【内閣委員会】幼児教育無償化法案/公立保育所を減らし/企業主導型を拡大

 安倍政権が進める幼児教育・保育の「無償化」が、安心・安全の保育環境の拡充を願う保護者の要求と逆行し、企業主導型保育事業を拡大し、公立保育所減らしを加速させると批判しました。

●公的保育制度とは
 日本の保育制度は認可保育所による市区町村の保育実施義務に支えられた公的保育制度が原則です。これは、経済的な事情や、病気、障害など困難を抱える子も含めた、すべての子の保育を受ける権利を保障するための仕組みです。

●企業主導型保育事業は公的保育制度の枠外の制度
 安倍政権が募集枠の前倒しで急増させてきた企業主導型保育事業で、突然の閉園など問題が相次いでいる。企業主導型保育事業は市区町村に課せされている保育実施義務に関与しない施設ではないか――と質問。

 内閣府は「関与しない」と認めました。

 公的保育制度の枠外にある企業主導型を対象とする今回の「無償化」は、企業主導型をさらに拡大する仕組みになる。

●公立保育所は減り続けている
 待機児童対策は、公立保育所をはじめとした認可保育所で行ってほしいというのが保護者の要求にもかかわらず、国が公立保育所の運営費に関する国庫負担金・一般財源化など地方行革の推進政策を進めたことによって20年間で3割も公立保育所が減らされてきた。

 今回の「無償化」では公立保育所における自治体負担を10分の10とするため、公立保育所減らしを加速させる。

 今回の『無償化』は、認可外保育施設であって自治体が設置、監査に関与しない企業主導型保育事業を拡大し、公的保育制度を支える公立保育所を減少させるものになる。公的保育制度を後退させるものだ。

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「議事録」

<第198通常国会 2018年04月03日 内閣委員会 10号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 法案の審議を行いますが、先ほど委員会の冒頭で、厚労省から、答弁の間違い、それについての謝罪もあったところであります。
 質疑において十二カ所も間違いがあったと。これ自身が、その質疑そのものが成り立たなくなるという点でも極めて重大で、発言の中にもありましたように、法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせるおそれのある答弁という点でも極めて重大だ、こんなことが再びない、このことを強く求めておくわけですし、同時に、そういった誤りがそれにとどまっていないということも一言申し上げて、質問に入ります。
 内閣府にお尋ねしますが、子育て安心プランの三十二万人分の受皿整備についてですが、二〇一七年の六月公表時には、企業主導型の受皿拡大量が含まれていませんでした。十二月の予算閣議決定時に六万人と定めたというんですが、この六万人としたという根拠は何なのかについて、説明をしてください。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 子育て安心プランに基づく三十二万人分の保育の受皿整備のうち、企業主導型保育事業による六万人分につきましては、平成二十八年度の助成決定の実績件数、八百七十一施設、二万余の定員でございますけれども、実績件数などを踏まえた上で、平成三十二年度までの三年間での整備量の見込みを勘案し、平成二十九年十二月の新しい経済政策パッケージに基づきまして、平成三十年度予算編成過程の中で、経済団体との調整を踏まえ、決定したものでございます。

○塩川委員 二〇一六年度の助成決定の実績二万余等々を踏まえてということなんですけれども、どれだけふやすかという規模について、いわば募集があったから受けたんだという話、応募が多かったといった話で裏づけになるような話にはならないわけで、そういった点でも、根拠が極めてある数字と言うことはできません。
 それで、実際に企業主導型保育事業の受皿整備量についてなんですけれども、実績と今後の見込み、予算上の措置について確認したいんですが、私が承知しているところでは、二〇一六年度は約二万人で、一七年度が約四万人、一八年度の見込みが約三万人で、一九年度は予算上二万人ということで、合計すると十一万人の規模と承知しているんですが、それでよろしいですか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 これまでの助成決定の実績といたしまして、平成二十八年度末約二万人、平成二十九年度末で約六万人、それから平成三十年度につきましては更に約三万人分の整備をすることとしてございます。平成三十一年度は約二万人分を整備する予定でございます。(塩川委員「十一万人でいいですね、足し上げると」と呼ぶ)そうでございます、はい。

○牧原委員長 もう一回、正確にお願いします。

○小野田政府参考人 二十九年度末の六万人といいますのは、二十八年度の二万人を加えての六万人でございますので、六足す三足す二ということでございます。(塩川委員「十一万人」と呼ぶ)はい。

○塩川委員 十一万人ということなんですが、要するに、パッケージの時点では、その二〇一六年度の二万の実績があって、それに六万を乗せるということだから、二〇二二年、それが、前倒しにさせて二〇二〇年度までに八万人の整備をするということなんですけれども、これは実際に、今年度を含めると、もう十一万人の規模になるんですよ。すごくふえているわけなんです。
 企業主導型保育事業について、改めて確認ですけれども、二〇一七年においては、三万人の募集枠に対して公募が五万人あって、そのため、八月の時点で二万人分の募集前倒しを行ったと承知しています。結果は四万人になったわけですけれども。九月に、安心プランの二〇二二年度末達成を二〇二〇年度末への前倒しを行った。二〇一八年については、二万人の募集枠に対して公募が五万人以上あり、募集枠を三万人分に引き上げた。募集枠に関する経緯というのは、以上のとおりでよろしいでしょうか。

○小野田政府参考人 委員御指摘のとおりと承知しております。

○塩川委員 ですから、もともと二〇二〇年度までに二万プラス六万の八万人というのが政府としての目標だったのを、前倒し前倒しで十一万人まで積み上げているんですよ。ですから、大幅にこの企業主導型保育事業を拡大する、この姿勢で一貫しているというのが今の政府の対応だということであります。大変な勢いで企業主導型の受皿整備量をふやし、前倒しを行ってきたということなんです。
 そこで、ちょっと確認で、先ほど山岡さんもやりとりしておりましたけれども、先週、企業主導型保育事業の審査、監査を行っている児童育成協会の視察に参加をしました。企業主導型保育事業の助成決定に当たって、施設の現地確認を行ったのは約二千六百施設に対してわずか六件と聞いたんですけれども、それは内閣府も承知しておられるんですか。

○小野田政府参考人 お答えします。
 これまでの間で六件と承知してございます。

○塩川委員 二千六百施設に対して、現地確認を行ったのはわずか六件。それは、自治体が必ず現地確認する認可保育所などでは考えられない事態であります。
 あともう一つ、助成決定を行う審査会は、経営とか会計とか保育などの専門家の方五人で構成されているということですが、実際には、この前のときは三回の審査会で二千六百施設の審査を行ったと聞いたんですが、そのとおりですか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 審査会を開催したのは三回でございます。

○塩川委員 ですから、わずか三回で五人の委員が二千六百施設を審査するということは、到底、慎重な審査が行えるとは思えないわけです。
 指導監査業務として、二〇一七年度の立入調査では、全施設のうち七五・八%が問題事例であったということも出ているわけです。
 しかも、指導監査業務の大半を行っているのが委託先のパソナです。そのパソナは企業主導型保育施設のコンサル業務を行っているわけです。パソナがコンサル業務をしている施設に立入調査をしているのはおかしいんじゃないかとただしても、この児童育成協会では、パソナがコンサル業務をしている企業主導型保育施設について把握もしていないという回答でした。
 企業主導型育成事業の急激な増加措置に対応できていないということが、こういうところでも、さまざまなほころびとなってあらわれてくるわけです。
 実際には、入園に至らないような、閉鎖をするような施設、さまざまな不適切な対応というのがあった企業主導型保育事業において、こういったいろんな混乱を生み出したというのは、単に児童育成協会に責任を押しつけて済む話じゃないわけです。
 大臣にお尋ねしますが、言いましたように、政府として、受皿整備量として、この企業主導型については、例えば二〇二〇年度までに積み上げでいえば八万ぐらいだったのを、実際には、今年度、二〇一九年度で十一万人という、大きく上積みをしているわけですよ。それは、前倒し前倒しということでやってきたわけですよね。こういった前倒しでの措置というのが、結果としてさまざまな問題、不祥事を起こすことになったんじゃないですか。こういう企業主導型をめぐるさまざまな混乱や問題や不祥事というのは、政府の前倒しによってもたらされたということじゃないですか。

○宮腰国務大臣 企業主導型保育事業は、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援するとともに、待機児童解消に貢献する重要な事業であると考えております。
 しかしながら、これまで内閣府が事業を進めてきた中で、量の整備に重点が置かれ過ぎ、質の確保への意識が必ずしも十分ではなかったのではないか、ここは一度立ちどまり、これまでの取組を検証し、反省すべきは反省し、しっかりと改善を図っていくべきではないのか。私としては、そういう厳しい認識のもとに、昨年十二月に、実施体制を強化するための検討委員会を立ち上げさせていただきました。
 三月十八日に公表されました、当面早急に改善すべき事項についての検討委員会報告において、「子供の安全第一の観点から、保育の質の確保・向上を重視し、審査、指導監査の在り方を検証し、見直す。」といった改善方策が示されております。今後、検討結果を踏まえ、内閣府としてしっかりと改善を図ってまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 量の拡充に偏っていた、質の確保が十分ではなかったのではないのか、そういう認識で、しっかりと調べ、対応策をとるということですけれども、もともと自治体が保育実施義務を持つ中で、認可保育所などによる保育所の整備を行っていく、実施計画をつくって行っていくわけですけれども、この企業主導型保育事業はそこに入らないわけですよ。だから、認可、自治体の保育実施義務の外にあるのがこの企業主導型保育事業であるわけで。
 そういったときに、今確認をしたように、とにかく次から次へと、応募があればそれを前倒し前倒しで受け入れるといった整備のあり方そのものが、こういう事態をつくっているんじゃないのかということなんですよね。そういう認識はないのかということなんです。

○宮腰国務大臣 この前倒しの問題と質の問題、基本的に、直接の因果関係があるかといえば、必ずしも私はそうではないと思っております。
 量の拡大といいますか、量の整備に重点が置かれ過ぎていた、一方で、質の確保への意識が必ずしも十分ではなかったのではないか。これは、私もですけれども、検討委員会のメンバーの皆さん方も同じ認識を共有しているわけでありますけれども、前倒しをやってきたからいろんな問題が出たのではないかということとは、直接私は因果関係はないものというふうに思っております。

○塩川委員 でも、量の拡大に重点が置かれ過ぎていたといった指摘なわけですから、その量の拡大というのは、別に児童育成協会の責任じゃないわけですよ。前倒しをしている政府側の責任じゃないですか。量の拡大に重点を置かれ過ぎていたというのは、まさに前倒し前倒しでもたらされているんですよ。
 そういう前倒しを行ってきた政府の責任については明らかにしないんですかということを聞いているんです。

○宮腰国務大臣 前倒しというのは、やはり待機児童の解消が極めて大きな問題、課題である、あるいは社会問題化までしているという状況の中で、できる限り、募集定員といいますか受皿を整備をしていくというのは、それは、社会全体で、国全体で見ても重要な課題であるということだと思っております。
 その結果、ようやく初めて、初めてではありませんが、久しぶりに待機児童の数が二万人を割り込んだということもあります。この待機児童解消対策をやらなければ、更に待機児童が多くなっていたということが言えると思っておりまして、待機児童解消のために前倒しをしたこと自体に問題があるとは私どもは考えておりません。

○塩川委員 保護者の方の要求というのは、安心、安全な保育なわけですよ。そういったときに、量とともに質というのは当然のことであって、この間の企業主導型について言えば、実際には認可に届かないような、認可基準以下での施設や運営について、保育士の配置基準などが規定されているわけですから、そういうときに、制度的にもこういった問題がある。
 加えて、量の拡充に偏るような措置において大きな問題が起こったわけですから、そこはやはり政府の責任として、前倒しをやった、そのことについてきちんとけじめをつける必要があるんじゃないのか。
 改めて、いかがですか。

○宮腰国務大臣 待機児童解消というのが優先課題の一つであるということから、前倒しをしてきたものであります。
 確かに、委員御指摘のように、企業主導型保育事業、大半は指導監督基準を満たして、その企業で働いておいでになる社員の方々、子供を預けながらでもきちっと働いていける、あるいは多様な働き方に対応していけるということでありますので、認可保育園、認可保育所とはまた全く違う形で子育てに対応できるのではないかな、できていると思います。
 でありますので、認可でなければだめだということではなくて、やはりこれはまた別の考え方で、多様な働き方に応じて、また待機児童解消にも役に立つということでスタートをした事業でありまして、それは経済団体の方からも期待されているというふうに思っております。
 でありますので、スタート地点でのこの制度の枠組みについては、やはり見直すべき点が多々あるとは思いますけれども、この事業そのものに問題がある、基本的な考え方に問題があるとは私どもは考えておりません。

○塩川委員 量とともに質、この質の問題について、安心、安全な保育の要望についての保護者のそういった願いに応えるといったときに、実際、では助成決定はどうだったかというと、こういう審査が本当にでたらめだったじゃないかということが問われているわけですし、指導監査のずさんさが問題になっているんですよ。まさに質の確保がされていないということが一番の問題となっているからこそ、量の整備についても見直すべきじゃないのかということを申し上げているわけであります。
 ニーズに基づかないような受皿整備というのが、とにかく前倒し前倒しとやったのがこういった不祥事を生み出しているわけですから、二〇一八年度の三万人分、そして今年度の二万人分の受皿整備量について、やはり白紙で見直すべきだということを申し上げておきたい。
 企業主導型保育施設というのはそもそも制度上どんなものかを幾つか確認したいんですが、この企業主導型保育施設は、仕組み上、認可施設にはならないというものだと思いますが、その点、いかがですか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 企業主導型保育事業は、事業主拠出金を財源といたしまして、企業が主体的に従業員のニーズに応じた柔軟な保育を提供することができるという特色を持った事業でございます。
 こうした特色を生かすため、企業主導型保育事業は、事業主拠出金を財源としまして、例えば、市町村による利用調整がないこと、必ずしも地域枠を設定しなくてよいこと、利用料及び開所時間は施設が決定できることなどの仕組みを持ってございまして、したがって、認可保育施設と違った施設としまして引き続き展開していくべきものと考えてございます。

○塩川委員 認可施設とは違った施設、つまり、単純な、認可基準を満たさないというアンダーの認可外ではなくて、認可の外にあるというのが企業主導型保育事業、保育施設ということになります。
 ですから、企業主導型保育施設は、市区町村に課せられている保育実施義務には関与しない施設ということでよろしいですか。

○小野田政府参考人 お答えします。
 市町村による利用調整がないという意味では、関与はございません。

○塩川委員 そういった点でも、保育実施義務の外にあるということであります。
 大臣にお尋ねいたします。
 企業主導型保育事業というのは、市区町村の保育実施義務の外で、認可基準以下で整備、運営ができる仕組みになっているわけです。今回の無償化の制度というのは、認可外の施設であって自治体が設置、監査に関与しない企業主導型保育事業を更に拡大する仕組みになります。これは、これまでの認可施設による自治体の保育実施義務に支えられた公的保育制度を後退させることになるんじゃありませんか。

○本多政府参考人 お答えいたします。
 保育の受皿につきましては、保育の実施主体である市区町村が認可保育所等を中心とした整備を進めることが重要だと考えております。
 一方、企業主導型保育事業につきましては、平成二十八年の子ども・子育て支援法改正によりまして、待機児童対策への貢献を一つの目的として制度化されたものでございまして、職員配置など、認可の小規模保育事業に準じた基準となっており、内閣府において認可保育所並みの整備費、運営費を補助していること、事業主拠出金を財源として企業の従業員の多様な働き方に対応できる保育施設であることから、重要な保育の受皿の一つと考えております。
 現在、保育事業者設置型についてさまざまな課題が指摘されていると承知しておりますが、内閣府において、検討委員会報告を踏まえて必要な改善が図られるものと承知しております。

○塩川委員 自治体の保育実施義務というのは、やはり保育のニーズを踏まえてしっかりとした整備も行っていきましょう、運営についても、認可という基準を支えにしっかりとした質の確保も行っていく、量と質の両面で自治体の責任をしっかり果たすという制度のもとで今の認可保育所の仕組みがあるわけです。
 その外にある企業主導型保育事業を前倒し前倒しでふやすということは、本来、この質と量について、まさにニーズを踏まえた自治体の対応、これを掘り崩す仕組みになっていくんじゃないのか。それが今言ったようにさまざまな問題を起こしているわけですから、これはやはり、改めて、こういう企業主導型保育事業のあり方をこのままというわけにいかないと思うわけですが、大臣、いかがですか。

○宮腰国務大臣 今回の検討委員会の報告書におきましては、自治体との連携を進めていくということが明記されております。
 例えば、具体的には、地域枠について、市町村子ども・子育て支援事業計画の供給量に含められるよう国の基本指針が改正されたところであって、設置者が地域枠を設定しようとする場合、自治体と相談の上で地域の保育需給状況を踏まえたものとなるようにすべきであること、それから、施設の適切な運営や緊急時の円滑な対応に資するよう、各施設が自治体に対し、定員、利用者、従事者等の状況を定期報告する仕組みを検討するべきであること、そのほかにも自治体との連携についての記述があります。
 我々としては、これまで自治体との連携が必ずしも十分ではなかった、一部には、例えば福岡市でありますとか大阪市でありますとか、そういうところで、しっかりと連携して、自治体としても企業主導型保育を進めていくという方向でやっていただいているところもありますけれども、これからも自治体との連携についてはしっかりと前に進めていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 現に存在は拡大しているわけですから、連携するということは当然必要になってくるわけですけれども、でも、ニーズを踏まえた質、量の確保を行うという自治体の保育実施義務に支えられた今の公的保育制度の外にある企業主導型保育事業をどんどん拡大するというのは、その方向は誤りだということを申し上げておきます。
 次に、公立保育所についてお尋ねします。
 公立保育所数の推移を確認したいんですが、公立保育所の施設数と定員数について、一九九七年、二〇〇七年、二〇一七年の数字を紹介してください。あわせて、保育士数について、常勤換算ということですが、数字のある二〇〇三年と二〇〇七年、二〇一七年についてお答えください。

○本多政府参考人 お答えいたします。
 公立保育所の施設数でございますが、福祉行政報告例によりますと、各年四月一日現在で、平成九年は一万三千六十四施設、平成十九年は一万一千六百二施設、平成二十九年は八千六百三十七施設となっております。
 公立保育所の定員数ですが、同じく福祉行政報告例によりますと、四月一日現在で、平成九年は百十一万三千人、平成十九年は百六万三千三百六十九人、平成二十九年は八十五万四千三百五十九人となっております。
 また、保育士数でございますが、こちらは常勤換算した場合の公営保育所に勤務する保育士数につきまして、社会福祉施設等調査によりますと、平成十五年は十四万七千四百八十四人、平成十九年は十四万一千百五人、平成二十九年は十一万七千七百六十五人となっております。

○塩川委員 二十年間で公立保育所の施設数は三分の二、定員数は四分の三に減少しました。保育士は、過去十四年間で八割に減少しています。このように公立保育所が減少している理由というのは何なんですか。

○本多政府参考人 保育の受皿整備に当たりましては、保育の実施責任がある市町村が、公立、私立の役割分担も含めて地域の実情に応じて取り組まれているものと承知しております。
 公立保育所につきましては、全国的に見れば減少傾向にございますが、各市町村がどのように公立、私立の役割分担を考えているかについては、地域事情を踏まえて、さまざまな理由が考えられますため、一概にお答えすることは困難かと考えております。
 例えば、働き方が多様化する中で、夜間保育や休日保育といった多様な保育に対するニーズが高まっており、こうしたニーズに応えるために公立保育所の民営化を行い、私立保育所の整備を積極的に進めている自治体もあると承知しておりますが、これ以外にもさまざまな理由があるものと承知しております。
 いずれにいたしましても、各市町村において、設置条例の廃止や予算等の審議等によって議会やそのほかの関係者に説明責任が果たされているものと考えております。国といたしましても、市町村が地域の実情に応じて取り組むことができるよう積極的に支援をしてまいります。

○塩川委員 地域事情と言いますけれども、地域事情もそれは全部排除されるわけじゃないですが、それ以上に、国の施策、国の政策によってもたらされているんじゃないのか。
 この間、国は、指定管理者制度の導入や、公立保育所の運営費に関する国庫負担金の廃止、一般財源化、公立保育所整備費国庫補助の一般財源化、集中改革プランや行革推進法などによる地方公務員の定数削減の推進を行ってきました。これらの地方行革の推進政策によって、公立保育所が削減されてきたということじゃないですか。

○本多政府参考人 お答えいたします。
 政府全体として進めてまいりましたそういった方針も含めまして、また、さらに、地域の実情も含めて、市町村が御判断をされているものというふうに承知しております。

○塩川委員 こういった一連の政府の施策の責任こそ問われるわけです。
 大臣に伺います。
 今回の無償化というのが、公立保育所における自治体負担が十分の十となるということで、結果として、公立保育所減らしを加速させるんじゃないのか。そのことが、保育所増設による待機児童の解消や保育士の処遇改善に逆行するものとなるんじゃないのかと考えますが、大臣はいかがですか。

○宮腰国務大臣 今般の幼児教育、保育の無償化におきましては、国と地方で適切な役割分担をすることが基本と考えておりまして、国と地方へ配分される消費税の増収分を活用することにより、必要な地方財源をしっかりと確保した上で、国と地方がよく連携して進めてまいりたいと考えております。
 財政負担のあり方につきましては、現行制度の保育所等に係る負担割合と同様とすることといたしまして、初年度に要する経費については、全額国費により負担をいたします。さらには、総務省と連携をいたしまして、必要な地方財政措置をしっかりと講じてまいります。
 これらにつきましては、昨年、全国知事会、全国市長会、全国町村会と丁寧な協議を行いまして、それぞれの団体における所要の手続を経て、組織として御了解をいただいたところであります。
 その上で、保育の実施責任は市町村にありまして、公立、私立の役割分担については、それぞれの市町村において判断すべきものであると考えております。
 また、このことで待機児童の解消や保育士の処遇改善に影響が出るということではないものと考えております。

○塩川委員 必要な地方財政措置を行うというんですが、過去の三位一体改革のときの運営整備費に係る国庫負担金や整備費の廃止、一般財源化というのは、公立保育所減らしに大きくつながっていったわけです。今回の無償化も、それと同様に、公立保育所減らしを加速させることになる。これが待機児童の解消や保育士の処遇改善に逆行するということを言わざるを得ません。
 今回の無償化が、認可保育所中心の自治体の保育実施義務に支えられた公的保育制度を後退させるものとなる、このことを申し上げて、質問を終わります。