【内閣委員会】子ども・子育て支援法可決/増税押し付けやめよ

 保育と幼児教育の一部を無償化する「子ども・子育て支援法」改定案が、衆院内閣委員会で採決され、自民党、公明党、国民民主党、日本維新の会の賛成で可決されました。日本共産党、立憲民主党は反対しました。

 採決に先立ち、安倍晋三首相出席のもとで質疑行われました。

 幼児教育・保育の「無償化」が消費税増税とセットで行われる。切実な子育ての願いを逆手にとって、消費税増税を国民に押し付けるのはやめるべきだ。

 住民税非課税のひとり親世帯の保育料は免除されている。このような低所得世帯にとって、今回の『無償化』は消費税分だけが重くのしかかるだけだ。

 安倍首相は「所得の低い方々への配慮として食料品を対象に軽減税率制度を実施する」などと答弁。

 私は、食料品にかかる消費税率は8%に据え置かれるだけで、消費税の逆進性が改善されるわけではないと批判し、「無償化」でも負担増にしかならない住民税非課税世帯に消費税増税を押し付けること自体が間違っていると強調しました。

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「議事録」(質疑)

<第198通常国会 2018年04月03日 内閣委員会 10号>

○塩川委員 法案についてお尋ねをいたします。
 幼児教育、保育の無償化は、消費税増税とセットで行われます。
 保育料については、所得に応じて段階的に負担をすることとなっており、住民税非課税の一人親世帯などの低所得者層では免除をされています。このような、例えば住民税非課税の一人親世帯にとっては、今回の無償化というのは、消費税増税分だけが重くのしかかるということではありませんか。

○安倍内閣総理大臣 消費税引上げに当たっては、消費税に逆進性があることに鑑みまして、低所得者など真に支援を必要とする層にしっかりと支援の手が行き届くことが重要であります。
 まず、所得の低い方々への配慮として、食料品等を対象に軽減税率制度を実施をします。
 あわせて、所得の低い方々や小さな乳幼児のいる子育て世帯に対しては、税率引上げから一定期間使用できるプレミアムつき商品券を発行、販売をいたします。
 さらに、ゼロ歳から二歳までの住民税非課税世帯の子供の幼児教育、保育を無償化するとともに、来年四月から、真に支援を必要とする低所得世帯の高等教育の無償化を実施することとしております。
 低年金者への給付等の社会保障の充実策を実施することなどを総合的に勘案すれば、政策全体として、所得の低い世帯に手厚く、逆進性に対して十分な緩和策になるものと考えております。

○塩川委員 いや、政策全体を見ても、こういった住民税非課税世帯に対して負担増となるというのが、この現状の仕組みであります。
 軽減税率は、総理も認めておられるように、逆進性のある消費税というのは八%なんですよ、八%だって逆進性があるんですから、それは何ら、これによって改善される話ではそもそもありません。
 プレミアムつき商品券というのは半年間、これは半年間分の消費税増税の負担分をもとに戻すという趣旨での商品券の額であって、半年から先、未来永劫ずっと増税は続くんですから、これに対しての負担増というのは紛れもない話であります。
 そういった点でも、この住民税非課税世帯、一人親世帯などの方については全く消費税増税分だけが重くのしかかる、この仕組みというのは変わらないじゃないですか。

○安倍内閣総理大臣 今回の、八%から一〇%へ引き上げることに対して、この逆進性対策のために、先ほど申し上げましたように、食料品に対する軽減税率を行うこととしているところでございますし、そしてまた、先ほど申し上げましたように、低年金の方への給付も行うわけでございます。
 そして、そもそも、伸びていく社会保障費を支えるために今回消費税率を引上げをするわけでございまして、まさに、引き上げた消費税については全額、社会保障費そして子育てのために使わせていただくということになっているところでございます。

○塩川委員 低年金の話は、子育て世帯に直接かかわりがありません。ですが、住民税非課税の一人親世帯などにとっては、既に保育料は無料なんだから、負担軽減されているので、消費税増税の負担増しかかからないということには変わりがない。
 住民税非課税世帯というのはそもそも所得税も非課税となるような世帯であるわけで、生計費非課税の原則からいっても、生活費には課税しないということが本来であって、そういう世帯に消費税増税を押しつけること自体が間違っていると言わざるを得ません。
 切実な子育てへの願いを逆手にとって、消費税増税を国民に押しつけるのをやめるべきだと申し上げたい。
 次に、企業主導型保育事業についてお尋ねをいたします。
 この間、企業主導型保育施設の運営については、突然の閉園や助成金の不正受給など、さまざまな問題が起こっております。
 二〇一七年度の立入調査では全施設のうち七五・八%で問題事例があった、企業主導型保育事業の助成決定に当たって現地確認を行った施設は二千六百施設に対してわずか六件とか、さまざまな案件でも、とても慎重な審査が行われているとは言えません。
 指導監査においても、コンサル業務を行っているパソナがコンサル業務を行っている企業主導型保育施設に監査に入るような、そういう疑念についてきちっと晴らすような解明も何ら行われていないということで、総理にお尋ねしますが、こういう事態というのは、単に企業主導型保育事業について管轄をしている児童育成協会に責任を押しつけて済む話ではありません。この間、政府が行ってきたこの募集枠の前倒しの措置がこういう混乱を生み出し、不祥事を生み出した。まさに政府の責任が問われる問題じゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 企業主導型の保育事業は、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援するとともに、待機児童解消に貢献する重要な事業であると考えております。
 しかしながら、制度創設から三年目を迎えて、さまざまな問題が指摘されていることはまことに遺憾であり、この制度が本来期待される役割を果たしていくためにも、運用の見直しが不可欠であると考えております。
 こうした問題が生じた原因や背景については、内閣府に設置された検討委員会で先般取りまとめられた報告において指摘されているところでありまして、早速に改善を進めさせたい、こう考えております。

○塩川委員 ですから、立ちどまるんだったら、この間の整備そのものを見直すということを考えるべきだ。昨年度の三万人の受皿整備、今年度について二万人と予算上計上している受皿整備、こういうのを白紙に戻して見直すということこそ行うべきだと求めておくものです。
 企業主導型保育施設というのは、入所の児童の九割以上が〇―二歳の子供たちになります。まさに安全対策が何よりも重要な施設であるわけです。
 一方で、企業主導型は、多様なニーズの話もありましたけれども、夜間、休日勤務あるいは短時間勤務、一時預かりなど柔軟に対応できるとしているわけです。これは、多様なニーズに応えた保育を必要としており、子供にとっては非常に強いストレスをためるものになる。そのため、保育者には通常の保育以上に専門性が要求される問題です。また、夜間や短時間などは特殊な保育であるために、安全性が一層求められます。それなのに、保育士の割合は認可基準を満たさなくてもよいとしているわけです。
 このような企業主導型保育施設も今回の無償化の対象となります。安心、安全の保育環境の拡充を願う保護者の願いと逆行することになるんじゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 この企業主導型保育への無償化の導入に先立ちまして、保育の質や子供の安全の観点から、特に審査、指導監督の強化を行うことが急務と考えています。
 そのため、検討委員会報告で指摘をされたとおり、立入調査結果や審査結果の情報開示、また各施設の決算情報の公開等を進め、透明性の高い事業運営に改めるとともに、自治体との情報共有や指導監査等における連携の強化等について、今から順次具体的な改善策を実施することとしたい、こう考えております。
 何よりも子供の育成を最重点にしっかりと対応していきたい、こう考えております。

○塩川委員 いや、私が聞いたのは、多様なニーズに応えるということでいえば、当然その多様なニーズに対応した保育を行わなくちゃいけない、それについては、保育者の専門性が一層求められるんじゃないのか、夜間ですとか短時間ですとか。当然のことながら、そういった際に子供たちのストレスもためることになる。そういった際に、通常以上に保育の専門性が求められるときに、企業主導型保育施設については保育士の配置は認可の基準以下でもいいとしているわけですから、これは容認できないんじゃないのかと。
 総理、いかがですか。総理。

○宮腰国務大臣 先ほども委員の御質問にお答えをさせていただいた部分もありますが、今回の検討委員会の報告の中で、例えば保育事業者設置型において、保育士さんの設置、配置基準について二分の一でいいという部分があったわけですけれども、これを七五%まで引き上げるとかいうようなことで、保育士の配置についても充実を図っていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 それは五〇を七五にするだけで、一〇〇の話でもないわけですよ。実際に、認可外の施設においては、自治体としてのかさ上げ措置をとってやっているわけですよね。
 それ以上に、子供たちにストレスがかかるような企業主導型保育施設のありようからいっても、認可の基準よりも保育士の配置を低くしていること自身がおかしいんじゃないのかと。その点についてお答えがない。

○宮腰国務大臣 保育士比率は、実際には一〇〇%満たしている施設が七六・七%あります。七五%という施設が九・四%、五〇%の施設が一三・九%でありまして、この部分についてはしっかりと充実を図っていくということにしております。
 これからも、企業主導型、特に保育事業者設置型について、しっかりとこの基準を守っていただくように指導してまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 一〇〇%いっている施設が多いというんだったら、何で七五%にとどめるのか。
 そういった点でも、認可の施設よりも設置の基準、運営の基準を緩めることによって企業主導型保育施設の整備を加速させるという趣旨になっているわけで、重大な懸念があるこういう企業主導型保育施設というのはきっぱりと見直すべきだということを申し上げて、質問を終わります。


子ども・子育て支援法改正案に対する反対討論は、以下の通りです。

 私は、日本共産党を代表して、子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案、いわゆる「幼児教育無償化」法案に反対の討論を行います。

 第一に、本案は消費税増税を発端としたものです。安倍総理は、総選挙を前にした2017年9月、消費税10%増税を前提に「幼児教育の無償化」を持ち出し、解散総選挙の口実としましたしたのです。

 消費税は、低所得者ほど負担が重くなる逆進性を持つ税であることは、総理自身認めていますることです。保育料はすでに所得に応じて段階的になっており、住民税非課税のひとり親世帯などでは保育料は免除されています。このような層では無償化による恩恵はなく、消費税増税分が重くのしかかるだけです。

 消費税増税を財源にすることで、低所得者層へ重い負担を押し付けることは認められません。

 第二に、この「無償化」によって、何が引き起こされるのか。

 教育・子育ての切実な願いを逆手にとり、安倍総理が党略的に持ち出した「無償化」は、内閣府が「検討の場はなかった」と答弁したように、総理の一言で決まったことがはっきりしています。

 検討もされずに打ち出された施策だから、経過措置期間の5年間は、保育士が一人もいないような保育施設も、給付対象とする法案となっているのです。

 認可外保育施設の立ち入り調査は、現在でも68%しか行われていないにもかかわらず、「無償化」によって調査対象は1.7倍に増えまするのです。参考人からも指導監督体制の「スタッフが足りない、人員配置と予算化が必要だ」と指摘がありました。厚生労働省は、「巡回指導支援指導員を増やす」ことが対策だと述べましたと言いますが、巡回支援指導員は児童福祉法に基づく指導監督をすることはできません。厚労省も「代替できるものではない」と、厚労省も認めたではありませんか。指導監督体制の強化なしに、どうやって安心・安全な保育を保障するというのですかことはできません。

 また、本案には、これまで保育料に含まれていた3~5歳児の給食おかず費を施設側に徴収させることも盛り込まれています。保育の一環である給食の費用は公費で負担すべきで、給食費の実費化は公的保育制度を後退させるものです。

 経過措置の5年間、安全を置き去りにし保育制度に歪みを生じさせ、認可保育所を中心としによる、自治体の保育実施義務に支えられた公的保育をさらに掘り崩すことになります。こんな制度設計があるのか、無責任だと言わざるをえません。

 第三に、本案が、さらに公立保育所を減らし、公的保育制度の枠外にある企業主導型保育事業を拡大させるという問題です。

 公立保育所数は、地方行革の押し付け、運営費・整備費のが一般財源化によってされてから減り続け、この20年間で3割も減少しています。今回の「無償化」が、国から2分の1補助が出る私立保育所に比べ、公立保育所は市町村の10割負担のため、今回の「無償化」が、一層公立保育所の廃止・民営化を加速させることは明らかです。

 対照的に、企業主導型保育事業は急拡大しています。しかし、突然の閉園や助成金の不正受給、75%の施設で基準違反が見つかるなど、問題が相次いでいます。児童育成協会への視察で明らかになったのは、助成決定に当たっての現地確認を行ったのは約2600施設のうちわずか6件、審査もはたった5人がで年3回の会議で行うというものということで、とても慎重な審査が行われているとは言えません。

 今回の「無償化」は企業主導型保育も対象とする今回の「無償化」によってしており、市町村やが設置・監査に関与せず、認可基準以下で整備・運営ができる企業主導型保育が拡大するのは目に見えています。

 企業主導型保育は、仕組み上、認可施設にならない施設であると、内閣府も認めました。一方で、政府は「子育て安心プラン」で、企業主導型保育を待機児童の受け皿として組み込み、さらに3年間で2度の前倒しで推し進めています。このような企業主導型保育を前のめりで進め、公的保育制度を大きく後退させてきた政府の責任は重大です。

 最後に、この法案には、肝心の待機児童対策がありません。緊急にやるべきは、公立を含む認可保育所の増設と保育士の処遇改善です。

 宮腰大臣は「保育士の処遇改善を通じて受け皿を確保しなければならない」と答弁しましたが、政府は、保育士の低賃金、長時間・過密労働の実態調査すら行っていないことも明らかとなりました。これでどうして、保育士処遇改善ができるでしょうか。

 保護者と保育関係者の「安心・安全な保育を」という願いにこたえるためには、「保育の質・量の確保」をしながら、保護者の負担軽減をすすめるべきだと申し述べ、討論を終わります。