で不安があるですとか、また、休暇が少ない、とりにくいといった理由が挙げられております。そういったことが人手不足の背景にあるのではないかと考えております。

○塩川委員 就業時間等々労働時間の話もありますし、賃金などについても当然そういった、低賃金などについても人手不足の要因として挙がっているのかどうか、その点はどうでしょうか。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 済みません、先ほどちょっとお答えの中に漏れておりますけれども、賃金が希望と合わないといった理由も挙げられているところでございます。

○塩川委員 人手不足の要因として、賃金が低いことが挙げられます。あわせて、やはり業務負担が多いという中で、長時間労働を強いられるといった労働時間の面の問題もある。
 そういう点で、政府の施策、この後少し議論しますけれども、処遇改善策というのが実際は賃金が中心という点で、こういった労働時間の時短を図る、こういった面も重要だということを人手不足の要因として指摘をしておくものです。
 まず、賃金についてですけれども、保育士の賃金は全産業平均とどれだけのギャップがあるんでしょうか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 厚生労働省が実施します賃金構造基本統計調査によりますと、全産業と保育士の差は、基本給等の決まって支給する給与月額で見ますと、二〇一七年は十・四万円となってございます。

○塩川委員 月に十万円の差があるということですけれども、政府の施策としては、全産業平均と十万円の差があるという保育士の賃金について、保育士の賃金についてどの程度の賃金水準にしていくというつもりなんでしょうか。

○小野田政府参考人 お答えします。
 全産業の賃金も見据えながら処遇改善を図っていくことが重要だと認識してございます。
 保育士の処遇改善につきましては、二〇一三年度以降、月額約三万八千円に加え、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施してきております。さらに、ことし四月からは、月額約三千円の処遇改善をすることにしてございます。

○塩川委員 では、いつまでに全産業平均にたどり着くようなそういう改善を行うのか。そういう目標というのはあるんですか。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 処遇改善につきまして、その目標や具体的な達成時期というのは定めておりませんけれども、他産業の労働者の賃金の状況も見ながら、また、安定的な財源も確保しながら進める必要があると考えております。

○塩川委員 全産業平均との大きな違いがあるのが今の保育士の賃金ですけれども、例えば過去との比較を見ても、縮まっていると本当に言えるのかというのもあるんですが、例えば、厚労省の方からいただいた、保育士の平均賃金の推移を全職種との関係で比較をした年次の推移のグラフをもらったんですが、平成二十二年で全職種と保育士の差が百四十一・八万円なんですけれども、平成二十九年だと百四十九万円というので、平成二十二年と二十九年の比較ではまだ差が開いている。
 もちろん、三十、三十一と来ていますから、その数字の比較をするとまた違うのかもしれませんが、決して詰まっているという状況じゃない。つまり、十年前と比較をした場合に、本当に詰まっているのか。この間、開いてきているのが実態ですから、それが若干埋まってきているだけの話であって、全産業平均とのギャップを埋めるような、そういう大幅な賃上げにないというのが、この実態からも見てとれるわけです。
 そうしますと、先ほどお話ししましたように、求人がふえている一方で求職者数が減っている。これはやはり産業としての保育の魅力に劣るということにもなるわけで、そういったときに、施策として、本気で保育士をふやすというのであれば、ほかの産業を上回って人材を引きつけることができなければならない。ですから、ほかの産業を上回って人材を引きつけることができなければ保育ニーズに見合った保育士の確保は困難じゃないかと思うんですが、その点での認識はいかがですか。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 保育士の人材確保のために、ほかの産業の賃金の状況も十分に勘案しながら処遇の改善を進めてまいる必要があると考えております。

○塩川委員 ほかの産業を勘案しながらというんじゃなくて、ほかの産業を上回るような措置がないと人が集まらないんじゃないですか、そういう立場でやるのかということを聞いているんですが。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 ほかの産業の賃金も今後改善していく可能性もございます。処遇改善につきましては、保育ももちろん重要なんですけれども、オール・ジャパンでも重要な課題かというふうに承知をしております。
 そういった中で、相対的に保育労働者の方の処遇の改善を、やはり他産業の状況も踏まえながら進めていくことが重要だと思っておりますし、また、保育士という職業の魅力アップのためには、処遇改善もございますけれども、業務負担の軽減ですとか、そういったほかの面でも魅力アップを進めていく必要があるというふうに考えております。

○塩川委員 ほかの産業を上回るような賃金水準、ほかの産業を上回る形で人材を引きつけるにふさわしい賃金水準に現状なっていないわけで、それをどうするのかということが問われているということと、あわせて業務の改善のお話もありました。この点も重要だと思いますが、現状の政府の処遇改善策が、保育士の低賃金を大幅に改善するものとはなっていないということです。
 次に、今出ました業務負担の問題なんですけれども、保育士の時間外労働の実態というのは把握しておられるでしょうか。そういう中で、時間外労働について不払いがある、そういう実態というのは把握をしておられますか。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 保育士の時間外労働また賃金不払いの状況についてのお尋ねでございます。
 まず、各保育所におきましては、労働基準法を遵守して、それぞれの施設の実情に応じて適切な勤務環境を整えていただくことが重要であると認識をしております。
 実態についてですが、都道府県等による指導監査の際に、時間外労働に係る労使協定の状況など、保育士の労働環境について確認をいたしておりまして、不適切な残業などの問題が認められる場合は、都道府県等による指導の対象となるものでございます。

○塩川委員 ですから、労基署が入るようなときにどうかというのもありますし、もちろん都道府県等の指導監査の際に確認をするということは当然あると思うんですが、そもそも、保育士の労働実態全体がどうなっているのかといった現状の実態、こういう現状の実態調査というのは、これは国としてやっておられるんですか。

○本多政府参考人 お答えいたします。
 全産業を対象とした政府統計などはございますけれども、特に保育士に特化した調査というのはやっておりません。

○塩川委員 保育士に特化した調査を行っていない。しかし、今言ったように深刻な人手不足なんですよ。そういったときに、求職者数もふえない、減るような状況であるときに、今の保育士の働いておられる実態を正確に把握することでこそ適切な施策になるんじゃないのかといった点で、そういった実態調査がされていないというのは極めて残念であります。実態把握をしていないこと自体が問題だと言わざるを得ません。
 そこで、私、御紹介をしたいのが、研究者の方などが昨年六月に取りまとめられた、愛知県における保育労働実態調査の内容であります。あいち保育労働実態調査プロジェクトとして、愛知県内の保育業務に従事する方に調査を行ったもので、全体三万人の愛知県内の保育業務の従事者がいらっしゃるそうですけれども、そのうちの四千三百三十一人の方から回答をいただいたということで、大変大きなサンプルでの調査になっております。
 そういった中で、時間外労働を行ったかどうかの調査もありまして、時間外労働について、時間帯別でどうかというのを聞いているんですが、勤務時間前に時間外労働を行ったという人が七四・五%いるんですよね。どんな仕事をしていますかというと、保育の準備とか、たまっている事務とか、保育室等の環境整備、掃除ですとか整えたり。
 休憩中、昼の休憩中でも時間外労働をしたという人が七九・六%。そこでやっている仕事というのは、お便り帳の記入とか、保育の記録とか、保育準備や片づけだと。
 さらに、勤務時間後にも行っているというのは八七・七%で、どんな仕事をしているかというと、会議や打合せ、行事の準備、翌日以降の保育準備、保護者対応とか、保育室等の環境整備。
 さらに、持ち帰りをしたという人は七五・六%ということで、週や月単位の計画づくり、クラス便りや園便りを書くこと、翌日以降の保育準備、こういったことがあるということです。
 ですから、広く時間外労働が行われているということがこういうことにも見てとれるわけです。
 同時に、こういった時間外労働があるんだけれども、残業申請する習慣が職場にそもそもないといった答えが四一・五%とか、業務上、必要な残業でも、申請できる業務とできない業務が決まっていると答えた人が三三・七%ということで、労働時間管理自体がきちんと行われていないという実態が広範にあるということがこの実態調査でも浮き彫りになったということであります。
 やはり、賃金について、不満や、やや不満と答えた人が六三・二%だった。その理由として、仕事に見合った賃金でないということを挙げる人が七二・七%、他産業、他職種に比べて低いを挙げる人が三七・三%でしたが、残業代などが支払われていないというのを挙げる人も三四・四%いて、超勤手当未払いが賃金に対する不満の主要な原因の一つとなっていることもわかったということなんです。
 こういう、ちょっとリアルな実態を把握してこそ適切な対策が行えるんじゃないのかということを申し上げたいわけであります。
 こういった実態、これまでやっていないというんだったら、これからしっかりやったらどうですか。その点、いかがですか。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 各保育所に対する指導監査の際に、時間外労働の状況なども確認しております。また、そこで問題が認められる場合には指導の対象としております。
 また、労働関係法規に違反する疑いがある場合には、必要に応じて、都道府県労働局又は労働基準監督署との間で適切に情報提供等の連携を行うよう求めているところでございます。
 引き続き、このような指導監督の徹底を自治体に要請してまいりたいと思いますし、また、実態把握の方法についても、適切な方法で把握できるように考えてまいりたいと思います。

○塩川委員 実態把握について、本当に、全体が見えるような、そういう調査をぜひやっていただきたいという点と、違法を正すのは当然の話であって、しっかりとこれをやるということなんですけれども、問題は、やはり、保育士不足を起こしている要因は何なのか、この点をどうしっかり分析するのかという角度で調査を行う必要がある、このことを申し上げているわけです。
 愛知県のこの実態調査でも、保育士誰もが保育職場にやりがいを感じておられる。それは、皆さん、子供と一緒のそういった仕事というのは、本当にうれしく、誇りに思っているわけですけれども、しかし、仕事をやめたいという人も五・七%いて、迷っている、続けるかどうか迷っているという人も二四・九%で、三割の方が就業の継続が不透明だということになっているわけです。
 ですから、大臣にお尋ねしますが、今紹介をしましたように、長時間過密労働ですとか未払い賃金が就労継続の障害となっており、保育士をやめる大きな要因となっているのではないのか、この点についての大臣の御認識を伺いたいと思います。

○宮腰国務大臣 調査によりますと、保育士資格を持ちながら保育士としての就職を希望しない理由として、賃金が希望と合わないという点を除けば、就業時間が希望と合わない、それから、健康、体力への不安、休暇が少ない、とりにくいといったことが挙げられておりまして、委員御指摘のとおり、保育士の方々の業務負担の軽減は大変重要な課題であると認識しております。
 このため、厚生労働省を中心に、保育補助者の追加配置に対する支援の拡充や事務のICT化などにより、保育士の業務負担の軽減に取り組んでおります。私も幾つかの認可保育園を視察させていただきましたけれども、ICTなどにより勤務環境が改善され、働きやすくなったとの保育士の方々の声を直接伺ってまいりました。
 高い使命感と希望を持って保育士という職についた方々に長く勤めていただけるよう、厚生労働省としっかり連携して取り組んでまいりたいと考えております。

○塩川委員 やはり、就労継続を困難にするような実態、賃金と同時に業務の量の問題もあるという話で、この間、処遇改善策として取り組んでおられるということも紹介がありました。
 その点で、例えばICT化の推進ですとか、保育士のそういった業務を補助する方の賃金補助とか、これは実績としてはどんな感じなんでしょうかね。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 保育士の業務負担軽減のため、保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用の補助、また、保育に関する計画、記録や保護者との連絡、子供の登降園管理等の業務のICT化を行うためのシステムの導入費用の補助などをしております。
 実績でございますけれども、保育補助者雇い上げのための事業でございますが、こちらは、二十九年度におきまして、二十一自治体、六十七施設で御利用いただいております。また、補助的な仕事を行っていただく方の賃金補助の事業、保育体制強化事業ですが、こちらは九十二自治体、一千百十二人が対象となっております。また、ICT等を利用した保育所等業務効率化推進事業でございますが、こちらは百十五自治体、一千七百七十六人が対象となっております。

○塩川委員 今お話があったように、保育士の業務を補助する方の賃金補助というのは、二十一自治体、六十七施設ということで、ほとんどないということでもありますし、ICT化の話についても、一千七百七十六人って、これはあれなんですかね、パソコンで手書きのものを管理するという意味で人数になっているんですかね。わかりますか。人数で出ているというのがよくわからないんだけれども。

○本多政府参考人 申しわけございません。先ほど一千七百七十六人が対象と申し上げたところですが、これはもしかすると施設数の間違いの可能性がございますので、ちょっと後ほど確認をさせていただきます。申しわけございません。

○塩川委員 それで、大臣も行かれて、ICT化で業務の改善という話を伺ったということもあるんですが、そういうところもあるんだと思うんですけれども、保育関係者の方でお話を伺ったりしますと、パソコンの台数が少ないものだから、結局、パソコンに打ち込むために無駄に待ち時間があって、そのためにかえって時間がかかるとかいうお話ですとか、手書きならあいている時間にできるんだけれども、子供がいるところでパソコンを使えないものだから、結局は今までよりも別なところに時間をとらないといけなくなっているという話もあって、これは全体の業務の見直しが必要なんだと思うんですけれども、こういった、やはり実態に即した対応になっているかどうかというのもきちっと検証していただきたいと思うんです。
 そもそも、この間のさまざまな指導監査、これ自身は重要なことですけれども、文書量も多くなって、その作業もふえているということも含めて、非常に事務量、業務量が大きくなっている。それはやはり、保育の質を確保するという点では必要な問題なんだけれども、それを、質の確保を保障する上でも、そういう業務の増加に見合うような人手の確保が何としても必要だということが現場が言っていることだと思います。
 ですから、このような処遇改善策で時間外労働の短縮、時短になっているかどうか。この業務負担軽減の効果というのは実際に労働時間の短縮という形であらわれているかどうか、その辺はわかっているんでしょうか。

○本多政府参考人 済みません。まず、先ほどのICTの導入等の事業の件ですけれども、一千百七十六人ではなく、一千七百七十六施設でございました。訂正をさせていただきます。
 また、こういった事業の効果につきましても、今後、適切な形で把握できないかどうか、勉強してまいりたいと思います。

○塩川委員 ですから、実際に効果が上がっているかどうかということが必要であって、メニューがふえれば進んでいるわけではないわけですから、その点をしっかりと受けとめていただきたいと思います。
 その上で、やはり、こういったように、求職者数が少ない、求人がふえる、それにふさわしい保育士不足の改善策が必要だといったときに、こういった賃金の面でも労働時間の面でも、抜本的な改善に至っていないという状況がある。これ自身が問題だと言わざるを得ないんですが、あわせて指摘をしなければいけないのが、政府がこの間行ってきたことは何なのかということなんです。
 現状の保育士配置を引き下げることで保育定員増に対処しようとしてきたんじゃないのか。一つは、企業主導型保育事業のように、保育士の基準について、五〇%でもいいといった形でやっている。あるいは、朝夕の保育士の二名配置の弾力運用の話ですとか、先ほど阿部委員も指摘をされましたような、人員配置基準や面積基準について独自の上乗せ基準を実施する自治体に見直しを求める、そういう通知も出したり、政府の会議でもそういう議論を出してきている。
 こんなことが進めば、長時間過密労働を深刻にして、かえって保育士確保を困難にするんじゃありませんか。

○本多政府参考人 お答え申し上げます。
 例えば、定員超過との関係でございますけれども、定員超過をして子供を受け入れる場合というのもございますが、その際にも、国が定める保育所の人員配置や面積基準などの最低限遵守しなければいけない基準を満たした上で保育を実施することが前提ということでございます。
 いずれにしましても、保育士の人材確保のために、業務負担の軽減など、処遇改善など、総合的な支援に力を尽くしてまいりたいと考えております。

○塩川委員 そもそも国の基準が低いから、自治体が独自の上乗せ措置をやっているんですよ。それを下げてこういう待機児童解消に充てるというやり方そのものが間違っているんですよ。保育士の処遇改善を本当に抜本的に行って、誇りに見合うような労働条件を確保する、これこそやるべきじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
 企業主導型保育事業も、実際には、認可などにおける保育士の配置基準なども低くするような形で制度設計されているわけで、私は、このような保育士の配置基準を引き下げる方向で今の保育のニーズに応えるようなやり方は間違っていると思うんですが、それを是正してこそ本当の意味で保育士の確保につながるんじゃないのか。大臣のお考えをお聞かせください。

○宮腰国務大臣 企業主導型保育事業にも触れられましたけれども、企業主導型保育事業、今回のこの検討委員会の取りまとめにおきまして、定員二十名以下の小規模な保育園、保育所、これまで保育士の充足率五〇%でよかったということでありますが、これを七五%に引き上げるということにいたしております。かつ、現状でも充足率一〇〇%という園が大半であるということも申し上げておきたいというふうに思っております。
 保育の質を高めていくという努力を地方自治体がしておいでになるということについては敬意を表したいというふうに思っておりますが、我々として、政府としてでも、やはり、保育士さんの処遇の改善を通じて、受皿の確保も同時にやっていかなければいけないというふうに考えておりまして、いろいろな意味で、あらゆる施策を総動員しながら、保育士さんの処遇の改善を通じて人材の確保等に努めていきたいなというふうに考えております。

○塩川委員 保育士の処遇改善を脇に置いて今の待機児童問題を解消するような規制緩和はきっぱりと見直すべきだ。賃金を上げ、手厚い人の配置を行うという取組でも、配置基準の見直しと公定価格の抜本的な引上げが必要だと考えます。
 公定価格についてちょっとお聞きする時間がありませんでした。またの機会にしたいと思いますので。
 以上で質問を終わります。