【内閣委員会】企業主導型保育やめよ/問題点を追及

 企業主導型保育施設の安全確保体制の問題点を追及しました。

 2017年度の企業主導型保育施設への立ち入り調査で「必要な保育従事者数が確保されていない」「うつぶせ寝への対応を適切に行うこと」「定期的なブレスチェックを行うこと」など、子どもの命と安全に関わる基本的なことが行われていない施設が一定ある。これらの問題点が改善されたか、現場で確認しているのか、と質問。

 内閣府は「複数の指摘を受けた施設を対象に、午睡時の抜き打ち調査を554施設(69%)で実施した」と答弁。

 私は、問題を抱える施設が554もあることは、安全性に懸念がある状況を示している。調査が改善につながっているのか追及しました。

 内閣府は「抜き打ち調査の指摘は口頭で、文書での改善報告を求めているわけではない」と実効性のなさを認めました。

 私は、保育の質を棚上げして量を追求したことが、深刻な実態の大本にある、と批判。

 宮腰光寛少子化担当大臣は「子育て安心プランに基づく新たな待機児童対策として組まれ、量の拡大に重点が置かれすぎた」と答えました。

 私は、企業主導型はただちに停止し、待機児童解消は公立を中心とした認可保育所で図るべきだ、と主張しました。

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「議事録」

<第198通常国会 2019年06月12日 内閣委員会 22号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 企業主導型保育事業について質問をいたします。
 平成二十九年度の企業主導型保育事業指導・監査実施要領に基づき立入調査を行った結果について出されております。その内容について確認しますが、立入調査対象の八百施設中、保育内容等に関する指摘事項があった施設が六百六施設、七五・八%に上っているということも当委員会でも随分議論になってきたところです。
 その中で件数の多かった上位五項目がどんな事項なのか、その件数と、全体、八百に占める割合について簡単に紹介してもらえますか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 文書によるさまざまな指摘、六百六施設でございましたが、指摘の多かった事項といたしましては、保育計画等を適切に整備すること、二百七十六施設、全体の三四・五%、乳幼児の利用開始時に健康診断結果を確認すること、百六十一施設、二〇・一%、開所時間の全てにおいて必要な保育従事者数を配置すること、百五十八施設、一九・八%、乳幼児の健康診断を適切に実施すること、百三十四施設、一六・八%、嘱託医との契約を締結すること、百二十六施設、一五・八%などが挙げられてございます。

○塩川委員 資料をお配りしました。ここにありますように、保育計画という基本的なものが整備されていないという問題もそうですし、三番目に、必要な保育従事者数が確保されていないという実態というのは、まさに保育の安全にかかわる問題でも極めて重大な問題であります。それ以外でも、例えば、十六番目に、午睡時のうつ伏せ寝への対応を適切に行うことですとか、二十四番の、定期的なブレスチェックを適切に行うこととか、そういう基本的なことが、命と安全にかかわる基本的なことが行われていないという施設が一定数存在しているという点が極めて重大だと指摘をせざるを得ません。
 お聞きしたいんですが、こういう問題点が改善されたということは、きちんと現場で確認をされておられるんですか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 立入調査において文書による指摘を受けた施設に対しましては、改善状況を改善報告書として提出していただくこととしてございます。また、改善報告の受領にとどまることなく、指摘事項が改善しているかどうかを確認する観点から、改善すべき指摘の多かった施設などにつきましては、必要に応じ、抜き打ち調査を実施してきておるところでございます。

○塩川委員 抜き打ち調査というのは具体的にどんなことを行うのか、どういう施設を対象にしているのかを説明してもらえますか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 児童育成協会が実施する指導監査でございますけれども、原則として全ての施設を対象とした、年一回実施する立入調査のほかに、ゼロ歳児が多い施設や定期的に実施する立入調査後の改善状況を確認する必要がある場合に行う午睡時抜き打ち調査、運営等に問題が発生、又は発生のおそれがある施設に対して事前通告を行わずに実施する特別立入調査がございます。
 平成二十九年度におきましては、立入調査で指摘事項が多かった施設など五百五十四施設に対しまして午睡時抜き打ち調査を実施し、また、運営等に問題があるなどの通報を受けた八施設に対しまして特別立入調査を実施したところでございます。

○塩川委員 午睡時抜き打ち調査の選定基準というのが、過去五年間に重大事故が発生とか、ゼロ、一歳児の利用児童数が多い、保育士比率が一〇〇%でない、協会又は自治体の指導監査において指摘がある、第三者評価において指摘がある、利用者等から苦情がある、こういう問題を抱えている施設というのに対して午睡時抜き打ち調査をやっているんですよね。その数というのが八百施設のうち五百五十四施設に上っているということで、これは非常に懸念される状況にあるということを示しているのではないですか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 先ほども申し上げました午睡時抜き打ち調査、五百五十四施設に上っておるところでございまして、我々としましても、数とともに質、どういう項目が守られていないかというのをしっかりと把握して、改善につなげていくことが非常に重要だと思ってございます。

○塩川委員 いや、それで実際に指摘事項が改善されたというチェックがされているのかということなんですよ。それはどうなんですか。

○小野田政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたとおり、一定の改善報告書を提出していただいた上での抜き打ち調査ということになるわけでございますけれども、これらの抜き打ち調査の結果につきましては個別公表は行っていないところでございますけれども、例えば午睡時抜き打ち調査については、午睡時の職員の配置状況やブレスチェックなどの安全対策などを中心とした確認、特別立入調査については、通報等の内容に応じた確認を行い、問題があれば改善を求めているところでございます。
 ただ、これまでに実施された午睡時抜き打ち調査や特別立入調査につきましては、主に口頭による指摘が行われており、必ずしも文書による改善の報告を求めていなかったと承知してございます。指摘事項の是正が確実に行われたかどうかを確認する視点から、これまでの午睡時抜き打ち調査や特別立入調査のこうした運用についてもしっかりと見直しを検討してまいりたいと考えてございます。

○塩川委員 ですから、見直しをしなければいけないような調査の実態だったということになるわけです。
 ですから、立入調査をやりました、問題点を指摘しました、それは改善報告という文書でもらって、それが、結果とすると、その一年後の、次の立入調査のときに是正されているかどうかという話では、現状が改善されたのかどうかわからないわけで、だからこそ、特別立入調査ですとか抜き打ち調査を、午睡時抜き打ち調査もやろうという話のはずなんだけれども、この五百施設以上にやっている午睡時抜き打ち調査でも、じゃ、改善していますねというチェックまできちっと行われていないということ自身が極めて重大だと言わざるを得ません。
 大臣にお尋ねをいたします。
 こういった企業主導型保育事業というのは、保育の質が軽視されている、そういう実態にあったのではありませんか。

○宮腰国務大臣 ただいま政府参考人の方から答弁をさせていただきましたが、平成二十九年度において立入調査を行った施設のうち、保育計画の不備など、さまざまな指摘が約七割強の施設でありました。文書による指摘を受けた施設からは改善報告書を提出させ、既に全ての施設において改善報告がなされております。また、改善すべき指摘の多かった施設などについては、必要に応じ抜き打ち調査を実施をいたしております。
 一方で、指導監査については、開設後の指導監査等において、保育の質の視点が不足していること、自治体と実施機関の間の指導監査の連携等が不足していることなどの課題が指摘されておりまして、三月の検討委員会報告に沿いまして、財務面、労務面を強化し、さまざまな法人種別に対応した専門人材を確保する、地域ブロック別又は保育内容、財務、労務の業務別の体制を整備する、国が必要に応じ直接的に指導監査する体制とする、実施機関と都道府県の間で指導監査基準の整合性を確保したり、指導監査の合同実施や結果の情報共有を行うといった方向で、現在具体的な検討を進めているところであります。
 まず何よりも子供の安全第一の観点から、保育の質の確保、向上を重視し、指導監査のあり方をしっかりと見直してまいりたいと考えております。

○塩川委員 保育の質の視点が不足している、そういう話がありました。
 というより、要は、受皿拡大を目指す、つまり、質を棚上げして量を追求したということが、こういった現場の深刻な実態の大もとにあるんじゃないかと思うんですが、その点はどうですか。

○宮腰国務大臣 この企業主導型保育事業の目的というのは、緊急的な待機児童対策ということが一つ、それから、多様な働き方ということが求められているわけでありますけれども、その多様な働き方に対応した保育事業ができるということで、企業にとってもいろいろな人材の確保が容易になる、そういう考え方がベースにあるわけであります。
 その上で、委員御指摘のとおり、量の拡大に重きを置き過ぎて質の確保がおろそかになっていたのではないかという反省の上に立って、今、検討委員会の報告に沿った形で見直しを進めているわけであります。
 事は子供のことに関することでありますので、まずは安全第一ということをしっかりと念頭に置いて、この見直しを進めてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 多様な働き方の話もあったんですけれども、多様な働き方に対応する保育であればあるほどしっかりとした体制が必要なわけですよね、命の安全にかかわるような体制。それが、保育従事者が確保されていないなんということが、じゃ実際にどう是正しているのかというのもしっかりつかまないで、どうして質の確保ができるのか、そもそも多様な働き方に対応するような保育ができるのかということにつながってくるわけであります。
 量の拡大に重きを置き過ぎてという話がありました。そういった点でいえば、定員の話にもその点があらわれているということで、会計検査院に来ていただきましたが、会計検査院の企業主導型保育施設の整備における利用定員の設定等についてお聞きします。
 会計検査院は、助成金の交付を受けて整備された企業主導型保育施設の利用が低調となっていたり、開設が助成の申込時の計画よりも遅延して児童を受け入れられていなかったりなどしている事態を指摘をし、このような事態が生じているのは、事業主体が利用定員設定を適切に行うことの必要性についての理解が不十分であり、補助事業者である児童育成協会が利用定員の設定に係る審査の必要性の認識を欠いていることなどを指摘をしています。
 ですから、企業主導型保育施設の事業者の問題、また児童育成協会の問題点を指摘をしているんですが、それでは、内閣府の問題点について、会計検査院はどのように指摘をしているのか。

○原田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 今回の事態に係る発生原因といたしましては、内閣府におきまして、補助事業である公益財団法人児童育成協会に対して、利用定員の具体的な設定方法等について事業主体に周知させておらず、また、助成の申込みに対する審査に当たり利用定員の妥当性等について審査等を行わせていないこと、同協会に対して、企業主導型保育施設の利用状況を適切に把握させておらず、利用が低調となっている場合に、事業主体が定員充足率の向上等に向けた取組を適切に行うよう指導等を行わせていないこと、同協会が助成の申込みに対する審査を行うに当たり、企業主導型保育施設の設備基準等との適合性等について十分な審査等を行えるような仕組みを整備していないことなどによるものと考えております。

○塩川委員 大臣にお尋ねします。
 内閣府の問題点について会計検査院の指摘があったわけですけれども、こういった事態が生じた原因、要因というのは何だったんでしょうか。政府の、内閣府の対応として、なぜこんなことになったのか、その原因について御説明いただきたい。

○宮腰国務大臣 内閣府が行いました調査結果によりますと、平成二十九年度一年間を通じて開所していた五百一施設の定員充足率は全体で七二・八%となっており、定員充足率が八〇%以上の施設が全体の四六・七%、定員充足率が五〇%未満の施設は全体の一七・八%となっておりました。
 これらの原因に関して、三月の検討委員会報告では、実施機関が行う事前の審査や開設後の指導監査等において保育の質の視点が不足しているのではないか、その結果、設置者の財務基盤が脆弱であったり、経営見通しが甘いままに開設された施設があり、入所児童の確保や保育士の確保が円滑に行われず、定員割れ、休止等につながったのではないかといった指摘がなされています。
 この検討委員会報告を踏まえまして、審査時に、従業員枠については利用者の意向調査等のデータを求め、地域枠については自治体から地域の保育需要等の客観情報を求める、利用が低調な施設については巡回指導、企業と施設とのマッチング支援など相談支援を充実させる、各施設の定員充足状況等を定期的に公表するといった方向で、現在、具体的な作業を進めているところであります。
 定員充足の改善に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○塩川委員 内閣府のやはり責任の問題として、実施機関が行う事前の審査、開設後の指導監査等において保育の質の視点が不足していた、それはその量的拡充に重きを置いていたということなんですが、何で内閣府はそうなったのかという話なんですよ。保育の質の視点が不足していた、それは量的拡充に重きを置いていた、何で量的拡充に重きを置くことによってこういった質の面が軽視されるような事態を生み出したのかという政府の責任、原因究明について、もう一度きちっとお答えいただけますか。

○宮腰国務大臣 この制度は、子育て安心プランに基づき企業主導型保育事業が検討され、そして、新たな待機児童対策として事業が組まれたものであります。ただ、やはり、先ほどから申し上げているように、量の拡大に重点が置かれ過ぎて質の確保に余り熱心でなかったということは、これは反省すべき、大いに反省すべき点ではないかというふうに思っております。
 ただ、全般的に、もちろん大きな問題を抱えている事業所もあるわけでありますが、例えば保育士さんの比率一〇〇%の施設は、ことしの三月三十一日現在、八四・一%であります。七五%の施設が八・四%、五〇%の施設が七・五%ということでありまして、必ずしも保育士の体制が不十分だというところばかりではありません。既に一〇〇%を満たしているところが八四%、八割以上あるということでありますので、多くの企業主導型保育施設事業者については、一定の水準は満たした上でこの事業を行っているのではないかというふうに考えております。
 問題のある施設も多いわけでありますから、改めて、そういうところについてはしっかりと指導監査できる、あるいは入り口でちゃんと審査ができる、そういう体制を組んで、子供さんのことでありますから、これまでのような問題が出てこないように努力をしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 企業主導型においては、不十分な指導監査であっても多くの問題点が指摘をされたし、定員充足率を満たしていないという点でも極めて問題があったという点で、量的拡充を追求してきた、その大もとに何があるかというと、答弁にもあったように、子育て安心プランに基づく新たな待機児童対策として企業主導型保育事業を行ったということにあるわけです。
 その企業主導型が出てくる背景というのも降って湧いたような話なんです、追いかけてみても。そういった点では、私は、こういう待機児童対策として量的拡大を追求する、そのためにしっかりと認可を中心とした保育施設を拡充するのではなくて、企業主導型で認可基準以下でも行える、そういう仕組みとして企業主導型保育事業を進めてきた、それが生み出したゆがみだと言わざるを得ません。
 ですから、企業主導型はもうやめるべきだ、公立保育園を中心に認可保育園の拡大で待機児童の解消を図るべきだということを申し上げて、質問を終わります。