【国土交通委員会】アイヌ差別/国策が原因と指摘/政府「重く受け止める」/衆院国交委で新法案可決

 アイヌ民族を「先住民族」と初めて明記するアイヌ新法案について質疑し、政府の歴史認識と同法案の意義をただしました。

 私は、明治維新から現在に至るまで、北海道開拓と『北海道旧土人保護法』等による政府の土地政策・同化政策が、アイヌ民族の言語も民族固有の文化も奪い、差別と偏見を生み出した――として政府の認識を質問。

 石井啓一国交相は「政府の同化政策により差別と貧窮がもたらされたことは重く受け止める」と答えました。

 アイヌの人々の間にある、政府の反省と謝罪を求める声を重く受け止めるべきだ。政府の施策により言語や文化を奪われて差別を受けた歴史を国民全体の認識にする責任が政府にはある。

 また、古老の人々の生活困窮が深刻だ。政府として、低年金・無年金の実態の把握と要因の分析、生活保障・生活向上策の抜本強化が必要だ。本法案の策定過程で、当事者であるアイヌの人たちが参画し、多様な意見をくみ尽くしたと言えるのか。少なくない批判が寄せられていることを重く受け止めるべきだ。

 さらに、「先住民族の権利に関する国連宣言」を受けて2008年に採択された、アイヌ民族を先住民族とするよう求める国会決議と本法案の関係を質問。

 石井国交相は「国連宣言と国会決議を踏まえた」と答え、現行のアイヌ文化振興法との違いについて「アイヌの人々が先住民族だという認識の下、文化振興に加え、地域・産業・観光振興等を総合的に推進する」と説明。

 内閣官房の橋本元秀アイヌ総合政策室長は、国連宣言の趣旨を「第1条『近年における先住民族をめぐる国際情勢に鑑み』の部分で示した」と答弁しました。

 私は、本法案に盛り込んだ『民族としての誇りをもって生活するための環境整備』が、アイヌの人々の生業(なりわい)につながることが重要だと強調しました。

 同法案は、同委員会で、日本維新の会を除く各会派の賛成多数で可決しました。

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「議事録」

<第198通常国会 2018年04月10日 国土交通委員会 5号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 本法案について質問をいたします。
 最初に、石井大臣に、このアイヌ問題の政府の歴史認識を問いたいと思っております。
 明治維新以降現在に至るまで、北海道開拓及び北海道旧土人保護法等による政府の土地政策、同化政策によってアイヌ民族から土地も言語も民族固有の文化も奪い、差別と偏見を生み出した、こういう認識を政府としては持っているのか、この点についてまず伺いたいと思います。

○石井国務大臣 近代化の過程におきまして、同じ国民でありながらアイヌの人々が差別を受けてきた、こういう歴史に対しましては重く受けとめているところでございます。

○塩川委員 それは政府の行為がもたらしたという認識があるのかどうかを聞いているんです。土地政策や同化政策などの政府の施策が、アイヌから土地も言語も文化も奪い、アイヌの貧窮化を生じさせた、こういう政府としての認識があるのかをお尋ねしているんですが、いかがですか。

○石井国務大臣 いわゆる政府の同化政策というのも差別の一因になったのではないかというふうに考えています。

○塩川委員 そういう点で、政府の同化政策がそういった差別を助長する要因となっていた。その前提として、貧窮化をもたらすような施策、差別の話の前に、そもそも、実態として貧窮化をもたらした、そういうことが政府の措置によって行われた、そういう認識はあるということですか。

○石井国務大臣 差別と貧窮化がもたらされたということは重く受けとめているところであります。

○塩川委員 法案の名称は、アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律となっているわけです。法律名で誇りを掲げるなら、百五十年間もアイヌの誇りを奪ったことへの政府の反省、謝罪がないのかというアイヌの方の思い、これをどう受けとめておられますか。

○橋本政府参考人 我が国が近代化する過程におきまして、法的にはひとしく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたアイヌの人々が多数に上ったという歴史的事実については、政府として厳粛に受けとめます。
 なお、今回、本法案を作成するに当たりましては、アイヌの方々と数多くの意見交換会を実施いたしまして、御意見、要望等をいただいてまいりました。その中では、確かに謝罪を求める意見もございましたが、民族共生に向けて、国民の理解を深め、未来志向で物事を進めるべきである、そういう意見が強かったというふうに承知しているところでございます。
 政府といたしましては、今回の法律により、未来志向のもと、アイヌの人々に寄り添い、アイヌの人々の要望にできる限り対応しながら、共生社会の実現に向けてアイヌ施策を総合的に推進してまいりたいと考えております。

○塩川委員 アイヌに関する施策を進める上で、政府の行ってきた土地政策、同化政策がアイヌの皆さんから土地、言語、文化も奪い、貧窮化を生じさせたという政府の反省を踏まえてこそ真の対策につながっていく。やはり、こういうアイヌの方の指摘を正面から受けとめるべきだと思います。
 ですから、言語や文化を奪われて差別を受けてきた歴史を国民全体の認識にしていく、これが政府が責任を持ってやるべきことではありませんか。

○橋本政府参考人 歴史的な事実について政府として厳粛に受けとめる、これにつきましては、平成二十年の衆参両議院による決議で御指摘いただいているところでございます。その決議におきましては、あわせまして、アイヌの人々が先住民族であるとの認識のもとに、総合的な施策の確立に取り組むことを政府に求めている、そのように承知しております。
 このような決議の指摘を踏まえまして、本法律におきまして、アイヌの人々が先住民族であるとの認識を示し、また、アイヌ施策については、従来の生活向上施策や文化施策に加えまして、産業振興、観光振興、地域振興など、総合的な施策の確立に取り組むこととしております。
 政府といたしましては、今回の法律により、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、その誇りが尊重される社会の実現を図り、もって国民が相互に人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現を目指したいと考えている次第でございます。

○塩川委員 法案の中身の話にまだ入っていないんです。その前提の議論をしているわけで。
 やはり、政府によるこういう土地政策、同化政策といったものがアイヌの方々から土地や文化を奪う、言語も奪う、そして貧窮化をもたらすといったことについての反省があってこそ真の対策につながっていくのではないのかというアイヌの方の訴えを重く受けとめるべきだ。
 そういう点でも、こういった現状の差別、偏見の大もとには政府の施策があるんだ、だからこそ、政府がきちんと、こういう、言語や文化を奪われて、差別も受けてきたアイヌの歴史を国民全体の認識にしていく、そういう責任がある、そこのところを問うているんですけれども、改めてお聞きしたい。

○橋本政府参考人 事実認識につきましては、重ねて申し上げて恐縮でございますが、厳粛に受けとめているところでございます。
 政府といたしましては、アイヌの人々が民族としての名誉、尊厳を保持し、これを次世代に継承していくことが、多様な価値観が共生し、活力ある共生社会を実現するために非常に重要だと考えているところでございまして、アイヌの皆様に寄り添って、未来志向のもと、アイヌ施策を総合的に推進していきたいと考えております。

○塩川委員 実際、アイヌの方の生活困難ということも、調査などでも明らかであります。特にアイヌの年配の方、古老の方の生活困窮問題が深刻だとお聞きします。
 実際、低年金、無年金といった実態、こういうアイヌの古老の方の生活実態、生活困窮の実態というのは政府としては把握しているのか、そういう生活困窮の要因は何なのか、その点についてはどうですか。

○橋本政府参考人 法案策定に当たりましては、北海道、また北海道の外におきましてもアイヌの方々と多数の意見交換会を実施してきたところでございます。その中で、特に高齢者の方々の貧窮といったようなことの御指摘はいただいておりますので、その点については承知しているところでございます。

○塩川委員 高齢者の貧困のことについては、そういう指摘があったと。
 政府として、その実態を把握をしているのかというのを聞いているんですけれども。

○橋本政府参考人 アイヌの法案策定に当たりましては、アイヌの方々の要望、また意見を聞く、その中でアイヌの方々の状況を十分把握するということに努めてきた、そのように承知しております。

○塩川委員 実態把握をしていないということで、そういう点でも、じゃ、そういった生活困難といった要因が何なのかの分析にも至らないわけですよ。それでいいのかということが問われているわけなんです。
 古老を始めとしてアイヌの人々は、土地政策や同化政策などの政府の施策によって貧窮化が強いられた。ですから、そういう歴史的な経緯を踏まえたときに、アイヌに対する生活保障、生活向上策を今回の法案に盛り込む考えというのはなかったのか、この点についてはどうですか。

○橋本政府参考人 まず、現状におきましては、生活向上施策につきましては、アイヌの人々とその他の住民の格差の是正ということを目的に、北海道におきまして、北海道、また市町村がアイヌ施策、生活向上施策を実施しているところでございます。
 今回の法案におきましては、そういったものをそのまま推進するとともに、それに加えて、本法案によりまして新たな交付金制度を創設いたしまして、地域振興、産業振興、観光振興等を含めた総合的な施策を推進する中で、例えば地域住民の交流の場となるような、現状は生活館というものがございますが、多機能な生活館を整備するであるとか、また、地域の高齢者の足となるようなバス、その他、生活支援、教育支援等の面で資する、そういったものについても市町村と協議しながら対応してまいりたいと考えております。

○塩川委員 交付金とかの施策の話は法案にかかわってまた聞くことになるわけですけれども、そもそも、現状行っているようなアイヌ政策、生活向上施策等々、その生活支援、生活向上策といったものについて法案に盛り込む考えはなかったのか。

○橋本政府参考人 現状につきましてでございますが、北海道の方でアイヌの生活実態調査を行っております。その中で、例えば貧窮度を見る場合に生活保護率というものがございますが、生活保護率については、長年の北海道等の取組の結果、改善している、そのように承知しているところでございます。
 この生活向上施策は、先ほども少し御説明いたしましたけれども、地域の状況に応じて地方公共団体が生活格差を是正する、そういう措置でございますので、本法の全国を対象とした法律にいきなりなじむかどうかということについては慎重に対応する必要がある、そのように承知しております。

○塩川委員 生活保護だけで何かあたかも貧窮、困難、生活苦が改善されているかのように言うのは実態と違うと思います。
 平均所得で見ても、全国平均よりも少ない北海道、その北海道の平均所得よりも少ないというのがアイヌの方々の生活実態ですから、それをどう底上げするのかといった視点が必要じゃないのか。政府の施策によってもたらされたアイヌの皆さんの貧窮化というところを、どうやはり政府として対処するのかということが求められている。この予算措置となっているアイヌに対する生活保障、生活向上策を抜本的に強化することが必要だということを申し上げたい。
 それから、今回の法案の策定過程において、アイヌの方の参画がどうだったのか。いわば、自決権という場合に、自己決定権、アイヌの方自身が法案を策定をする、そういった際に、当事者であるアイヌの人々が法案策定に参画するのは当然のことであります。
 多様な意見を酌み尽くすことが必要で、今回の法案は、アイヌの手によってつくられたと言える法案となっているんでしょうか。

○橋本政府参考人 今回の法案の策定に当たりましては、基本的な考え方といたしまして、アイヌの方々に寄り添って、アイヌの方々の要望に応えていくということでございます。
 したがいまして、法案の策定過程におきまして、意見交換会を、ちょっと手元資料はあれですが、四十回近く、また、参加人数は五百人を超えていたと思いますけれども、多くの方から意見をお伺いして、その内容を法案に反映するように努めてまいりました。
 また、官房長官をヘッドといたしますアイヌ政策推進会議というものがございまして、ここの中にはアイヌの方々に多数参加していただいているところでございます。

○塩川委員 地域説明会で意見を聞いてそれを反映するという話もありましたけれども、こういう地域説明会で出された意見については、この法案作成段階でどのように検討したのか、あるいはしなかったのか、取り入れたのか、取り入れなかったのか、そういうことについての説明というのは公表されているんですか。

○橋本政府参考人 策定の段階におきまして地域の意見交換会の中でどういう議論があったかにつきましては、北海道アイヌ協会の理事会といったところで還元して説明しておりますし、また、先ほど申しましたアイヌ総合推進会議などにおきましても、その状況については御説明しているところでございます。

○塩川委員 意見を述べた方に、自分の意見は反映されたのか、されなかったのか、これは極めて重要だと思うんですよ。まさに多様な意見を酌み尽くしたことを行ったのかということが問われているわけで、こういった対応については疑問が残ると言わざるを得ません。法案策定過程におけるアイヌの参画について、少なくない批判が寄せられているということを重く受けとめるべきであります。
 以下、法案の内容についてお尋ねをいたします。
 今回の法案は、二〇〇八年のアイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議を踏まえて提出されたものということでよろしいんでしょうか。

○橋本政府参考人 御指摘のとおり、平成二十年の衆参両院の国会決議、その内容を踏まえて法案を提出してございます。

○塩川委員 国会決議において、政府は、先住民族の権利に関する国際連合宣言を踏まえ、アイヌを先住民族として認めること、同宣言の関連条項を参照しつつ、高いレベルで有識者の意見を聞きながら、これまでのアイヌ政策を更に推進し、総合的な施策の確立に取り組むとあります。この国会決議を踏まえ、法案を提出したということです。
 大臣にお尋ねいたします。
 アイヌ文化振興法と今回の法案の違いというのはどこにあるんでしょうか。

○石井国務大臣 今回の法律案は、従来のアイヌ文化振興法に基づいた文化振興に加えまして、地域振興、産業振興、観光振興等を含む多岐にわたる施策を総合的に推進するものであります。
 具体的には、アイヌの方々が先住民族であるとの認識のもと、国、地方公共団体、国民の責務を示すとともに、市町村が作成する計画が内閣総理大臣の認定を受けた場合における交付金の交付、林産物の採取に関する特例等の特別の措置、民族共生象徴空間の円滑な運営のための措置、内閣官房長官を本部長とするアイヌ政策推進本部の設置など、アイヌ施策の効果的な推進を図るために必要な各種措置を講ずることとしております。
 これらの措置を講ずることによりまして、アイヌの方々が民族としての誇りを持って生活することができ、その誇りが尊重される社会の実現を図り、もって全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを期待をしております。

○塩川委員 アイヌ文化振興法との違いという点で、先住民族という認識を示しているということ、これまでの文化振興法に基づく文化振興、普及啓発に加えて、地域振興、産業振興など総合的な施策を推進する、そういう中身になっているということです。
 重ねて大臣にお尋ねしますが、この法案においてアイヌ民族が先住民族であることが初めて明記をされた、そのことの意義についてはどのように考えておられるか、お尋ねします。

○石井国務大臣 平成十九年に国連総会におきまして先住民族の権利に関する国際連合宣言が採択をされ、我が国も賛成票を投じたところであります。同宣言の採択を受けまして、平成二十年に衆参両院によりましてアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議が採択をされ、政府に対しまして、アイヌの人々を先住民族として認めること、国連宣言における関連条項を参照しつつ、総合的な施策の確立に取り組むことが求められました。
 本法案におきましては、これらを踏まえまして、アイヌの人々が先住民族であるという認識のもと、従来のアイヌ文化振興法に基づいた文化振興に加え、地域振興、産業振興、観光振興等を含む多岐にわたる施策を総合的に推進することとしているところでございます。

○塩川委員 施策の総合的推進に寄与するといった点での説明がありました。
 今回の法案は二〇〇七年の先住民族の権利に関する国際連合宣言を踏まえたものだという点について、改めて確認したいと思います。

○石井国務大臣 先住民族の権利に関する国際連合宣言につきましては、法的拘束力はないものの、先住民族に係る政策のあり方の一般的な国際指針として認識をしております。
 また、平成二十年六月に衆参両院の本会議で決議をされましたアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議におきましては、先住民族の権利に関する国際連合宣言を参照しつつ、総合的な施策を確立すべきとされているところであります。
 本法律案におきましては、国連宣言が、差別を受けない権利や国民の理解の促進、先住民族の文化に関する権利などについて規定していることから、アイヌの人々に対する差別の禁止に関する基本理念、国、地方公共団体による教育活動、広報活動等の責務等を規定しており、新たに創設される交付金制度や法律上の特例等の措置によりまして、アイヌ文化の振興や国民の理解の促進を図ることとしております。
 本法の制定及び現行の関係法令によりまして、先住民族の権利に関する国連宣言に示されている国の果たすべき責務につきましては、憲法等との課題整理を図る必要があるものを除きまして、おおむね措置できているものと考えております。

○塩川委員 二〇〇七年の国連宣言を踏まえているということは、この法案の法文上のどこに示されているんでしょうか。

○橋本政府参考人 お答えいたします。
 この法律におきましては、第一条に目的を規定しているところでございますが、その中で、「近年における先住民族をめぐる国際情勢に鑑み、」と、この部分で示しているところでございます。

○塩川委員 その上で、その国連宣言、第一条の目的のところで含んでいるということですが、この国連宣言は、じゃ、法案の中の施策として具体的にどのように反映されているのか。その権利宣言の、例えば第何条がどういうところで反映されているか。そういうことについて、わかりますか。

○橋本政府参考人 国連宣言の中は非常に多様な権利等が定められております。その中で、例えばでございますけれども、差別を受けないといったことについての権利が国連宣言の中にあります。これに関しましては、この法律の基本理念の部なんですが、第四条のところで、アイヌの人々に対する差別の禁止に関する基本理念を示しております。
 また、国連宣言の中では、国民の理解の促進といったようなことについても言及があると承知しております。これにつきましては、例えばでございますけれども、法律の第五条の国、地方公共団体の責務のところの三項で、国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動その他の活動を通じて、アイヌに関し、国民の理解を深めるように努めなければならないということもありますし、今回の施策、ウポポイを始めとして、アイヌ文化について情報発信していくという取組は、国連宣言の内容を受けてのものだと理解しております。

○塩川委員 法案の目的に、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができる社会の実現を図ると明記しておりますが、このアイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができる社会の実現を図るというのは、その意味するところは何か、お答えください。

○石井国務大臣 我が国が近代化する過程におきまして、法的にはひとしく国民でありながらも差別をされ、貧窮を余儀なくされたアイヌの人々が多数に上ったという歴史的事実について、政府として厳粛に受けとめているところであります。
 また、現状におきましても、結婚、職場、学校などさまざまな場面において、アイヌの方々に対するいわれのない差別が残っていることが示唆をされております。
 本法律案におきましては、国連宣言が、差別を受けない権利や国民の理解の促進、先住民族の文化に関する権利などについて規定をしていることから、アイヌの人々に対する差別の禁止に関する基本理念、国、地方公共団体による教育活動、広報活動等の責務等を規定しておりまして、新たに創設されます交付金制度や法律上の特例等の措置によりまして、アイヌの文化の振興や国民の理解の促進を図ることとしております。
 こうした措置によりまして、本法案は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現を図るものであります。

○塩川委員 アイヌ文化振興法にはない規定が追加をされているわけです。そこの持つ意味として、民族としての誇りを持って生活することができる、まさに生活をどう支えるのかといった点が極めて重要だと思っていますが、その意味するところというのはどういうところなのか。もう一度。

○橋本政府参考人 アイヌの方々が誇りを持って生活できるというその誇りの源泉といたしましては、やはり民族としての誇りでございますので、文化にその大きなところ、文化、伝統があると思います。そういった文化伝承について、継承、振興していくということが非常に重要なところでございます。
 文化振興法が文化の振興ということに焦点を当てて対策、対応、施策を進めてきたわけでございますが、今回の法律におきましては、その文化振興に資する環境の整備ということも入ります。
 それはどういうことかと申しますと、例えば、文化の継承をしていて、これまた意見交換で聞いた話ですけれども、継承をしていると、ほかに本業があれば、本業の稼ぎが減ってしまうんだというような、そういうふうなお声もいただいております。やはり、文化継承すること自体が、例えばなりわいにつながるであるとか、その文化継承の、例えば工芸品ということであれば、一定の規模が必要だと承知しますので、そういった原材料の確保であるとか、そういったものも非常に重要な課題だと承知しております。
 そういった環境の整備、文化の周りのそういった環境の整備も今回対応していきたい、そのように考えている次第でございます。

○塩川委員 文化の継承をする場合、そのことを行うことで本業の稼ぎが減ってしまうという点でも、文化の継承がなりわいにつながるという点が含まれるという話は首肯するところであります。
 そういう点で、従来の文化振興法の文化振興等の施策に加えて、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活するためのアイヌ文化の振興等に資する環境の整備を位置づけておりますが、その中には、地域振興や産業振興、観光振興に対する支援も入ってくると。そういった点で、こういった環境の整備というのが実際になりわいにつながっていくということが重要なんじゃないかと思うわけです。
 これらの生活のための環境整備の支援においては、アイヌの人々の生業、なりわいを保障するということが、アイヌの儀式や伝統、文化を継承することにつながるんじゃないのか。この点についてお答えください。

○橋本政府参考人 今回の法案の一つの柱として、交付金制度の新設がございます。また、法律の特例措置といったものがございます。これにつきましては、例えば、今委員が御指摘のように、地域振興、産業振興、また観光振興といった面でいろいろ活用があるのではないかなと。
 例えばアイヌのブランド化を推進する、これは、やはりアイヌの製品を扱うことをなりわいにする方にとっては大きなことだと思いますが、こういった産業振興を振興する。また、アイヌ文化関連の観光プロモーション、こういったものも進めれば、アイヌの芸術に携わる方々のなりわいも確保される方向で改善されるのではないかな、そのように承知しております。

○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。
 ありがとうございました。